あなたのタマシイいただきます!

さくらんこ

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isc(裏)生徒会

銀影

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【神功 左千夫】


「君が神功左千夫クン?」


授業モードの僕は時々人から話し掛けられるが、特定の人物だ。
遠巻きに僕を見ている人物も把握している。
しかし、今日話し掛けてきた人物はそれのどれにも当てはまらなかった。

読んでいた本を横に置く、そう言えば読書をしている最中に話し掛けられたのは初めてかもしれない。

「はい、初めまして、……ですよね?
僕が神功左千夫です。
もしかして、父の知り合いですか?」

見覚えの無い彼に僕は手を差し出す、彼の表情が一瞬曇った気もしたが直ぐに手を握り返された。

「うんん。君、有名人だから挨拶しとこうと思って。
ボク、九鬼。今日留学から帰ってきたんだ、これからヨロシクね!」


目の前の青年は透き通るようなシルバーの髪、裾を三つ編みにしていた、瞳も透き通っており見透かされている気持ちになる。
容姿も整っており、いかにも女性が放っておかない独特のオーラを有していた。
それでいて、僕と同じ人の上に立つもの品格を感じる。

彼が離してくれなかったので握手が長くなる。
こちらをじっと見つめていたので笑みを絶やすことなく見つめていたが、それは担任の先生が入ってきたことで打ち切られた。 


「うん♪やっぱり本当に綺麗だね、僕決めたよ!」


「九鬼、来ているか?」

「はーい!ここにいます!」


…………は?

綺麗と形容されることはよくあるが、彼の言葉には脈絡が無かった。
異国の人のようだから何か間違えたのかも知れない。
九鬼と言った青年は担任に呼ばれて教台に向かった、彼の自己紹介が始まる。

彼は中国とロシアのハーフでドイツに短期留学していたようだ。
自己紹介だけでこのクラスに溶け込んだのを見るとコミュニケーション能力も高そうだ。
そう考えている内に授業が始まる、そうして何事もなくいつものように1日が過ぎていく。 



放課後(裏)生徒会室に行くとまたイデアから他校の不良がアテネ高校の領土に侵入してきているらしい。

「最近多いですね…。」

不良の管理も(裏)生徒会の仕事だ。
不良を無くせとは言わないが、こちらまで侵入してこないようにはしてもらいたい。
こう言う血生臭い事件は僕一人で解決していたんだが、今回はメンバーに手伝って貰うことにした。 

いつもの席で皆の到着を待つ。 


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【千星 那由多】


今日はクラスに留学生が来た。

俺は朝のホームルームが眠すぎて内容を半分以上聞いていなかったが、ドイツの姉妹校からの交換留学らしい。
そのドイツ人は背が高く、金髪できのこみたいなヘアースタイルだった。
やっぱり鼻は高く、ハーフの晴生と違って「いかにも外国人!」という顔をしている。
そりゃそうなんだけど。
少し片言の日本語でフィデリオという名前だけがわかった。
それだけ聞いて俺は興味もあまりなかったので、巽の後ろに隠れるように机に伏せた。


そして全授業を終え俺、巽、晴生の三人で(裏)生徒会室へと向かう。
途中、巽にもうすぐ中間テストなので、また一緒に勉強しなきゃねなんて言われたが、巽の勉強方法はちょっと特殊なのであまり一緒にやりたくない。
精神的に追い込まれるからだ。
まぁ、それで愛輝凪高校へ入れたのは確かなんだけど。
晴生が間に入って俺と一緒にやりましょうと言われ、結局三人で勉強する流れになっていった。


そんな話をしながら(裏)生徒会室に着くと、もうすでに会長は席へついて優雅に紅茶を飲んでいる。
いつもこの人は俺達がどれだけ早く来ても一番最初に来ているので感心してしまう。

俺達が各々席へと着くと、三木さんがコーヒーを持ってきてくれた。
三木さんの淹れてくれるコーヒーはおいしい。
それに口をつけながら任務前の話し合いが始まる。

会長が現れてからは、イデアでなくもちろん会長が指示を出してくれる。
最近はそこまで大変な任務はなかったので、今日も大した任務じゃないだろうと思っていた。 


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【日当瀬 晴生】


「最近、他校の不良がアテネの縄張りを荒らしています。晴生くんは知っていますね?
今日もその情報が入りました、アテネ高校の近くで違法ドラッグの密売を行っているようです。
今までは僕が片付けてたんですが…、今回は協力してもらいます。」

そういって千星さんに向かって微笑み掛けていた。
…間違いなく千星さん中心で任務を行う気だ。

「あぶり出し方々は囮作戦。囮は那由多くん、おねがいしてもいいですか?」

やっぱり、と、俺は内心呟く。
まぁ、他校の不良くれぇなら、千星さんでも楽勝だろう。
寧ろ、俺ががっちりフォローします! 


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【千星 那由多】


違法ドラッグの密売…。
なんかすっごいドラマみたいな話だ。
普通に暮らしてたら俺には絶対に無関係な話であっただろう。 

そんなことを考えながら話を聞いていると、会長がこちらを向いて微笑んだ。
そして、その後の言葉に俺の顔が引き攣る。


「お、囮…ですか?」

この囮は、多分「ドラッグを購入する客」を演じる、ということだろう。
かなり重要な役割に、額や手の平に変な汗が出て来る。
俺にできるのだろうか。

会長はまだ微笑みながら俺を見つめ、返答を待っているようだった。

「が、がんばり、ます」 

会長のこの笑顔から逃れることができないということを今はっきりと感じ、俺は返答と共に俯いた。 


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【天夜 巽】


「大丈夫です。普通にしていたら、気付かれません。」

確かに那由多はそう言うことをやっても気づかれなさそうだ。
なんたって、普通だからな。那由多は。
そこがいいとこでも有るんだけど。
会長はそう告げた後、作戦会議をしてから俺たちは現場に向かう。
場所はアテネ高校の近くにある、商店街。
昔ながらの雰囲気が漂うここは、俺の好きな場所でもある。
その一角の裏路地を進んでいくと薄暗くいりくんだ場所へと入っていく。
会長は何かを見つけたようで俺達に手で合図をする。

すると、廃倉庫の前でいかにもな金髪や茶髪、ピアスな不良たちがたむろっていた。 


「では、那由多くん手筈通りに。無理だと感じた時は首の後ろを擦ってください。」

会長の言葉に、那由多は深く頷いた。 


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【千星 那由多】


かなり緊張して身体が強張っていたが、ここまで来てやらない訳にはいかない。
会長たちもいるんだから、万が一何かあっても安心だ。

俺は深呼吸をし、不良達が屯する中へと入っていった。


「あ?なんだてめえ?」

一人の金髪の不良がすぐに俺に気づき、睨みつけてきた。
それと共に他の不良たちも俺の方へと視線を向ける。
正直こういった団体の男達に囲まれるのはまだ少し怖い。
震えそうになる身体を拳を握って言うことを聞かせる。


「ド、ドラッグが、欲しいんです…」

かなりどもってしまったが、逆にこの弱弱しい感じが不良達の警戒を解いた。

「お!お客サマね~、合言葉は?」

「……喜びの神…」

俺がそう言うと不良共はニヤニヤと笑いながら「お買い上げー」と声をあげた。
この合言葉で大丈夫だったようだ。
すると、廃倉庫の中から顔中ピアスだらけの男が俺の方へと近づいてきた。
目はギョロっとしていて気が狂ったような表情だった。

「金は」

「あ、あります」

俺は1万円札をポケットから出して手渡す。

「ん、ただし条件がある。今すぐここで1錠飲め。飲めないなら…」

不良は俺の俯いてる顔を片手で掴んで無理矢理自分の方へと向かせた。

「どうなるかわかるな?」

「わ……わかり、ました」


変な汗がでるが大丈夫だ。
これも手筈通り。すでに会長から手渡された栄養剤を袖口にしまっている。
飲むふりをして、こちらの栄養剤を飲めばいい。

薬は薄ピンク色の錠剤で、それを一錠手渡される。
それを栄養剤とうまい具合にすり替え、飲む前に戸惑ったフリをしながら辺りを見回した。
実際フリではなく結構戸惑っていたんだが。
不良共はニヤつきながら俺を見ている。 

「さっさと飲めよ~!」

そう言われ、俺は栄養剤を一気に口の中へと含んだ。 


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【三木 柚子由】


私は副会長として他校にも顔がバレてるので今回の囮には千星くんが選ばれた。
左千夫様は私を戦闘要員としてみてくれないので、こう言うときは記録係となる。
音のでないデジカメで薬の売買現場を抑えていく。
制服からして羅呪祢(ロシュネ)高校の生徒のようだ。


千星くんの演技は完璧だった、本当に怯えているように見える演技に私も見習わなきゃ、と、思いながら証拠写真をおさめる。

「お!飲みやがった飲みやがった!!おーい、ボウズ?気分はどうだ?」

「おい、初めてのヤツにんなのいっても聞こえねぇって!頭の中真っ白だぜきっと!
あ、こいつ倉庫に放り込もうぜ?そろそろ新人に飢えてるだろうし。」

千星くんはうまく栄養剤飲めたかな?
私は自分の事のようにあわあわしながら見つめていた。

「どうすんだよ、会長。証拠はもう、十分だぜ?」

「そうですねぇ…取り敢えず、倉庫とやらに連れていって貰ってから、お仕置きを始めましょうか。」


そう言った左千夫様の笑顔は恐ろしく綺麗だった。 


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【千星 那由多】


飲んだ…はいいけど…。
どういう反応をしたらいいのか考えてなかった…。

栄養剤を飲んだ喉元を抑えながら、俺は困惑し冷や汗が額から吹き出す。
それを見た顔面ピアスの不良は俺の顔を覗き込み

「いーカンジだろ?」

と気持ち悪い笑顔で笑った。
いいカンジもなにも、栄養剤なので…なんて言えるわけもなく。
そして俺の腕を引っ張りさっきこいつが出てきた倉庫の方へと連れて行かれた。

「ちょっ…」

だめだだめだだめだ、声を上げてはいけない。
ドラッグで放心しているフリをしないと…。 


そして、倉庫の中へと半ば無理矢理入れられ、俺が俯いていた顔をあげると異常な風景が広がっていた。

殴り合っている男や女、生きているのか死んでいるのかわからない体勢で寝転がっている奴、誰彼かまわず性行為をしている奴等もいる。
薄暗く人数は確認できないが、かなりの人間がいるのがわかった。
悲惨なうめき声や喘ぎ声、なんとも言えない生ぬるい空気が充満し、俺は吐きそうになった口を押さえる。 

「新入りだぞー好きにやっちまえー」

その言葉に色んな感情が込み上げ逃げ出したくなる。
まだか、まだみんなは来ないか?
強張る身体を突き飛ばされ、俺は地面に膝を付いた。

「おら、おめーも好きにやれよ。きもちーぜ?」

どうしようかと項垂れているままの俺に誰かが近寄ってくる。
髪を引っ張り上げられた目線の先には目は異様に充血し、ニタニタと笑っているガタイのいい裸の男がいた。 

「かわいい顔してるじゃねーか…俺とヤるか?」


やばい。
怖いマジ怖いやめて、ちびる。
それでなくても俺は過去のトラウマでここにいるだけでも吐き気がすると言うのに。

そのまま裸体の男に後ろへと突き飛ばされ、後ろに立っていた顔面ピアスに両腕を掴まれた。

「!!!!」

裸体の男は俺のベルトを外していく。
声を上げたい、でもダメだ、早く、早くみんな来てくれよ!!


俺は抵抗したいができないまま目を強く瞑った。 


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【日当瀬 晴生】


「それでは、手筈通り。
愛輝凪高校の関係者は拘束。その他は任せます。
柚子由は逃走者が居れば写真を…。」

そう言って会長はアプリを解除して走り抜けていく、先ずは倉庫前の不良を蹴散らしていった。
それはもう、ボッコボッコに。


俺は先陣を切って倉庫に飛び込む。
そうすると、目の前で今にも全裸にされそうな千星さんを見つけた。

「てんめぇ!!!」

がたいのいい男を銃の腹で殴打する。
いっけねぇ、関係者かどうか確認すんの忘れちまった。

ピアスの野郎もと、思ったがそこはぬかりなく天夜の野郎が滅多刺ししていた。
生きてんのか…あれ。

「那由多、大丈夫?」

そのまま、天夜が千星さんに駆け寄ったのを確認してから元から仕込んでいた麻酔弾を愛輝凪高校の関係者に撃ち込んでいく。
ドラッグのせいか効きが悪く簡単には気を失ってくれない。
何故だか知らねぇけど、会長ははいってこねぇし。
俺達でここはどうにかしろってことか?

「んと、めんどくせぇけど…」

悪くねぇ。
弱い敵ばかりだとなまっちまう、たまには叩きがいがある方がいい。
そう思い、俺は空気砲へとカートリッジを変えた。 


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【千星 那由多】


目を瞑ったまま身動きが取れずにいると、目の前の男の気配が消し飛んだ。
恐る恐る視界を開くと、裸体の男は晴生に頭を殴られ気を失って倒れていた。

俺の両腕を掴んでいたピアスの男も俺の身体から離れたので、ほっとして後ろを振り向くと巽がいた。
ピアスの男をクナイで滅多刺しにしているその表情は恐ろしく、俺は思わず巽を止めてしまった。

「も、もういいって!!!」

俺の声にいつもの表情に戻った巽は返り血を浴びた顔をこちらに向けながら大丈夫?と声をかけてきた。
いや、寧ろその男が大丈夫なのか…っていう…。

脱がされかけていた服を整え、巽に起こしてもらう。

よかった…みんな助けに来てくれた。
そりゃあ見捨てられたりはしないだろうけど結構怖かった。

半泣きの状態で俺はポケットに入れていた携帯を取り出す。
イデアアプリを開き、ロックを解除するために指を動かした。 


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【神功 左千夫】


外に居る男達に催眠術の一種で精神に介入し、喋るだけ情報を喋らせたがあまり有力なものは無かった。
羅呪祢の(裏)生徒会が絡んでいそうだが決定的な証拠は無い。

それを終えてから倉庫内へと足を踏み入れると終盤にも関わらず、那由多くんはまだアプリを解いていた。

晴生くんと巽くんは連係が、うまくいってそうでいってない。
巽くんの運動能力が高すぎるせいで無駄な動きが多いようだ。 


「邪魔だ!天夜!!」

「っと!危ないだろ日当瀬!」

何度かこの押し問答は繰り返されているんだろうと、分析していると、最後の一人を倒した瞬間、那由多くんのアプリが解除された。 


……構わないといえば、このままで構わないが。
嫌な予感が僕に付きまとう。 


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【千星 那由多】


「解除ッ!!!」 

どうだ!10分で解けた!!今までの最短記録…。
と剣が現れてそれを喜々と掴んだところで俺は今の状況に気づいた。 


…終わってる。


そこには拘束されている者もいれば、地面にひれ伏して気を失っている者もいる。
巽と晴生は最後の一人の処分が終わってからも怒鳴り合っているようで、俺は深くため息をついた。 

…ほんと俺って役立たず…。

もちろん剣は速攻で携帯に戻った。


外に出ると会長と三木さんの方も終わったようで、三木さんは困ったように笑っていた。
あまり有力な情報は得られなかったみたいだった。 


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【三木 柚子由】


あれから、任務完了でお開きになった。
他の皆は帰った(裏)生徒会室でイデアちゃんから訓練を受けていたようだけど。 


「少し体を借ります。眠っていてください。」

そう言って、左千夫様は私の頬に手をくべ、真っ直ぐに私と視線を絡める。
瞳のその奥も見透かされている気がするけど、私はこの時間が好き。
本当は眠ったほうがいいかもしれないけど、私は元から受け入れやすい体質なのでそのままでいる、そうすると左千夫様が私に入ってくる。 
浮遊感の中での一体感。
とっても心地よくて寝てしまいそうだっけど、私は体の主導権を左千夫様に明け渡した。 

「さて、行きますか。」

私の声で左千夫様が喋る。
手土産にと、左千夫様は押収したドラッグと鍵を手にし、私達は羅呪祢高校へと向かった。 




「わたくしが羅呪祢生徒会、副会長です。なにか、ご用ですか愛輝凪高校副会長様。」


先にアポを取っていたため会いたい人物はすぐに現れた。
それにしても不思議な感じ、私の眼で見ているはずなのにそうではないような、不思議な感覚となって映像が流れてくる。 

「単刀直入に言います。僕の領土を荒らすのは止めてくれますかね、羅呪祢(裏)生徒会。」 

左千夫さまは私の声を使って自分の口調でしゃべる。

その瞬間に羅呪祢の副会長はなにか気づいたようで、一瞬にして表情に緊張が走った。

「愛輝凪の会長ですか。今更何を?どこの高校ももう始めていますよ。地区聖戦に向けてね。」 

「………地区…聖戦?」

「どうやら、愛輝凪の会長は無能のようですね。話すことが以上でしたら、わたくしは下がります。」 

なんて人なの…!
左千夫さまを馬鹿にするなんて!!

“柚子由、余り心を荒立てないで下さい。分離してしまいます。”

私の気が立つと左千夫さまからの忠告の声が聞こえた。
慌てて気を沈めるように心を落ち着かせる。

「それは勉強不足で申し訳ない。
なにせ、小細工が必要なほど弱くはありませんので。
それでは、僕のほうこそ失礼します。クスリと倉庫の鍵はお返ししますね。」

勿論倉庫には倒した羅呪祢高校の生徒を入れたままだった。
そうして私達は羅呪祢を後にした。 


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【千星 那由多】


任務終了後、まだ帰るには時間があったので、俺達は学校に戻ってイデアのスパルタ特訓を受けた。
学校の水上公園の一角に結界だかなんだかを張っていて、誰にもバレずに修行ができるところがある。
日は暮れてきていたので人は少なかったが、万が一、生徒や教師がいても俺たちの存在に気づかないっていう優れた場所だった。

相変わらずイデアのスパルタ特訓はキツイ。
特に俺はイデアアプリ解除の件も言われた。
「オマエの脳味噌カイゾウしてヤロウカ」とか恐ろしいこと言われるし。
寧ろそれで頭が良くなるならそうしてもらいたいところだけど…。
その件のせいで俺へのスパルタは他の二人よりキツかった。
そして最後に何故かイデアに携帯を無理矢理奪われてしまった。 


特訓後、(裏)生徒会室へと戻ってシャワールームで汗や土で汚れた身体を流す。
最近はほぼ毎日基礎訓練などもやらされているので、酷い筋肉痛が続くことは少なくなってきたが、イデアのスパルタ後は違う。
とにかく疲れるしとにかく眠い。
もちろん精神的にも肉体的にも疲れる。
巽と晴生は特訓中もシャワー中もギャイギャイうるさかったけど、こいつらのタフさは本当におかしい。 


羅呪祢から帰ってきた会長はイデアと話しこんでいるようだった。
俺は寝てしまいそうになりながら机の上に突っ伏して話し合いが終わるのを待っていた。 


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【神功 左千夫】


僕は帰るなりまた精神体に戻った。
取り敢えずヒューマノイドに先に聞いてみようかと、訓練を終えたばかりのイデアを捕まえる。 

「イデア、少し話が有ります。」

「ナンダ、サチオ。」

「政府がらみで近々大きなイベントがありますか?」

「アル。」


それから、イデアから告げられたのは地区聖戦、別名ラディエンシークルセイドの事だった。
開催は夏休みのようだ。
僕はイデアには任務以外の伝達は特に必要ないとは言っているが…。

「これは、高校においてはかなり重要な大会なのでは?」

「そうだナ。しかし、サチオには関係ナイだろ?」

「夏岡陣太郎からはこんな話聞いていない。」

「10年に一度シカ開催されないからナ。」

ラディエンシークルセイドとは、どうやら高校の(裏)順位を決める戦いのようだ。
詳細は未定だが、愛輝凪高校の生徒の大学の推薦枠、企業や公務員への就職率には大きく関わってくるだろう。
また、個人成績の高いものは将来も約束されるだろう。
確かに僕には関係ない、高校の順位などに左右されるほど平凡ではないからだ。
しかし、これで悪い順位を取るのも僕のプライドが許さない。
しかも、一番の問題がこれだ。

「予選の最低参加人数は各校10名ダ」

その言葉に、僕はまず、机に突っ伏している那由多くんを見詰めた。

「イデア訓練の濃度を、プラス10倍に。また、詳しくわかり次第教えてください。」

全員に聞こえるようにそれを告げると、地区聖戦についての説明を皆に始める。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


机に突っ伏していると、会長の「訓練の濃度を、プラス10倍に」という言葉を聞いて身体が跳ねた。 


マジか…マジなのか…。
ああ、これ主に俺に対してだろうな。
わかってんだけど、頑張らなきゃいけないことは。

会長が席についたので、俺は顔をあげ、被っていたタオルを肩へとかけ座りなおす。


どうやら夏に地区聖戦というものがあるらしい。
この区域の(裏)生徒会が勝負する的なものだ。
正直そういう大会的なものは学校行事でも苦手なのだが、(裏)生徒会にいる以上参加しないわけにはいかないだろう。
今後のことを想像して胃がキリキリと痛んだが表情には出さないようにする。


「今決定しているメンバーは、僕、晴生くん、巽くん、那由多くん、夏岡陣太郎、弟月太一です。」

もちろん俺も入っているわけだが、夏岡先輩と弟月先輩も入っていることに驚いた。
確かにメンバーが10人となると、先輩たちに参加してもらうしかないか。
だけどこのメンバーの中に三木さんの名前がない。
三木さんの方へ視線を移すと、俯いて肩を落としていた。

確かに(裏)生徒会の一員なのに参加できなのはショックかもしれない。
でも俺は三木さんが戦っている姿はあまり見たくなかったので少し安心した。
力になれないことが辛いのは良くわかるんだけど。
仮に俺が三木さんなら…嬉しいかもしれない。
そんなこと言ったら非難轟々だろうから口が裂けても言わないが。

俺も三木さんと同じように肩を落とした。 


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【九鬼】


今日は彼に会えてよかった。
おじさんに頼んで同じクラスにしてもらったのは正解だったナ。
いつでも彼の行動を把握できる。
それにしても本当に彼は綺麗だった。
あの頃の彼も好きだけど、今の彼はもっと気に入ってしまった。

ま、ボクのことは覚えてなかったみたいだったケド。


「仕方ない、か」

ボクがそう呟いていつも以上にニコニコしていたからか、金髪の背の低い少年が何かいいことがあったのかと尋ねてきた。

「ん?別に?」

ボクはそれに気まぐれに答え、机に広げていた飴玉をひとつ摘み、口へと放り込んだ。
ソファーへと深く座り込み、口の中の飴玉の味を舌先で転がして堪能する。

「そんなことより…みんな、覚悟はイイ?」

周りにいる全員が首を縦に振ったのを確認して、僕は両の口端を上げて笑い飴玉を奥歯で噛み砕く。



「待っててね、愛輝凪高校の(裏)生徒会のミンナ」 





 
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