夜の遊園地

桐山密

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夜の遊園地-3

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「遊園地・・・って言うかそんな感じの場所が現れるんだ」
 何度も繰り返す徹也の言葉の意味を夏希は汲み取れなかった。
「遊園地が来るの?巡業しているサーカスみたいに?」
「いや、遊園地が現れるんだ」
「現れるの?」
「そう現れるの」
「お義父さんが作るんじゃなくて?」
「作るんじゃなくて、現れるの」
 ――意味がわかんない。
 夏希はさっきからこんな調子で続いている会話に頭がおかしくなりそうだった。
 最初は生まれてくる初孫の為に義父が遊び場を作ってくれたかと思ったが、義父は法律関連の図書を専門に扱う出版社の編集長を長年務めた人だ。
 大工仕事が得意とは思えないし、日曜大工をしているのを見た事もない。
 優しい徹也にしつこく何度聞いても怒られたり口げんかにはならないだろうが、夏希はこれ以上質問する事は止めた。
 二人を乗せたサニーは、既に隣町に入っている。
 じきに徹也の実家だし、着けば徹也が何を言っているのか理解できるだろうと思った。
 そう夏希が思っている間に、実家に着いた。
 駐車場はここから少し離れている空地なので、夏希は徹也に促され先に玄関前で降りた。
 夏希の目の前には、木造二階建ての家が建っている。
 確か二週間ほど前にも訪れていたが、その時と何か変わったのだろうかと、夏希はじっくりと家を観察した。
 築三十年は経っている家は、日本中どこにでもあるような標準的な家で、屋根は瓦葺、引き戸の玄関を入ると奥の台所までの廊下。
 廊下を挟んで左には応接室と居間、右には二階へ上がる階段。
 階段下にトイレと風呂場への入口が並んでいる。少し急な階段を上がると正面に部屋。
 これは義父母の寝室で確か今は物置代わりになっていたはず。
 左に回ると二部屋。手前が妹さんの部屋で奥が徹也の部屋……だったはず。
 夏希は記憶を辿って家の間取りを思い出していた。
 妊娠してからは二階に上がる事は無かったが、多分間違いは無いと思った。居間と応接室に面して小さな庭がある。
 本当に小さな庭で大股で数歩歩けば塀に突き当たる。そんな場所に遊園地が出来る訳ない。
 一応南向きだが隣の家の影響で日当たりが悪く、家庭菜園すらできないと義父が苦笑していた事を思い出す。
「確か三階とか言っていたわよね」夏希は視線を上げた。
 自分の吐く息が白くなっている。その霞の向こうに明かりの無い二階が見える。
「三階……無いわよね」
 当たり前か、と呟くと徹也が妊婦バッグをひっさげて小走りで来た。
「先に入ってればいいのに」
「そういう訳にはいかないでしょ」
「え?なんで?」
 こういった所が男の人だなぁと、夏希は微笑ましさも感じつつも軽い苛立ちを覚えた。
「早く中に入ろう。体冷やしたら、駄目」
 徹也は夏希の冷えた手を引き、玄関へ向かった。

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