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夜の遊園地-8
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「あの時、確か俺はメリーゴーラウンドに親父と乗ってその後クルクル回る、えっと何だっけ?」
「コーヒーカップ?」
「そうそうコーヒーカップ。それに乗った」
「お義母さんは?」
「近くのベンチに座って俺達を見てたよ。一緒に乗ろうって言ったけど激しく動く乗り物は苦手だって言って」
徹也は言いながらその風景を思い出してきた。母はニコニコしながら、ベンチに座りずっと俺と親父を見ていた。
「裕子の時さ、お袋悪阻が酷かったんだ。子供心にも覚えているよ。ずっと寝たきりでさ、ちょっと食べ物を口にしただけでげーげー吐くし」
「お義母さん、そうだったんだ」
夏希は生前の義母の顔を思い浮かべた。徹也と付き合い始めた頃、実家に遊びに行った時初めて会ったが痩せて小柄な女性だったという第一印象がある。
義母の葬式の時に家族のアルバムを見せてもらったが昔から痩せた人で、体力の必要な出産や妊娠中は大変だったろうなと思う。
夏希は幸い悪阻は軽かったが、義母と同じような悪阻の苦しみを味わっている友人の話を聞くたびに、自分は本当に恵まれていると思った。
「だけどこっちに居る時はお袋が元気になってさ。階段の時もそうだったけど体が軽くなって気持ち悪さも全然なくなったって言ってた。すげー楽しそうだったなぁ。今どう?体軽い?」
「そうね、あんまり実感ないわ。でも不思議なの。あのね徹ちゃん、驚かないでね」
「え、どうしたの」
「驚かないでよ」
「う……うん」訳が分からないが徹也は心構えをした。
「赤ちゃんね、今お腹の中にいないの」
大声を出そうとした徹也の口を夏希が待ってましたとばかりに抑えた。
「驚かないって言ったでしょ」
予想してたとは言え、そのまんまの反応を見せる徹也がおかしくて夏希は笑いだしそうだった。
徹也は夏希の手をどかそうとするが夏希は「だめ、声出さないって約束する?」と聞いてきた。
徹也は仕方なく頷いた。夏希は手をどかした。
「お腹の中に居ないってどういうことさ?」
緊迫した小声で徹也が聞いてくる。
「居ないんだけど、居るの。だから心配しないで」
「居るの? 居ないの?」
「居ないけど居るの」
禅問答だった。夏希は徹也の千変万化する表情にお腹を抱えて笑ってしまった。
「夏希ぃ」
優しい徹也の性格を知っている夏希は、これ以上徹也を不安にさせるのはあまりにも不憫だと思い、笑いを堪えて説明する事にした。
「本当に心配しないで。多分お義母さんの時も同じこと起きていたと思う。悪阻から解放された喜びもあったと思うけど、なんて言うのかな。
お腹の中の赤ちゃんも、ここではお腹から出て行って、どこかで遊んでいるんだなって分かるの。上手く説明できないけど、そういうこと」
「そういうことって」
「これはね、母親だけが分かる特権なのです」
夏希は腰に両手を当て胸を反って得意げな顔をした。
徹也はその顔を見て笑ってしまった。そりゃ男親の俺は分からないし敵わないな。徹也は降参した。
「ねぇ徹ちゃん」
また夏希が何か言いそうな顔になったが、徹也は夏希が何を言うのか大体見当がついていた。
「次は何だい?」
「メリーゴーランド乗りたい。妊娠してからずっと慎重に動いていたからちょっと刺激が欲しい」
「言うと思った」
二人は目を合わせて笑った。
そして手を繋ぎ人々の笑い声が絶えないメリーゴーランドが回る場所へ向かって歩いていった。
「コーヒーカップ?」
「そうそうコーヒーカップ。それに乗った」
「お義母さんは?」
「近くのベンチに座って俺達を見てたよ。一緒に乗ろうって言ったけど激しく動く乗り物は苦手だって言って」
徹也は言いながらその風景を思い出してきた。母はニコニコしながら、ベンチに座りずっと俺と親父を見ていた。
「裕子の時さ、お袋悪阻が酷かったんだ。子供心にも覚えているよ。ずっと寝たきりでさ、ちょっと食べ物を口にしただけでげーげー吐くし」
「お義母さん、そうだったんだ」
夏希は生前の義母の顔を思い浮かべた。徹也と付き合い始めた頃、実家に遊びに行った時初めて会ったが痩せて小柄な女性だったという第一印象がある。
義母の葬式の時に家族のアルバムを見せてもらったが昔から痩せた人で、体力の必要な出産や妊娠中は大変だったろうなと思う。
夏希は幸い悪阻は軽かったが、義母と同じような悪阻の苦しみを味わっている友人の話を聞くたびに、自分は本当に恵まれていると思った。
「だけどこっちに居る時はお袋が元気になってさ。階段の時もそうだったけど体が軽くなって気持ち悪さも全然なくなったって言ってた。すげー楽しそうだったなぁ。今どう?体軽い?」
「そうね、あんまり実感ないわ。でも不思議なの。あのね徹ちゃん、驚かないでね」
「え、どうしたの」
「驚かないでよ」
「う……うん」訳が分からないが徹也は心構えをした。
「赤ちゃんね、今お腹の中にいないの」
大声を出そうとした徹也の口を夏希が待ってましたとばかりに抑えた。
「驚かないって言ったでしょ」
予想してたとは言え、そのまんまの反応を見せる徹也がおかしくて夏希は笑いだしそうだった。
徹也は夏希の手をどかそうとするが夏希は「だめ、声出さないって約束する?」と聞いてきた。
徹也は仕方なく頷いた。夏希は手をどかした。
「お腹の中に居ないってどういうことさ?」
緊迫した小声で徹也が聞いてくる。
「居ないんだけど、居るの。だから心配しないで」
「居るの? 居ないの?」
「居ないけど居るの」
禅問答だった。夏希は徹也の千変万化する表情にお腹を抱えて笑ってしまった。
「夏希ぃ」
優しい徹也の性格を知っている夏希は、これ以上徹也を不安にさせるのはあまりにも不憫だと思い、笑いを堪えて説明する事にした。
「本当に心配しないで。多分お義母さんの時も同じこと起きていたと思う。悪阻から解放された喜びもあったと思うけど、なんて言うのかな。
お腹の中の赤ちゃんも、ここではお腹から出て行って、どこかで遊んでいるんだなって分かるの。上手く説明できないけど、そういうこと」
「そういうことって」
「これはね、母親だけが分かる特権なのです」
夏希は腰に両手を当て胸を反って得意げな顔をした。
徹也はその顔を見て笑ってしまった。そりゃ男親の俺は分からないし敵わないな。徹也は降参した。
「ねぇ徹ちゃん」
また夏希が何か言いそうな顔になったが、徹也は夏希が何を言うのか大体見当がついていた。
「次は何だい?」
「メリーゴーランド乗りたい。妊娠してからずっと慎重に動いていたからちょっと刺激が欲しい」
「言うと思った」
二人は目を合わせて笑った。
そして手を繋ぎ人々の笑い声が絶えないメリーゴーランドが回る場所へ向かって歩いていった。
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