駄々甘ママは、魔マ王さま。

清水裕

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第44話 ヨシュア、ひとさらいに遭う。

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 神様から、フタツメーノ王国、ミツメーノ王国と順番通りに旅をするように言われ、目標が出来た僕はファンロンさんと騎士の人が待っている教会の入口に向かって歩いて行く。
 ちょっと待たせちゃったかな? ファンロンさんはきっと、お腹減ったアル~。って言ってるだろうなー。
 そうだと思うから、お城に戻る前に屋台で色々食べてみようかな? 僕も屋台なんて初めてだから緊張するなー……。
 上手に食べれるかなぁ? そう思いながら僕は教会から出る。
 だけどそこには、ファンロンさんも騎士の人も……いなかった。
 ……右を見て見る。だけど、2人は居なかった。左を見て見る……。やっぱり居ない。

「え、えっと……、ファ、ファンロンさーーんっ!? 騎士の人ー?! 何処ですかー!? う、うぅ……」

 ここに居るのは自分だけ、そう思った瞬間、僕は寂しくなってきて……涙が浮かび始めてきた。
 きっとママが居たら、泣いてる僕の事をギューッと抱き締めてくれる。だけど、ママはもう居ない……。
 そう思ってしまうと、ますます涙が出そうになって来る。

「あら、坊や、どうしたのかしら?」
「え?」

 そんな僕の前に不意に影が掛かり、顔を上げると胸の大きな女の人が立っていた。
 突然話し掛けられ、どう言おうか悩む僕に対し、女の人は僕の様子を見てから頷くと……。

「なるほど、迷子なのね? それじゃあ、分かるところまで案内してあげるから着いて来てちょうだい」
「え、で……でも、ここで待っていないと」
「あら? そのまま待っていたらずっと迷子になるわよ?」
「え……」

 ずっと迷子……、そう思うと怖くなり……僕は着いて来るように言った女の人の後について歩いて行く。
 右へ、左へと、薄暗い家と家の間を通り抜けて、少しずつ歩いて行く人が居なくなって……ますます不安になってくると、女の人が立ち止まった。

「ついたわよ」
「え? あ、あの……ここって、何処……ですか?」
「何処かしらね?」

 そう言って女の人は僕に向かって笑いかけた。だけど、その笑顔は何だか凄く怖かった。
 だから、僕はすぐにその場から逃げ出そうとした。

「おっと、何処に行こうってのかなー?」
「へへっ! 男色受けしそうな顔と身体つきしてるガキだな!」
「え? え……?」

 何だか怖い男の人たちが逃げ出そうとした僕へと立ち塞がり、ニタニタと笑う。
 駄目だ……これ、絶対に……いちゃいけない場所なんだ……。
 そう思った瞬間、怖くなってガクガクと体が震え始めた。

「ぶははっ! よく分かってなかったのに、ようやく理解したのかガックガクに震えてやがるぜぇ!!」
「ふふっ、ねえ。売る前に私が味見しても良いかしら?」
「姐御が味見ですかい? また何時もみたいに搾り取らないでくださいよぉ?」
「分かってるよ。顔には傷つけないし、私もこの子も気持ち良くなるから万々歳ってやつよ」

 怯える僕へ、女の人が薄らとした怖い笑顔を浮かべながら近づいてくる。
 に、逃げなきゃ……! 逃げないと……!!
 そう思いながら必死に体を動かそうとするけれど、何故か体が動かない……。
 どうして? どうしてっ!?

「うふふ、よっぽど甘やかされて育ってたみたいね? 怖くて動けないのが分かるわー」
「や、やだ……! た、たすけて! だれかっ、だれか、たすけて……!!」

 震える声を振り絞り何とか出した声は、掠れていて遠くまで届かない。
 そして、女の人は服を脱ぎながら僕の上に乗ると……僕の着ている服を脱がせ始めた。
 何かよくない事をされる。それだけは分かるのに、何も出来ない。
 だれか、だれか……。たすけて! 騎士の人、ファンロンさん、ウィスドムさん――ママッ!!

「ふふふっ、それじゃあいただきまーー「ちょっと待つニャーーーー!!」――え?」

 誰かの声がした瞬間、涙で濡れた僕の瞳に黒い影が映った。
 そして、僕に被い被さっていた女の人がその黒い影に吹き飛ばされていった。

「ぐはっ!?」
「「あ、姐御ぉ!? だ、誰だっ!?」」

 吹き飛ばされた女の人は壁に激突し、それを見た怖い顔の男の人たちは女の人を吹き飛ばした存在を睨み付けた。
 僕に向けて睨んだわけじゃないけれど、その睨みに思わずビクッとしてしまう。
 その視線から逃げるように僕も女の人を吹き飛ばした存在を見ると……、その存在は黒色で羽が生えていて……。

「誰だ。と言われて素直に喋るバカは何処に居るかニャ? けれど、これから死に行くお前達には、わにゃくしの名を覚えておいて貰うニャ! 我がニャは、サタニャエル! ご主人様の子供を護る存在ニャ!!」

 声高々と怖い顔の男の人達に宣言したその存在は…………。

「「ね、ねこ……だとぉ?」」
「わあ、可愛い……!」

 男の人たちは宙に浮かぶ可愛くて小さな黒い動物さんを信じられないような顔をしながら見ている。
 それに対して僕は、初めて見るその動物に可愛らしさを感じていた。
 あと、男の人たちが言ってて気づいたけれど、あの動物はねこって言うみたいだけど……凄く可愛いなー。

「ニャアン、何だか凄く熱意の篭った視線を感じるニャ! だけど、今はご主人様の子供を護らないといけないニャ!! ――覚悟するニャ!!」
「「く、くるのかっ!?」」

 黒色のねこさんは羽を広げると、男の人たちへと体当たりしようとしているのか突撃をしようとする。
 近づいてくるねこさんに男の人たちは身構える。だけど、それよりも先に周囲にまた声が響き渡った。

「待つですワン! 悪魔め、勇者様を傷つけるつもりですワンね!?」
「え?」
「ニャ!? だ、誰ニャ!?」
「「ゆ、ゆゆっ!? 勇者あっ!?」」

 聞こえてくる声に黒色のねこさんが驚き、僕は唖然とし、男の人たちは驚きの声を上げていた。
 そんな状況の中、声を放っていた存在が今度は空から舞い降りてきた。
 真っ白く、おっきくて、キラキラとした瞳をしたそれは……。

「「こ、今度は犬かよぉ!?」」
「か、かっこいい……!」

 いぬと呼ばれた存在だった。


 ―――――

 悪事って狙った正体知ったら、動揺するか意気込むかのどっちかだと思います。
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