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一筋の光
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二人はもめていた。伽耶をモノにしようと企んでいた父親であった男と血を分けた母であった女。ちょっとくらい手を出しても分からないと男は言い、今まで自分の言いなりだった女のむき出しの嫉妬に萎えたような顔をしていた。
「なぁ、俺のテクはお前がよく知ってるだろう?お前の躰は俺が開発したようなもんだ。ちょっと触っただけで反応するいい躰だ。こいつも反応のいい躰に仕込んだ方が売れる…」
男の自分勝手な言い分にまで従うほど馬鹿ではなかった女は言い返した。
「最初から伽耶が目的だったんでしょう!」
「そんなわけないだろう?毎日毎日お前に言ってる言葉はほんとだぞ?お前は綺麗だよ。その証拠に毎日…」
伽耶の目の前で女を宥めようと、助手席を倒し女に前に来るよう言った。男を手放したくない女は助手席に移った。男は女の頭をぐっと引き寄せ、黙らせるために女に深いキスをした。舌を入れられ、女はそれに応えているうちにみるみるトロンとした顔になっていた。
「分かるだろう?俺がお前をどれだけ愛してるか…。お前を粗末にしたことあるか?」
女は黙って首を横に振った。
「俺の言うこと、分かるだろう?」
渋々ながら女は男に従うことにしたようだ。
「じゃあ、うちに連れて行って、お前を可愛がるついでに伽耶を開発しようぜ。お前にも手伝ってもらおうか…。お前もきっと喜ぶよ」
女の顔をわざといやらしい手つきでなで回し、また口答えしないように深くしつこいくらいに長いキスをした。
加戸が伽耶の家を見つけた時、大きなバンが駐車場に滑り込んできた。
伽耶はこの中にいるのか?加戸は周作らに応援を頼んだ。
「周作、ちょうど今あいつらが帰ってきたとこだ。多分伽耶は車の中にいる」
「加戸、俺らが到着するまで時間ありそうか?」
「多分…。間に合わなくてもこの家には杉本と母親しかいないようだ。緊急の時は一人でも伽耶を助ける!」
「ナベさんが応援を連れて行く。俺らも急行するから何とか頑張れ」
「分かった。じゃあな」
待ってろよ、伽耶!必ず助けに行くからな!
加戸は家の周辺を探り、どこから潜入しようか考えた。建物と駐車場が一体化しているので、誰にも見られずに家の中に入れる構造だった。
「どこから行く?」
自分に問いかけた。
俺の面は割れていない。杉本の逮捕に関わったことはない。自分の見た目はともすれば警察官には見えないだろう。それならば…。
ピンポーン…。
加戸は正攻法でいくことにした。俺は今、警察官ではなく、市役所職員…。確かこの夫婦はちゃんと婚姻届を出していない。母親は母子家庭の児童扶養手当を受給し続けている。男にうまく丸め込まれているんだろう…。結婚しているのと同じなんだから、手当もらえなくなるのはもったいないだろう?なんて…。
「…はい、どちら様です?」
「こんにちは!私、○○市役所の中野と申します。こちらに杉本様…いや、穂波様いらっしゃいますよね?」
「…。私ですが、何の御用ですか?」
「穂波様、児童扶養手当を不正受給しているとの通報がありました。このままですと、手当の打ち切りだけでなく、返還を求めることになるのですが…。少しお時間頂けませんか?潔白を証明出来ませんとこちらもそれ相応の対応をさせて頂く…」
ガチャッとドアのロックが外され、伽耶の母親が顔を出した。
「わたしは不正受給なんてしてません!」
「しかしですね、同居なさってる男性がいるとか?」
「あの人は私の友人です。一緒には住んでません!」
市役所の中野と名乗った男は不敵な笑みを浮かべた。
「ほぉ。なるほど…。しかしですね、あなたの勤め先に出している住所はこちらですよね?ここは杉本様のお宅です。住民票上ではそうなっています。そうなると穂波様のお宅はどちらになるのでしょう?」
玄関先での騒ぎを聞きつけた杉本が姿を現した。伽耶はどこにいる?
「どうしました?」
会話の内容を聞いて、ちょっと距離を置いたような言動をして、他人のふりでもしようってのか?
「杉本様ですか?私、○○市役所の中野と申します!」
「はい、杉本は私ですが?」
「こちらに穂波様ご家族も一緒にお住まいになってらっしゃる事はこちらも把握しておりましてね」
「ここは俺んちだが、彼女は住んでいない」
「では、職場の住所は…」
「だから住んでないって言ってるだろうが!」
釣れたか?あと少し…。
「そんな言い訳通用するとお思いですか?」
「何だと!誰が言い訳なんか!」
「もう調べはついてるんですよ。悪質な場合は返還請求だけでは済まなくなりますよ…」
「悪質だと?てめえどういうつもりだ!」
「何年一緒にお住まいですか?その年数分はお返し頂かないと…」
「わかんねえ奴だな!」
「実態把握のため、お宅にあげて頂けませんか?」
「ふざけんな!何でそんなこと…。」
「警察呼びますか?」
杉本の顔色が変わった…。怒りで顔全体が赤く、目は血走っていた。
「お前、違うって言ってんだろうが!」
拳を振り上げ、加戸に向かってきた。
よし、かかった!
寸前でよけると杉本の拳は空を切り、上がり框から転げ落ちた。
「お邪魔致します」
慌てたのは母親だ。杉本は自分の拳の勢いで玄関の三和土に体を打ち付け痛みに呻いていた。母親はどうにか加戸の侵入を防ごうと肩に手をかけたが、加戸に手をとられて軽くひねりあげられた。
「い、痛い!何すんのよ!」
加戸はその耳許に囁いた。
「娘を拉致して売るつもりか?」
母親だった女は青ざめた。
「あんた…何者?」
「私?市役所の中野ですよ。これ以上あの男の言いなりになると、今度は市役所じゃなく…」
「何よ!」
「分かるでしょう?娘はどこです?教えた方があなたの身のためですよ…」
女は観念したのか、うなだれて目を閉じた。
「寝室よ」
「案内を!」
加戸は寝室のドアノブに手をかけた。
「なぁ、俺のテクはお前がよく知ってるだろう?お前の躰は俺が開発したようなもんだ。ちょっと触っただけで反応するいい躰だ。こいつも反応のいい躰に仕込んだ方が売れる…」
男の自分勝手な言い分にまで従うほど馬鹿ではなかった女は言い返した。
「最初から伽耶が目的だったんでしょう!」
「そんなわけないだろう?毎日毎日お前に言ってる言葉はほんとだぞ?お前は綺麗だよ。その証拠に毎日…」
伽耶の目の前で女を宥めようと、助手席を倒し女に前に来るよう言った。男を手放したくない女は助手席に移った。男は女の頭をぐっと引き寄せ、黙らせるために女に深いキスをした。舌を入れられ、女はそれに応えているうちにみるみるトロンとした顔になっていた。
「分かるだろう?俺がお前をどれだけ愛してるか…。お前を粗末にしたことあるか?」
女は黙って首を横に振った。
「俺の言うこと、分かるだろう?」
渋々ながら女は男に従うことにしたようだ。
「じゃあ、うちに連れて行って、お前を可愛がるついでに伽耶を開発しようぜ。お前にも手伝ってもらおうか…。お前もきっと喜ぶよ」
女の顔をわざといやらしい手つきでなで回し、また口答えしないように深くしつこいくらいに長いキスをした。
加戸が伽耶の家を見つけた時、大きなバンが駐車場に滑り込んできた。
伽耶はこの中にいるのか?加戸は周作らに応援を頼んだ。
「周作、ちょうど今あいつらが帰ってきたとこだ。多分伽耶は車の中にいる」
「加戸、俺らが到着するまで時間ありそうか?」
「多分…。間に合わなくてもこの家には杉本と母親しかいないようだ。緊急の時は一人でも伽耶を助ける!」
「ナベさんが応援を連れて行く。俺らも急行するから何とか頑張れ」
「分かった。じゃあな」
待ってろよ、伽耶!必ず助けに行くからな!
加戸は家の周辺を探り、どこから潜入しようか考えた。建物と駐車場が一体化しているので、誰にも見られずに家の中に入れる構造だった。
「どこから行く?」
自分に問いかけた。
俺の面は割れていない。杉本の逮捕に関わったことはない。自分の見た目はともすれば警察官には見えないだろう。それならば…。
ピンポーン…。
加戸は正攻法でいくことにした。俺は今、警察官ではなく、市役所職員…。確かこの夫婦はちゃんと婚姻届を出していない。母親は母子家庭の児童扶養手当を受給し続けている。男にうまく丸め込まれているんだろう…。結婚しているのと同じなんだから、手当もらえなくなるのはもったいないだろう?なんて…。
「…はい、どちら様です?」
「こんにちは!私、○○市役所の中野と申します。こちらに杉本様…いや、穂波様いらっしゃいますよね?」
「…。私ですが、何の御用ですか?」
「穂波様、児童扶養手当を不正受給しているとの通報がありました。このままですと、手当の打ち切りだけでなく、返還を求めることになるのですが…。少しお時間頂けませんか?潔白を証明出来ませんとこちらもそれ相応の対応をさせて頂く…」
ガチャッとドアのロックが外され、伽耶の母親が顔を出した。
「わたしは不正受給なんてしてません!」
「しかしですね、同居なさってる男性がいるとか?」
「あの人は私の友人です。一緒には住んでません!」
市役所の中野と名乗った男は不敵な笑みを浮かべた。
「ほぉ。なるほど…。しかしですね、あなたの勤め先に出している住所はこちらですよね?ここは杉本様のお宅です。住民票上ではそうなっています。そうなると穂波様のお宅はどちらになるのでしょう?」
玄関先での騒ぎを聞きつけた杉本が姿を現した。伽耶はどこにいる?
「どうしました?」
会話の内容を聞いて、ちょっと距離を置いたような言動をして、他人のふりでもしようってのか?
「杉本様ですか?私、○○市役所の中野と申します!」
「はい、杉本は私ですが?」
「こちらに穂波様ご家族も一緒にお住まいになってらっしゃる事はこちらも把握しておりましてね」
「ここは俺んちだが、彼女は住んでいない」
「では、職場の住所は…」
「だから住んでないって言ってるだろうが!」
釣れたか?あと少し…。
「そんな言い訳通用するとお思いですか?」
「何だと!誰が言い訳なんか!」
「もう調べはついてるんですよ。悪質な場合は返還請求だけでは済まなくなりますよ…」
「悪質だと?てめえどういうつもりだ!」
「何年一緒にお住まいですか?その年数分はお返し頂かないと…」
「わかんねえ奴だな!」
「実態把握のため、お宅にあげて頂けませんか?」
「ふざけんな!何でそんなこと…。」
「警察呼びますか?」
杉本の顔色が変わった…。怒りで顔全体が赤く、目は血走っていた。
「お前、違うって言ってんだろうが!」
拳を振り上げ、加戸に向かってきた。
よし、かかった!
寸前でよけると杉本の拳は空を切り、上がり框から転げ落ちた。
「お邪魔致します」
慌てたのは母親だ。杉本は自分の拳の勢いで玄関の三和土に体を打ち付け痛みに呻いていた。母親はどうにか加戸の侵入を防ごうと肩に手をかけたが、加戸に手をとられて軽くひねりあげられた。
「い、痛い!何すんのよ!」
加戸はその耳許に囁いた。
「娘を拉致して売るつもりか?」
母親だった女は青ざめた。
「あんた…何者?」
「私?市役所の中野ですよ。これ以上あの男の言いなりになると、今度は市役所じゃなく…」
「何よ!」
「分かるでしょう?娘はどこです?教えた方があなたの身のためですよ…」
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