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リベンジトラップ
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黒木友梨から連絡が入った。いつものようにホテルの部屋で待ち合わせ。部屋番号は…。
「連絡どうもありがとうございます…」
「宜しくお願いします」
黒木は体に沿ったラインのベージュのワンピースを着ていた。俺の視線を感じたのか、スカートの部分を引っ張り、着ているものをアピールした。
「今日の男はシックな女がご所望なのよ」
「あの…。大丈夫ですか?」
俺はこれからこの人の痴態を撮らなくちゃならない。分かっていても、この人がどんどん傷ついていくのを黙って撮るしかないことに罪悪感を感じていた。
「あぁ。私の裸やらセックスしてるところ撮るから?いいのよ。だってあなたたちは私の痴態を喜んで自分のおかずにするわけじゃないんでしょう?」
挑むような目で見つめられて、俺は覚悟を決めた。
「もちろんです。あなたの顔は出しませんし、俺達はあなたの画像や映像を流出させることはありません」
「私はこの前、あなたの覚悟に賭けたの。必ず仕留めてね」
仕留める…。その通りだ。囚われの身の女性達を解放するには、男たちを仕留めるしかない。俺達は、カメラの角度や写り方、マイクの音声チェックをしてその時に備えた。
………………………………………………………
「来たぞ。どうだ?顔きっちり撮れたか?」
「あぁ、だらしない顔がバッチリな」
男は女を金で買ったんだからと、優しくない抱き方をしていた。
「全然違うな」
普段無口な酒井が珍しく憤っていた。
「お前はアダルトビデオなんて見ないだろうけど、俺は普通にたまに見る。でも、何だろう…。全然興奮しないな…」
「あの人の覚悟を知ってるからだろ?」
「ぶん殴ってやりたいな。あの男」
多分金持ちなんだろう。人を使ってる立場の人間の、目下の人間への蔑んだような態度が垣間見える。そのくせだらしない顔で喘いでいる。スケベ根性丸出しだ。
「あの人にこれ以上傷を付けたくないな」
やっぱり優作に相談しよう。俺達は写真は撮れるし記事も書ける。一石を投じる事は出来るかもしれないが、その先は…。
…………………………………………………
「疲れた…」
芹は仕事部屋で写真の加工をしていた。彼女は嫌な顔一つ見せず、従順なふりを装っていた。男は何も気付かず、その体を貪っていた。
終わった後、男を送り出した黒木は俺達に声をかけた。
「さぁ、いかがだったかしら?」
「撮れましたよ。大丈夫です」
「そう。良かった…」
それ以上俺達が何か言うのを避けるかのように、機材を片付けたら出て行くように言って、バスルームに消えて行った。
俺達は素早く撤収すると、メモを残して帰った。
『あとは任せて下さい』
優作のマンションに帰ると、芹より先に優作が家に戻っていた。
「ただいま…。早いね」
「ああ。おかえり芹。ちょっと頭冷やそうと思ってさ(笑)」
ダイニングテーブルには、飲みかけのウイスキーのグラスがあった。
「これで頭冷えるの?逆に熱くなっちゃわない?」
芹がグラスをかかげて揶揄うと、優作が笑った。
「飲みたくなったんだよ」
その笑う顔が少し悲しそうだったので、芹は向かいの椅子に腰掛けた。
「付き合おうか?」
「一緒に飲んでくれる?」
芹は優しい目で笑った。
「おつまみでも作りましょうか?先生(笑)」
「お願いできるかな(笑)」
キッチンに並んで芹はチーズをカットし、優作はホタテの缶詰と大根のサラダを作った。
「今日はエプロンしないの?先生(笑)」
「もうスーツ脱いだからいいんだよ。お前が着けろよ」
「裸でエプロン?」
「バカだなぁ(笑)」
優作は水割りを飲みながら。芹はハイボール。
「優作…。頭に血が上ったのか?仕事の時はどんなに突っかかられても冷静なくせに。…何かあった?」
「うん…。何で弘樹はあんなくだらない男の言葉に傷ついちゃったのかな?」
「くだらない…?」
「自分が気に入るか気に入らないか、その二択。当てはまらない奴には何を言っても、何をしてもいい。くだらない。そんな人間に関わる必要性が分からないよ」
「仕事柄、逃げられないでしょ?特にお堅い検事様だ。上からの命令は絶対じゃないの?」
「まぁな。でも、命まで賭ける必要はない。俺も結局辞めた。上下関係ががんじがらめなあの場所にいられなかった。あいつが命を落とした職場にしがみつくなんて…。馬鹿らしい。あんなとこ。正義もクソもない」
芹は席を立って俺の背中に立った。座った俺に覆い被さるように抱きついてきた。そして俺の頭にあごを乗せて呟いた。
「ねぇ。優作はどっちの側も知ってるって事でしょ?」
検察と弁護人。相対する立場。
「それって凄い強いって事だよね?」
強い?
「どっちの強味も弱味も心得てる」
なるほど。そうだね。
「戦うには有利なんじゃない?」
「うん。…だな」
………………………………………………………
すっかり寝る準備をし、ベッドで話した。
「芹も…。疲れた顔して帰ってきたな。どうだったんだ?」
「うん…。辛かった。仕事だって割り切って撮ってたけど…。自分が鬼畜になった気がしたよ」
「そうか…」
優作が俺の前髪を寄せ、額に優しくキスをした。俺はその手を捕まえて指を噛んだ。そんな俺に優作はイタズラそうに微笑んだ。
「可愛いことするなよ」
指を絡めて組み敷かれた。
優作は俺の薄い唇を美味しそうに吸った。厚い舌が口の中を弄りまわすので、頭がボーッとしてお腹の下が疼いた。
「今日は大人しいな。どうした?」
「ん?そう?」
あの人が悦んだふりをして抱かれていたのを思いだしていた。気持ち良くないだろうな。ただただ時間が過ぎるのを待つだけ…。
「芹。今日はやめておくか?」
珍しい事を言うもんだと、芹はびっくりして優作を見つめた。
「そんなにびっくりするか?」
「うん。びっくり(笑)」
「やなのか?やめるの…」
「…しよ♡」
優作の笑った顔が近づいてきた。おでこをくっつけると、鼻キスをして唇を合わせてきた。
「ねえ。ホントに最初の俺様どこに行ったのって思う(笑)」
「ドSな俺様って言われてたのは知ってる(笑)」
「ホントはどっちなの?」
俺が聞くと、優作は質問返しした。
「どっちが好きなんだ?好きな方で抱いてやる(笑)」
どっちって…。どっちだ?
「芹は優しくしてやっても、結局…」
結局って…。でも、今日は優しいのがいいな。
「優しくしてよ」
「いいよ」
「ゆっくりダメ…」
「芹が優しいのがいいって言ったんだぞ」
だって…。また。
「気持ちいいってカラダが言ってる(笑)」
「なんか中で動いてるの分かるんだ…。固いのが俺のイイとこ当たる…」
もう!こいつは…。
「ここだろ?」
いつも良く啼くところを擦ってやると、可愛い声で啼く。芹の切なそうな顔がたまらなく可愛い。
「お前も随分変わったよ…」
寂しくて誰かと体を繋げていないとダメだった芹が、自分以外の事も考えられるようになった。俺のことも…。
俺の下で可愛く啼く芹を、愛おしいなと思う。しんどいな、辛いなって思っても誰にも見せられなかった。でも、今ならこいつがいる。この戦いが終わったら、この重たい鎧を脱げるようになるだろうか?
「ゆうさく?」
「ん?何?」
「俺ばっかり…。お前も気持ちいい?」
「ああ、いいよ」
俺の事まで心配して…。
俺が初めて惚れたこの可愛い人をもっと善がらせてやろうと、その体に没頭することにした。
「連絡どうもありがとうございます…」
「宜しくお願いします」
黒木は体に沿ったラインのベージュのワンピースを着ていた。俺の視線を感じたのか、スカートの部分を引っ張り、着ているものをアピールした。
「今日の男はシックな女がご所望なのよ」
「あの…。大丈夫ですか?」
俺はこれからこの人の痴態を撮らなくちゃならない。分かっていても、この人がどんどん傷ついていくのを黙って撮るしかないことに罪悪感を感じていた。
「あぁ。私の裸やらセックスしてるところ撮るから?いいのよ。だってあなたたちは私の痴態を喜んで自分のおかずにするわけじゃないんでしょう?」
挑むような目で見つめられて、俺は覚悟を決めた。
「もちろんです。あなたの顔は出しませんし、俺達はあなたの画像や映像を流出させることはありません」
「私はこの前、あなたの覚悟に賭けたの。必ず仕留めてね」
仕留める…。その通りだ。囚われの身の女性達を解放するには、男たちを仕留めるしかない。俺達は、カメラの角度や写り方、マイクの音声チェックをしてその時に備えた。
………………………………………………………
「来たぞ。どうだ?顔きっちり撮れたか?」
「あぁ、だらしない顔がバッチリな」
男は女を金で買ったんだからと、優しくない抱き方をしていた。
「全然違うな」
普段無口な酒井が珍しく憤っていた。
「お前はアダルトビデオなんて見ないだろうけど、俺は普通にたまに見る。でも、何だろう…。全然興奮しないな…」
「あの人の覚悟を知ってるからだろ?」
「ぶん殴ってやりたいな。あの男」
多分金持ちなんだろう。人を使ってる立場の人間の、目下の人間への蔑んだような態度が垣間見える。そのくせだらしない顔で喘いでいる。スケベ根性丸出しだ。
「あの人にこれ以上傷を付けたくないな」
やっぱり優作に相談しよう。俺達は写真は撮れるし記事も書ける。一石を投じる事は出来るかもしれないが、その先は…。
…………………………………………………
「疲れた…」
芹は仕事部屋で写真の加工をしていた。彼女は嫌な顔一つ見せず、従順なふりを装っていた。男は何も気付かず、その体を貪っていた。
終わった後、男を送り出した黒木は俺達に声をかけた。
「さぁ、いかがだったかしら?」
「撮れましたよ。大丈夫です」
「そう。良かった…」
それ以上俺達が何か言うのを避けるかのように、機材を片付けたら出て行くように言って、バスルームに消えて行った。
俺達は素早く撤収すると、メモを残して帰った。
『あとは任せて下さい』
優作のマンションに帰ると、芹より先に優作が家に戻っていた。
「ただいま…。早いね」
「ああ。おかえり芹。ちょっと頭冷やそうと思ってさ(笑)」
ダイニングテーブルには、飲みかけのウイスキーのグラスがあった。
「これで頭冷えるの?逆に熱くなっちゃわない?」
芹がグラスをかかげて揶揄うと、優作が笑った。
「飲みたくなったんだよ」
その笑う顔が少し悲しそうだったので、芹は向かいの椅子に腰掛けた。
「付き合おうか?」
「一緒に飲んでくれる?」
芹は優しい目で笑った。
「おつまみでも作りましょうか?先生(笑)」
「お願いできるかな(笑)」
キッチンに並んで芹はチーズをカットし、優作はホタテの缶詰と大根のサラダを作った。
「今日はエプロンしないの?先生(笑)」
「もうスーツ脱いだからいいんだよ。お前が着けろよ」
「裸でエプロン?」
「バカだなぁ(笑)」
優作は水割りを飲みながら。芹はハイボール。
「優作…。頭に血が上ったのか?仕事の時はどんなに突っかかられても冷静なくせに。…何かあった?」
「うん…。何で弘樹はあんなくだらない男の言葉に傷ついちゃったのかな?」
「くだらない…?」
「自分が気に入るか気に入らないか、その二択。当てはまらない奴には何を言っても、何をしてもいい。くだらない。そんな人間に関わる必要性が分からないよ」
「仕事柄、逃げられないでしょ?特にお堅い検事様だ。上からの命令は絶対じゃないの?」
「まぁな。でも、命まで賭ける必要はない。俺も結局辞めた。上下関係ががんじがらめなあの場所にいられなかった。あいつが命を落とした職場にしがみつくなんて…。馬鹿らしい。あんなとこ。正義もクソもない」
芹は席を立って俺の背中に立った。座った俺に覆い被さるように抱きついてきた。そして俺の頭にあごを乗せて呟いた。
「ねぇ。優作はどっちの側も知ってるって事でしょ?」
検察と弁護人。相対する立場。
「それって凄い強いって事だよね?」
強い?
「どっちの強味も弱味も心得てる」
なるほど。そうだね。
「戦うには有利なんじゃない?」
「うん。…だな」
………………………………………………………
すっかり寝る準備をし、ベッドで話した。
「芹も…。疲れた顔して帰ってきたな。どうだったんだ?」
「うん…。辛かった。仕事だって割り切って撮ってたけど…。自分が鬼畜になった気がしたよ」
「そうか…」
優作が俺の前髪を寄せ、額に優しくキスをした。俺はその手を捕まえて指を噛んだ。そんな俺に優作はイタズラそうに微笑んだ。
「可愛いことするなよ」
指を絡めて組み敷かれた。
優作は俺の薄い唇を美味しそうに吸った。厚い舌が口の中を弄りまわすので、頭がボーッとしてお腹の下が疼いた。
「今日は大人しいな。どうした?」
「ん?そう?」
あの人が悦んだふりをして抱かれていたのを思いだしていた。気持ち良くないだろうな。ただただ時間が過ぎるのを待つだけ…。
「芹。今日はやめておくか?」
珍しい事を言うもんだと、芹はびっくりして優作を見つめた。
「そんなにびっくりするか?」
「うん。びっくり(笑)」
「やなのか?やめるの…」
「…しよ♡」
優作の笑った顔が近づいてきた。おでこをくっつけると、鼻キスをして唇を合わせてきた。
「ねえ。ホントに最初の俺様どこに行ったのって思う(笑)」
「ドSな俺様って言われてたのは知ってる(笑)」
「ホントはどっちなの?」
俺が聞くと、優作は質問返しした。
「どっちが好きなんだ?好きな方で抱いてやる(笑)」
どっちって…。どっちだ?
「芹は優しくしてやっても、結局…」
結局って…。でも、今日は優しいのがいいな。
「優しくしてよ」
「いいよ」
「ゆっくりダメ…」
「芹が優しいのがいいって言ったんだぞ」
だって…。また。
「気持ちいいってカラダが言ってる(笑)」
「なんか中で動いてるの分かるんだ…。固いのが俺のイイとこ当たる…」
もう!こいつは…。
「ここだろ?」
いつも良く啼くところを擦ってやると、可愛い声で啼く。芹の切なそうな顔がたまらなく可愛い。
「お前も随分変わったよ…」
寂しくて誰かと体を繋げていないとダメだった芹が、自分以外の事も考えられるようになった。俺のことも…。
俺の下で可愛く啼く芹を、愛おしいなと思う。しんどいな、辛いなって思っても誰にも見せられなかった。でも、今ならこいつがいる。この戦いが終わったら、この重たい鎧を脱げるようになるだろうか?
「ゆうさく?」
「ん?何?」
「俺ばっかり…。お前も気持ちいい?」
「ああ、いいよ」
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