あなたのタマシイいただきます!

さくらんこ

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isc(裏)生徒会

僕の居場所

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【天夜 巽】


「え!?母さん、腕怪我したの!?じゃあ、僕、当分早く帰ってくることにするね。」


それは、今朝の事だった。
母の手に包帯が巻かれていた。
昨日の夜は母が営む居酒屋は休みで、近所の同業者のところに呑みに行った。
その帰りに転んだとかで…。
本当にいい年なんだから気を付けて欲しい。

今日は(裏)生徒会を早引きさせて貰える様に会長に言わなくてはならない。
会長はそういうところは融通がきくので凄く助かった。


いつも通り那由多と日当瀬と(裏)生徒会室までを共にする。
しかし、ここ最近僕の周りには障害物と言うか、今までのツケと言うか…。

「巽!!今日こそ、サッカー部に練習こいよ!!」

「抜けがけすんじゃねぇ!陸上部が先だ!!」

またか…と、思って溜息を吐く。
俺は(裏)生徒会に入るまでは部活の助っ人をしていた。
大抵どのスポーツもこなしてしまう俺はどこの部も喉から手が出るくらい欲しいようだ。
(裏)生徒会に入ってからはぐらかし続けていたんだけど、どうやらそのツケが回ってきたようだ。

最近は毎日放課後追いかけまわされて、なかなか部室にたどり着けない。
いつもなら、那由多と日当瀬に先に行くようにお願いしてまいてから行くんだけど不運なことに今日は囲まれてしまった。
日当瀬は舌打ちをしている始末だ。

「今日は!」「いや!俺のところ!」と沢山のクラブが周りで騒いでいる。

ヤバい、日当瀬に握った拳が震え始めた。


「あー!!もー!!静かにして!!俺、もう、那由多が入ってる募金愛好会に入ったんだ!
彼は凄いんだよ!球技もできるし、走ったら速いし、水泳もできる!
だからね、俺は那由多とずっと一緒に入れる、愛好会に入ったんだ。
これから、放課後は那由多と一緒に居ることになってるから、無理になったんだ、ごめんね!」


勢いよく捲し立ててから両手を合わせて、小さく頭を下げた。
一瞬辺りがシーンとなったので納得してくれたかと思ったが、俺が顔を上げた瞬間に周りが叫んだ。


「「「そんなの納得できるか――――!!!」」」


そして、次の矛先が那由多に向かった。
那由多ごめん…。 


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【千星 那由多】


(裏)生徒会に巽が入ってから、他の部活からの応援要請がどんどん酷くなってきていた。
見た感じがまるで求婚。
どの部活も巽の力が余程欲しいようだ。
それでも(裏)生徒会に入ってからは助っ人を断り続け、うまくかわしていたようだけど、今回だけは違った。

巽が大声を張り上げる叫んだ言葉に俺は耳を疑った。

募金愛好会とはもちろん(裏)生徒会に入っているということを隠すための架空の愛好会だ。
愛輝凪高校には無数の部活と愛好会などが存在する。
俺達(裏)生徒会は表向きは募金愛好会ということで通していた。

まぁそれはどうでもいい。
俺の血の気が引いたのは、巽が俺のことをあることないこと…いや、ほぼ「無い事」を取り囲んでいる連中に言っていることだった。
言い訳として使われるのは別によかったんだけど、それで血気盛んな周りの連中は納得するはずがなかった。

俺がそわそわと目を泳がせていると、運動部の奴等は次は俺へと視線を向けた。
大勢の男子に見られる趣味は俺にはない。

「おまえが千星か?そこまで巽を唸らせるんだったら、どっちが本当に強いかスポーツで勝負しろ!!勝った方が巽の優先権を得る!!」 

「抜け駆けすんな野球部!巽は俺の部活のモンなんだよ!!」

「ふざけんな!俺んとこだ!!!」

なんだかまずい展開だ。
このままここから消えてしまいたい。


「「「俺達と勝負だ千星!!!!!」」」


校内に響き渡った声にもちろん返事をする気はない。
けれど、俺が返事をしなくても、売られた喧嘩…もとい勝負は断らないであろう奴が二人いる。 


「千星さんがてめぇらに負けるわけねーだろーが!」

「そうだよ!やってやってよ!那由多!!!」


そう、巽と晴生だ。

「いや…つーか……それ全部……」

嘘だと言いたかったが、周りの気迫でそんなこと言える訳がない。
俺が介入する隙もなく話はどんどんと進んで行く。
勝手に部活のキャプテンがじゃんけんをしだし、まずはサッカー部と勝負することになったようだ。
他の部活も勝手に順番を決めていく。
あれよあれよと言う間に、拉致られた宇宙人のように俺は巽と晴生に両腕を掴まれ、運動場へと引きずられていった。

つーか……絶対俺負けるじゃん……。

引きずられていく途中で巽に笑顔でごめんね、と言われたが、絶対こいつ本気で謝ってないなと思いながら、俺は深くため息を吐いた。 


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【三木 柚子由】


凄いことになってる…気がした。


私は放課後、(裏)生徒会に向かう最中に、千星君達を発見した。
しかし、彼らはかなりの数の運動部に囲まれていたようだった。
話している内容からするとどうやら、天夜君を巡っての争いのようだった。
どこの部活も天夜君に練習に来てほしいみたい。

それを左千夫様に報告するために(裏)生徒会室に急いだ。

既に左千夫様はいつも通り座って居て、横にはクッキーさん、そして、イデアちゃんが居た。
私は急いで事の成り行きを左千夫様に報告すると彼は少し難しそうに首を傾けた。

「それは、余り良くない展開ですね。
那由多君では、運動部には勝てないでしょうし…。
地区聖戦を控えている今、巽君が来れなくなるのは困ります。」

そう告げると左千夫様は立ち上がった。
序に美味しそうに辛い飴を頬張っていたクッキーさんの耳を引っ張るように引き摺って行った。

「では、手伝いに行きましょうか。
募金愛好会として、メンバーを減らされる訳にはいきませんので。」


左千夫様がいつものように優しく笑んだので、私の頬は自然と赤くなった。 


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【千星 那由多】


引きずられるままに俺はグラウンドへ立っていた。
足元にはボール。

サッカーはPKで競うということになった。
俺がシュートを決めることができたら勝ちということだ。
しかしだ、愛輝凪高校のサッカー部は全国大会にまで出るという実力の持ち主で、
そのチーム内のキーパーが「鋼鉄の壁」という異名を持つほどにどんなボールでさえも止めてしまうと言われているのを俺は知っている。
そんな奴に俺のへっぽこシュートが止められないわけないだろう。
寧ろゴールポストに入るかさえも自信がない。

「おら来いよ!どんなボール蹴ってこようが止めてやるよ!」

巨体のキーパーの目が俺を睨みつけた。
だけどここで入れなければ巽は(裏)生徒会に来れなくなってしまう…。

心臓が早くなり、蹴るのを躊躇っていると、グラウンドの向こうに会長達が来たのが見えた。
どうやらこの話を聞きつけて見に来たみたいだった。
会長は爽やかな笑顔を俺に向けていたが、プレッシャーにしか感じない。
肩を落とすと、俺はボールを蹴る体勢に入る。

「け、蹴るぞぉ…」

弱い声を漏らすと、一直線にボールへ足を蹴り込んだ。
そのボールはいい感じにゴールポストの右側へと飛んで行く。
威力はもちろんまったく無いが、昔の自分よりはマシな速さだっただろう。
これも(裏)生徒会のおかげか。

キーパーが一瞬「しょぼっ」と言ったような表情を見せ、そのボールへと飛びつこうとする……が。


「えっ!?あれ!?」


キーパーの身体が動かないまま俺のボールはネットへと入っていった。
辺りの取り巻きが静まり返る。
キーパーが前のめりになりながら後ろへと顔だけ振り向いたと同時に、前方へと突っ伏した。


「なにやってんだよー!」


サッカー部の部員がギャーギャーとわめいている。

「いや…なんか、今、後ろに…」

俺も何が起きたのかはわからなかった。
ただ、巽の方へと顔を向けると「やったね!」とガッツポーズをしていたのといつも以上にニコニコしていたので、多分あいつの仕業だとは思う…。 

その後もキーパーは何かに動きを止められているかの如く俺のボールを受け止めることはできなかった。


結局俺はサッカー部とのPK戦に勝てた。
もちろんこれは俺の実力ではないだろう。 


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【天夜 巽】


ゴールキーパーが一歩も動けなかったのは僕の仕業。
瞬時に彼が動きたい方向の地面にクナイを突き刺した。
そして、足を出ないようにする。
間髪いれずもう一つクナイを投げ、地面に刺さっているクナイを弾くと彼には僕のクナイを視界で捉えることは出来なかっただろう。
なぜか知らないが右足が地面にひっついたまま動かない。
そんな感じにしか思えなかっただろう。

サッカー部が喚いている中、次は野球部が挙手をしていた。


「次は、野球部だ…!!!」


……先が思いやられる。


ここは日当瀬にも手伝って貰おうと僕は彼に声を掛けた。
那由多に対することなら彼は首を縦に振るだろう。
皆が那由多に注目しているのをいいことに彼は煙草を吹かしていた。
確かに、皆血気盛んなやつらだから日当瀬が煙草を吸っていることなんて見ても居ないだろう。

「ね。日当瀬、おねがいが有るんだけど…」

「さっきのずるの事か?なら、やらねぇからな。
千星さんはお強い、あんなことしなくてもあんな奴らに負けねぇよ」

「もちろんだよ!でもね…、僕は那由多にはもっと伝説になって欲しいんだ…」

「……どういうことだ?」

ほら、食いついた。
日当瀬は那由多の事になるとめっぽう弱い。
いつも以上にニコニコすると彼は凄く嫌そうに顔を歪めたけど。

「圧倒的な勝利。それは、伝説を生むと思うんだ…。
キーパーが一歩も動けない程のキック力。
エースの球を軽々とホームラン。
ラグビー部を一人でごぼう抜き。
消えるハンドボール…
ラケットから放たれる魔球!!」

取り合えず、外でする部活を並べてみた。
そうすると、彼は活躍する那由多を想像したのだろう、目がきらきら輝いていた。

よし、後、ひと押しだ。


「それには、日当瀬の協力が必要だってきっと那由多も思ってるよ。」


野球ベースへと引き摺られていく那由多を横目に見ながら僕は笑みを浮かべた。
日当瀬は煙草を携帯灰皿に押し込んだ。
そして、彼の携帯がブレスレットに変形したのでどうやらやる気になってくれたようだ。

「千星さーん、俺は貴方を伝説にして見せます!!」そう言いながら彼は走って行った。

一番初めに彼と戦った時にはこうなるとは思わなかったな。

日当瀬と初めて戦った時は僕の惨敗だった。
そして、今は無きブラックオウルの廃墟で戦った時は僕の勝ち。
それは彼が満身創痍で有ったからで最近は引分も勝ち負けも五分五分と言ったところだ。
日当瀬に聞いたら何勝何敗かきっちり教えてくれるけど、僕の方が勝ちが多かったら教えてくれなかったりする。

今までライバルに恵まれなかった僕にとって彼はいいライバルだ。
後はもう少し仲良く出来たら、と、俺は思ってるんだけど…、当人にその気は無いようなので仕方が無い。 


そんなことを思っている間に皆移動してしまったので僕は急いで後をついていく。 


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【千星 那由多】


晴生がなにやら「伝説」がどうだの言っていたのが聞こえた。
その後ろで笑っている巽が見えたが、多分あいつの口車にでも乗せられたのだろう。
本当に…巽は何を考えているかわからないから怖い。

次の勝負は野球。
俺がエースのホームランが打てたら勝利という内容だ。
ホームベースに引っ張られてきたのはいいが、多分これも巽か晴生の力が加わるだろうと予測する。
生きててこのかたホームランなどもちろん打ったことがないからだ。
ちなみにこのエースは中々のやり手で、「プリンス」というあだ名で親しまれている。
その名の通り、王子のようなイケメンだからちょっとムカつく。

ただ、バットに球を当てるのは剣を振っているせいかちょっと自信があった。
まったく関係のないところから生まれる自信だけど。

そんなことを考えているとボールが投げ込まれてきた。
正々堂々としたストライクゾーンを狙った球だった。
性格もイケメンとか結構むかついたが、正々堂々と勝負をしていないのはこっちだったのですぐに罪悪感に変わった。

バットはなんとかボールに当たった、だがそれは投手に目がけて飛んで行く確実にアウトゾーンだった。


「ハッ、やっぱさっきのはまぐれかよ!」


そんな声が取り巻きから上がった瞬間、真っ直ぐ低く飛んでいた球が急に斜め上へと飛んで行く。
まるで急に角度を変えたかのように。

辺りで歓声が沸き上がった。
みんなが大きな弧を描いて飛んで行く球を視線で追いかけている間に俺は辺りを見渡した。
後ろの木陰で晴生が銃を構えて、俺に向けグッと拳を握っている。

ああ…やっぱり…。

俺の打った球…いや、晴生が銃でホームランへと変えた球は校外へと飛んでいってしまった。
静まり返った辺りからポツポツと声が上がりだす。


「す……すげえ……」

「あいつ…マジすごいんじゃねえ…?」


そんな言葉にキリキリと胃が痛んだが、すいませんほんとに許してください。


それからも巽と晴生の手伝いで、俺は陸上やテニスといった勝負全てをクリアしていった。
周りからあがる感嘆の声がどんどんと大きくなる。
ちょっと周りに認められた気がしたが、事がこれ以上大きくなってほしくはない。後々面倒だからだ。
当の巽は嬉しそうにしている。
俺はあいつにいじめられているような気がしてならないまま、死んだ表情で競技をこなして行った。 


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【天夜 巽】


グラウンドの部活はほぼ完全に制覇した、しかし、そろそろ僕も日当瀬も暗記切れに弾切れだ。
そう思っていると木の陰からずっとこちらを窺っていた会長から電信が入る。


“後は任せて下さい。” 


短いそれに、会長の方を向くと笑みを零していた。
そして、直ぐ隣に居るクッキーさんに何やら指示を出していた。
クッキーさんは余りやる気じゃなかった様だけど、最後に会長が耳打ちすると一気にテンションが上がったようだった。
なんだかんだ言ってあの二人は仲がいい。
僕と那由多みたいな関係に近いのかな…? 


「次は僕たち、卓球部が相手だ!!!」


どうやら、この後は体育館の部活動と争うことになる様だ。
当の那由多はズルしていることが気がかりなのか死んだような顔をしていたので声を掛けに行く。

「ごめんね、那由多。
こうでもしないと、俺、毎日追いかけられそうだったからさ。」

低姿勢で両手を顔の前で合わせて、頭を下げた。
流石にそこまですると、那由多も無碍には出来ない様子で、「気にするな」と、言ってくれた。

那由多とこうやって話せるようになったのも、(裏)生徒会のお陰だ。
あの、神功左千夫会長が俺を(裏)生徒会に誘ってくれたから。
そうじゃなかった俺はレゲネに連れていかれて、ブラックオウルのメンバー同様、政府の管理下に置かれることとなっただろう。
そして、那由多とは一生口も聞かなかったと思う。


それを阻止してくれたのが、神功左千夫。
愛輝凪高校(裏)生徒会長だった。
彼はあの、整った容姿に似合わず敵には容赦ない。
そして、強い。いつも二、三手先を行く行動に何度も敵わないと思った。
しかし、仲間で有ると心地よい。
自然と安心感を与えてくれる存在だ。

そんな会長の苦手なものはオバケだと知ったのはつい最近の事だった。


体育館に着くと那由多にラケットが渡される。
卓球部の対決内容はラリーを途切れさせた方が負けというものだった。
クッキー先輩が直ぐ近くに居るので、彼が何とかしてくれるのだろう。
日当瀬と一緒にその様子を見守った。 


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【九鬼】


「頑張ってネ~なゆゆ♪」


なゆゆに声援を送ると、じとっとした視線をこちらへ向けた。
副会長も手伝うんですか、と言いたげな目だった。
あまりノリ気はしなかったケド、左千夫クンにあれだけ頼まれたらやるしかないよネ!!

「サーブは君からでいいよ」

相手の卓球部が余裕そうな表情でなゆゆへ告げる。
そんな余裕かましててしいのかな、目の前にいるのはなゆゆだけど、本当に戦っているのはボクたちだと言うのに。

「じゃあ、いきます…」

なゆゆのやる気の無さそうな小さい声が響いた。
サーブを打ったと同時にボクは相手側へと飛んで行くピンポン球を見つめた。
もちろんなゆゆが今打ったのは明らかに普通の球。 


「さっさと決めさせてもらうから!」


ピンポン球が卓球部のラケットに当たった、その瞬間にボクはイタズラに笑った。

ボクの能力で球の質量を変える。
球がラケットに当たるとなゆゆの元へ飛ぶことなく、卓球部側のテーブルに重そうな音を立てて落ち、ゴロゴロと転がった。

周りのみんなも目を見開いた。
卓球部が「なにかがおかしい」と思ったのか、ピンポン球を手に取るが、それはすでに普通のピンポン球に変化している。
頭にはてなマークが飛んでいるのがわかる。
ピンポン球となゆゆの顔を交互に見つめていた。


「きゃーなゆゆカッコイー!!
重いサーブを相手は打ち返すことさえできなーい!抱いて―!」


ボクがそう声を上げると、周りからも歓声が上がった。
卓球部は釈然としないようだったが、これはこれでちょっと面白いかもしれない。

ズルをしてなゆゆの圧倒的勝利。
こういうのは彼は嫌いそうだ。ある意味なゆゆをいじめてるようなもの。
でも左千夫クンに頼まれたんだし、別にボク悪くないもんネ。

引き攣った笑いで周りの歓声にたじろいでいるなゆゆに、舌を出してピースサインを向けた。 


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【天夜 巽】


副会長の能力は凄い。
こんな人物に勝てたのは未だに信じられなかった。
リコール戦闘は僕がブラックオウルを抜けて、(裏)生徒会に入ってから初めての大きな戦闘だった。
他にも戦うことは少しあったけど、あれだけ苦戦したのは初めてだった。

そして、僕の自己治癒力の力が那由多にも使えると分かった日。
多分、特殊の能力同士が有っているんだろうな。
他の人にも試してみたけど、回復できるのは那由多だけだった。

最後は会長の機転で勝利できたらしいけど、本当に危なかった。

でも、仲間になってみたら、とんでもなく陽気な人だった。
そして、なぜか会長の扱いが酷い。
会長は何か準備をしに行ったのかこの場所に居ない。

そして、クッキーさんのおふざけが始まった。
バトミントンに関してはまた球の質量を変えたようだった。
那由多のサーブは秘儀!超重量サーブとか周りで名前を付けられていた。

バスケットボールに関しては明らかにボールが小さくなって、ゴールが大きくなった。
しかし、その後直ぐ戻るので皆目を擦っていた。
敵の時は反対にボールが大きくなってリングの輪が小さくなった。
アーチェリーも弓道も一緒だ、的の大きさを変えてしまって那由多を勝利させていく。

空手、剣道、体操に関しては床が手みたいになって、相手を掴んでた。
ほんの一瞬の事なので僕以外はきっと見えないんだろうけど。
剣道に関しては防具も重たくしていたようだった。
そうして、室内のクラブも那由多の圧勝で幕を閉じた。


そうして、クッキー先輩は力尽きた。

「ボ、ボクはここまでだ…後は、任せた…ヨ」

勿論、皆白々しい視線を送るだけで生徒会メンバーは誰も助けてくれない、乗ってもくれない。
いつもの事なのにおかしくて肩を揺らしてしまう。
どうやら、クッキー先輩は能力を使い果たしたらしい。
いつもはその物質に触りながら行っているから触らなくて行うのは能力を消費しやすいのかな。
後は、馬術部と水泳部か…。

那由多は先に馬術部に引っ張られていくようだ。 


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【千星 那由多】


大体の部活は終わった。
もうすでに色んな部活の奴等には「脅威」としか思われていない。
いつの間にか取り巻きも増え、女子からの声援まで飛ぶ始末だった。
これはちょっと嬉しい。
何かズルをしているのではないかと言う奴ももちろんいたが、俺の凄さに恐れをなしている生徒の方が多いようだった。
確かにこの能力を使ったズルい行為は能力者ぐらいにしかわからないだろう。


次は馬術部だった。
俺は馬になどもちろん乗ったことがない。寧ろ乗ろうと思ったこともない。
こんな部活があったことさえも知らなかった。
好きな馬を選べと言われたが、どれも俺に乗りこなせるとは思えない。
悩んでいると、そこに天然パーマの生徒…神功十輝央先輩が現れた。

「すごいね、千星君。聞きつけて来ちゃったよ。
よかったらボクの馬乗ってくれていいよ。乗り方わかる?」

神功先輩は馬術部みたいだった。先輩専用の馬があるらしい。
それは真っ白い白馬で、毛並みも顔つきもとても綺麗な馬だった。
この馬に神功先輩が乗るとか…白馬に乗った王子様か。
俺と似たような顔をしているので想像するとちょっと吹いてしまいそうになったが。
乗り方はもちろんわからなかったので、先輩に教えてもらうことにした。

「はやくしろよー」 

馬術部の連中から声がかかったので、馬に跨ったまま、神功先輩に綱を引いてもらい外へと出た。
外へ出ると、大勢の観客の声が響き渡る。
本当に俺このままだと「伝説の男」になってしまう…。
これか、これが晴生が言ってた「伝説」の意味か……。

緊張で動悸が激しくなり、眩暈までしてくるが、耐えるように息を飲んだ。

馬術部の内容は多種多様な障害物をクリアしていく、障害飛越競技だった。
馬に乗ったこともない俺がそんなことできると思っているのだろうか…
いや、俺は周りのみんなには馬さえ乗りこなす最強の男として見られているんだろう。

次は誰の能力が使われるのだろうか…。

そんな事を考えながらスタートラインに立つ。
合図と共に俺が何もしなくても馬は地を蹴り走り始めた。
相手は馬術部のキャプテン。
どうやらエースは神功先輩だったらしいが、先輩は断ったようだった。

神功先輩に借りた馬はめちゃくちゃ速かった。
もともと先輩の馬も速いんだろうけど、それにプラスされた能力のせいかありえないくらい速い。
そんでもって障害物なんかそこに無いかのように軽々とクリアしていく。
障害物を飛び越える度に俺の身体は馬から離れそうになり、乗り心地も最悪だ。
振り落とされないように捕まっているのが必死で、前さえも見れていない。


「ゴール!!!!」


俺はその声でコースを周りきったことに気づいたが、酷い吐き気に襲われ白馬にしがみ付いたまま、ぐったりと身体をうなだらせていた。


「また千星の勝ちだぞ!」

「すげええ!!!」


歓声が沸き起こるが、もうそれどころではない。
半泣きになりながら俺は神功先輩に馬から降ろして貰った。 


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【天夜 巽】


どうやら、会長が十輝央先輩の馬に、十輝央先輩が乗っている幻術を掛けていたようだ。
会長が「十輝央兄さんの馬は賢いので大丈夫かと思いますが、念のため」と、微笑んでいた。
どうして会長たちも手伝ってくれるのかと木の上で佇んでいる彼に聞いてみると、僕の力が必要だからと言ってくれた。
これはこれで少し嬉しかったりする。

十輝央先輩だけが純粋に那由多と自分の馬を労っていた。
なるほど流石会長のお兄さんなだけあって周りには流されないようだ。
血は繋がっていないと分かっているのだけど、同じようなオーラを感じてしまうのは俺だけかな。

そうこうしているうちに最後に残った水泳部に那由多は引っ張って行かれた。
那由多はきっと水着なんか持ってないので貸して貰うことになるのだろう。
無理矢理脱衣室に押し込まれている最中だ。 

会長が、「もう、仕掛けは終わってますので」と、言っていた通り、室内プールの中は甘い香りがした。
そして、既に三木さんがプールの中でスタンバイしている。
皆には三木さんの姿は見えていないようだ。

当の那由多はと言うと10mの場所の飛び込み台へと引き摺られる様にして連れて行かれている。 
そう言えば、那由多高所恐怖症だもんな。 

三木さんは相変わらずの様子で、上に居る那由多に飛び込んで、と、手招きしている。
それに那由多は見えているのか居ないのか。
飛び込み台ギリギリに立たされたままガクガクと震えていた。 


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【千星 那由多】


ありえない。
俺は泳げない上に高所恐怖症だ。
ここから飛び降りて泳ぐなどどちらも恐怖で身体が震えて動かない。
競泳水着も恥ずかしいし周りの目が気になって仕方がないので、どうしても前かがみになってしまう。
横には体格のいい水泳部員がやる気満々で準備運動をしていた。


「う……む、無理……」


俺の悲痛な声は周りの観客たちの声でかき消された。

「こんなひ弱な身体してる奴に他の部が負けたとか…ありえねえな!手加減はしねえぜ!」

隣にいた水泳部員が白い歯を見せて笑った。
そんな爽やかささえ今はどうでもよかった。

笛の音が鳴り響く、それと同時に水泳部員は全員綺麗に飛び込んだ。
下で三木さんが手招きしているのは見えてはいたが、それさえも悪魔の手招きのように見えてしまい中々飛び込めない。
次はどうやら彼女が幻術を使ってくれるんだろう…だけど…。
下をちらりと覗き込んだ。
俺の大事な部分がヒュンと縮こまる。


ほんともう……無理!無理無理無理いいいいいーーー!!!


目を硬く瞑った所で、後ろから鞭の音が高らかに響き渡った。
恐る恐る振り向くと、そこには悪魔…いや、イデアが鞭を片手に佇んでいた。

「ひいいいいい!!!」

俺の叫びは観客には届いていない。
もうすでに周りは幻術で現実が見えていないんだろう。


「早く飛ビ込メ」


そう言ったイデアが鞭を俺へと振りかざす。
ここから飛び降りるよりも、裸に叩き込まれるであろう鞭の恐怖が勝り、俺は慌てて飛び込み台から落ちるように飛び降りた。


う、…あああ怖い!!怖い怖い怖い!!!!


あっという間に落下し、足から無様に着水するが、思った以上の水深に眉を顰めた。
水上にもあがれずに惨めにもがいていると、三木さんが俺の手を掴む。

「千星くん!」

「がほッ…み、みぎざぁあんん!!」

彼女は俺をおんぶするように背中へと乗せるとそのまま泳ぎ始めた。
正直この時、三木さんのスクール水着姿が気になって仕方なく、俺は下半身を背中に当てないようにするのに必死になっていた。
彼女の身体にしがみ付くような体勢はさすがに…クる!!!!

周りの水泳部員たちは何故か同じ場所をもがく様にジタバタとしていて、全く進めていない。
溺れているとかではなさそうだ。
これも多分幻術の力なんだろう。


三木さんに担がれたまま、俺は無事に50mを泳ぎ…いや、おんぶされきった。


俺をプールサイドに捕まらせると、三木さんはそのまま困ったような笑顔を向け、プールから出ていってしまう。
水に濡れた彼女の身体のラインを見てしまった俺は、自ら水の中へと真っ赤になった顔を突っ込んだ。
なんで水泳に三木さんの協力をさせたんだ…。
いいものは見れたけど!!!

色んな感情と葛藤していると、周りの奴等は幻術が解けたのか、辺りから一気に歓声が沸き上がった。


「千星の全勝だ!!!」

「あいつ怪物じゃねえ!?」


俺はその歓声を聞きながらも、自分の下半身を沈めるのに必死だったことは絶対にみんな…いや、会長には言えない。 


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【天夜 巽】


プールは三木さんの幻術で終わったらしい。
僕には那由多が殆ど水しぶきを上げることなく着水する映像しか見えなかった。
しかも、それから華麗にプールサイドまで泳いで行った。
間違いなくあれは那由多では無い。

一通り運動部を回り終わったので僕は安堵の肩を落とした。 
しかし、思った通りの流れになった。


「すげぇ…、あの、千星とか言う奴すごくないか…」

「ああ、俺、あいつが欲しい」

「お、俺もあいつが欲しいぃぃぃぃぃぃ!!!!!!」


俺に続いて次は那由多に求婚が始まった。
まぁ、こうなることは分かっていたんだけど。
飢えた獣のように那由多に飛びかかる運動部員の間を割る様に俺は立ちはだかった。

「あのね、残念だけど、那由多は一対一じゃないと強くないんだ。
しかも、誰かの為じゃないと駄目なんだよ。」

さらに伝説を伝説で固めて行く。
運動部がブーイングを起こしたがそこは恐ろしいほどの微笑みを浮かべると静まった。
皆僕が怒ったら恐ろしいの知ってるからね。 

「本当かどうか確かめたい奴は今度那由多借りに来てもいいよ?
その代わりはもうそのクラブには絶対行かないから。
また、時間があったら手伝うってことで大目に見てくれないかな?
フォーメーションとかはビデオに取って渡してくれたらちゃんとするからさ?」

そして、一番前に居た、サッカー部の一年キャプテン翼と無理矢理握手をした。


「これからもよろしくね、運動部のみなさん。」 


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【千星 那由多】


全ての部活との決着が済み、全戦全勝した俺は愛輝凪高校の「伝説の男」となった…。
それはもんのすごく不本意だったが、結果的には良かったということにしておこう。
もちろんもう二度とこんなことはやりたくない。

巽もどこの部活に取られることもなく、最後は無理矢理な握手で幕を閉じた。

巻き込まれたのは正直嫌だったけど、巽はもうこれで安心して(裏)生徒会に専念することができるだろう。
あいつはそれでもたまに他の部活の手伝いをするとか言っていたが、そういう所は本当にお人好しだ。
まぁそんなところが俺が巽を「親友」として誇りに思っている部分なんだけれど。

俺にはない物をあいつは全部持ってる、だからたまに憧れたり、嫉妬してしまったりするんだろうな。

暫くは有名人になってしまうかもしれないが、多分普段の俺を見たらみんな失望するに違いないので、今後のことはあまり考えないでおくことにした。 


水泳で冷えた身体を温めるために(裏)生徒会室へと集まった。
今日は任務がなかったようなので会長もこちらを手伝ってくれたんだろう、今はみんなくつろいでいつものお茶会と化している。
俺だけが疲労困憊で、ものすごく労働させられてしまった気はするが。
暫く話し込んでいると、巽が急に席を立った。


「忘れてた!!今日俺がお店開けなきゃいけないんだった!」


たまに家の居酒屋の手伝いで早く帰ることはあったが、今日は少し違ったみたいだ。

「まだ早くないか?かーちゃん準備中だろ?」

「母さん怪我しちゃって…下準備とかもあるから早く帰らないと…」

それは確かに急がないといけない。
居酒屋はほぼ巽の母親一人で切り盛りしている。
その母親が怪我をしたということは、巽の手伝いも倍になるということだ。
急いで支度をしている巽を見て副会長が質問を投げかけた。

「巽の家って何かお店やってるの?」

「こいつの家居酒屋やってるんですよ」

俺の返答に副会長は暫く何かを考えるような表情をしたあと、企んだような笑みを零した。
絶対なにか思いついたに違いない。


「ママが怪我して忙しいなら、ボク達も手伝いに行こうヨ」


そらきた。
別に手伝うのはかまわないんだけど、副会長は巽のかーちゃんの恐ろしさを知らない。
暫く会っていないが、思い出すだけでも俺は身震いしてしまう。

「いや…やめといた方が……」

疲れていたこともあって、さすがにもう家に帰りたかった。
そう言う意味合いも込めて副会長を止めるが、帰ろうとしていた巽は嬉しそうに食いついた。

「いいんですか!?」

しかし、副会長は「ボク達で手伝いにいこう」と言った。
この判断は俺達で決めれることじゃない。


全員が会長の方へと視線を移した。 


----------------------------------------------------------------------- 


【天夜 巽】


皆が一斉に会長の方を向くと、少しだけ微動した後にいつもの笑みを浮かべた。
どうやら、大丈夫なようだ。

「構いませんよ。
暫くはラディエンシークルセイド、地区聖戦の準備で政府も忙しいようなので大きな任務もないでしょうし。
学内外の争いも落ち付いてますしね。」

会長らしい回答に俺は笑みを浮かべた。
会長はこういうところは融通がきくので非常に助かる。

お茶会も実は強制参加じゃないらしい。
那由多は知らないようだけど。
基本は放課後任務が有るかどうかを(裏)生徒会室に聞きに行く。
そして、なにもなければ解散、なんだけど、会長の趣味でお茶会が始まる。
那由多が居るし、居心地が良いので俺もずっと居るんだけどね。

結局イデアちゃんに何かあったら連絡をいれて貰うと言うことになり僕たちは全員、母が経営している居酒屋へと向かった。
そう言えば那由多が来るのは久々だなと思いながら、表では無く、裏の勝手口から中へと入って行く。
その瞬間僕は伏せた。


「ただいまー。っと。…母さん、紹介するね。僕が今、お世話になっている愛好会の皆。」 


扉の柱におかえりと書いた包丁が突き刺さる。
これはいつもの事だ。
それを見越して僕はしゃがむようにして避けたんだけど、後ろに居た那由多に刺さりそうになったらしくて尻もちをついていた。
そう言えば、他の皆に言うの忘れてたな…。
僕の母さんはスキンシップの仕方が他の家とは少し違うことを。

那由多が来ていたころより、更にスキンシップが激しくなっているからなぁ。
後で言っておこうと思いながら、奥から出てきた母に僕は(裏)生徒会のメンバーを紹介していった。 


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【千星 那由多】


会長が了承してしまったので、結局俺達は巽の居酒屋の手伝いをすることになった。
三木さんはこの後副会長の仕事があったようなので、イデアと一緒に(裏)生徒会室に残り、むさ苦しい男達5人で巽の家へと向かう。


ああ…もうみんなどうなっても知らないぞ…。


巽がドアを開けると、目の前にいた巽がいきなりその場にしゃがみこんだ。
その先に視線を向けると、包丁が飛んできたのが分かり、俺は即座に後ろへ倒れ込むように尻もちをついた。
前より巽の母親の「おかえり」スキンシップが酷くなっている。
俺が来ていたころは包丁ではなくおたまが飛んできていたはずだ…。
後ろにいた会長達も一瞬何が起きたのかわかっていなかったようだ。

晴生に起き上がらせてもらうと、奥から巽の母親が出て来たのが見えた。
巽と顔はそっくりで、後ろに長い髪を一つ纏めにしている。
見た目は変わっておらず、相変わらず若々しい。


「おーあんたらが募金愛好会の人達ねー!イケメン揃いじゃねえかー!」


そして相変わらず言葉遣いが男っぽい。

「お、お久しぶりです、豊子さん」

「なゆたー!おまえ相変わらず天パだな!!もっふもふ!!」

そう言いながら俺に抱き着くと、髪の毛をわしゃわしゃと犬みたいに撫で繰り回す。
俺は何故か巽のかーちゃんに物凄く気に入られている。
いつも会うと天パをいじられるのにももう慣れてしまった。
そして、ここからが俺の想定外となる。 

頭を撫でていた手が急に腰に周ったのがわかった。


「え?」


そのまま俺を掲げ上げたかと思うと、バックドロップするような形で俺を頭から地面へと突き落とした。
一瞬の出来事で、頭がぐるぐると回り、視界に星が飛んだ。

「っとー…高校生になってちょっとは強くなったかと思ったけど相変わらずだな、な・ゆ・た!」

仰向けにひっくり返っている俺の鼻先を突きながらにこやかにほほ笑んだ。
この笑顔がまた巽にそっくりなのが恐ろしい。

にしても…かなりかーちゃんのスキンシップレベルが上がっている。
いきなりバックドロップとか聞いてねーんだけど!!
前々から急に脅かされたりとかはあったけど、意味のない攻撃は反則だろ…!


なんて、本人に向かって言えるわけがなかった。 


----------------------------------------------------------------------- 


【神功 左千夫】


「アタシは豊子ってんだ、ここでは豊子さんと、呼びな!!」


想像以上の物体が出てきた。
僕の中にある母親と言う知識の中に彼女は全く当てはまらなかった。
正しく珍種。

僕はマジマジと巽君の母親の豊子…さんを見つめていると那由多君にバックドロップを繰り出していた。
隙の無い身のこなしだ。

次に彼女は僕の前にやってきて手を差し出してきたので、いつもの笑顔を拵えながら握り返すと…投げられた。
勿論そのまま地に伏すと痛そうなほど本気で投げられたので体を捻る様にして両足で着地する。
どうやらさっきの那由多君に繰り出した技はかなり手加減していたようだ。

「ほう。顔に似合わず結構やるな、あんた。名前は?」

「じ、神功左千夫です。」 

「左千夫か、覚えて置いてやる。」

その後の笑顔は巽君と一緒だった。
しかし、交戦度が全く違う。
その後は晴生君に手を出していたが彼は中々握ろうとしなかった為、「いまどきの高校生は握手もできないのかい!」と怒られていた。
そして、握手をしたと同時に僕と同じく投げられていた。
彼は転がったが綺麗に受け身を取っていたので無傷だ。
そして、巽君の母の恐ろしさを知ったようで少し青ざめていた。

次は九鬼に手を出す。
勿論九鬼は抵抗なくその手を握り返していた。
きっと九鬼も投げられる…と、思ったがそのまま二人は動かなかった。

いや、動けないのだ。
二人ともニコニコ見つめあいながら攻防戦が行われている。
少しでも油断してしまうと死んでしまうかもしれない高度なものだ…。

「もう!母さん!早く仕込みしないとお客さん来ちゃうよ!!」 

巽君の雰囲気を読まない一言で場の険悪さは無くなった。 

「やるね、アンタ気に行ったよ。」 

「豊子ママも凄いね、ボク気に行っちゃった。」 

二人とも笑っているのに、笑っていなかった。
とんでもないものを見た気がして僕は喉を動かした。
いや、なにより母親とは凄い物体だ…。

今日は接客だと思い髪を上げてきたのは正解だったかもしれない。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


巽のかーちゃん、豊子さんのの挨拶が終わると、俺達はエプロンを渡され店へと通された。
手伝いをしに来たと言ったらめちゃくちゃ喜んでもらえたけど、また抱き着かれそうになったので、会長の後ろに隠れてなんとか回避する。 

巽はもちろんキッチン、俺は何もできないだろうけどその補佐で皿洗い担当。
会長、副会長、晴生は接客担当ということになったが……晴生は大丈夫なんだろうか。
案の定、豊子さんに、「おまえは前髪が邪魔だ!」と怒られながら無理矢理ピンで止められ、普段見せない左目を晒されている。
あいつは俺でも前髪を上げられるのを嫌がるが、さすがに豊子さんには抵抗できなかったみたいだ。
恐るべし、巽のかーちゃん。 

そして、俺はもう一つこの「手伝い」で怖いことがあった。
豊子さんももちろん怖いんだけど、それよりも今日この厨房に立つ人物。 


そう、巽が怖い。 


会長達は豊子さんからメニューの説明などを聞いている間、俺は巽と二人で厨房に立っていた。
手際よく下準備をしていく隣で、俺はサラダ用の野菜を切ることになる。
この間の林間学校でもそうだったが、俺はキュウリが切れる程度の包丁捌きだ。
形が疎らになってはいけないと思い、集中しながら包丁を見つめる。

その時に声がかかった。


「……那由多、本当に不器用だね」


その声のトーンはいつもと変わりなかったが、巽の顔を見るのが怖い。
多分笑ってるんだと思うが、その笑顔が恐ろしいのは百も承知だ。

「わ、悪い…」

そのままキュウリを切るのに集中しようと、口数少なく謝る。
ここからが俺の精神的苦痛の始まりだった。 


----------------------------------------------------------------------- 


【日当瀬 晴生】


なんつーか、前髪をピンで止められちまった。
普段なら反抗すんだけど、なぜか出来なかった。
これが母親と言う奴なのか?

初めは下準備をキッチンで一緒に手伝ってたんだろうけど。
九鬼の野郎はスパイス多用で、俺と会長は食材に対する金銭感覚がおかしいと追い出されてしまった。
そして、千星さんと天夜が厨房に立っている。
千星さんと一緒に仕事なんてうらやましい限りだぜ。
そうこうしているうちに開店時間となったようだ。
今日は早割、時間までに入れば飲み物が安くなる日だったようで開店から意外に多くの客が入ってきた。

勿論、俺は接客なんか出来ないのでぶっきらぼうに注文を聞いていく。
そして、それをオーダーしようとして厨房に戻ると中から声が聞こえた。


「本当に使えないね、那由多。レタスも満足にちぎれないで良く人間としてやっていけるよね。」

「その包丁さばき、運動音痴なの丸わかりだよ。」

「だから違うって、そんなことも出来ないから成績も悪いんだよ。」


な、なんだこの悪意の塊のような悪口は…。
これは間違いなく天夜の声だ、そして、虚ろに千星さんが頷いているのが聞こえる。

「おい、テメェ!!天夜!!千星さんになにい……って――――!!!!?」


俺はその時恐怖した。
いつもの天夜の筈なのに天夜ではない。
そこには間違いなくキッチンの鬼が居た。
人間のなりをした鬼が……!!! 

天夜がこっちをみていつものように微笑んだが、その顔にははっきりと「お前も餌食になるか」と、書いてあった。
俺が硬直した瞬間に包丁が飛んできて厨房の柱に刺さった。
間一髪で避けれたので良かったがそのままだと頭に刺さっていた。

「晴生だったっけな?ちょっと来い、あんたには接客つーもんを基礎から叩きこんでやる!!」

そのまま俺は奥へと引き摺られて行かれた。
取り合えず、天夜と言う名前がつけば俺にとっては天敵のようだ。 


----------------------------------------------------------------------- 


【九鬼】


巽のママは中々パワフルな人だった。
ちょっと落としにかかろうかとも思ったが、彼女はボクのアピールには屈しないだろう。

店は開店から老若男女問わず、常連さんなどでいっぱいになった。
料理は巽が作ったカレーしか食べたことがないが味は大体想像がつく。
それにプラスされ、ママの人柄もあるのだろう。
入店してくる人は絶対ママに挨拶をしていた。

「すいませーん注文いいですかー」 

「はーい♪」

接客なんかはしたことはなかったが、中々楽しい。
かわいい女の子もいっぱいいるし、度々手伝いに来てもいいかもしれない。

「レモンチューハイ二つ…っと、おねーさんキレイだネ♪彼氏いるの?」

「いないに決まってるじゃーん」

「えーじゃあ狙っちゃおっかナー♪」

もちろんボクは女性との交流は欠かさない。
注文時に必ず女性であれば年齢問わずに話しかける。
ママは交流してくれるなら許されるのか、特に注意をしなかったが、左千夫クンにはすれ違いざまにお客さんに見えない所で足を何度も踏まれた。
そんなことをしながらも爽やかな笑顔を振りまいている彼に、女性客は全て持って行かれる。

店のほとんどの女性客はお酒のせいではなく、彼を見る度に頬が赤らませていた。
ちなみに男性客も彼を女性と勘違いしているのか、何度も「ねーちゃん」と呼んでいる。

すれ違い様、左千夫クンに「ねーちゃん♪」と呟いたら、膝に蹴りを食らわされたのを、周りは知る由もない。 


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【神功 左千夫】


どうして、「ねーちゃん」なのだろうか。
僕は今日はちゃんと髪を纏めてきた筈。
いや、もし纏めてないにしてもこれだけ喋ったら男だと分かる筈。

しかも、無遠慮に尻を触られる。
気持ちのいいものではないが、別に男だから気にはしない。

と、思っていたら豊子さんが客を怒っている。
そして、触らせる方も悪いと僕まで怒られた。
な、なんだいったい。

ビールサーバーでグラスに注いでいたら豊子さんから注文が飛んでくる。
かんざしの様なものに注文の用紙が刺さって飛んできた。
それを僕は指で挟むようにしてキャッチする。
なるほど、巽君がよく鍛えられている訳が分かった。
彼は学校ではクラブで鍛えられ、家では豊子さんに鍛えられていたのだ。
中でも外でもこれだけ鍛えられて居れば向かうところ敵なしだろう。

うっとおしい九鬼に一発お見舞いし。

オーダーをこなしてから、空になったグラスを那由多君のところに届けに行く。
すると、那由多君は今にも倒れそうなほど青ざめていた。


「どうしました那由多―――」

「ほら、また、芯が入ってる。
ホント、クズ。
犬以下だよ那由多」


……これは巽君の声。
僕は那由多君から巽君へと顔を上げるとその表情に恐怖した。
彼は笑っていたが笑っていなかった。
鬼が居る、ここには鬼が居る。

そのままくるりと引き返すと、女の子とおしゃべりしている九鬼を笑顔ではぐらかしながら連れてくる。
そうして、那由多君と引き換えに巽君の横に投入してやる。

鬼同士仲良くやって貰おう。
それしか、那由多君を助ける道は無い。

もう、ラストオーダーも過ぎて後は片付けるだけだ。
僕はなにも言わず、那由多君の頭をポンポンと撫でた。
明日からは、日替わりで何人か派遣することにしましょうかねぇ。 


----------------------------------------------------------------------- 


【千星 那由多】


巽は居酒屋の厨房に立つと人が変わる。
俺に容赦なく酷い言葉を投げつけ、それが大体合っているので俺も反抗ができない。
だからこいつが厨房に立つときの手伝いは嫌なんだ…。

会長に助けられてからは副会長が担当を変わってくれた。
お互いニコニコしていたが、それから二人がどうなったかは知らない。


今日は俺達が手伝っていたため、ラストオーダーも早めると、客も少なくなってくる。
残っているのは酔っぱらった常連さんぐらいだったが、豊子さんにいつものことだから気にするなと言われた。

「おつかれーみんな頑張ったな!今日お客多かったから助かったわー!!」

煙草とビールを片手に豊子さんが俺達に笑顔を向けた。
そして巽に指示を出してまかないを用意してくれる。
ずっと忙しく動き回っていたため、食事をとれていなかったから助かった。

料理を作ったのは巽だったが、出されたものはめちゃくちゃうまかった。
昔より格段に腕もあがっているし、厨房での豹変が無ければ巽はいい旦那になるだろう。
巽が席を外したのを見計らって、豊子さんが俺達が座っている席へと近づいてくる。

「ほんとありがとねー…。
巽の奴、手伝いも別にしなくていいのに、アタシ一人なもんだから親子なのにいっちょ前に気使いやがるんだよ。
でも、ま、最近ハマれるものもできたみたいだし……あんたたちみたいにいい仲間ができててよかったわ」

その笑顔はとても優しかった。
隣の常連さんが「泣けるねー!!」とか茶々を入れてくるのを笑いながら交わしている。


巽は父親がいない。
詳しく聞いたことはないが、俺が巽と知り合った時にはもうすでにいなかった。
あいつが話したなら聞こうとは思っていたが、巽は一言も「父親がいない理由」を喋ったことはない。
というよりも、多分気にしていないんだと思う。
それでもあいつはいつも元気だし、そう言った家族の問題はひとつも口に出さず、愚痴なども零したことはない。
そういう明るさや前向きさは、母親、豊子さんあってのものなんだろう。

俺も豊子さんにつられて笑顔を零すと、豊子さんが驚いたような顔をした後また頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。

「那由多…そんな風に笑えるなんてビックリしたじゃねーか!
……あんたも同じで色々変わったんだね、いっつも人生つまんなさそうな顔してたのにさぁ。
なーんかちょっと複雑だよ母親としては!
そんなふうにたくさん笑いな、そんで泣け!少年は大志を抱くもんだろ? 」

その言葉に少し恥ずかしくなってしまった俺は俯いた。
確かに俺も中学時代からは少しは本気で笑えるようになったかもしれない。

「豊子さ……ヘブッッッ!!!!」

感傷に浸っていた俺は、頭を掴まれたまま、机へと勢いよく押し付けられる。
目の前に並んでいた料理からは外していたのはさすがというかなんというか……。
いや、とにかくいきなりこういう事をやるのは巽にだけにしてほしい。


「ま、弱いのは変わってないけど」

「……そうですね……」


色んな意味で涙が目尻に溜まった。 


----------------------------------------------------------------------- 


【天夜 巽】


なぜか分からないけど途中から隣に副会長が立っていた。
俺は厨房に立つと人が変わる、らしい。
自分では自然体なので良くは分からなかった。

そう言えば那由多が青ざめていたような、居なかった様な。
僕が流しで後片付けをしていると母さんの笑い声が聞こえてきた。


僕はこの声を聞くのが好きだった。
ずっと、母一人で育ててきてくれた彼女に僕はなにも返せていない。
かなり、好き勝手やらせて貰ってる。
母さんはもっと好き勝手やれって言うけれど。

母さんが那由多を褒める声は丸聞こえで少し笑ってしまった。
僕は熱いお茶を手に席に戻る。


初めは半信半疑で入った(裏)生徒会だったけど僕にはもう、無くてはならない場所になっている。
ここに居て楽しい。ここに居たい。そう思える初めての場所だった。

「どうしました巽君。」

物思いに耽っている僕に会長から声が掛る。

「いえ、これからもお願いしますね、会長。」

そう告げると彼はいつものように微笑んでくれた。


次の日からうちの居酒屋はイケメン店員が居る居酒屋として大繁盛した。
びっくりするくらいお客さんが増えたので会長が毎日助っ人を送り込んでくれてとても助かった。
母さんも皆を気に行った様子で忙しい時はバイトに来てほしいと会長に頼んでいた。

会長も愛好会のイベントが無い時は貸し出しますよ、と、快く了承してくれたようだ。
常連さんも新しく来た三木さんにメロメロの様子だ。
那由多と日当瀬だけが凄く嫌そうな顔をしていたことは秘密だ。


こうして呑み所あまやの危機は(裏)生徒会によって救われたのであった。 





   
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