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「え、あの、さっきの人……」
驚いた顔で返す秋生に、朱莉は慌てて返した。すると、秋生が小さく笑った。
「彼女は同僚だよ。インターンから一緒でね、仲はいいけど付き合ったことは一度もないよ」
「でも、ぼく、前にあの人と秋生さんが楽しそうにしてるとこ、見てて……そう、手も繋いでた、から……だから隠さなくても、ぼくは、あの人のこと好きになったりしないし、秋生さんのことだって……」
諦める、とは言えなくて朱莉が黙り込む。秋生は、手? と呟いてからしばらくして、あの頃かな、と口を開いた。
「僕、少し前に思い切り病室のドアに指挟んで。すぐ痛みも引いたし忙しくて放っておいたんだけど、同僚たちの間で、やっぱり指腫れてない?って話になって。それから彼女が面白がって、手を繋いだら痛い?ってからかうようになってたから、それを見たのかな? でも、それも病院の中だから……朱莉くん、病院来てたの?」
そう聞き返されると、ただ秋生のことが知りたいだけでここまで来たことがバレそうで、朱莉はそれに答えずに、あと、と慌てて言葉を返した。
「さっき、デートって……」
「ああ、あれは僕の弟とって意味。弟、僕と兄弟?って疑うくらいイケメンでさ、彼女は弟を連れて歩いて貢いでやるとストレス発散になるんだって」
「そう、なんですか……」
勘違いして一人でぐるぐる考えていたことがとても恥ずかしくて、朱莉は秋生の肩に腕を廻してぴたりと体を付けた。これで恥ずかしく情けない顔は見られなくて済む。
「ねえ、朱莉くん……僕の思い違いだったら否定して欲しいんだけど……もしかして、彼女に嫉妬してくれた?」
少し楽しそうな秋生の声が耳元に響いて、朱莉は腕に力を入れて、更に秋生に抱きついた。思い違いだったら、なんて言っているが絶対確信がある声だ。
「……だったら、どうなんですか」
不機嫌に朱莉が返すと、それは、と言って言葉を切った秋生が立ち止まり、朱莉の体を降ろす。そこはもう病院の外で、近くにはタクシーが一台止まっている。おそらく、朱莉のために誰かが呼んでくれたのだろう。
秋生は辺りを見回していた朱莉の手を掴んで、朱莉くん、と呼んだ。朱莉が秋生をまっすぐに見上げる。
「君が嫉妬してくれたのなら、嬉しいと思ってる。僕は、君が好きだよ」
意外な言葉を聞いて、朱莉は驚きで何も言えなかった。そんな朱莉に秋生が優しく微笑む。
「こんなこと言っても、君には響かないのは分かってるよ。朱莉くんは、好きだなんて言葉、貰いなれてるだろうし。ただ、僕がそう思っているということは分かっていてほしい」
「貰いなれてなんて……」
朱莉がそう言いかけると、すみません、と声が届き、秋生と朱莉がその声の方へと顔を向ける。タクシーの運転手が、いつまでも乗りに来ない自分たちを見て不安になったようだ。秋生は、今乗ります、と答え、朱莉の手を引いた。
「話は、朱莉くんの体調が回復したらにしよう」
秋生がタクシーに乗り込みながら朱莉に小さく告げる。
朱莉はそれに頷いて、秋生が握ってくれている手をもう一度ぎゅっと握り直した。
驚いた顔で返す秋生に、朱莉は慌てて返した。すると、秋生が小さく笑った。
「彼女は同僚だよ。インターンから一緒でね、仲はいいけど付き合ったことは一度もないよ」
「でも、ぼく、前にあの人と秋生さんが楽しそうにしてるとこ、見てて……そう、手も繋いでた、から……だから隠さなくても、ぼくは、あの人のこと好きになったりしないし、秋生さんのことだって……」
諦める、とは言えなくて朱莉が黙り込む。秋生は、手? と呟いてからしばらくして、あの頃かな、と口を開いた。
「僕、少し前に思い切り病室のドアに指挟んで。すぐ痛みも引いたし忙しくて放っておいたんだけど、同僚たちの間で、やっぱり指腫れてない?って話になって。それから彼女が面白がって、手を繋いだら痛い?ってからかうようになってたから、それを見たのかな? でも、それも病院の中だから……朱莉くん、病院来てたの?」
そう聞き返されると、ただ秋生のことが知りたいだけでここまで来たことがバレそうで、朱莉はそれに答えずに、あと、と慌てて言葉を返した。
「さっき、デートって……」
「ああ、あれは僕の弟とって意味。弟、僕と兄弟?って疑うくらいイケメンでさ、彼女は弟を連れて歩いて貢いでやるとストレス発散になるんだって」
「そう、なんですか……」
勘違いして一人でぐるぐる考えていたことがとても恥ずかしくて、朱莉は秋生の肩に腕を廻してぴたりと体を付けた。これで恥ずかしく情けない顔は見られなくて済む。
「ねえ、朱莉くん……僕の思い違いだったら否定して欲しいんだけど……もしかして、彼女に嫉妬してくれた?」
少し楽しそうな秋生の声が耳元に響いて、朱莉は腕に力を入れて、更に秋生に抱きついた。思い違いだったら、なんて言っているが絶対確信がある声だ。
「……だったら、どうなんですか」
不機嫌に朱莉が返すと、それは、と言って言葉を切った秋生が立ち止まり、朱莉の体を降ろす。そこはもう病院の外で、近くにはタクシーが一台止まっている。おそらく、朱莉のために誰かが呼んでくれたのだろう。
秋生は辺りを見回していた朱莉の手を掴んで、朱莉くん、と呼んだ。朱莉が秋生をまっすぐに見上げる。
「君が嫉妬してくれたのなら、嬉しいと思ってる。僕は、君が好きだよ」
意外な言葉を聞いて、朱莉は驚きで何も言えなかった。そんな朱莉に秋生が優しく微笑む。
「こんなこと言っても、君には響かないのは分かってるよ。朱莉くんは、好きだなんて言葉、貰いなれてるだろうし。ただ、僕がそう思っているということは分かっていてほしい」
「貰いなれてなんて……」
朱莉がそう言いかけると、すみません、と声が届き、秋生と朱莉がその声の方へと顔を向ける。タクシーの運転手が、いつまでも乗りに来ない自分たちを見て不安になったようだ。秋生は、今乗ります、と答え、朱莉の手を引いた。
「話は、朱莉くんの体調が回復したらにしよう」
秋生がタクシーに乗り込みながら朱莉に小さく告げる。
朱莉はそれに頷いて、秋生が握ってくれている手をもう一度ぎゅっと握り直した。
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