パーティーを追放されてもふもふを拾ったら魔王に溺愛されました

吉桜美貴

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本編

1. ライラ。君をパーティーから

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「ライラ。君をパーティーから追放する!」
 と宣言してくれたら、どんなによかったか。
 あるいは
「君とはもうやっていけない。このパーティーから出ていってくれ」
 とかでもいい。
 本音を言ってくれたほうが誠実だと思うから。なにも伝えずにいるよりは。

 ライラが目を覚ましたとき、すでに仲間たちの姿はなかった。
 置いていかれたと悟ったのは、宿屋の主人から「あんたのお仲間なら真夜中に出ていったよ」と教えられたときだ。
 ライラの喉はひどく渇き、鈍い頭痛がした。昨晩、たぶん睡眠薬を盛られたんだろう。でなければ、真夜中に仲間たちが出ていく気配に目が覚めないはずはない。
 泊まった部屋を調べてみたけど、なにも残されていなかった。別れの言葉も、思い出の品も、なに一つ。
 勇者アウロス、戦士ジェミン、術師リエスの三人で示し合わせ、ライラになにも知らせず黙って姿を消した。
「あーあー。置き去りにされたのかい、かわいそうに。まぁ、冒険者同士のトラブルはよくある話だ。あんただけじゃないよ」
 ちょび髭の宿屋の主人は気の毒そうに言う。
「見たところ、あんた術師かい? ベテランだろ? なんなら他のパーティーを探してみたらどうだ? 術師は人気あるだろうから」
 ライラは今年二十六歳。光の術師として修行を始めて十八年目だから、ベテランで間違いない。フード付きの白いローブを羽織っているため、誰が見ても術師とわかる。
「あんたみたいな美人さんを置き去りにするなんて、ひでぇ奴らだな。今に天罰が下るよ」
 宿屋の主人は慰めてくれた。
 美人はさすがに言いすぎだ。容姿については「中の下ぐらい」がライラの自己評価だ。痩せても太ってもいない普通体型、身長も平均的。紫がかった黒のロングヘアに、ぱっちり二重で瞳の色も濃い紫で、色白なのは美点かもしれない。
 この世界には火、土、風、水、光と闇という六つのエレメントが存在する。それぞれのエレメントからエネルギーを借り、攻撃や防御や治癒を行うのが術と呼ばれている。
 光術は防御や治癒に優れ、あまり攻撃には向いていない。ライラも治癒ヒールが得意だった。
 ライラは悩んだ末、同じ宿にもう一泊することにした。ここから進むにしろ戻るにしろ、魔物と戦ってくれる同行者を探さなければならない。
 もちろん、気の毒だからってタダで泊まれる道理はなく、宿代はきっちり支払った。ライラ個人の手持ちが少ないから痛手である。これまでの宿代はパーティー全体で稼いだ共有財産から支払われていた。
 ギルドの依頼で稼いだ報酬のおかげで、パーティーの共有財産は潤沢だった。冒険の終わりに四人で等分しようという約束は破られたわけだ。
 ライラは手持ちのわずかなお金が全財産になってしまった。
 ライラは前線で戦えるアタッカーではなかったけど、ヒールやバフの術でパーティーに貢献してきたつもりだ。
 ただ、最近のパーティーは強かった。ヒールやバフがなくても余裕で魔物を蹴散らせるぐらい、実力をつけていた。
 パーティーメンバーが少ないほど、一人の取り分が増える。魔王を倒せば巨額の褒賞が約束されているし、取り分は多いほうがいいに決まっている。
 結果、ライラはパーティーに不要と判断され、置き去りにされてしまった。
 魔王の居城はもうすぐだったのに。
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