ラストレター

ハジメユキノ

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写真の行方

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機材を抱えて街に出る。カメラも2台、フィルムカメラとデジタルと、三脚…。重くて肩に食い込んでくるけれど、何故か撮影道具だけはそれが苦にならない。
「いい天気だ。これなら夕焼けも綺麗だろ」
久しぶりにウキウキしていた。最近パパラッチ仕事が多くて、大っぴらにカメラ持って撮影なんて出来なかったからな…。
あれからほとんど五代の家にいる。デレにも程があるだろ!と思うくらい五代が優しくなった。
「最初のドSがはるか昔の事みたいだ(笑)」
一人顔がニヤけてしまうのを慌てて戻し、俺は撮影の許可をもらっていたビルの屋上に上がった。
そこは新しくはないがよく手入れされたビルで、そこから見える夕焼け空は遮る建物がなく、海に落ちて行く太陽が美しく輝いていた。
それほどの高層ビルではないので、眼下を見下ろすと家路を急ぐサラリーマンの背中が見える。道路を埋め尽くす車のテールランプがオレンジの天の川のようにずっと先まで続いていた。
海に注ぎ込む河川をまたぐ大きな橋、橋の上を走る車も全てがオレンジ色に染まっていた。
地上に降りると街灯が灯り始め、フレームを覗くと星のようにきらめいて見える。仕事を終えた人々の、戦いを終えた鎧を脱いだ背中にはウキウキとした空気が漂っている。朝のキリッとしたのとは違う、ホッとしたような柔らかな空気を纏った人達が家路を急いでいた。
「帰る場所があるって…幸せなことなんだな…」
俺の帰る場所も…。
「いやいや。仕事仕事!」
俺は気を引き締めて、街角からの景色を写真に収めていった。

仕事部屋に戻ると、チェックを始めた。パソコンに取り込み、余計なものが写ってないか確認をしていると、ホテルの一室にあの人が写り込んでいた。
「まだやめられないのか…」
俺を訴えたあの女優。隣にいるのは…。
「これは消しておかないな…」
あの人には悪いことをしたと思っていた。俺は誰とも本気にはならなかった。好きになるなんて陸玖に申し訳ない。それに…。陸玖以外愛せないと思っていたから。
「それなのに…。ずかずかと俺の中に💢」
でも、もう…。嫌じゃなかった。少しずつ仮面を脱いで、鎧を外していった五代は、俺を本当に大事に思っているようだった。
「俺は?」
ダメだ。今はちゃんとこの写真に向き合わないと失礼になる。俺はパソコンの画面に集中し、広告に相応しい写真に仕上げていった。
…………………………………………………………………
「やめて!」
「お前は俺から逃げられないんだよ」
「だからって、何で他の人とまで!」
「こんなにイイ体。俺だけが味わうのは勿体ないと思ってな…」
もう…嫌なのに。
「あなただけだって言うから、私…」
「これが済めば…。あの合作映画がいい方向に行くんだ。お前だって、もっと羽ばたけるぞ?」
嘘よ!私はいいように使われてるだけ。見た目とこの体だけしか必要とされてない…。
「じゃ…。今日は俺の代わりにこの方を頼むな」
「嫌!」
「何だよ。俺も交ざるか?」
「そうじゃない!もうこんなの嫌!」
逃げようとしても男二人…。
「諦めろ。悪いようにはしない」
………………………………………………………………………
「おい、あの時、広告写真撮ってる奴がいたって…、ホントなのか?」
「あのホテルが写ってる。しかも撮っていたのが…」
「あいつか…。面倒だな」
あの後、あの女。ホテルの浴室で手首切りやがった…。
「広告の方は潰したんだろうな」
「別の写真に差し替えが決まってます」
「元ネタは回収しろよ」
「しかし…。ウチには加工されて消されたものしかないんです」
あいつが持ってんのはヤバいな。
「あいつ、拉致しろ」
「えっ?」
俺の誘い断りやがって…。泣き叫ぶほどイカせてやる。

写真は下町の階段の上から撮った夕日の光景に決まった。
「シルエットなのに、その光景から家に帰って晩酌が待ってる感?が漂ってます(笑)」
「よかった(笑)」
「こっちも良かったんですけどね」
「でも…。商品のイメージ的にはこれも合ってます!」
「ですね(笑)」
立ち上がって握手を交わした。
「いい広告にして下さいね」
俺の言葉に、代理店の担当者がにっこり笑った。
「お任せ下さい!」
顔を見合わせて笑った。久しぶりにいい仕事だったなと噛みしめながらホテルのロビーを抜け、外に出た。
「すっかり暗くなったな…。今日は五代が得意料理作るって張りきってたな(笑)」
俺は自分が撮った夕日の光景に、自分にも帰る場所があることを幸せだと感じていた。
「五代…。俺、五代が好きなんだ」
帰り道を急ぐ俺の後を追う人間がいるなんて、その時何も感じていなかった…。

もうすぐ五代のマンションにたどり着く所で、芹の前に誰かが立ち塞がった。
「?」
「あんたには来てもらわなきゃならない」
「は?何だよ。お前…。さわんな!」
「静かにして下さいね」
俺は口をハンカチで塞がれた直後、意識を失った。

「芹…芹!」
見たこともない車に押し込まれ、聞いたことのある声が俺を呼んでいた。
「芹」
「お前…児玉」
「会いたかったぞ。お前が欲しかったのに、邪魔が入って…」
なんか体が変だ。熱があるみたいに体が熱く、腰の辺りがジンジンする…。
「そろそろ効いてきたな」
「児玉…お前クスリ…」
「前に一緒に使っただろ?頭おかしくなるくらいイけるぞ」
意地悪く笑った。俺はもうこんなの嫌だ…。
「何だよ。そんなそそる顔すんなよ。合意だろう?」
俺の固くなったものをなで始めた。
「可愛い声…。もっと欲しがって啼かせるからな…芹」
「やめろ!お前となんか…」
「ほら、よーく写ってるぞ?お前は綺麗だからな。売れるだろうな(笑)」
「くそ…」
ごめん、五代…。俺が今ままでいろんな奴とこんなことしてきたから…。

「腰がやらしく動くな…、もう少し我慢しろよ…」
児玉が俺のものをくわえながら、ローターで中をグチャグチャにかき混ぜている。もう喘ぎ声しか出ない…。
嫌だ…五代!お前にしか抱かれたくない!
その時、外に車の灯りが見えた。ドアが乱暴に閉められる音が聞こえ、俺のいる車のドアを開けようとしている誰かがいた。
「芹!そこに居るんだろ!おい!開けろ!!警察呼んだからな!」
ドアが開いてそこに現れたのは、憤怒の表情の五代だった。
「なんでここが…」
「どうだっていいだろ!それよりお前…。拉致監禁だからな。ただですむと思うなよ!」
「そんなの…慣れてるさ(笑)」
児玉が不敵な笑いを浮かべた、
五代が俺に着ていたジャケットを脱いで着せ掛けた。赤い顔をして動悸が治まらない俺を見て、児玉に叫んだ。
「お前、芹に何飲ませた!」
俺は五代の背中を呆然と眺めていた。
「媚薬?ほら、ヨクなるやつあるだろ?こいつと前に使ったんだ。そんときゃお前…。俺、出なくなるまでこいつとしたんだ(笑)」
五代の肩が震えた。拳を握り締めた所で、パトカーのサイレンが聞こえた。
「命拾いしたな…。顔の形変わるまで殴られるとこだったぞ…」
五代は冷たい目で児玉を睨んだ。もう少しパトカーの到着が遅かったら殺されていたかもしれない。児玉の背筋に冷たいものが走った。
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