北大陸のアーヘルゼッヘ

ふみはなえ

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4.人を探しています

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アーヘルゼッヘの降り立った町は、砂漠の中央にあった。

町の外は、岩と低木ばかりの乾いた大地が広がっている。そこは、東大陸の中央に位置していた。遥かかなたに大山脈の山並みが稜線となってふち飾りの様に見えるが、それ以外は何もない。小石をよけ、年に数回の雨の為の側溝が浅く掘られた帝国の道が、長く山脈に向かって延びているだけの、空漠とした場所だった。

「人を探しています」
アーヘルゼッヘは、男を見ながら答えた。すると、
「あなたが? 人探しに、わざわざここまで足を運んで? 探しに来た?」
と言って驚いた。わざとらしい驚きに、アーヘルゼッヘは嫌な気分になった。

「何がおっしゃりたい?」
「耳を澄ませば、世界中の音が聞こえると言うあなたがたが、わざわざ、ここまでいらしたと?」

「噂に尾ひれがついています。そんなに耳がよければうるさくて眠れないでしょう」
とアーヘルゼッヘは静かに答えた。

実際、眠れない人もいて、彼らは大地の底の音の消えた暗闇で長い眠りについている。人好き好きだから、とアーヘルゼッヘは暗い気持ちで考えた。地底へ続く階段を降りると、幾層もの空間が広がっている。

子供の頃、静けさにひかれて下って行った先で、視界いっぱいに横たわる人々を見つけた。死のない北の者の行きつく先を見たような気がした。その時、アーヘルゼッヘは、恐怖に胸が締め付けられた。その心の声を、階上で聞いた大人が慌てて連れに来るまで、アーヘルゼッヘは夢も見ずに眠る人々の心に耳を澄ませつづけていた。

音のない、夢もない、無になる瞬間に、同化していた。階上の、空の見える世界に戻ってからも、アーヘルゼッヘはしばらく耳をすませられなくなってしまうほど、何もないのは恐ろしかった。あれを望む者がいるとは、本当に、人好き好きだ、とアーヘルゼッヘは思っていた。

男は、
「しかし、人探しくらいはできましょう?」
「できる者もいるでしょう」
「あなたはできない、とおっしゃる?」
「ええ、もちろん」
「なら、できる人に頼んだらよいのではありませんか? わざわざ北の方が、こんな場所に足を運ばれることもない」
アーヘルゼッヘは、眉をしかめた。

大戦は、人間と北の者との間に大きな溝を作った。しかし、戦争のおかげで、人間達は北の者に詳しくなった。敵を知り己を知れば百戦危うからず、と言う文言が人間にはある。そのせいではないが、北の者達も、人間には詳しくなった。無関心ではいられない期間があったおかげだ。
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