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10-1★
しおりを挟むタクシーを降りた後も巽の体を抱えて家に戻った灯希は、巽をソファに丁寧に降ろしてから、具合悪くない? と聞いた。心配そうに見下ろすその顔は少し子犬っぽくて巽は笑って灯希の頭を撫でた。
「もう大丈夫だ。しばらく休んだみたいだしな」
「そっか……巽さん、ごめんね。もっと早く巽さんの異変に気づいてたら、あんなギリギリになることなかったのに」
灯希が巽の隣に座り、巽の頬を撫でる。灯希の言葉に巽は、さっき灯希が話すと言っていたことを思い出し、そういえば、と灯希を見上げた。
「どうして、おれがあそこにいるって分かったんだ?」
「あの人にも言ったけど、巽さんのスマホに色々入れてるから」
灯希は自身のスマホを取り出しそれを操作した。画面を巽に見せながら灯希が画面を指さす。
「これが位置情報。これは随分前から入れてたんだけど、巽さんが鈍感でぽやぽやしてて心配だったから、盗撮アプリも入れた。これで、巽さんのことは大体把握出来る」
携帯電話って携帯してくれるから便利だよね、と灯希は笑うが巽は同じようには笑えなかった。
「それって犯罪だろ……」
「でも巽さんにしか使ってないし、巽さんを守りたかったんだ。あの人が巽さんに気があることは分かってたから」
じゃなきゃあんなに酔わせて自宅まで送ってこないでしょ、と灯希が唇を尖らせる。巽はそれを聞いて、呆れたようにため息を吐いた。
そういえば灯希は昔から自分のわがままを通すために斜め上の行動に出る子だった、と巽が思い出す。でもそれはいつも巽と居たい時だけで、それ以外は本当にいい子だ。
それはつまり――
「灯希って……結構前からおれのこと、好きだったりするか?」
「……ようやく気づいた? 子供の時は、きっと家族に対する『好き』だったんだと思うけど……初恋は巽さんだよ」
巽の言葉に灯希が可笑しそうに笑ってこちらを見つめる。吸い込まれそうな瞳を見つめていると、灯希が巽にそっとキスをした。
「俺の初恋奪ったんだから、俺には巽さんの最後の恋をちょうだい。そのくらい貰わないと、俺がかわいそう」
こつん、と額を合わせる灯希に巽が、かわいそうって、と笑う。けれど間近で見るその顔は少し幼い、久々に見る年相応の表情で、可愛いと思ってしまった。
とくとくと、緩く心臓が足音を響かせている。もう認めるしかないのだろう。
「……その、物騒なアプリを消して、もう傍を離れないなら……欲しがってる『最後の恋』、灯希にやるよ」
巽が微笑み、こちらからキスをする。その途端、灯希が巽を強く抱きしめた。
「これ、夢かな……」
「現実だよ、灯希。お前は、おれのものになったんだ」
「……そうだね。巽さんも全部俺のものだよ。愛してる、巽さん」
「うん、おれも好きだよ、灯希」
ずず、と洟をすする音が聞こえ、巽は少し笑いながら灯希の背中をぎゅっと抱きしめた。
久々に感じる灯希の温もりは、巽の肌をより一層敏感にさせた。ただ指先で首筋を撫でられているだけなのにぞくぞくと肌はわななき、まだ触れられてもいない胸の先がつんと尖っている。それだけで恥ずかしくていたたまれなくて、巽はベッドの上の自分の体に馬乗りになっている灯希に、あのさ、と話しかけた。
灯希が着ていたシャツを脱ぎながら、視線をこちらに向ける。前髪が一瞬上がり、下から見たその顔は妙に大人びていて、巽の心臓は破裂しそうなくらい大きく高鳴る。
「あ、の……家出してる間、どこに、いたんだ?」
灯希が家を出て、初めは友達の家にでもいるのだろうなんて思っていた。けれど一日経つごとに、本当は彼女がいて、その子の家にいるのではないか、なんて想像もして、落ち込んだりもしたのだ。やっぱりちゃんと事実を知って安心したい。
「ホテルだけど」
「ホテ……だれ、と……?」
意外な言葉が返ってきて巽は灯希を見上げた。
ホテルって、もしかしたら女の子と泊まっていたのだろうか。それとも年上の誰かが灯希を拾って囲うようなことをしていたのだろうか。そう考えただけで、巽の視界が潤んでくる。
「誰って……同じ研究室の学生、かな?」
「学生……その子のこと……」
好きなのか、と聞こうとした巽の唇を灯希がキスで塞ぐ。そのキスはどんどん深くなり、口の中を器用な舌で舐め廻され、巽の舌を吸い込んでから離れていく。
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