百合原くんは本気の『好き』を捧げたい

藤吉めぐみ

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 秋生の部屋に着くと、秋生はそのまま朱莉をベッドへと寝かせ、傍に座り込んだ。
 朱莉の体に布団を丁寧にかけながら、秋生が少し心配そうな顔をする。
「痛みはない?」
「今は全然」
 朱莉が首を振ると、良かった、と秋生が安堵の息を吐く。
「点滴途中でやめてしまったし、ぶり返したらどうしようと思ってたんだよね。念のため、痛み止めも持ってきてるから痛むようなら声かけて」
 リビングに居るから、と立ち上がろうとした秋生の手を咄嗟に朱莉が掴む。秋生はそれに驚いて朱莉を見下ろしてから、ゆっくりとしゃがみ込んだ。
「不安?」
「……少し」
 本当は不安なんかなかった。傍に秋生がいるだけで、何でも大丈夫になるような、そんな気持ちになるのは、朱莉が秋生を好きだからだろう。ただ、今はもっと傍にいて欲しくて少しだけ嘘を吐いた。
「僕がいるから、心配ないよ。僕が誰だか知ってるでしょ」
 秋生は朱莉の傍に再び座り込むと、朱莉の手を緩く握った。
「四次元ポケット持ち歩いてるお医者さん?」
 くすくすと笑って朱莉が答えると、秋生は空いていた手で朱莉の髪を優しく撫でながら、正解、と微笑んだ。
「とにかく今はゆっくり眠った方がいい。明日、また診察に行って、何もなければその時は自宅に戻っていいよ」
 秋生の言葉に朱莉が頷く。
 さっきまで一人で平気だと帰りたがっていたけれど、今は治っても秋生の傍に居られたらいいのにと思ってしまう。
「秋生さん……さっき、言ってくれたこと、信じてもいいんですよね?」
「さっき……? ああ、君が好きってこと? もちろんだよ」
「ぼくも、秋生さんが好き、なんです。だから、その……」
「僕とお付き合いしてくれる?」
 付き合って欲しいと朱莉が言う前に秋生がさらりとその言葉を口にする。朱莉は突然セリフを取られて驚いたと同時にときめいてしまって、すぐに頷けなかった。
「ぼくから言おうとしてたのに」
「うん、だから僕から言いたくて。どう?」
 朱莉はドキドキと心臓がどうにかなりそうなくらい緊張しているのに、秋生は余裕そうな笑顔でこちらを見ている。このまま頷くのはなんだか悔しい。
 朱莉は言葉の代わりに少しだけ体を起こしてこちらから秋生にキスをした。唇を重ね、ゆっくりと離れる。
 すると見上げた秋生の顔はびっくりしたまま固まっていて、それを見た朱莉が笑い出した。
「ドキドキしました?」
「うん、これはオッケーってことでいいのかな?って今もドキドキしてる」
「はい……よろしくお願いします」
 朱莉が微笑むと、秋生が小さく息を吐いてから朱莉の髪を撫でた。
「こちらこそ、よろしくね」
 ゆっくりと秋生がこちらに近づく。朱莉がまぶたを閉じると、優しくて温かなキスが落ちてきた。
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