ラストレター

ハジメユキノ

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出逢い

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鴨川芹は元々報道カメラマン。戦場カメラマンの橋爪陸玖とは高校からの付き合いだった。陸玖はピューリッツァ賞に一番近い男と謳われた、才能溢れるカメラマンだった。

芹が高校生の時、同じクラスに転校してきたのが陸玖だった。自分が皆と違うことに薄々気付いていた芹は、教室に現れた転校生を見た瞬間、自分が男性が好きだということを実感した。陸玖から目が離せない芹。黒板を背に立った陸玖は、芹の姿が教室の中で浮き上がって見えるほどの衝撃を受けた…。
お互いに一目惚れだった。運命と言ってもいいくらい、お互いしか見えない番のような相手…。
でも、陸玖は自分がゲイだとは受け入れられず、芹を遠ざけた。自分を好きだと告白してきた女の子と付き合って、俺が恋をするのは女なんだと芹に見せつけるように経験を重ねていった。
そんな陸玖をずっと見てきた芹は、あの日の眼差しはただの勘違いだったんだと思い込むようになっていた。自分の陸玖への想いを断ち切るように、SNSで知り合った年上の男と会うようになった。
何度目かのデートで、芹は男からホテルに行かないかと誘われた。芹の頭に陸玖の姿が浮かんだ。でも陸玖が好きなのは女なんだ。男の俺じゃない。
「いいよ。俺、初めてだけど…」
「そう…。優しくしなきゃな(笑)」
笑った顔が少しだけ陸玖に似ていた。だからこの人を好きになろうと思ったんだな…。
ホテルが近づいてくるにつれ、芹は怖くなった。本当にこれでいいのか?陸玖の代わりにこの人に抱かれても?
「あの…。やっぱ帰ります」
「えっ?今更何言ってんの!一回くらい付き合えよ!いい思いさせてやったじゃん!」
入るぞと半ば強引に連れ込まれそうになったとき、俺の腕を掴む奴がいた。
「何やってんだよ」
「陸玖?」
なんでここに陸玖が?
「嫌がってんだろ!離せよ!」
陸玖は男に食ってかかっていた。
「なんだお前!関係ねえだろ!」
男は陸玖を殴った。それでも陸玖は俺を離そうとはしなかった。何度殴っても離そうとしない陸玖に、男は呆れたようにこう言った。
「そんなに好きなら放っておくなよ!」
ふざけんじゃねえと捨て台詞を吐き、男は芹に二度と連絡すんなと言って去っていった。
「何で橋爪がここに…」
「ごめん」
「ウチに来なよ。手当てするから…」

陸玖は素直に芹に従った。芹は陸玖を連れて帰ると、リビングの棚から救急箱を出して陸玖の傷を消毒する準備をしていた。
「橋爪は無茶するんだな(笑)」
笑って陸玖を見ると、陸玖は立ち上がって俺の手を掴んだ。
「いいから…」
「いいって何が…」
陸玖は俺を抱き締めていた。
「橋爪?」
「りくでいい。芹。今までごめん…」
俺は陸玖が何を言いたいのか分からなかった。ごめんて何に?何で殴られても俺を助けたの?
「陸玖…。何で謝るの?助けてくれたのに…」
「芹。俺は芹が好きだ」
「え?」
陸玖が俺を好き?だって、彼女…
「好きだ」
「だって、彼女…いるでしょ?それに俺、男だよ?」
「ごめん…。でも芹が好きなんだ」
陸玖の唇が俺にキスをしていた。こじ開けるように舌が俺の口に入って、俺のを絡め取っていく。
陸玖の固いものが俺のお腹に当たる。俺は信じられなくて泣き出してしまった。
「嫌か?俺、お前が俺のこと…」
「ずっと好きだった!初めて見たときからずっと!」
陸玖は泣いている俺を黙って抱き締めた。
「ごめんな。ずっと認められなかったんだ…。でももう、分かっちゃったんだ。俺は芹が好きなんだ」
「陸玖…。俺を陸玖のものにしてくれる?」

陸玖の唇が、俺のカラダにキスしてる…。
「陸玖…もういいよ。挿れても…」
「まだやっと3本入ったとこだよ?」
「陸玖のなら痛くてもいいから…」
濡らすものがなくて、ハンドクリームを使った。でも、俺はいつも陸玖を思って弄っていたんだ…。
陸玖のが俺の入り口を少しずつ開いていく。
「きつ…。芹?大丈夫か?」
陸玖は俺が想像していたよりもずっと優しかった。
「ん。ちょっとだけ痛いけど…」
「ゆっくりな…」
少しずつ奥を広げていく陸玖のを感じて、俺はまた泣いてしまった。
「痛いのか?」
「ううん…。陸玖が最初で良かったって」
「俺もだよ。俺の初めても芹だったら良かったな…」
次第に痛さよりも快感が上回っていった。俺が気持ち良くて腰が動いてしまうのに興奮したのか、陸玖の動きも激しくなっていった。
「芹…芹…好きだ」
「陸玖…やっと好きって言えた…」
音を立てて陸玖が俺の中を突いている…。嬉しくて、気持ち良すぎて涙が出る…。
「芹が好きだ!芹!俺、イキそうだ…」
「りく…」
陸玖の熱いものがお腹の中に注がれているのが分かる。それが陸玖の俺を想う気持ちなんだと、言い知れぬ快感で蕩けた頭でぼんやり思っていた。

「男を好きになるなんて、俺はおかしいんだと思ってた」
陸玖は俺の部屋のベッドで、一緒に横になりながら話していた。
「芹が俺を見る度に、芹を俺のものにしたいって思ってた…。でも、ごめん。どうしても認められなかった。芹が悪いわけじゃないのに、芹のせいにした。芹がいるからいけないんだって…」
俺はなんて言っていいのか分からずに、陸玖の目を見つめていた。
「女の子と寝たって、そんなにいいもんじゃなかった。だってずっと…芹を好きだったから」
俺の目から一粒涙が頬を伝った。陸玖の優しい指が、俺の目尻を拭う。
「本当はずっと芹に入りたかった…」
抑えていた感情が一気に堰を切った。嗚咽が止まらないほど泣いた。自分の陸玖への恋慕が報われる日が来るなんて想像すらしなかった。誰でもいい。この熱を冷ませるのなら、快感でおかしくなるくらい男に抱かれれば、この恋慕は消えるんだと思っていた。そう思い込まなければ、いつか俺は壊れてしまう…。壊れてしまうくらいなら、快楽に身を委ねてしまおう。気持ち良くしてくれるなら誰でもいい。忘れられるなら誰でも良かったんだ。
「ごめん、芹。ごめんな…」
ずっと叶わないと思ってた。女の子とホテルに入っていく陸玖の後を何度つけていたか…。想像したくないのに、陸玖が女の子の服を脱がせて、体中にキスをして。そして抱いてるんだ。ベッドとバスルームしかない部屋で、女の子はどんな声で陸玖を呼ぶんだろう。何で俺じゃないんだろう…。
「陸玖!俺じゃなきゃダメだって言ってよ!」
「芹。好きなんだ。俺は芹がいい。芹以外欲しくない」

それから二人は同じ夢に向かって進んだ。大学も同じ芸術学部に入り、写真の道に進んでいく。
芹は報道。陸玖は戦場へ。
「芹が撮ると、人が皆優しく見えるな(笑)」
抱き合った後、ベッドの中でお互いのポートフォリオを開き、笑った人が写る写真を見ながら陸玖が言った。
「ほら、笑い声まで聞こえてくるよ」
「それなら陸玖が撮ったこの写真。家族を想って空を見つめてるこの人。あと少しで帰るから待っててって言ってるみたい(笑)」
「そんな風に見えてる?」
「うん。すごくいい。陸玖の写真は本当に心まで切り取って写し込んでるよ」
「芹に褒められると自分がすごい才能の持ち主みたいに思うよ(笑)」
「よ!天才カメラマン!」
「参ったな…。才能が溢れちゃって(笑)」
抱き合って笑って…。ふと真剣な顔をする陸玖。
「ん?何?」
何も言わず俺に優しく口づける。
「愛してる、芹。あの時芹の手を離さなくて良かった」
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