悪役令嬢に転生しましたが、破滅フラグが立ちおわっているので足掻きまくったら魔王になって乙女ゲーを間近で見る事になりました。

幌須 慶治

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プロローグ

私の命運は既に尽きていたようです。

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「いっつ……あれ?ここは?」

 目を覚ました私の視界に入ってきたのは知らない天井……?じゃないわね、私の部屋のベッドの天蓋ね。

「お嬢様、お目覚めになられましたか!?」

 心配そうな顔をした美少女メイドが慌てて私に駆け寄ってくる。

 この子はアリア、私の乳兄弟で、私の良き理解者で、私の忠実な従者をしてくれている子だ。

 設定では私の為に身を粉にして、どんな辱めを受けようと、どんな汚辱にまみれても、命をかけて私の為に尽くしてくれる、そんな私には勿体無い程の可愛くて健気な子。

 その理由はなんてことはない。

 彼女の母は私の乳母だったのだが、私が育ち4才を迎えた頃に病に倒れた。

 その彼女の母を手厚く看病するように頼み込んだ当時の私と、看病の甲斐なく母を亡くし身寄りのなくなった彼女を自分の専属として引き取るように泣き喚いた私に対する恩返し。

 本当にバカだけど可愛い子よね、私なんて見捨てて幸せになればいいのに。

 それだけの下地も技術もあるのに、ほんとバカ。

 そんな彼女に何があったかを教えてもらう。

 その前に現状を整理しようここはベルン王国のカスタード公爵家。

 私はそこの長女にして次期聖女候補として魔王討伐を望まれている。

 私には勇者候補として一人のを導くという役目があり、他の聖女候補もそうである。

 そして私は一人の聖女候補に対して妨害を行っていた結果、風の悪戯で飛んできた看板が頭に直撃し気を失い、二日間経って目が覚めたということになっている。

 それが今である。

 あれ、これってどこかで聞いたことあるような……

 そう思った瞬間扉がノックされて一人の男が入ってくる。

「やあエリー!目が覚めたって聞いたよ!大丈夫かい?」

 部屋に入ってきたのは私が勇者として導く事になっているシンドラーだ。

 この男無駄に美形で、貴族然としたしぐさが似合う男なのだが色々曰くがある。

 それは後においておくとして話を進めよう。

「シンドラー様、エリザベート様は未だ病み上がり、それをいきなり押しかけて、淑女の気持ちを考えて下さい
1」

「ああ、すまない、2人とも、この通りだ、だが、そうも言ってられない事情があってね」

「事情?」

「ああ、明後日に控えた決戦のことだ、君が病み上がりなのは重々承知だが、君の意向を聞かなければ彼らも途惑う、それだけ聞かせてくれれば今日は退散させてもらいたいと思っている。」

 その言葉に私は言葉を失う。

 それを見たアリアが口を開く。

「お嬢様は今お目覚めになられたところです、それなのにすぐ決めろというのは余りに酷いと思いませんか!?」

「すまない、でもこれは必要なことなんだよ」

「それでもです、後で落ち着いたときにお嬢様が決められます、私がそれをお伝えしますので今はお引取りください」

 そういってアリアはシンドラーを追い出しにかかる。

「ああ、すまない、それじゃあ早めに頼むよ、騎士達の命にも関わるかもしれないところだからね」

 そういって退室しようとするシンドラーを見て私は慌てて口を開く。

「まって、シンドラー、決戦は予定通りに行います、私も出るので皆さんにそう伝えて置いて下さい」

 その言葉にアリアは驚愕の余り固まってしまい、シンドラーは笑みを浮かべる。

「そうか!ありがとう、それじゃ伝えてくるよ!」

 そういって去ったシンドラーを睨みながら戸を閉めたアリアが私の元にくる。

「お嬢様よろしいのですか!?あのような!?」

「落ち着いてアリア、いいのよ、それより貴方に頼みたい事があるの」

 そういってアリアに耳打ちをするとアリアは目を大きく見開く。

「お嬢様それじゃお嬢様が……」

「心配いらないわ、そうでもしないと私も貴方も破滅以外の道がなくなるの、お願いね」

「はい、畏まりました、ですが!」

 暗い顔をしたアリアを宥めて頼み込む、それに折れてアリアはしぶしぶ了承するがその直後強い眼差しで私を見て言葉を返す。

「なに?」

「私もお供させてください、お嬢様だけを死地に追いやるような真似、私には出来ません!」

 その言葉を聞いて嬉しく思うが同時に苦笑してしまう。

「えっとね、アリア、貴方の気持ちは嬉しいけど、魔王城の中は安全じゃないわ、生まれたときから一緒にいる貴方を危険にさらしたくはないから、諦めてほしいんだけど」

「そんなこと!出来るわけありません!私にとってお嬢様は!エリーは大事な人なんです!一人安全なところでのうのうとしてて、エリーに何か起きたらと思うとそんなこと……」

 そうやって悲しそうにしている彼女をみて、あ、これはだめだな、と思った。

 そもそもこの子の頑固さは私譲りなのだ、絶対折れてくれない。

 それが分かったので溜息をつきながら早々に白旗を揚げる。

「もう、わかったわよ、でも、絶対に安全第一で動くのよ、敵の深追いなんて不要だから私と一緒に身を守る事だけを考えて動く事、これが条件、いいわね?」

 その言葉を聞いたアリアは花の咲いたような満面の笑顔で頷く。

「はい!ありがとうございます!誠心誠意お傍で安全確保に努めさせてもらいますね!」

「おねがいね、もう、頼りになる護衛ね」

 そういって苦笑いしながらアリアの頭を撫でてから表情を切り替える。

「それじゃ、さっき頼んだ事お願いね、これ見せれば隊長達への証明には十分だから」

「はい!直ちに!」

 そういって退室するアリアを見てこれからの事に考えを巡らす。

 タイムリミットは明日の朝、いきなりすぎて全く準備が出来ていないが仕方がない、そう思いを新たに私も準備を進める為に執事のセバスを呼ぶのだった。
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