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しおりを挟む朱莉が風呂から出ると、ダイニングテーブルに朱莉が買って来たものを広げていた秋生が、おかえり、と微笑んだ。
「随分色々買って来たんだね」
「秋生さんが好きなものが分からなくて」
朱莉が素直に告げると、そうか、と秋生が頷く。それからテーブルの上に視線を向け、これは好きだな、とスナック菓子を指さした。
「あ、でもね甘いものも好きだよ。元々あまり好き嫌いもないし」
たくさんありがとう、と秋生が朱莉の頭を撫でる。それから、あ、と手を引いた。
「またやってしまった。どうも朱莉くんを見ると、子どもにするようなことをしてしまうな」
ごめん、と謝る秋生に朱莉が首を振る。
優しくて暖かい秋生の手で触れられることは嫌ではなかった。普段、会社で社員たちに肩を触られるだけでも不快感を感じるのに、秋生にはそんな気持ちは一切湧かない。不思議だが、きっと秋生に下心がないと分かっているからかもしれない。
もし秋生に朱莉をどうにかしようという気持ちがあるなら、酔い潰れたあの日に何かあったはずだ。
「ぼく、秋生さんなら大丈夫です。子ども扱いは少し照れますけど」
もう二十五なので、と笑うと、充分若いよ、秋生が苦く笑う。
「そういえば、秋生さんっていくつですか?」
「三十二だよ」
年齢の割に容姿は若い気がした。大人の雰囲気はあるのだがもう少し若く見えていたので、その年齢に正直少し驚いた。
「兄弟とかいるんですか?」
「どうして?」
「なんとなく、お兄ちゃんぽいかなって」
「鋭いな。弟がいるよ。とはいっても、一歳下なだけだけどね」
そうやって話す秋生の表情は柔らかくて、きっと兄弟の仲はいいのだろうと分かる。兄弟がいない朱莉には羨ましいことだった。
「そうなんですね。地元って、ここなんですか?」
「いや、大学進学の時にこっちに来て……って、随分聞くね」
座るといいよ、と秋生がダイニングの椅子を勧める。朱莉はそれに従うように椅子に落ち着いた。
「なんとなく……秋生さんのこと、知りたくて」
朱莉が他人の事をこんなに知りたいと思ったのは久しぶりだった。自分から話をしてくる人が多かったというのもあるが、朱莉自身があまり相手に興味なかったというのが大きい。
知りたいと思っていることに自分が一番驚いている。
「それはすごく光栄だけど、もう今日は遅いから家まで送るよ」
明日も仕事だろう、と秋生が椅子の背もたれに掛けていた上着を手に取る。
「ぼく、一人で帰れます。まだ電車もあるし」
「そう言っても夜道は危険だからね。朱莉くんはキレイだし、狙われそうだ。何かあったら僕が後悔してしまうから送らせて」
いつもなら、キレイだと褒められても何も感じないのに、秋生に言われるとなんだか嬉しかった。それに、夜道が危険だなんて、朱莉も男なのだからいくらでも対処はできるのに、それを心配してくれることも、嬉しい。
「じゃあ、お言葉に甘えます。あ、あと、もう一つお願いしてもいいですか?」
「いいけど、何?」
「プライベートの連絡先、教えてもらえませんか?」
朱莉が遠慮がちに伝えると、秋生は、そんなこと、と笑って自身のスマホを取り出した。
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