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愛を誓うよりも2
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「そこ、心地いいでしょ」
ふとそんな声が後ろから響いて、壱月は驚いて振り返った。
「え、あ、はい……」
「早朝に来ると、もっと心地いいんだよ」
そう言いながらガゼボの中に入って来たのは、長身の男性だった。自分よりもずっと大人で整った顔立ちをしている彼がそう言って微笑む。
「あ、僕、宿泊で来てるわけじゃないので……」
「そうか。残念……でも、ここだけ切り取られたみたいでいい場所なんだ。ここで愛を誓えるカップルがいつも羨ましいと思うよ」
壱月はその男性の言葉に首を傾げた。ホテルスタッフの制服は着ていないがスタッフなのだろうかと彼を見上げると、それを悟った男性は、ウエディングプランナーなんだよ、と笑った。
「ここでもよく仕事してるんだ」
「そう、なんですか……素敵な仕事ですね」
「うん、自分でもそう思うよ。だから、人前で誓うなんて無理、なんて言わないで欲しいな」
そう言われ、壱月は視線を泳がせた。壱月の呟きが聞こえていたのだろう。ならいっそ、と壱月は再び男性に向き合った。
「……僕の恋人は、とても目立つ人なんです。誰かと会ってただけで学校中に噂が流れるような、そんな人で、実際前は派手に遊んでて……そんな人と僕の関係を見守ってくれる人もいるけど、それだけじゃなくて……」
壱月がそう言いながらため息を吐く。
「なんか、ちょっと君の恋人が他人に思えないんだけど……君の言いたいことは分かったよ。でもさ、だからこそ人前で誓うんじゃない? もうこの人しか愛さない、一生支え合っていくんだって。そんな想いに横槍を入れるなんて無粋だよ」
そんなことなら尚更誓えばいい、と男性が微笑む。その笑顔に壱月はなんだか少し救われたような気がして口の端を上げ、頷いた。
「やっぱり。笑うと可愛いだろうなって思ったんだ」
男性がそう言って壱月の頬に手を伸ばした、その時だった。
「壱月!」
「つかささん!」
そんな声が重なって聞こえ、壱月は男性の向こう側を覗いた。そこには肩で息をする楽と、もう一人小柄な男性が立っていた。
「楽……」
「唯。納品終わったの?」
振り返った男性がガゼボを出て、唯と呼んだ男性に近づく。それとすれ違うように楽が壱月の傍に寄った。
「無事か? 何もされてないな?」
「え、あ、うん……少し話をしてただけだよ」
壱月が頷いてから言うと、楽は大きく息を吐いた。
その後ろから、違うよ、と男性の声が響いて、壱月は二人に視線を向ける。
「俺ナンパなんかしてないよー。俺が愛してるのは唯だけだって、唯も知ってるでしょー?」
「分かりました! だからそんなこと大声で言わないでください! 帰りますよ、つかささん」
真っ赤になった小柄な男性の後を、つかさと呼ばれた男が付いていく。そんな二人を見送ってから、壱月は隣の楽を見上げた。
「……なかなか戻ってこないと思って、中庭見たら、アイツと壱月が一緒に居て……怖かった」
「怖い?」
「壱月はいつか、俺の傍から離れるんじゃないかって……だから、俺と恋人らしくするのが嫌なんじゃないかって……」
楽がそっと壱月の手を取る。壱月はその冷たい指先を感じてから、ゆっくりと首を振った。
壱月は楽を嫌な噂から守りたくて目立たないようにしたいと思っていた。けれどそれは楽を不安にさせていたのだ。それなら、壱月の迷いはもうない。
何より大事なのは楽なのだ。この人を幸せにしたくて自分は傍に居るのだ。
「僕……楽が好き。ずっと、楽の傍に居るって、約束できるよ」
「俺もだ。壱月とずっといる。壱月だけだ」
そう言って楽が微笑む。壱月もそれに頷いた。
このまま楽に抱きしめられたい。キスがしたい。そう思ったがさすがにここでは憚られるので、壱月はそっと楽の手を離した。
楽がそれを止め、壱月の体を引き寄せた。ふわりと楽に抱き寄せられ、耳朶にキスをされる。
「が、楽……」
「……実は部屋取ってあるんだ。今日は壱月がどこにも行かないようにたっぷり愛してあげる」
耳元で楽がそう囁く。壱月はそれに、え、と返すが、壱月の体を解放した楽はそのまま壱月の手を引いて歩き出した。
「愛を誓うのもいいけど、俺は体で伝えたいから」
壱月は楽の広い背中を見つめながら微笑む。
「ねえ……明日の早朝、またここに来ない? 楽」
「いいけど……俺、早朝まで寝かすつもりないよ」
「……手加減してよ……」
「するわけないだろ。俺の愛は重いんだ」
覚悟しろ、と楽が振り返って微笑む。壱月はそれに頷いてから、楽の手を強く握りしめた。
++++++++++
最後までありがとうございました!
こちらの話に出演者してもらったのは、別のお話(電子版同人誌になってます)の二人です。
ふとそんな声が後ろから響いて、壱月は驚いて振り返った。
「え、あ、はい……」
「早朝に来ると、もっと心地いいんだよ」
そう言いながらガゼボの中に入って来たのは、長身の男性だった。自分よりもずっと大人で整った顔立ちをしている彼がそう言って微笑む。
「あ、僕、宿泊で来てるわけじゃないので……」
「そうか。残念……でも、ここだけ切り取られたみたいでいい場所なんだ。ここで愛を誓えるカップルがいつも羨ましいと思うよ」
壱月はその男性の言葉に首を傾げた。ホテルスタッフの制服は着ていないがスタッフなのだろうかと彼を見上げると、それを悟った男性は、ウエディングプランナーなんだよ、と笑った。
「ここでもよく仕事してるんだ」
「そう、なんですか……素敵な仕事ですね」
「うん、自分でもそう思うよ。だから、人前で誓うなんて無理、なんて言わないで欲しいな」
そう言われ、壱月は視線を泳がせた。壱月の呟きが聞こえていたのだろう。ならいっそ、と壱月は再び男性に向き合った。
「……僕の恋人は、とても目立つ人なんです。誰かと会ってただけで学校中に噂が流れるような、そんな人で、実際前は派手に遊んでて……そんな人と僕の関係を見守ってくれる人もいるけど、それだけじゃなくて……」
壱月がそう言いながらため息を吐く。
「なんか、ちょっと君の恋人が他人に思えないんだけど……君の言いたいことは分かったよ。でもさ、だからこそ人前で誓うんじゃない? もうこの人しか愛さない、一生支え合っていくんだって。そんな想いに横槍を入れるなんて無粋だよ」
そんなことなら尚更誓えばいい、と男性が微笑む。その笑顔に壱月はなんだか少し救われたような気がして口の端を上げ、頷いた。
「やっぱり。笑うと可愛いだろうなって思ったんだ」
男性がそう言って壱月の頬に手を伸ばした、その時だった。
「壱月!」
「つかささん!」
そんな声が重なって聞こえ、壱月は男性の向こう側を覗いた。そこには肩で息をする楽と、もう一人小柄な男性が立っていた。
「楽……」
「唯。納品終わったの?」
振り返った男性がガゼボを出て、唯と呼んだ男性に近づく。それとすれ違うように楽が壱月の傍に寄った。
「無事か? 何もされてないな?」
「え、あ、うん……少し話をしてただけだよ」
壱月が頷いてから言うと、楽は大きく息を吐いた。
その後ろから、違うよ、と男性の声が響いて、壱月は二人に視線を向ける。
「俺ナンパなんかしてないよー。俺が愛してるのは唯だけだって、唯も知ってるでしょー?」
「分かりました! だからそんなこと大声で言わないでください! 帰りますよ、つかささん」
真っ赤になった小柄な男性の後を、つかさと呼ばれた男が付いていく。そんな二人を見送ってから、壱月は隣の楽を見上げた。
「……なかなか戻ってこないと思って、中庭見たら、アイツと壱月が一緒に居て……怖かった」
「怖い?」
「壱月はいつか、俺の傍から離れるんじゃないかって……だから、俺と恋人らしくするのが嫌なんじゃないかって……」
楽がそっと壱月の手を取る。壱月はその冷たい指先を感じてから、ゆっくりと首を振った。
壱月は楽を嫌な噂から守りたくて目立たないようにしたいと思っていた。けれどそれは楽を不安にさせていたのだ。それなら、壱月の迷いはもうない。
何より大事なのは楽なのだ。この人を幸せにしたくて自分は傍に居るのだ。
「僕……楽が好き。ずっと、楽の傍に居るって、約束できるよ」
「俺もだ。壱月とずっといる。壱月だけだ」
そう言って楽が微笑む。壱月もそれに頷いた。
このまま楽に抱きしめられたい。キスがしたい。そう思ったがさすがにここでは憚られるので、壱月はそっと楽の手を離した。
楽がそれを止め、壱月の体を引き寄せた。ふわりと楽に抱き寄せられ、耳朶にキスをされる。
「が、楽……」
「……実は部屋取ってあるんだ。今日は壱月がどこにも行かないようにたっぷり愛してあげる」
耳元で楽がそう囁く。壱月はそれに、え、と返すが、壱月の体を解放した楽はそのまま壱月の手を引いて歩き出した。
「愛を誓うのもいいけど、俺は体で伝えたいから」
壱月は楽の広い背中を見つめながら微笑む。
「ねえ……明日の早朝、またここに来ない? 楽」
「いいけど……俺、早朝まで寝かすつもりないよ」
「……手加減してよ……」
「するわけないだろ。俺の愛は重いんだ」
覚悟しろ、と楽が振り返って微笑む。壱月はそれに頷いてから、楽の手を強く握りしめた。
++++++++++
最後までありがとうございました!
こちらの話に出演者してもらったのは、別のお話(電子版同人誌になってます)の二人です。
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