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第一章 賢者と賢者の家族
第33話 アラン、天国から地獄へ。
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撃ち出された岩石が砂煙を巻き上げながら一直線に固まって動けないベルの体へと放たれる。
ベルは避けることが出来ず……岩石は命中し、メキリッ!という音が周囲に響き……直後、バキャッと砕ける音が響いた。
砂煙の中に混じるようにして、キラキラと日の光を浴びて煌くベルを固めていた物の欠片が散らばるのが見える。
「あ…………あ……うそ、だろ……? ベ、ベル……ベルゥゥゥゥゥ!!」
砕け散った欠片を見て、ディックの頭の中では砕け散ったベルの姿が思い浮かんでいたのだろう。
だから、絶望したようにその場でへたり込むと、彼は必死にベルの名前を呼んだ。
けれどベルからの返事は無い。当たり前だ、彼女は砕け散ってしまったのだから……。
そう思うと、ディックの心には絶望が圧し掛かり……涙がボロボロと零れ始めた。
「クヒャ……くひゃひゃ……! やった、やった! ワタシが、ワタシがあの賢者を殺したんだ!」
絶望するディックを見て、アランは勝利を確信した。出来てしまった。
砕け散ったベルの姿は見えない。見えないけれど、勝った。
そう思うと、アランは狂気に満ちた笑いを上げながら、自分の手柄を称賛する。
「あらぁ? わたくしの活躍はどうなったのかしらぁ?」
そんなアランへと少し後ろに立っているラーウネから文句が来る。
だが、そんなのは関係ない。何故なら、邪魔な賢者を殺すことが出来たのだから!
だけど、また用事を頼んだりするのだ。だからゴマ擦りは大事だ。
そう考えたのかアランは笑いながら口を開く。
「はいはい、そうでしたそうでした。ラーウネの協力もあって、賢者を殺すことが出来たんでした! ありがとうございますぅ!!」
「あらぁ、何というかありがたみが全然篭っていないような感謝の言葉ねぇ。けど、それがお前らしいわねぇ」
「はいはい、申し訳ありませんねえ。というか、何だかついさっきからお前の口調が滑らかになっていないか? こう、片言だったのが流量な感じで、それに何か幼………………え”?」
ようやく、ようやくアランはラーウネのほうを振り向いた。
そして……アランは固まった。何故なら……、気づいてしまったからだ。
先ほどから自分に話しかけていたのは、ラーウネではないということに……。
「ようやく気づきましたか? どうでしたか、私のモノマネ。そっくりだったでしょう?」
「お、おま……え? …………え?」
「う、ぁ……ぅ」
ニコリと微笑むベルを前にアランは固まったが、彼女の手に握られた物に気づき言葉を失った。
それは、頭だった……。それも、彼が賢者を殺すために呼び寄せ、殺したと思えるほどの決定打を打ち込んだ仲間の頭だった。
即ち――ラーウネの頭。
「私が持っている頭以外は塵も残さず燃やしましたので、もう何処にもありませんよ。……ああ、ちなみに頭の中にデスマンドラゴラの核となっている種があるのも知っていますので妙な真似をしようとした瞬間、消し飛ばしますよ?」
「――――っ!!」
チラリと視線を自分の手に向けると、何時の間にか恐ろしい表情を浮かべながら、ベルが掴んでいない髪を螺旋状に纏め上げて彼女の腕に突き刺さろうとするラーウネの頭があった。
気づかれている。それに気づいたラーウネは何も出来ずに、伸ばしていた髪を地面へと落とし……本物の生首のように動かなくなった。
それを見ながらアランは全身がガクガクと震えてしまっていることにようやく気がついた。
だが聞かなくてはならない。そう考えてしまったのか、自分でも情けないと思えるほどに震えた声で口を開いた。
「お、おまっ、おまえ……し、死んだんじゃ…………死んだんじゃなかったのかよっ!?」
「もしかして、固まったところを岩石が命中して死んだ。と思っているんですか?」
「あっ、当たり前だ! ラーウネの援護があったが、あの岩石はワタシ自身最高傑作だと思える出来だったのだぞっ!?」
「…………へぇ、あんな物が最高傑作、ですか?」
落胆、一言で表すならばそんな表情をしながら、チワワよりも情けないように震えながら吠える男をベルは見る。
だがアランはその表情には気づかずに、放った岩石には自身が持つ魔力を大量に込めて撃ち出したのだと自信満々に語る。
……のだが、ベルにはそんな自慢に近いような言葉は届いていなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
――はぁ…………がっかりです。
迫り来る岩石を見ながら、ベルは体が動かせないので心の中で大きく溜息を吐いた。
(固めるまでは良かったのに……、この岩石。これは駄目です。これですべてが台無しじゃないですか……。
私だったら、動かせない間に相手を時空の狭間に落とすか、溶岩に沈めるとか色々と固まって動かせない利点を取りますよ? それが何でただの岩石を撃ち出して砕こうとしてるのですか? 見得ですか? 格好良く見せたいからですか?)
どんな攻撃をしてくるか、そう期待していた自分が馬鹿みたいだと思いながら、ベルはゆっくりと岩石を見る。
威力とぶつかったときに、自分はどうなるのかを即座に考え……ベルは静かに魔力を体内に込め始める。
込められた魔力により、お腹の下が熱くなるのを感じ始め、爆弾を抱えているような気分になる。
そんな爆弾を抱えながら、命中した瞬間に開放することを考えながら彼女はジッと待つ。
するとそのときは訪れ、岩石は自分を覆うように固まっている液体に接触したようで、パキリとプラスチックが割れるような音が耳に届き、振動が伝わった。
(――――――ふぅ~……っはぁ!!)
――同時に、ベルは魔力を一気に放出した。
放出した魔力は圧を周囲に撒き散らし、まるで前の世界の一昔前の格闘漫画でよくあるような気とかオーラのように溜め込んだ魔力が彼女の体を覆った。
彼女が放出した魔力と岩石の衝撃で巻き上がった土煙の中、固まっていた液体が内側から粉砕されて欠片が周囲に飛び散り、体を砕こうとしてた岩石が粉々に砕け散った。
そして飛び散った欠片を見ていると、ベルがバラバラになったと勘違いしたディックの絶叫とアランの笑い声が届く。
その下品な笑い声と絶望に満ちた叫び声を聞きながら、ベルはトンと跳ぶ。
――瞬間、魔力で覆われ強化されたベルの体は土煙を一瞬だけ切り裂くと一足でラーウネの背後へと到着した。
彼女もベルを倒したと思っているようで、口元に笑みを浮かべているがアランのように馬鹿みたいにはしゃぐ気は無かったようだ。
そんな彼女へとベルは声を掛ける。
「まあ、はしゃいでいたとしても別に良かったんですけどね」
「え? ――――かっ!?」
背後から声がし、ラーウネが振り返ろうとした瞬間――胸から腕が生えた。
一瞬何があったのか分からないラーウネだったが、その直後首に痛みが走ったと思ったら世界が回転し……視界に自身の体が燃えるのを捉えた。
それを見て理解した。自分は何者かによって首を斬られたのだと言うことを……。
いや、何者ではない……賢者だ。賢者が自分の首を刈ったのだ!
それを理解しながら、ベルが自分に似ているようでまったく似ていないような声真似を行うのを見ていたのだが、アランと会話をしている最中に核である種を体内に送ることで肉体を乗っ取るなりしようと隙を見ていたが、無理だった。
そんな絶体絶命としか言いようが無い状況の中で、ベルに髪を掴まれて成す術が無いラーウネは自信満々に自分の放った魔法がどれほど素晴らしい物だったかを語り続けるアランを憐れな瞳で見ていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「…………はあ、駄目です。全然駄目じゃないですか……。お前は全然駄目ですね。魔人族の中ではかなり下の地位だったんでしょうね」
「は? な、何がだ……!」
自信満々に語っていたアランへと、溜息と共にベルがそう告げると……ぽかん、と間抜け面をアランは晒し、すぐにベルを睨みつける。
だからベルは駄目な理由を語り始める。……が、冥土の土産、では無くただの自分を楽しませなかった文句と言う意味を込めてだ。
「お前が全然駄目だと言った最大の理由。それは私にトドメとして『ストーンショット』を撃ち出したことです。
私が動けないんですから、せめて『マグマプール』とか『ピットフォール』なり使って、落としたり沈めたりしたら良いじゃないですか。……でも、使えないんでしょう?」
「っ!! な、何を根拠に……!?」
「見得張らなくても分かりますよ。だって、お前は呪術道具の製作は職人より少し良いけど、魔法の腕は全然だったのを数日間視ていましたから、この眼で」
視ていた。――その一言にアランは固まる。
(みていた……だと? そういえば、あのとき……ワタシに痛い目を見させたときもみているとこいつは言っていた……。ま、まさか、本当に見ていたっていうのか……?)
ごくり、と喉を鳴らしながら……アランはようやく目の前の化け物の異質さを理解する。
いや、理解してたつもりだったのに、改めて理解させられたのだ。
(じゃ、じゃあ……、ワタシが持っているこれの存在も気づいてるっていうのか?)
無意識にアランは胸元に隠し持っている自身の切り札である呪いの短剣を握り締める。
そんなアランの様子を見ながらベルは言う。
「別にその胸元に隠した呪いの短剣を使っても構いませんよ? それなら私にも有効だと思いますから」
「っ!!?」
クスリと笑いながらベルはアランに向けて言うと、彼はもう怯えすぎているようでガクガクと震えているようだった。
……が、追い詰められた者ほど厄介でしかないと言うように、アランは必死にどうするべきかを考える。
(くそっ、くそっ! ど、どうする? この短剣を刺す? い、いや……きっとこれは有効って言ってるけど聞かないに違いない……! あの賢者に、化け物に何か別のものをで注意を反らすことが出来れば、そうすればきっと逃げられる……!)
どうやら頭の中ではもう戦うよりも逃げるという選択をとっているらしく、必死にアランは周囲を見渡す。
何か、何か無いか……! そう思いながら必死に見渡し、彼は見つけた……。
(こ、これだ……! これしかないっ! もうあの豚姫様との約束なんてあるようで無いものだから、これで行きましょうかねぇ!!)
きっとベルは気づいていない、そう考えながら溢れ出る笑みを堪えながらアランはそれを見る。
「さあ、どうしますか? その呪いの短剣で私を刺します? それとも、どうしますか?」
「どうするかって……? そんなの、決まってるでしょう? こう……するんですよぉ!!」
懐から呪いの短剣を取り出し、アランは一気に駆け出した。
だが、向かう先はベルではなく……唖然とした表情でアランとベルを見ていたディックに向けて、だった。
「はいはい、ワタシが生き延びるために死になさい、クソガキィ!!」
「え、う――――うわぁぁぁぁぁぁっ!!?」
迫り来る死の恐怖、その恐怖に逆らえずにディックはその場から動けなくなってしまった。
醜悪な笑みを浮かべながら、アランが近づくとディックに向けて――呪いの短剣は振られた。
そして――振られた短剣は、肉を切り裂き、赤い血を撒き散らしたのだった……。
ベルは避けることが出来ず……岩石は命中し、メキリッ!という音が周囲に響き……直後、バキャッと砕ける音が響いた。
砂煙の中に混じるようにして、キラキラと日の光を浴びて煌くベルを固めていた物の欠片が散らばるのが見える。
「あ…………あ……うそ、だろ……? ベ、ベル……ベルゥゥゥゥゥ!!」
砕け散った欠片を見て、ディックの頭の中では砕け散ったベルの姿が思い浮かんでいたのだろう。
だから、絶望したようにその場でへたり込むと、彼は必死にベルの名前を呼んだ。
けれどベルからの返事は無い。当たり前だ、彼女は砕け散ってしまったのだから……。
そう思うと、ディックの心には絶望が圧し掛かり……涙がボロボロと零れ始めた。
「クヒャ……くひゃひゃ……! やった、やった! ワタシが、ワタシがあの賢者を殺したんだ!」
絶望するディックを見て、アランは勝利を確信した。出来てしまった。
砕け散ったベルの姿は見えない。見えないけれど、勝った。
そう思うと、アランは狂気に満ちた笑いを上げながら、自分の手柄を称賛する。
「あらぁ? わたくしの活躍はどうなったのかしらぁ?」
そんなアランへと少し後ろに立っているラーウネから文句が来る。
だが、そんなのは関係ない。何故なら、邪魔な賢者を殺すことが出来たのだから!
だけど、また用事を頼んだりするのだ。だからゴマ擦りは大事だ。
そう考えたのかアランは笑いながら口を開く。
「はいはい、そうでしたそうでした。ラーウネの協力もあって、賢者を殺すことが出来たんでした! ありがとうございますぅ!!」
「あらぁ、何というかありがたみが全然篭っていないような感謝の言葉ねぇ。けど、それがお前らしいわねぇ」
「はいはい、申し訳ありませんねえ。というか、何だかついさっきからお前の口調が滑らかになっていないか? こう、片言だったのが流量な感じで、それに何か幼………………え”?」
ようやく、ようやくアランはラーウネのほうを振り向いた。
そして……アランは固まった。何故なら……、気づいてしまったからだ。
先ほどから自分に話しかけていたのは、ラーウネではないということに……。
「ようやく気づきましたか? どうでしたか、私のモノマネ。そっくりだったでしょう?」
「お、おま……え? …………え?」
「う、ぁ……ぅ」
ニコリと微笑むベルを前にアランは固まったが、彼女の手に握られた物に気づき言葉を失った。
それは、頭だった……。それも、彼が賢者を殺すために呼び寄せ、殺したと思えるほどの決定打を打ち込んだ仲間の頭だった。
即ち――ラーウネの頭。
「私が持っている頭以外は塵も残さず燃やしましたので、もう何処にもありませんよ。……ああ、ちなみに頭の中にデスマンドラゴラの核となっている種があるのも知っていますので妙な真似をしようとした瞬間、消し飛ばしますよ?」
「――――っ!!」
チラリと視線を自分の手に向けると、何時の間にか恐ろしい表情を浮かべながら、ベルが掴んでいない髪を螺旋状に纏め上げて彼女の腕に突き刺さろうとするラーウネの頭があった。
気づかれている。それに気づいたラーウネは何も出来ずに、伸ばしていた髪を地面へと落とし……本物の生首のように動かなくなった。
それを見ながらアランは全身がガクガクと震えてしまっていることにようやく気がついた。
だが聞かなくてはならない。そう考えてしまったのか、自分でも情けないと思えるほどに震えた声で口を開いた。
「お、おまっ、おまえ……し、死んだんじゃ…………死んだんじゃなかったのかよっ!?」
「もしかして、固まったところを岩石が命中して死んだ。と思っているんですか?」
「あっ、当たり前だ! ラーウネの援護があったが、あの岩石はワタシ自身最高傑作だと思える出来だったのだぞっ!?」
「…………へぇ、あんな物が最高傑作、ですか?」
落胆、一言で表すならばそんな表情をしながら、チワワよりも情けないように震えながら吠える男をベルは見る。
だがアランはその表情には気づかずに、放った岩石には自身が持つ魔力を大量に込めて撃ち出したのだと自信満々に語る。
……のだが、ベルにはそんな自慢に近いような言葉は届いていなかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
――はぁ…………がっかりです。
迫り来る岩石を見ながら、ベルは体が動かせないので心の中で大きく溜息を吐いた。
(固めるまでは良かったのに……、この岩石。これは駄目です。これですべてが台無しじゃないですか……。
私だったら、動かせない間に相手を時空の狭間に落とすか、溶岩に沈めるとか色々と固まって動かせない利点を取りますよ? それが何でただの岩石を撃ち出して砕こうとしてるのですか? 見得ですか? 格好良く見せたいからですか?)
どんな攻撃をしてくるか、そう期待していた自分が馬鹿みたいだと思いながら、ベルはゆっくりと岩石を見る。
威力とぶつかったときに、自分はどうなるのかを即座に考え……ベルは静かに魔力を体内に込め始める。
込められた魔力により、お腹の下が熱くなるのを感じ始め、爆弾を抱えているような気分になる。
そんな爆弾を抱えながら、命中した瞬間に開放することを考えながら彼女はジッと待つ。
するとそのときは訪れ、岩石は自分を覆うように固まっている液体に接触したようで、パキリとプラスチックが割れるような音が耳に届き、振動が伝わった。
(――――――ふぅ~……っはぁ!!)
――同時に、ベルは魔力を一気に放出した。
放出した魔力は圧を周囲に撒き散らし、まるで前の世界の一昔前の格闘漫画でよくあるような気とかオーラのように溜め込んだ魔力が彼女の体を覆った。
彼女が放出した魔力と岩石の衝撃で巻き上がった土煙の中、固まっていた液体が内側から粉砕されて欠片が周囲に飛び散り、体を砕こうとしてた岩石が粉々に砕け散った。
そして飛び散った欠片を見ていると、ベルがバラバラになったと勘違いしたディックの絶叫とアランの笑い声が届く。
その下品な笑い声と絶望に満ちた叫び声を聞きながら、ベルはトンと跳ぶ。
――瞬間、魔力で覆われ強化されたベルの体は土煙を一瞬だけ切り裂くと一足でラーウネの背後へと到着した。
彼女もベルを倒したと思っているようで、口元に笑みを浮かべているがアランのように馬鹿みたいにはしゃぐ気は無かったようだ。
そんな彼女へとベルは声を掛ける。
「まあ、はしゃいでいたとしても別に良かったんですけどね」
「え? ――――かっ!?」
背後から声がし、ラーウネが振り返ろうとした瞬間――胸から腕が生えた。
一瞬何があったのか分からないラーウネだったが、その直後首に痛みが走ったと思ったら世界が回転し……視界に自身の体が燃えるのを捉えた。
それを見て理解した。自分は何者かによって首を斬られたのだと言うことを……。
いや、何者ではない……賢者だ。賢者が自分の首を刈ったのだ!
それを理解しながら、ベルが自分に似ているようでまったく似ていないような声真似を行うのを見ていたのだが、アランと会話をしている最中に核である種を体内に送ることで肉体を乗っ取るなりしようと隙を見ていたが、無理だった。
そんな絶体絶命としか言いようが無い状況の中で、ベルに髪を掴まれて成す術が無いラーウネは自信満々に自分の放った魔法がどれほど素晴らしい物だったかを語り続けるアランを憐れな瞳で見ていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「…………はあ、駄目です。全然駄目じゃないですか……。お前は全然駄目ですね。魔人族の中ではかなり下の地位だったんでしょうね」
「は? な、何がだ……!」
自信満々に語っていたアランへと、溜息と共にベルがそう告げると……ぽかん、と間抜け面をアランは晒し、すぐにベルを睨みつける。
だからベルは駄目な理由を語り始める。……が、冥土の土産、では無くただの自分を楽しませなかった文句と言う意味を込めてだ。
「お前が全然駄目だと言った最大の理由。それは私にトドメとして『ストーンショット』を撃ち出したことです。
私が動けないんですから、せめて『マグマプール』とか『ピットフォール』なり使って、落としたり沈めたりしたら良いじゃないですか。……でも、使えないんでしょう?」
「っ!! な、何を根拠に……!?」
「見得張らなくても分かりますよ。だって、お前は呪術道具の製作は職人より少し良いけど、魔法の腕は全然だったのを数日間視ていましたから、この眼で」
視ていた。――その一言にアランは固まる。
(みていた……だと? そういえば、あのとき……ワタシに痛い目を見させたときもみているとこいつは言っていた……。ま、まさか、本当に見ていたっていうのか……?)
ごくり、と喉を鳴らしながら……アランはようやく目の前の化け物の異質さを理解する。
いや、理解してたつもりだったのに、改めて理解させられたのだ。
(じゃ、じゃあ……、ワタシが持っているこれの存在も気づいてるっていうのか?)
無意識にアランは胸元に隠し持っている自身の切り札である呪いの短剣を握り締める。
そんなアランの様子を見ながらベルは言う。
「別にその胸元に隠した呪いの短剣を使っても構いませんよ? それなら私にも有効だと思いますから」
「っ!!?」
クスリと笑いながらベルはアランに向けて言うと、彼はもう怯えすぎているようでガクガクと震えているようだった。
……が、追い詰められた者ほど厄介でしかないと言うように、アランは必死にどうするべきかを考える。
(くそっ、くそっ! ど、どうする? この短剣を刺す? い、いや……きっとこれは有効って言ってるけど聞かないに違いない……! あの賢者に、化け物に何か別のものをで注意を反らすことが出来れば、そうすればきっと逃げられる……!)
どうやら頭の中ではもう戦うよりも逃げるという選択をとっているらしく、必死にアランは周囲を見渡す。
何か、何か無いか……! そう思いながら必死に見渡し、彼は見つけた……。
(こ、これだ……! これしかないっ! もうあの豚姫様との約束なんてあるようで無いものだから、これで行きましょうかねぇ!!)
きっとベルは気づいていない、そう考えながら溢れ出る笑みを堪えながらアランはそれを見る。
「さあ、どうしますか? その呪いの短剣で私を刺します? それとも、どうしますか?」
「どうするかって……? そんなの、決まってるでしょう? こう……するんですよぉ!!」
懐から呪いの短剣を取り出し、アランは一気に駆け出した。
だが、向かう先はベルではなく……唖然とした表情でアランとベルを見ていたディックに向けて、だった。
「はいはい、ワタシが生き延びるために死になさい、クソガキィ!!」
「え、う――――うわぁぁぁぁぁぁっ!!?」
迫り来る死の恐怖、その恐怖に逆らえずにディックはその場から動けなくなってしまった。
醜悪な笑みを浮かべながら、アランが近づくとディックに向けて――呪いの短剣は振られた。
そして――振られた短剣は、肉を切り裂き、赤い血を撒き散らしたのだった……。
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