水と鏡と夢の世界

第二章 一つしかない選択肢の決断

第９話 アトゥータの様子

 アトゥータは、赤レンガ造りの家が多かった。そして、たくさんの人で賑わっている。けれど、周りに違和感を覚えた。

「すみません。えっと…あの…少し聞きたいことがある…あ、いや、お、聞きしたいことがある、の、ですが…」
自分にできる、精一杯の丁寧な言葉で喋った。ワインを売っているおじさんは、快く答えてくれた。

「ん？おー、綺麗な黒髪のお嬢ちゃん、どうしたんだい？」
 ユリーファは、少し嬉しくなった。初めて黒い髪を誉めてもらった。ミアルでも、一度も誉めてくれなかったな…と、思った。さっきの違和感は、そのことだった。街の人たちは皆、黒か茶色の髪を持っていた。

「あの…トヌールっていう街を知って、い、ますか？」
「トヌール？聞いたことねぇや。ごめんな」
「ううん。…いや、いえ。あと…黒髪の人、多いんだね」
「？そりゃあ、そうじゃないのか？お嬢ちゃんだって、黒髪じゃないか。でも、珍しい格好だなー。もしかして隣国とかから来たのかい？」
ユリーファは、驚いた。トヌールでは、金髪が当たり前だった。

「えーっと、そんな感じ。あ、いや、あの、私が住んでいたところでは、金髪の人ばかりだったから…」
「え！？金髪が当たり前なのか！？」
おじさんは、驚いていた。