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第一章 賢者と賢者の家族
第34話 ベル、倒れる。
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怯えと狂気を滲ませた、見る者がその相手の精神を疑うような瞳をしながら、アランはディックへと迫る。
それに恐怖し動けないディックへと、握り締めた短剣を振り上げ……彼に向けて振り下ろされた。
だが、そんなディックに迫る死との間に……いや、ディックを抱き締めるように何かが現れた。
「ぐ……ぅ……っ!!」
「――――え」
此処に来てから嗅ぎ慣れた甘く、優しい香り……それに混じるようにして、鉄錆の香りがディックの嗅覚を刺激する。
それが、何であるか頭が追いつかないのか、惚けた声を上げながらディックは目の前の出来事を見る。
一方、ディックに振り下ろすはずだった呪いの短剣が変更前の当初の目的である人物を斬りつけたことにアランが戸惑った様子を見せたが起きたそれが事実であることが理解出来てしまっているのか、次第に笑みを深くし始めた。
「……は? え、こ、これ……え? ほ、本当に? 本当なのか……? クソガキ殺して逃げるはずだったのに、まさか……まさか賢者を斬りつけることが出来たのかっ!?」
「ベ………………ル……………………? っっ!!?」
震えながらディックが自分を抱き締めているベルの背中へと手を回す。
すると、ヌルリ……とした感触が手に伝わり、恐る恐るヌルリとした物がついた手へと視線を向けた。
手が、赤かった……いや、紅かった。何が起きたのか分からなかった。
いや、違う。分かっている。分かっているけれど、理解したくなかった。
だが理解しなければいけない。そんな考えがディックの頭を満たし……ようやくディックは、両手にベッタリとついているものは血であることを、認識した。
そして……その血はベルから流れており、自分を庇って出来たものだと……ようやく頭が追いついた。
だが、体が、口が震え……何も言えない。
そんなディックと傷付いたベルを見ながら、アランは……。
「ヒャハ……ヒャハハ……、ヒャハハハハハハハハハハハーーーーッ!! やった、やったぁぁああああぁぁぁっ!!」
「ちょ、っとぉ~~! ワラってるバアイ、じゃない、でしょぉ? ハヤく、わたく、しをツレてニゲなさいよぉ!」
「! おっと、そうだった。そうだった。けど、今ならクソガキを殺すことも出来るんじゃねぇのか?」
高笑いをするアランへと放置された首だけラーウネが声を掛ける、するとそれを思い出したように首のほうへと歩こうとする……が自分たちが有利な立ち位置に立ったことに気づき、ディックのほうをニヤリと笑みを浮かべながら見る。
それが何を意味するのかディックは気づき、ビクリと震えた。
護ってくれる人が居ない、自分は怖くて何も出来ない。
そしてアランは再び短剣を構えると、怯えるディックに向けてゆっくりゆっくりと歩いていく。
賢者が倒れたから出来る行動だ。さすがヘタレ、憧れない。
……が、正直言うならば此処はとっとと逃げるべきだっただろう。何故なら…………。
「っ!? な、なんだ……?! これは、いったいなんな――」
「ア、アランッ!? い、いったいな――――」
突如、アランを覆うような黒く巨大な球体が現れると彼の体を吸い込んでいった。
突然のことで驚いた様子のディックとラーウネだったが、またも球体は現れ……今度はラーウネの首を吸い込んだ。
そして、球体が消え、辺りが静まり返ったとき……ディックは気づいた。ベルが……彼らが立っている位置に向けて手を突き出していることに。
「ア、『アナザー……ディメンション』……。これで、おまえたちは……わたしが、きょかするまで……もどれ、ません……」
「ベ、ベルッ!?」
息絶え絶えにベルはそう言いながら、力尽きたように腕を下ろす……いや、落とした。
それを見ながら慌てながらディックが彼女を抱え起こそうとする。
けれど、焦っているのか……それとも、気を失いかけているのか予想以上に重く感じた。
「ベルッ! ベルッ!! しっかり、しっかりしてくれよ……! なあ……! なあっ!!」
「だい……じょう、ぶ……です、よ……。すこ、し……ねむれ、ば……元気に……なります……から」
今にも泣き出しそうな顔をしながらディックがベルの体を揺すると、彼女は弱々しく笑う。
その時点で大丈夫じゃない。そうディックは確信する。
「な、なにか……何かないのか……? ベルを、ベルをたすけないと……!」
焦りながら必死に周囲に何かないかとディックは首を動かす。
けれど、周囲にあるのは荒らされた地面だけだった。
(どうする? どうする、どうするどうするどうするどうするどうする! はやく、はやくしないと、はやくしないとベルが……ベルがっ!!)
『ふぁあああ~~~~。むにゃあ……、…………あれぇ……ここどこぉ~?』
何とかしようと考え続け焦り続けてしまうディックの耳へと、どこか暢気な声……いや、思念が届く。
振り返ると、今まで気を失っていたクラリスが欠伸をしながら起き上がるのが見えた。
彼女は寝惚けてるようで、キョロキョロと周囲を見渡し……ディックたちが居るのに気づくと笑顔でそちらに向かった。
『おふぁよぉ~……でぃっくおにちゃん、ベルママ~』
「ク、クラリス……、目が……さめたんだ」
『ど~したの~? ベルママ~? でぃっくおにちゃん、ベルママどうしたの~?』
挨拶をし、クラリスはディックの言葉に首を傾げつつ……返事がないベルがどうしたのか気になってディックと向き合うようにベルの前へと歩く。
『ベルママ~? おきてよ~、ねてるの~? ベルママ~?』
蒼ざめた表情のベル……。それがいったい何を意味するのか分からないクラリスは、ベルの肩へと手を置くと体を揺すり始める。
肩を揺すられ、ベルの体が揺れ……、呻き声が口から洩れる。それを見ていたディックは咄嗟にクラリスの手をベルから払い除けた。
「やめろよっ、クラリスッ!!」
『ひゃぅ!? でぃ、でぃっく……おにちゃん?』
「クラリス……ベルは、ベルはしにそうなんだよ! お、おれを……おれをかばって、たんけんで斬りつけられて……!」
『え…………しぬ? しぬって、なに? ねてるわけじゃ、ないの……?』
今にも泣きそうな表情をするディックに驚いていたクラリスもただ事ではないと理解したようだが死の概念が分かっていないために、きょとんとした表情でオウムのように聞き返す。
その言葉を聞いて、ディックは驚いたようにクラリスを見たけれど、たどたどしく彼女に語り始めた。
「し、しぬっていうのは……もう、もう会えないこと、なんだよ……」
『……もうあえないの……? でも、ベルママここにいるよ?』
「ああ、会えない……。ここにいるけど、もう会えないんだよ!! それに、いっしょにごはんを食べたり、いっしょにねたりも……もう、できないんだ」
『ええっ!? ベ、ベルママといっしょにごはんたべれないの?! ねたりもできないの?! やだぁ! そんなのやだぁ~~!!』
「お、お、……お、おれだって、おれだっていやだよ! けど、けど、どうしたら良いのかわかんないんだよっ!!」
ディックの言葉で死ぬというのがどういうことかを何となくだが理解し始めたクラリスは目に大粒の涙を浮かばせながら、駄々を捏ね始めた。
その言葉にディックも本音が洩れて、クラリスに当たるように怒鳴る。
怒鳴り声にビクリとクラリスの体が震えるけれど、そのお陰か駄々を捏ね続けている場合じゃないことを理解したらしい。
『ぐす……っ! そ、うだ……、でぃっくおにちゃん……。ベ、ベルママの……おくすりは、ないの……?』
「くすり……そ、そうだ! くすり、くすりだっ!!」
鼻を啜るクラリスの言葉を聞き、ディックは思い出す。
回復薬……ポーションの存在を。あれを使えば、彼女の傷も癒すことが出来る。
そうディックは思う……けれど、すぐにそれが何処にあるのかを思い出した……。
「あ……、けど、ポーションは……ぜんぶベルが持っていったんだ……」
『あぅ……、そう、だった……』
多分、ベルが起きていれば、何時ものように何処かから取り出すことが出来たはず。
けれど今彼女は目を覚まさない。……それどころか死への階段を着実に上ってしまっているのだ。
もう、どうにも出来ないのか? そんな風にディックもクラリスも考え始めているのか、表情が暗くなる。
けれど、クラリスは諦めていなかった。暗い表情のまま下唇を噛み締めていたが、何かを決意したように顔を上げた。
『……くらりすが、つくる…………』
「え?」
『くらりすが、ぽーしょんをつくるっ!!』
「えっ!? ク、クラリス! お、おまえ……ほんとうに作れるのか?」
『わかんない……けど、けどつくらないと、ベルママしんじゃうんだよね? だったら、だったらくらりすがつくる! ぽーしょんつくる!!』
唖然とするディックと、決意を込めてそれを思念に載せるクラリス。
決意が込められた瞳を前に、唖然としていたディックにも段々と助けたい、という思いが心を燃え上がらせる。
だから、ディックはクラリスに聞いた。
「クラリス……、おれは……なにをすれば良い? おれも、ベルを……助けたいんだ」
『でぃっくおにちゃん……。うんっ! いっしょにベルママ、たすけようっ!!』
ディックの瞳を見て、クラリスも嬉しそうに笑い頷く。
そして、クラリスは手順を思い出そうとしているのか、指を折りながらすぐにディックにしてもらいたいことを口にする。
『くらりすはさぎょーべやでじゅんびをするから、でぃっくおにちゃんはいそいでやくそうをとってきて!』
「やくそう……やくそうだな! わかった、すぐに取りに行くから! クラリスはまっててくれよ!!」
『うんっ! はやくもどってきてね、でぃっくおにちゃん!!』
「ああ、すぐにビュンって行ってやくそうを取ってくるから、まっててくれよ!!」
自信満々にディックはそう口にし、クラリスに見送られながら彼は家の敷地から飛び出した。
小さな体に、大きな決意を胸に秘めて――。
――――――――――
17/07/08 一部修正。
それに恐怖し動けないディックへと、握り締めた短剣を振り上げ……彼に向けて振り下ろされた。
だが、そんなディックに迫る死との間に……いや、ディックを抱き締めるように何かが現れた。
「ぐ……ぅ……っ!!」
「――――え」
此処に来てから嗅ぎ慣れた甘く、優しい香り……それに混じるようにして、鉄錆の香りがディックの嗅覚を刺激する。
それが、何であるか頭が追いつかないのか、惚けた声を上げながらディックは目の前の出来事を見る。
一方、ディックに振り下ろすはずだった呪いの短剣が変更前の当初の目的である人物を斬りつけたことにアランが戸惑った様子を見せたが起きたそれが事実であることが理解出来てしまっているのか、次第に笑みを深くし始めた。
「……は? え、こ、これ……え? ほ、本当に? 本当なのか……? クソガキ殺して逃げるはずだったのに、まさか……まさか賢者を斬りつけることが出来たのかっ!?」
「ベ………………ル……………………? っっ!!?」
震えながらディックが自分を抱き締めているベルの背中へと手を回す。
すると、ヌルリ……とした感触が手に伝わり、恐る恐るヌルリとした物がついた手へと視線を向けた。
手が、赤かった……いや、紅かった。何が起きたのか分からなかった。
いや、違う。分かっている。分かっているけれど、理解したくなかった。
だが理解しなければいけない。そんな考えがディックの頭を満たし……ようやくディックは、両手にベッタリとついているものは血であることを、認識した。
そして……その血はベルから流れており、自分を庇って出来たものだと……ようやく頭が追いついた。
だが、体が、口が震え……何も言えない。
そんなディックと傷付いたベルを見ながら、アランは……。
「ヒャハ……ヒャハハ……、ヒャハハハハハハハハハハハーーーーッ!! やった、やったぁぁああああぁぁぁっ!!」
「ちょ、っとぉ~~! ワラってるバアイ、じゃない、でしょぉ? ハヤく、わたく、しをツレてニゲなさいよぉ!」
「! おっと、そうだった。そうだった。けど、今ならクソガキを殺すことも出来るんじゃねぇのか?」
高笑いをするアランへと放置された首だけラーウネが声を掛ける、するとそれを思い出したように首のほうへと歩こうとする……が自分たちが有利な立ち位置に立ったことに気づき、ディックのほうをニヤリと笑みを浮かべながら見る。
それが何を意味するのかディックは気づき、ビクリと震えた。
護ってくれる人が居ない、自分は怖くて何も出来ない。
そしてアランは再び短剣を構えると、怯えるディックに向けてゆっくりゆっくりと歩いていく。
賢者が倒れたから出来る行動だ。さすがヘタレ、憧れない。
……が、正直言うならば此処はとっとと逃げるべきだっただろう。何故なら…………。
「っ!? な、なんだ……?! これは、いったいなんな――」
「ア、アランッ!? い、いったいな――――」
突如、アランを覆うような黒く巨大な球体が現れると彼の体を吸い込んでいった。
突然のことで驚いた様子のディックとラーウネだったが、またも球体は現れ……今度はラーウネの首を吸い込んだ。
そして、球体が消え、辺りが静まり返ったとき……ディックは気づいた。ベルが……彼らが立っている位置に向けて手を突き出していることに。
「ア、『アナザー……ディメンション』……。これで、おまえたちは……わたしが、きょかするまで……もどれ、ません……」
「ベ、ベルッ!?」
息絶え絶えにベルはそう言いながら、力尽きたように腕を下ろす……いや、落とした。
それを見ながら慌てながらディックが彼女を抱え起こそうとする。
けれど、焦っているのか……それとも、気を失いかけているのか予想以上に重く感じた。
「ベルッ! ベルッ!! しっかり、しっかりしてくれよ……! なあ……! なあっ!!」
「だい……じょう、ぶ……です、よ……。すこ、し……ねむれ、ば……元気に……なります……から」
今にも泣き出しそうな顔をしながらディックがベルの体を揺すると、彼女は弱々しく笑う。
その時点で大丈夫じゃない。そうディックは確信する。
「な、なにか……何かないのか……? ベルを、ベルをたすけないと……!」
焦りながら必死に周囲に何かないかとディックは首を動かす。
けれど、周囲にあるのは荒らされた地面だけだった。
(どうする? どうする、どうするどうするどうするどうするどうする! はやく、はやくしないと、はやくしないとベルが……ベルがっ!!)
『ふぁあああ~~~~。むにゃあ……、…………あれぇ……ここどこぉ~?』
何とかしようと考え続け焦り続けてしまうディックの耳へと、どこか暢気な声……いや、思念が届く。
振り返ると、今まで気を失っていたクラリスが欠伸をしながら起き上がるのが見えた。
彼女は寝惚けてるようで、キョロキョロと周囲を見渡し……ディックたちが居るのに気づくと笑顔でそちらに向かった。
『おふぁよぉ~……でぃっくおにちゃん、ベルママ~』
「ク、クラリス……、目が……さめたんだ」
『ど~したの~? ベルママ~? でぃっくおにちゃん、ベルママどうしたの~?』
挨拶をし、クラリスはディックの言葉に首を傾げつつ……返事がないベルがどうしたのか気になってディックと向き合うようにベルの前へと歩く。
『ベルママ~? おきてよ~、ねてるの~? ベルママ~?』
蒼ざめた表情のベル……。それがいったい何を意味するのか分からないクラリスは、ベルの肩へと手を置くと体を揺すり始める。
肩を揺すられ、ベルの体が揺れ……、呻き声が口から洩れる。それを見ていたディックは咄嗟にクラリスの手をベルから払い除けた。
「やめろよっ、クラリスッ!!」
『ひゃぅ!? でぃ、でぃっく……おにちゃん?』
「クラリス……ベルは、ベルはしにそうなんだよ! お、おれを……おれをかばって、たんけんで斬りつけられて……!」
『え…………しぬ? しぬって、なに? ねてるわけじゃ、ないの……?』
今にも泣きそうな表情をするディックに驚いていたクラリスもただ事ではないと理解したようだが死の概念が分かっていないために、きょとんとした表情でオウムのように聞き返す。
その言葉を聞いて、ディックは驚いたようにクラリスを見たけれど、たどたどしく彼女に語り始めた。
「し、しぬっていうのは……もう、もう会えないこと、なんだよ……」
『……もうあえないの……? でも、ベルママここにいるよ?』
「ああ、会えない……。ここにいるけど、もう会えないんだよ!! それに、いっしょにごはんを食べたり、いっしょにねたりも……もう、できないんだ」
『ええっ!? ベ、ベルママといっしょにごはんたべれないの?! ねたりもできないの?! やだぁ! そんなのやだぁ~~!!』
「お、お、……お、おれだって、おれだっていやだよ! けど、けど、どうしたら良いのかわかんないんだよっ!!」
ディックの言葉で死ぬというのがどういうことかを何となくだが理解し始めたクラリスは目に大粒の涙を浮かばせながら、駄々を捏ね始めた。
その言葉にディックも本音が洩れて、クラリスに当たるように怒鳴る。
怒鳴り声にビクリとクラリスの体が震えるけれど、そのお陰か駄々を捏ね続けている場合じゃないことを理解したらしい。
『ぐす……っ! そ、うだ……、でぃっくおにちゃん……。ベ、ベルママの……おくすりは、ないの……?』
「くすり……そ、そうだ! くすり、くすりだっ!!」
鼻を啜るクラリスの言葉を聞き、ディックは思い出す。
回復薬……ポーションの存在を。あれを使えば、彼女の傷も癒すことが出来る。
そうディックは思う……けれど、すぐにそれが何処にあるのかを思い出した……。
「あ……、けど、ポーションは……ぜんぶベルが持っていったんだ……」
『あぅ……、そう、だった……』
多分、ベルが起きていれば、何時ものように何処かから取り出すことが出来たはず。
けれど今彼女は目を覚まさない。……それどころか死への階段を着実に上ってしまっているのだ。
もう、どうにも出来ないのか? そんな風にディックもクラリスも考え始めているのか、表情が暗くなる。
けれど、クラリスは諦めていなかった。暗い表情のまま下唇を噛み締めていたが、何かを決意したように顔を上げた。
『……くらりすが、つくる…………』
「え?」
『くらりすが、ぽーしょんをつくるっ!!』
「えっ!? ク、クラリス! お、おまえ……ほんとうに作れるのか?」
『わかんない……けど、けどつくらないと、ベルママしんじゃうんだよね? だったら、だったらくらりすがつくる! ぽーしょんつくる!!』
唖然とするディックと、決意を込めてそれを思念に載せるクラリス。
決意が込められた瞳を前に、唖然としていたディックにも段々と助けたい、という思いが心を燃え上がらせる。
だから、ディックはクラリスに聞いた。
「クラリス……、おれは……なにをすれば良い? おれも、ベルを……助けたいんだ」
『でぃっくおにちゃん……。うんっ! いっしょにベルママ、たすけようっ!!』
ディックの瞳を見て、クラリスも嬉しそうに笑い頷く。
そして、クラリスは手順を思い出そうとしているのか、指を折りながらすぐにディックにしてもらいたいことを口にする。
『くらりすはさぎょーべやでじゅんびをするから、でぃっくおにちゃんはいそいでやくそうをとってきて!』
「やくそう……やくそうだな! わかった、すぐに取りに行くから! クラリスはまっててくれよ!!」
『うんっ! はやくもどってきてね、でぃっくおにちゃん!!』
「ああ、すぐにビュンって行ってやくそうを取ってくるから、まっててくれよ!!」
自信満々にディックはそう口にし、クラリスに見送られながら彼は家の敷地から飛び出した。
小さな体に、大きな決意を胸に秘めて――。
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17/07/08 一部修正。
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