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10.見た目が人間離れしているだけさ
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「捕縛できるような北の方は、北の方じゃない。先祖がえりだ。見た目が人間離れしているだけさ」
「先祖がえりって、それでは、人間と北の方が同じ一族みたいな言いざまだな」
とアゼルは言った。
種族が違うと言うことくらい、誰だって知っているぞ、と言うように。しかし、アゼルは、全く逆のことを、大声を上げて、周囲に聞こえるように、
「チウ閣下が、北の者と人間を、見間違えるとはお珍しい」
と素知らぬ顔で言った。チウはチウで、生真面目な顔を作り、アーヘルゼッヘへ手を差し出すと、
「勘違いをして、申し訳ありませんでしたね。北の方のマネをして、人をからかうような事をしてはいけない」
と諭すように言った。
こんな茶番をして、何をしたいのだろう、とアーヘルゼッヘは彼らを見た。どう見ても自分は北の者だ。だいたい、転移でここに現れたのだ。見ていた人間だっていたはずだ。あまりにもうそくさい。なのに、茶番を見ていた制帽の男達から、力が抜けた。機敏な動きをしていた棒が腰の脇へ垂れていった。
制帽達は、チウとアゼルへ、ちらちらと目を向ける。警邏隊の隊長らしく、アゼルは、緊張を解いた警邏達の動きを、うなずくことで許している。が、口では真剣に、
「チウ閣下。では、その不法侵入の人間を、我らに渡していただきたい」
と、しらっと言った。
アーヘルゼッヘは様子を見つめた。転移で逃げることはできない。この多い人間を割って駆けていく勇気もさらに無い。しかし、夜になれば力が使える。捕まったところで、すぐに自由になれるはずだ。それよりも、捕まえようとしたくせに、唐突にかばい始めたチウの理由を知りたくなった。
チウはさらに、
「アゼル。これは、不法侵入者ではない。迷子だ」
と強引に言って聞かせている。アゼルは、
「迷子…」
と失笑し、制帽達も、笑うに笑えず視線を落とした。北の者だとは分かっている。しかし、チウが違うと言えば、違うことのしたいのだ、と言う彼らの心の声が、この動きに出たように思う。
チウとは、彼らのなんだろう、とまっすぐ彼らに目を向けた。と、アゼルは、チウの腕を掴んで、アーヘルゼッヘからはなれた。二人で顔を突き合わせるようにして言い合いをしている。
何か、チウに厳しいことを言い、チウは逆に杖の握りでアゼルの胸をたたいている。アゼルはだんだん不機嫌そうな顔から、怒りへと表情を変え、
「なら、勝手にしろ。私は町を守るのが仕事だ。何かあったら、おまえの屋敷へ踏み込むぞ。治外法権だなんだと言っても言い訳にならんからな」
「ああ、いつでもどうぞ。おまえなら、いつだって大歓迎さ」
「言ってろ。何のためにここに来たのか思い出したら、私の忠告の意味もわかるようになるだろう」
そう唸るように言うと、苦虫をつぶしたような顔をアーヘルゼッヘへ向けた。
怒りと焦燥を含んだ、愛情にあふれた空気がアゼルから流れ出ていた。おかげで、アーヘルゼッヘは故郷に思いが飛んでいた。
「先祖がえりって、それでは、人間と北の方が同じ一族みたいな言いざまだな」
とアゼルは言った。
種族が違うと言うことくらい、誰だって知っているぞ、と言うように。しかし、アゼルは、全く逆のことを、大声を上げて、周囲に聞こえるように、
「チウ閣下が、北の者と人間を、見間違えるとはお珍しい」
と素知らぬ顔で言った。チウはチウで、生真面目な顔を作り、アーヘルゼッヘへ手を差し出すと、
「勘違いをして、申し訳ありませんでしたね。北の方のマネをして、人をからかうような事をしてはいけない」
と諭すように言った。
こんな茶番をして、何をしたいのだろう、とアーヘルゼッヘは彼らを見た。どう見ても自分は北の者だ。だいたい、転移でここに現れたのだ。見ていた人間だっていたはずだ。あまりにもうそくさい。なのに、茶番を見ていた制帽の男達から、力が抜けた。機敏な動きをしていた棒が腰の脇へ垂れていった。
制帽達は、チウとアゼルへ、ちらちらと目を向ける。警邏隊の隊長らしく、アゼルは、緊張を解いた警邏達の動きを、うなずくことで許している。が、口では真剣に、
「チウ閣下。では、その不法侵入の人間を、我らに渡していただきたい」
と、しらっと言った。
アーヘルゼッヘは様子を見つめた。転移で逃げることはできない。この多い人間を割って駆けていく勇気もさらに無い。しかし、夜になれば力が使える。捕まったところで、すぐに自由になれるはずだ。それよりも、捕まえようとしたくせに、唐突にかばい始めたチウの理由を知りたくなった。
チウはさらに、
「アゼル。これは、不法侵入者ではない。迷子だ」
と強引に言って聞かせている。アゼルは、
「迷子…」
と失笑し、制帽達も、笑うに笑えず視線を落とした。北の者だとは分かっている。しかし、チウが違うと言えば、違うことのしたいのだ、と言う彼らの心の声が、この動きに出たように思う。
チウとは、彼らのなんだろう、とまっすぐ彼らに目を向けた。と、アゼルは、チウの腕を掴んで、アーヘルゼッヘからはなれた。二人で顔を突き合わせるようにして言い合いをしている。
何か、チウに厳しいことを言い、チウは逆に杖の握りでアゼルの胸をたたいている。アゼルはだんだん不機嫌そうな顔から、怒りへと表情を変え、
「なら、勝手にしろ。私は町を守るのが仕事だ。何かあったら、おまえの屋敷へ踏み込むぞ。治外法権だなんだと言っても言い訳にならんからな」
「ああ、いつでもどうぞ。おまえなら、いつだって大歓迎さ」
「言ってろ。何のためにここに来たのか思い出したら、私の忠告の意味もわかるようになるだろう」
そう唸るように言うと、苦虫をつぶしたような顔をアーヘルゼッヘへ向けた。
怒りと焦燥を含んだ、愛情にあふれた空気がアゼルから流れ出ていた。おかげで、アーヘルゼッヘは故郷に思いが飛んでいた。
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