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遭遇
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伊織と向かい合っていたのは、伊織よりちょっと年上の女性だった。
「あの…お兄ちゃんは?」
お兄ちゃん?拓馬さんの事かな?
そこに拓馬が真っ赤な顔をして走り込んできた。
「伊織!大丈夫か?」
「あっ!拓馬さん、おかえりなさい!」
伊織がすごく嬉しそうに笑うので、拓馬は思わず抱きしめたくなってしまった…。
「あ!爽(さわ)!何でここに?」
「今気付いたの?いたでしょうよ💢」
伊織よりちょっと背の高いその人は、拓馬の妹で爽さんと言うらしい。ほっぺを思いっ切り膨らませて、ぷりぷり怒っていた。
「何か用事か?」
「何よ!その言い方!可愛い妹がわざわざ来てやったのに!」
「頼んでないよ」
「何💢」
二人の掛け合いが仲の良さを醸し出していたので、伊織は横でニコニコ見ていた。
「あっ…。これは俺の妹の爽」
爽も伊織の存在を思い出したのか、慌てて挨拶した。
「ごめんなさい。びっくりしたでしょ?こいつの妹の爽と言います」
「お前な~。兄に対してこいつって…」
「そんなもんでしょ?」
「…💢」
伊織も何とか二人の掛け合いの隙間を伺っていた。
「あ、あの…。拓馬さんにご厄介になっています、伊織と申します」
ペコッと頭を下げた。
爽は拓馬の肘を掴んで、伊織から少し離れた所まで引っ張って行った。
「あの子って…」
「そう、俺が…」
「分かってんの?騒ぎになってんの!」
「ちゃんと知ってる。でも…」
「でも、何?」
拓馬は爽に耳打ちした。
「えっ?嘘でしょ?」
「いや、多分…間違いないよ」
爽が眉間にシワを寄せて唸っている。
伊織が話しかけようとしたとき、爽が口を開いた。
「お兄ちゃん。隠さない方がいいと思う」
今度は拓馬が頭を抱える番だった。
しばらく頭を抱えて考え込んでいたが、爽の考えに従う事にしたようだ。
「爽にも手伝ってほしい…」
「そういうことなら任せて」
伊織は訳が分からず二人を見つめていた。すると拓馬が伊織に向き合った。
「伊織。俺、伊織にまず謝らないといけないんだ…」
伊織はますます訳が分からずに拓馬の顔を穴の開くほど見つめた。
「ちょっと!お兄ちゃん!何顔赤くしてんの!」
拓馬は伊織に見つめられて思わず嬉しくて顔が熱くなっていた。
「あっ!すまん…」
コホンと咳払いすると、仕切り直して話し始めた。
「伊織。ごめん。俺、伊織の事、前から知ってたんだ…」
「えっ?」
「伊織は覚えてないだろうけど、俺は君が中学生の時に一度だけ会ったことがあるんだ」
「…。僕が中学生の時?」
伊織は混乱していた。拓馬さんは前から僕の事を知ってた?
「伊織っていう名前はほんとのなんだ。俺が付けたみたいなこと言ってごめん」
「…。僕はほんとに伊織?」
「そう。そして君は有名な華道の家元のうちに生まれた跡取りなんだよ…」
「えっ?」
僕が何の跡取り?華道?えっ?
「最近ニュースでも取り上げられて、次の家元に一番近いって言われてるんだよ」
僕にそんな能力あるわけないよ!
「俺が伊織を知ったのは、伊織の学校で職業紹介のイベントがあったとき、うちの消防署を代表して出席した…」
中学校のイベントの時…。
「伊織は学校代表で、俺に自分で作った花束を手渡してくれたんだ」
拓馬はその時のことを思い出しているようで、少しの間空を見つめていた。
「花束って洋風なイメージがあったんだけど、伊織がくれた花束は和の感じにまとめられていて、着物を纏った伊織がそれを抱えて俺の前に立ったとき、思わずしびれた…」
「しびれた?」
「そう。なんて言うのかな…。まるで雷に打たれたみたいな…」
「雷?」
頭の上に?マークを何個も並べたような顔で、きょとんと拓馬を見つめた。
「お兄ちゃん。なれそめを今説明してる場合じゃないわよ!」
爽につっこまれなければ、多分思いの丈をぶちまける所だったと拓馬は気付いて照れた。
「も~!照れんな!気色悪い!」
「何だと?兄に向かって気色悪いとは!」
「昔から何回も聞かされてるからあたしは耐性が出来てるけど、いきなり本人に言おうとすんな!」
何を言おうとしてたんだろ?
「分かった分かった!言うときはちゃんと場を弁えるから、お前はそれ以上言うな!」
「言うわけないでしょ!」
何の話?
「それでね、伊織。君を見つけて助けた時、君はこう言ったんだ」
えっ?
拓馬の口からこんな言葉が出てきた。
「ちょっと命を狙われてるみたいで…って」
ぼ、僕の命…狙われてんの?
「まさか…」
「でもね、確かに跡継ぎの件はスムーズにはいってないっていう報道もあるんだ…」
すると爽さんが身を乗り出してきた。
「あたし、今その取材中なの」
「えっ?取材?」
「あたし、報道記者なのよ」
ええ~!僕は情報量の多さに自分の頭のキャパシティが追いつかず、立ちくらみを起こした。
倒れる寸前、拓馬が僕の腕を掴んで体ごと引き寄せた。抱きしめられる格好でそのまま意識が遠のいていった。遠くで拓馬が僕の名前を呼び続けていた。
「あの…お兄ちゃんは?」
お兄ちゃん?拓馬さんの事かな?
そこに拓馬が真っ赤な顔をして走り込んできた。
「伊織!大丈夫か?」
「あっ!拓馬さん、おかえりなさい!」
伊織がすごく嬉しそうに笑うので、拓馬は思わず抱きしめたくなってしまった…。
「あ!爽(さわ)!何でここに?」
「今気付いたの?いたでしょうよ💢」
伊織よりちょっと背の高いその人は、拓馬の妹で爽さんと言うらしい。ほっぺを思いっ切り膨らませて、ぷりぷり怒っていた。
「何か用事か?」
「何よ!その言い方!可愛い妹がわざわざ来てやったのに!」
「頼んでないよ」
「何💢」
二人の掛け合いが仲の良さを醸し出していたので、伊織は横でニコニコ見ていた。
「あっ…。これは俺の妹の爽」
爽も伊織の存在を思い出したのか、慌てて挨拶した。
「ごめんなさい。びっくりしたでしょ?こいつの妹の爽と言います」
「お前な~。兄に対してこいつって…」
「そんなもんでしょ?」
「…💢」
伊織も何とか二人の掛け合いの隙間を伺っていた。
「あ、あの…。拓馬さんにご厄介になっています、伊織と申します」
ペコッと頭を下げた。
爽は拓馬の肘を掴んで、伊織から少し離れた所まで引っ張って行った。
「あの子って…」
「そう、俺が…」
「分かってんの?騒ぎになってんの!」
「ちゃんと知ってる。でも…」
「でも、何?」
拓馬は爽に耳打ちした。
「えっ?嘘でしょ?」
「いや、多分…間違いないよ」
爽が眉間にシワを寄せて唸っている。
伊織が話しかけようとしたとき、爽が口を開いた。
「お兄ちゃん。隠さない方がいいと思う」
今度は拓馬が頭を抱える番だった。
しばらく頭を抱えて考え込んでいたが、爽の考えに従う事にしたようだ。
「爽にも手伝ってほしい…」
「そういうことなら任せて」
伊織は訳が分からず二人を見つめていた。すると拓馬が伊織に向き合った。
「伊織。俺、伊織にまず謝らないといけないんだ…」
伊織はますます訳が分からずに拓馬の顔を穴の開くほど見つめた。
「ちょっと!お兄ちゃん!何顔赤くしてんの!」
拓馬は伊織に見つめられて思わず嬉しくて顔が熱くなっていた。
「あっ!すまん…」
コホンと咳払いすると、仕切り直して話し始めた。
「伊織。ごめん。俺、伊織の事、前から知ってたんだ…」
「えっ?」
「伊織は覚えてないだろうけど、俺は君が中学生の時に一度だけ会ったことがあるんだ」
「…。僕が中学生の時?」
伊織は混乱していた。拓馬さんは前から僕の事を知ってた?
「伊織っていう名前はほんとのなんだ。俺が付けたみたいなこと言ってごめん」
「…。僕はほんとに伊織?」
「そう。そして君は有名な華道の家元のうちに生まれた跡取りなんだよ…」
「えっ?」
僕が何の跡取り?華道?えっ?
「最近ニュースでも取り上げられて、次の家元に一番近いって言われてるんだよ」
僕にそんな能力あるわけないよ!
「俺が伊織を知ったのは、伊織の学校で職業紹介のイベントがあったとき、うちの消防署を代表して出席した…」
中学校のイベントの時…。
「伊織は学校代表で、俺に自分で作った花束を手渡してくれたんだ」
拓馬はその時のことを思い出しているようで、少しの間空を見つめていた。
「花束って洋風なイメージがあったんだけど、伊織がくれた花束は和の感じにまとめられていて、着物を纏った伊織がそれを抱えて俺の前に立ったとき、思わずしびれた…」
「しびれた?」
「そう。なんて言うのかな…。まるで雷に打たれたみたいな…」
「雷?」
頭の上に?マークを何個も並べたような顔で、きょとんと拓馬を見つめた。
「お兄ちゃん。なれそめを今説明してる場合じゃないわよ!」
爽につっこまれなければ、多分思いの丈をぶちまける所だったと拓馬は気付いて照れた。
「も~!照れんな!気色悪い!」
「何だと?兄に向かって気色悪いとは!」
「昔から何回も聞かされてるからあたしは耐性が出来てるけど、いきなり本人に言おうとすんな!」
何を言おうとしてたんだろ?
「分かった分かった!言うときはちゃんと場を弁えるから、お前はそれ以上言うな!」
「言うわけないでしょ!」
何の話?
「それでね、伊織。君を見つけて助けた時、君はこう言ったんだ」
えっ?
拓馬の口からこんな言葉が出てきた。
「ちょっと命を狙われてるみたいで…って」
ぼ、僕の命…狙われてんの?
「まさか…」
「でもね、確かに跡継ぎの件はスムーズにはいってないっていう報道もあるんだ…」
すると爽さんが身を乗り出してきた。
「あたし、今その取材中なの」
「えっ?取材?」
「あたし、報道記者なのよ」
ええ~!僕は情報量の多さに自分の頭のキャパシティが追いつかず、立ちくらみを起こした。
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