悪役令嬢に転生しましたが、破滅フラグが立ちおわっているので足掻きまくったら魔王になって乙女ゲーを間近で見る事になりました。

幌須 慶治

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死亡フラグ破壊の第一幕

尽きている命運を手繰り寄せるために

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 執事のセバスが出て行ったところで私は状況を整理することにした

 今の私の状況は乙女ゲームブレイブラバーズの悪役令嬢、エリザベート・カスタードである。

 ペルシェ王国は菱形の大陸の中央辺りに位置する大国であり、北をノーザン、南をサウザン、西をオクシという大国に囲まれその間に小国を挟む地理的情勢にある。

 また今回対する魔王国はペルシェの東側に位置し、こちらは力が正義と言わんばかりに一国と魔公達による統治が行われている。

 その特徴は多種多様な人種を特性とする。

 その軍はとにかく精強であり、適材適所をこれでもかと言うほどに行ってくる。

 また兵装の質もこちらより数段上で、1国を1公が相手しても引けを取らない。

 それだけの力の差があるが領土的には人族が7で魔族が3である。

 この理由は一重に繁殖力の違いと言える。

 魔族は人族に比べて成長が遅いのである。

 それはそのまま繁殖速度に反映される。

 それにより人口に大きく差が出来ている。

 その差はおよそ5倍である。

 それでも攻め切れない現状が続いた時、人族の人口が飽和して増えなくなるときがいつか来て、魔族との人口差が小さくなれば、戦況は覆される。

 そしてそうなってしまえば、人族に勝ち目はない、故に魔王暗殺作戦と言われる物が進められているのである。 

 それもあり、この後の展開は魔王城に攻め込み多数の犠牲の末に魔王を討伐し、魔王城の非戦闘員も含めた魔族に対する虐殺を行う事で聖女と認められる。

 その後に主人公達が聖者の洞窟から真実を持ち帰ってきた結果真の悪とされて消耗した公爵軍を率いてペルシェ王国の全軍と魔王残党軍相手に戦う事になる。


 その際にシンドラーは敵と内通し、私達は敗北する。

 その後の事は戦場が拡大して詳しく書かれていないけど、碌な目に会う事はないだろう。

 見目の麗しいアリアなんて汚されるのが目に見えてるし。

 それでも私の為に命を使う子だから、この子の為になんとしてもこの破滅ルートから逃れないといけないわね。

 そしてそれとは別に私自身の事だ。

 作中では私はシンドラーの裏切りに遭うまでは無双キャラもいいところの強キャラだったけれどそんな事はない。

 実際は聖女らしく守りの力や補助や強化、癒しの力が強くてお世辞にも前線向きとはいえない。

 前世が男で武術の才能があり、鍛錬と実践の記憶があるから戦う事はできる。

 しかしどこまでいっても私には攻撃スキルはないようなのだ。

 恐らく護身がせいぜいといったところだろうと思われる。

 それに比べるとアリアの方が戦うには適した人材と言えるだろう。

 短剣と暗器や体術に水と風の魔術、掃除道具で戦える彼女はこの家屈指の実力を持つ。

 とはいえ女の細腕である、膂力には欠ける為戦場では目立つ事がないので戦場には出ていない。

 そもそも彼女は私の大事な幼馴染にして家族同然と言える存在なので出そうとも思わないけどね。

 そんな彼女を連れて行かないといけないことは少し心苦しいが、同時に頼もしくもある。

 そう思っている自分に少し自嘲的な笑みが浮かんでくる。

 前世の俺がそうなってたら本当に笑いものですね。

 絵面としては楓に守られているようなものだし。

 あの時のことを思い出す。

 深い後悔と慙愧の念、そして次こそは大事な者を守らないといけないと決意を新たにする。

「ステータスオープン」

 このゲームにはステータスという概念がある。

 それを見る事で現在の位置とこれからしないといけないことを探る事が出来る。

 それを見るとこれ、乙女ゲーというか育成ゲーなんじゃないかと思ったけど、AVG方式の乙女ゲーと育成ゲーを兼ねた意欲作で両方の要素を組み込んだゲームとして話題になってたっけな。

 俺のころの私も友達に一度やれと言われた後2,3日漬物にされたのは今となってはいい思い出で、その時全ルートをクリアしたものだ。

 因みにその時楓は構ってくれと言わんばかりに膝に座ったり、おんぶのようにのったり、膝で寝たりしていたっけな。

 話がそれたので自分のステータスの確認にもどります。

 エリザベート・カスタード

 LV:35

 HP:350+350

 MP:1050+10500

 力:80+80

 体力:80+80

 知力:350+350

 精神:350+350

 運:80+350

 スキル:回復魔法LV7 補助魔法LV7 強化魔法LV7 聖属性魔法LV7 剣道LV5 格闘LV5 高速詠唱LV4 行儀作法LV6 薬剤調合LV5 薬剤の知識∞

 加護:転生神の加護 転生神の寵愛 転生神の懺悔 数多の神かんきゃくのカンパ

 称号:悪役令嬢 ノルマの被害者 転生神に見守られし者 転生神に祈られし者 シスコン 転生者 転性者 悲劇の人 押し付けられた悪意

「なにこれ……」

 思わずそう呟いてしまった。

 まずステータスの数値が異常なのである。

 いや、元の数値は主人公側と比べても普通なのだが、その後についている+がおかしい!

 だって能力倍だよ!

 普通加護とかあったとしても10%とか20%が限度じゃん!倍ってなによ!

 それにMPにいたっては+数値が元の10倍……

 スキル系統はいいよ?元々もってるものとか私の長所を生かすものだからさ、でもその下はなによ!

 思いっきり転生神様の事情出てるじゃん!

 もしかしてあの事故も……

 そう思っていたら手の中に1枚の紙切れが入っていた。

 なになに?部下の不始末でこのようなことになってしまい申し訳ありません、直接謝罪したいのですが、制約が大きくこのような形になることをお詫びいたします。ささやかですが、そちらの世界で幸せに暮らせるようにさせていただきました。妹様もそちらにいらっしゃいます、どうか私の為にも、お2人で幸せになってください。この度は幸せな生活を壊してしまい誠に申し訳ありませんでした。 転生神 ミリア

 その文章を読んで5分間、私は何もする事が出来ずに立ち尽くしていた。

 しかしふと気がつくと叫んでいた。

「幸せな時間をかえせえええええええええええええええ!!!」

 そう叫んだ姿を見たミリアは天界で土下座をきめる。

 見えていないのだからどうしようもないのだが……

 気を取り直して出来るだけの準備をしよう、そう思って私は薬剤の調合を進めることにする。

 そうして魔王城への出陣への時間は近付いていくのであった。
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