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第一章 賢者と賢者の家族
第9話 ディック、気まずい体験をする。
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洗濯物を干し始めてから少し時間が経ち、2人は食事を行っていた。
だが、食事を行っている2人には会話というものが存在せず、ズズッ、ズズズッ……とパン粥を啜る音だけが響いていた。
しかもその啜る音は不規則である。
それというのも、啜る音を立てている人物であるディックは、対面に座っているベルへとちらりと視線を向けるが、しばらくすると顔を赤くしながら顔を下に向けてパン粥を啜ると言うことを繰り返しているからだ。
そんな彼の様子を見ながら、見られている本人であるベルは何と言えば良いのか分からない表情を浮かべつつ……ようやくディックへと話しかけた。
「……ディック、別にあのことは気にしなくても良いわよ?」
「っ!? べ、べつに気にしてなんてねーからっ!! ――はぐはぐはぐはぐはぐ、おかわりっ!」
「もう、ちゃんと良く噛んで食べなさいね? はい、どうぞ」
顔を真っ赤にしてベルの言葉を否定し、お代わりを要求するディックへとお代わりをよそうと引っ手繰るように器を受け取って話しかけるなとばかりに食事を続ける。
そんな彼の様子を見ながら、ベルも少しだけ冷めてしまったパン粥を口に含めつつ心で悩んでいた。
(うぅ~~ん、9歳だからちょっと大人ぶってるんだと思うけど、そこまで過剰な反応見せられると何だか……恥かしいなぁ……)
そう思いながら、ベルは先ほどまでの洗濯物を干していたときのことを思い出す。
……と言っても、特にたいしたことは起きてはいなかった。そう、たいしたことは……。
ただ単に、ディックが干している中にベルの下着が混ざっていたというぐらいだけれど……、彼はそれが何であるのか分かっていなかったのだ。
首を傾げながら彼が両手で広げた逆三角形な下着を見たときは、ベル自身も苦笑してしまっていた。
――ちなみにこの世界の下着は基本的にはかぼちゃパンツの通称で呼ばれるドロワーズが主流なのだが、動き易さを求める冒険者や騎士たちはそんな着膨れする下着は不評であった。
その結果、彼ら彼女らは下着を履かないでいた。だがあるとき、ある商会が販売した『ヒモパン』という下着が出回り出すと彼ら彼女らはこぞってその下着を着用し始めた。
程好く股間を包み込み、汗で蒸れることもない。それは彼らにとって革命であった。
所謂、『下着革命』である。
そして『ヒモパン』タイプの下着には特殊な素材を使われた高級な下着として、紐で横を結ぶのではなく伸縮性の素材でお尻にフィットするタイプの『パンティー』と呼ばれる物があった。
とは言っても、貴族の殆どはこのタイプの下着は破廉恥だといって着用をする者はあまり居なかったりする。
だからディックにはこれが何であるのか分からなかったのだろう。
『パンティー』を広げながら、これが何であるかまったく分かっておらず、きょとんと首を傾げているディックへとベルは声をかけたのだが……それは失敗だった。それも大が付くほどの。
何故なら普通見慣れない物があったら聞いてしまうのが世の常であり、ディックもそれに従ったのだ……。
更に言うと、何となくな母性本能が全開になってしまっているベルは聞かれたら答えようと考えてしまっていた。
結果――、
「ディック? どうかしたかしら?」
「何か……、へんな布があったんだけど……これって何なんだ?」
「ああ、分かってなかったのねディック。これはね、下着よ。ちなみに私のね」
「…………え?」
「こんな感じだけど、れっきとした女性用の下着なの……ディック? どうかしたの?」
ぽかん、としていたディックだったが段々と顔が真っ赤になっていくのがベルの瞳に映り……。
「あ、あわ……あわわ、わ……わ~~~~~~っ!!」
「きゃっ!? ディ、ディック、どうしたのーーっ!?」
叫び声と共にポ~ンとベルの下着を空高く手放すと、ベルが止める間も無くディックはすぐさま家の中へと駆け出して行った。
いったいどうしたのかと彼女は首を傾げていたが、すぐに恥かしかったんだと理解しつつ、久しぶりにこういう反応を見たことで懐かしいと思っていた。
同時に何というか過剰すぎる反応にベルは驚いたが、子供でも男の子だなぁと思うことにして残りの洗濯物を干してから家の中へと入った。
……そしてディックは家の中へと入ってきた彼女を見ないように壁のほうを見ながら、リビングの隅で縮こまっていた。
「お待たせ、ディック。それじゃあ、ごはんを作るわね」
そんな彼の様子を見ながら、ベルは一声掛けてから食事の準備をし始めると……料理の匂いに釣られたのか尻尾がピコッと動き始め……その様子を見ながらベルはパン粥を作るとディックと共に食べ始めたのだった。
なお、今日のパン粥はコンソメ風のスープで煮込んだ出汁がしっかり取れた少しだけ辛いけれど、味がしっかりした物であった。
そして……。
「うぅ……き、きもちわるい…………」
「あんなに急いで大量に食べるからよ。少し休みなさい」
「…………う、ん」
食事を終えた2人だが、予想通りと言うべきかディックはベルが作ったパン粥を思った以上に食べており、吐き気と腹痛に苛まれながら、リビングで横になっていた。
そんなディックに心配するようにベルは声を掛けつつ、食べ終わった器を洗うために調理場へと消えていく。
彼女の後ろ姿を見ながら、ディックは何でこんなにも無茶して食べたのか考えようとする。……しかし、理由が分からない。
……ただ、言えることがあるとすれば、ベルと面と顔を合わせることが恥かしくて話しかけることも出来ず、必死に食べることしか出来なかったのだ。
(う、うぅ~~……、あのしたぎってよくわからない形だったけど、おれが見たらいけないものだったんだぁ……!)
むかむかとするお腹の中と、奥から込み上げてくる吐き気を感じながらディックは二度と下着には触れないことを心の中で誓うのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
それから2時間ほどが経過し……太陽が真上に近づき、もう少しで昼になりそうな時間になって、ようやくディックのお腹は回復し、起き上がることが出来た。
「ディック、もう大丈夫かしら?」
「……だ、大丈夫。もう、おなかいたくないから」
「そう、良かったわ。……それじゃあ、きみに必要な物を買いに行こうと思うんだけどどうかな?」
「えっ?! べ、別におれは、このままでも……」
心配そうに訊ねるベルの顔を見ないようにしながらディックは返事を返す。
その反応を見つつ、彼女は本日の目的を口にしたのだが……ディックは驚いた反応を見せながら首を振る。
というよりも、これ以上何かを貰ってはいけないと思ったのか、彼は「このままでも良い」と言おうとした。
――だがそれよりも前にベルが優しく彼の肩へと手を置いた。
「ディック……、これはね。私が勝手にやろうとしていることなの。だから、きみは遠慮なんてしないでちょうだい。というよりもむしろ何が欲しいかって言ってくれると……私は凄く嬉しいわ」
「あ、う……そ、その……」
優しく微笑むベルの顔をまともに見ることが出来ないディックは俯くようにしながら、顔を赤くしてボソボソと言葉にならない言葉を呟く。
まあ、そうなるのも当然だろう。
昨日から今現在までの出来事は、ディックにとっては全てが刺激的であると同時に全てが始めての出来事の連続なのだから。
そんなディックへと、ベルはもう一度優しく口にする。
「ディック、きみに必要な物……買いに行きましょう?」
「…………うん」
断れない。そう覚悟したのか、ディックはこくりと頷き……それを見てベルは微笑んだ。
胸の奥が凄く暖かくなる。そんな陽だまりのように優しい微笑みだ。
その微笑みを向けられ、ディックは胸の奥が何だか変な気分になるのを感じたが……、良く分からないけれど嫌な気分じゃないと感じていた。
「それじゃあ、準備をして出かけましょうか」
「え、どこに?」
「言ったでしょ? お買い物をしに行きましょうってね」
「あ……うん」
ベルの言葉にディックは頷くが、何というか買い物という言葉が慣れない彼は現実味を帯びれないようだった。
ベルにもそれが分かっているようで、詳しいことは何も言わず……彼の手を引いて家の外へと出ると家から少し離れた所で立ち止まった。
「それじゃあ、今から商会に飛ぶけど怖がらなくても良いからね」
「……え? ……あ」
彼女の言葉にディックは唖然としたが、すぐに自分を此処へと連れて来た方法で移動をするのだということに気づき、何も言わずに黙る。
そんな彼の様子を見ながら、ベルは目的地である商会へと転移を始める。
直後、彼らを包むように光が放たれ……それが止むと、2人の姿はもう既にそこには無かった。
だが、食事を行っている2人には会話というものが存在せず、ズズッ、ズズズッ……とパン粥を啜る音だけが響いていた。
しかもその啜る音は不規則である。
それというのも、啜る音を立てている人物であるディックは、対面に座っているベルへとちらりと視線を向けるが、しばらくすると顔を赤くしながら顔を下に向けてパン粥を啜ると言うことを繰り返しているからだ。
そんな彼の様子を見ながら、見られている本人であるベルは何と言えば良いのか分からない表情を浮かべつつ……ようやくディックへと話しかけた。
「……ディック、別にあのことは気にしなくても良いわよ?」
「っ!? べ、べつに気にしてなんてねーからっ!! ――はぐはぐはぐはぐはぐ、おかわりっ!」
「もう、ちゃんと良く噛んで食べなさいね? はい、どうぞ」
顔を真っ赤にしてベルの言葉を否定し、お代わりを要求するディックへとお代わりをよそうと引っ手繰るように器を受け取って話しかけるなとばかりに食事を続ける。
そんな彼の様子を見ながら、ベルも少しだけ冷めてしまったパン粥を口に含めつつ心で悩んでいた。
(うぅ~~ん、9歳だからちょっと大人ぶってるんだと思うけど、そこまで過剰な反応見せられると何だか……恥かしいなぁ……)
そう思いながら、ベルは先ほどまでの洗濯物を干していたときのことを思い出す。
……と言っても、特にたいしたことは起きてはいなかった。そう、たいしたことは……。
ただ単に、ディックが干している中にベルの下着が混ざっていたというぐらいだけれど……、彼はそれが何であるのか分かっていなかったのだ。
首を傾げながら彼が両手で広げた逆三角形な下着を見たときは、ベル自身も苦笑してしまっていた。
――ちなみにこの世界の下着は基本的にはかぼちゃパンツの通称で呼ばれるドロワーズが主流なのだが、動き易さを求める冒険者や騎士たちはそんな着膨れする下着は不評であった。
その結果、彼ら彼女らは下着を履かないでいた。だがあるとき、ある商会が販売した『ヒモパン』という下着が出回り出すと彼ら彼女らはこぞってその下着を着用し始めた。
程好く股間を包み込み、汗で蒸れることもない。それは彼らにとって革命であった。
所謂、『下着革命』である。
そして『ヒモパン』タイプの下着には特殊な素材を使われた高級な下着として、紐で横を結ぶのではなく伸縮性の素材でお尻にフィットするタイプの『パンティー』と呼ばれる物があった。
とは言っても、貴族の殆どはこのタイプの下着は破廉恥だといって着用をする者はあまり居なかったりする。
だからディックにはこれが何であるのか分からなかったのだろう。
『パンティー』を広げながら、これが何であるかまったく分かっておらず、きょとんと首を傾げているディックへとベルは声をかけたのだが……それは失敗だった。それも大が付くほどの。
何故なら普通見慣れない物があったら聞いてしまうのが世の常であり、ディックもそれに従ったのだ……。
更に言うと、何となくな母性本能が全開になってしまっているベルは聞かれたら答えようと考えてしまっていた。
結果――、
「ディック? どうかしたかしら?」
「何か……、へんな布があったんだけど……これって何なんだ?」
「ああ、分かってなかったのねディック。これはね、下着よ。ちなみに私のね」
「…………え?」
「こんな感じだけど、れっきとした女性用の下着なの……ディック? どうかしたの?」
ぽかん、としていたディックだったが段々と顔が真っ赤になっていくのがベルの瞳に映り……。
「あ、あわ……あわわ、わ……わ~~~~~~っ!!」
「きゃっ!? ディ、ディック、どうしたのーーっ!?」
叫び声と共にポ~ンとベルの下着を空高く手放すと、ベルが止める間も無くディックはすぐさま家の中へと駆け出して行った。
いったいどうしたのかと彼女は首を傾げていたが、すぐに恥かしかったんだと理解しつつ、久しぶりにこういう反応を見たことで懐かしいと思っていた。
同時に何というか過剰すぎる反応にベルは驚いたが、子供でも男の子だなぁと思うことにして残りの洗濯物を干してから家の中へと入った。
……そしてディックは家の中へと入ってきた彼女を見ないように壁のほうを見ながら、リビングの隅で縮こまっていた。
「お待たせ、ディック。それじゃあ、ごはんを作るわね」
そんな彼の様子を見ながら、ベルは一声掛けてから食事の準備をし始めると……料理の匂いに釣られたのか尻尾がピコッと動き始め……その様子を見ながらベルはパン粥を作るとディックと共に食べ始めたのだった。
なお、今日のパン粥はコンソメ風のスープで煮込んだ出汁がしっかり取れた少しだけ辛いけれど、味がしっかりした物であった。
そして……。
「うぅ……き、きもちわるい…………」
「あんなに急いで大量に食べるからよ。少し休みなさい」
「…………う、ん」
食事を終えた2人だが、予想通りと言うべきかディックはベルが作ったパン粥を思った以上に食べており、吐き気と腹痛に苛まれながら、リビングで横になっていた。
そんなディックに心配するようにベルは声を掛けつつ、食べ終わった器を洗うために調理場へと消えていく。
彼女の後ろ姿を見ながら、ディックは何でこんなにも無茶して食べたのか考えようとする。……しかし、理由が分からない。
……ただ、言えることがあるとすれば、ベルと面と顔を合わせることが恥かしくて話しかけることも出来ず、必死に食べることしか出来なかったのだ。
(う、うぅ~~……、あのしたぎってよくわからない形だったけど、おれが見たらいけないものだったんだぁ……!)
むかむかとするお腹の中と、奥から込み上げてくる吐き気を感じながらディックは二度と下着には触れないことを心の中で誓うのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
それから2時間ほどが経過し……太陽が真上に近づき、もう少しで昼になりそうな時間になって、ようやくディックのお腹は回復し、起き上がることが出来た。
「ディック、もう大丈夫かしら?」
「……だ、大丈夫。もう、おなかいたくないから」
「そう、良かったわ。……それじゃあ、きみに必要な物を買いに行こうと思うんだけどどうかな?」
「えっ?! べ、別におれは、このままでも……」
心配そうに訊ねるベルの顔を見ないようにしながらディックは返事を返す。
その反応を見つつ、彼女は本日の目的を口にしたのだが……ディックは驚いた反応を見せながら首を振る。
というよりも、これ以上何かを貰ってはいけないと思ったのか、彼は「このままでも良い」と言おうとした。
――だがそれよりも前にベルが優しく彼の肩へと手を置いた。
「ディック……、これはね。私が勝手にやろうとしていることなの。だから、きみは遠慮なんてしないでちょうだい。というよりもむしろ何が欲しいかって言ってくれると……私は凄く嬉しいわ」
「あ、う……そ、その……」
優しく微笑むベルの顔をまともに見ることが出来ないディックは俯くようにしながら、顔を赤くしてボソボソと言葉にならない言葉を呟く。
まあ、そうなるのも当然だろう。
昨日から今現在までの出来事は、ディックにとっては全てが刺激的であると同時に全てが始めての出来事の連続なのだから。
そんなディックへと、ベルはもう一度優しく口にする。
「ディック、きみに必要な物……買いに行きましょう?」
「…………うん」
断れない。そう覚悟したのか、ディックはこくりと頷き……それを見てベルは微笑んだ。
胸の奥が凄く暖かくなる。そんな陽だまりのように優しい微笑みだ。
その微笑みを向けられ、ディックは胸の奥が何だか変な気分になるのを感じたが……、良く分からないけれど嫌な気分じゃないと感じていた。
「それじゃあ、準備をして出かけましょうか」
「え、どこに?」
「言ったでしょ? お買い物をしに行きましょうってね」
「あ……うん」
ベルの言葉にディックは頷くが、何というか買い物という言葉が慣れない彼は現実味を帯びれないようだった。
ベルにもそれが分かっているようで、詳しいことは何も言わず……彼の手を引いて家の外へと出ると家から少し離れた所で立ち止まった。
「それじゃあ、今から商会に飛ぶけど怖がらなくても良いからね」
「……え? ……あ」
彼女の言葉にディックは唖然としたが、すぐに自分を此処へと連れて来た方法で移動をするのだということに気づき、何も言わずに黙る。
そんな彼の様子を見ながら、ベルは目的地である商会へと転移を始める。
直後、彼らを包むように光が放たれ……それが止むと、2人の姿はもう既にそこには無かった。
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