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第一章 賢者と賢者の家族
第3話 ベル、ディックとスキンシップを取る。
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「到着っと。目を開けてもいいですよディック」
「……ぅ、いったいなにが…………? えっ!?」
光が収まり、ベルの声が聞こえ、目を瞬きして光で可笑しくなった目を調整して視界を元に戻すとディックから驚いた声が洩れた。
それもそうだろう。何故なら、そこはディックとベルが立っていた学園の訓練場ではなかったからだ。
そこは柔らかで心地良い風に揺られ、ザアザアと音を立てる木々に覆われた森の中だった。
ベルの背後、その森の中にはポツンと一軒の家、だと思われる建物があり……ディックの視線はそちらへと向かれる。
……が、すぐにハッとなり、ベルから距離を取ると睨み付けた。
「お、おまえ、いったい誰だよ! おれをどうするつもりだよっ!?」
「私はベルです。そしてディック、あなたを連れて来たのは私があなたを貰ったから、と言わせてもらいます」
「もら……った? なんだよ、それ……! お、おれは、おれは物なんかじゃない!!」
(優しそうな微笑みをしてくれたのに! 考えてることはあいつらと同じことなのかよ!!)
裏切られた気持ちに泣きそうになるディックだったが、そんな彼の感情をお構い無しにベルは杖を構える。
当然、杖を構えられたディックはビクリと体を跳ねさせ、怯えた表情を浮かべるも……恨み深げにベルを見た。
その様子からベルはディックがどれだけ不条理な目に遭っていたのかを理解し、声をかける。
「……ディック。私はきみを傷つけるつもりは無いわ。ただちょっと回復魔法をかけるだけだから」
「そ、そんなの、信じられるかよ……!」
「今は信じなくても良いわ。それに時間はまだまだあるのだから、あなたのことを私にも聞かせてちょうだい――『ヒール』!」
睨み付けるディックの瞳が杖の先に光る温かい光を確認した瞬間、光は彼の体へと放たれて包み込んだ。
すると彼の体に付いた傷は見る見るうちに修復し始め、光が収まった後には傷ひとつ無い体になっていた。
それに対し、ディックは驚いた様子でベルと自分の体を交互に見る。
そんな彼の反応を少しだけ楽しそうに見つめながら、ベルは優しく口を開いた。
「さ、傷も治ったことだし、中に入りましょ」
「あ……、う、ん……」
呆けた様子で、ベルを見ていたディックだったが歩き出した彼女に置いてかれないようにとゆっくりと歩き出す彼女の後について歩き出した。
どうやら彼女は家の中に入るようだが、本当に入っても良いのかとディックは戸惑いを見せ、その場から動かなくなる。
「何をしているの? 速く入りましょう」
「あ……あの。おれ、本当に中に入っても……良いのか?」
「……当たり前よ。私はあなたを貰った。だから、あなたの家はここになったの。だから、遠慮なんて要らないわ」
「っ。で、でも……」
「もう、じれったいわね。ほら、入りましょう」
入るのを躊躇っている……ではなく、自分はそこに入っても良いのか。そう問いかけるようにディックはベルに聞く。
だからベルは優しく、彼を安堵させるために遠慮は要らないといったのだが、ディックはやはりそれでも躊躇した。
なのでベルは、ディックの手を掴むと家の中へと入っていった。
家の中へと入ると、そこはゴールドソウルでは見かけたことの無い造りをしていた。……とはいってもディックが過ごした場所が場所であるために他の土地にはあるのかも知れない。
その家の造形に驚いていると、ベルは彼の手を放すと改めて彼を見た。
「改めて、今日からよろしくね。ディック」
「え、あ……よ、よろし、く……」
ベルの言葉に、彼は戸惑いながらも返事を返し、頭を下げる。
そんな彼の様子を見てから、ベルは彼に対して初めて行うべきことを言う。
「それじゃあ、きみは先にお風呂に入りなさい」
「え? お、お風呂……? 入っても、良い……のかよ? 本当に……?」
「ええ、良いわよ。それとも……一緒に入りたい?」
「っ!? ち、ちがうよっ!」
少し悪戯っぽく笑うベルだったが、ディックはどう捕らえたのか分からないけれど顔を真っ赤にして拒否した。
そんな彼の様子を見ながら、ベルはディックを風呂場へと案内する。
案内されながらもディックは本当に入っても良いのかという不安げな表情で彼女の様子を見るのだが、ベルは優しく微笑むだけだった。
そして、脱衣室に到着すると……。
「さ、ここから先がお風呂だから、ちゃんと温まって汚れを落としておいで。上がったら、向こうの部屋で待ってるようにね」
「………………」
ベルはそう口にして、ディックを脱衣所の中へ案内するとその場から離れた。
……が、離れるだけだ。ディックの魔力や気配は全て把握したから離れていたって分かる。
「さてと、とりあえずは……胃に優しい食べ物を用意しておこうかしら」
台所に着き、彼女は呟きながら調理を開始する。
とは言っても胃に優しい料理なのでよくてパン粥で良いはずだと考えたのか、ミルクを張った鍋を火にかけながら……溜息を吐いた。
(はぁ……それにしたって、私は何を考えているのかしら? 相手はあの種馬糞野郎の子孫だっていうのに。……ううん、子孫だからと言ってアレを怨んだとしても、彼には何の罪は無いわね……と言うか、彼も被害者のようなものなんだから)
「とりあえず、ミルクのパン粥は完成。後は……果物の砂糖煮かしら?」
そう呟きながら、彼女は自身の空間に保存されている果物を見繕う。
……が、ちゃんと入っているのか気になり、一度だけディックの様子を見ることにした。
「これは犯罪じゃなくて、確認だから問題は無いわよね。……『ウォッチ』」
呪文を唱えると、彼女の片目に魔方陣が描かれた。
その瞬間、魔方陣が描かれた彼女の片目にはディックがいる風呂場が映し出された。
湯気に満たされ、温かいであろう浴室。ベルの視界には湯気を放つ木枠の浴槽と各種アメニティが揃った洗い場が見えている。
けれど、彼は入浴しては居らず……。裸のままどうすれば良いのか悩んでるのか、その場で立ち尽くしているのが見えた。
(……こういうお風呂なんて久しぶりか、それとも初めてだろうし……入っても良いか悩んでる。ってところかしら?)
『……やっぱり、おれ…………』
汚れた自分が入るわけには行かない。まるでそう呟くかのようにディックは踵を返して、脱衣所に戻ろう扉に手をかける。
そんな光景を見ながら、ベルは溜息を再び吐きながら、扉の向こうへと声をかけつつ着ている服を脱ぎ始めた。
「はあ、そんなことだろうと思っていたわ……」
『えっ!? な、何で居るんだよ!? で、出てけよ!!』
「いやよ。だってディック、きみ入ろうとしなかったじゃないの」
『うっ、そ、それは……け、けど!』
脱衣所に居る存在にようやく気づいたディックが驚いた声を上げ、必死に来ないように大声を上げる。
だが、そんな彼への返答は開かれた扉だった。
開かれた脱衣所には一矢纏わぬ……いや、バスタオルを胴に巻いたベルが立っていた。
それを見たディックは白い肌にポカンとしていたが……すぐにボッと顔が燃えたように赤く染まると同時に青くもなっていた。
「あ、あ……ひ、ひぃ……あ、う、ひ……!」
「さ、入るわよ? まあ、その前に掛け湯をしてからね」
ベルはそう口にすると、桶に湯を取ると自らの体にかけてからディックの背中へとゆっくりとかけ始めた。
怯えているのか……それともかけられたお湯に驚いたのか、ディックはビクリと震えながら温かいお湯を掛けられて行く。
そして、ベルのされるがままにディックはお風呂に入れられるのだった。
「……ぅ、いったいなにが…………? えっ!?」
光が収まり、ベルの声が聞こえ、目を瞬きして光で可笑しくなった目を調整して視界を元に戻すとディックから驚いた声が洩れた。
それもそうだろう。何故なら、そこはディックとベルが立っていた学園の訓練場ではなかったからだ。
そこは柔らかで心地良い風に揺られ、ザアザアと音を立てる木々に覆われた森の中だった。
ベルの背後、その森の中にはポツンと一軒の家、だと思われる建物があり……ディックの視線はそちらへと向かれる。
……が、すぐにハッとなり、ベルから距離を取ると睨み付けた。
「お、おまえ、いったい誰だよ! おれをどうするつもりだよっ!?」
「私はベルです。そしてディック、あなたを連れて来たのは私があなたを貰ったから、と言わせてもらいます」
「もら……った? なんだよ、それ……! お、おれは、おれは物なんかじゃない!!」
(優しそうな微笑みをしてくれたのに! 考えてることはあいつらと同じことなのかよ!!)
裏切られた気持ちに泣きそうになるディックだったが、そんな彼の感情をお構い無しにベルは杖を構える。
当然、杖を構えられたディックはビクリと体を跳ねさせ、怯えた表情を浮かべるも……恨み深げにベルを見た。
その様子からベルはディックがどれだけ不条理な目に遭っていたのかを理解し、声をかける。
「……ディック。私はきみを傷つけるつもりは無いわ。ただちょっと回復魔法をかけるだけだから」
「そ、そんなの、信じられるかよ……!」
「今は信じなくても良いわ。それに時間はまだまだあるのだから、あなたのことを私にも聞かせてちょうだい――『ヒール』!」
睨み付けるディックの瞳が杖の先に光る温かい光を確認した瞬間、光は彼の体へと放たれて包み込んだ。
すると彼の体に付いた傷は見る見るうちに修復し始め、光が収まった後には傷ひとつ無い体になっていた。
それに対し、ディックは驚いた様子でベルと自分の体を交互に見る。
そんな彼の反応を少しだけ楽しそうに見つめながら、ベルは優しく口を開いた。
「さ、傷も治ったことだし、中に入りましょ」
「あ……、う、ん……」
呆けた様子で、ベルを見ていたディックだったが歩き出した彼女に置いてかれないようにとゆっくりと歩き出す彼女の後について歩き出した。
どうやら彼女は家の中に入るようだが、本当に入っても良いのかとディックは戸惑いを見せ、その場から動かなくなる。
「何をしているの? 速く入りましょう」
「あ……あの。おれ、本当に中に入っても……良いのか?」
「……当たり前よ。私はあなたを貰った。だから、あなたの家はここになったの。だから、遠慮なんて要らないわ」
「っ。で、でも……」
「もう、じれったいわね。ほら、入りましょう」
入るのを躊躇っている……ではなく、自分はそこに入っても良いのか。そう問いかけるようにディックはベルに聞く。
だからベルは優しく、彼を安堵させるために遠慮は要らないといったのだが、ディックはやはりそれでも躊躇した。
なのでベルは、ディックの手を掴むと家の中へと入っていった。
家の中へと入ると、そこはゴールドソウルでは見かけたことの無い造りをしていた。……とはいってもディックが過ごした場所が場所であるために他の土地にはあるのかも知れない。
その家の造形に驚いていると、ベルは彼の手を放すと改めて彼を見た。
「改めて、今日からよろしくね。ディック」
「え、あ……よ、よろし、く……」
ベルの言葉に、彼は戸惑いながらも返事を返し、頭を下げる。
そんな彼の様子を見てから、ベルは彼に対して初めて行うべきことを言う。
「それじゃあ、きみは先にお風呂に入りなさい」
「え? お、お風呂……? 入っても、良い……のかよ? 本当に……?」
「ええ、良いわよ。それとも……一緒に入りたい?」
「っ!? ち、ちがうよっ!」
少し悪戯っぽく笑うベルだったが、ディックはどう捕らえたのか分からないけれど顔を真っ赤にして拒否した。
そんな彼の様子を見ながら、ベルはディックを風呂場へと案内する。
案内されながらもディックは本当に入っても良いのかという不安げな表情で彼女の様子を見るのだが、ベルは優しく微笑むだけだった。
そして、脱衣室に到着すると……。
「さ、ここから先がお風呂だから、ちゃんと温まって汚れを落としておいで。上がったら、向こうの部屋で待ってるようにね」
「………………」
ベルはそう口にして、ディックを脱衣所の中へ案内するとその場から離れた。
……が、離れるだけだ。ディックの魔力や気配は全て把握したから離れていたって分かる。
「さてと、とりあえずは……胃に優しい食べ物を用意しておこうかしら」
台所に着き、彼女は呟きながら調理を開始する。
とは言っても胃に優しい料理なのでよくてパン粥で良いはずだと考えたのか、ミルクを張った鍋を火にかけながら……溜息を吐いた。
(はぁ……それにしたって、私は何を考えているのかしら? 相手はあの種馬糞野郎の子孫だっていうのに。……ううん、子孫だからと言ってアレを怨んだとしても、彼には何の罪は無いわね……と言うか、彼も被害者のようなものなんだから)
「とりあえず、ミルクのパン粥は完成。後は……果物の砂糖煮かしら?」
そう呟きながら、彼女は自身の空間に保存されている果物を見繕う。
……が、ちゃんと入っているのか気になり、一度だけディックの様子を見ることにした。
「これは犯罪じゃなくて、確認だから問題は無いわよね。……『ウォッチ』」
呪文を唱えると、彼女の片目に魔方陣が描かれた。
その瞬間、魔方陣が描かれた彼女の片目にはディックがいる風呂場が映し出された。
湯気に満たされ、温かいであろう浴室。ベルの視界には湯気を放つ木枠の浴槽と各種アメニティが揃った洗い場が見えている。
けれど、彼は入浴しては居らず……。裸のままどうすれば良いのか悩んでるのか、その場で立ち尽くしているのが見えた。
(……こういうお風呂なんて久しぶりか、それとも初めてだろうし……入っても良いか悩んでる。ってところかしら?)
『……やっぱり、おれ…………』
汚れた自分が入るわけには行かない。まるでそう呟くかのようにディックは踵を返して、脱衣所に戻ろう扉に手をかける。
そんな光景を見ながら、ベルは溜息を再び吐きながら、扉の向こうへと声をかけつつ着ている服を脱ぎ始めた。
「はあ、そんなことだろうと思っていたわ……」
『えっ!? な、何で居るんだよ!? で、出てけよ!!』
「いやよ。だってディック、きみ入ろうとしなかったじゃないの」
『うっ、そ、それは……け、けど!』
脱衣所に居る存在にようやく気づいたディックが驚いた声を上げ、必死に来ないように大声を上げる。
だが、そんな彼への返答は開かれた扉だった。
開かれた脱衣所には一矢纏わぬ……いや、バスタオルを胴に巻いたベルが立っていた。
それを見たディックは白い肌にポカンとしていたが……すぐにボッと顔が燃えたように赤く染まると同時に青くもなっていた。
「あ、あ……ひ、ひぃ……あ、う、ひ……!」
「さ、入るわよ? まあ、その前に掛け湯をしてからね」
ベルはそう口にすると、桶に湯を取ると自らの体にかけてからディックの背中へとゆっくりとかけ始めた。
怯えているのか……それともかけられたお湯に驚いたのか、ディックはビクリと震えながら温かいお湯を掛けられて行く。
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