お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治

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54 ぎくしゃく

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 夜が明けて出発の準備をする。

 夕べは二人の親父さんたちと話をしたりで有意義な時間だったのだけど流石に疲れていたせいで遅くまで起きていることは出来なかった。

 まぁその分彼らも子供と一緒にいられたので良かったのだと思う。

 因みに昨日墓所で別れた集団はあのあと方向を失って迷いに迷って村に帰ってきたそうだ。

 その話を聞いた時クウの親父さんの方を見たら首肯されたのであの人のおかげだろう。

 頭を下げて謝意を示す。

 奇跡的に負傷者ばかりで死者が出ずに済んだのは僥倖だが、そのせいで治療に時間がかかる事になった。

 とはいっても進行を遅らせる事ができないので治療に当たる人と先に進む人で二つに部隊が分かれる事になった。

 怪我を根性で押してくる近衛を筆頭にした騎士隊と魔力不足を精神力でねじ伏せる司教達の聖職者、そして興味が体力を凌駕する錬金術師達、彼らを見たある人物は苦笑いしていたし、ある人物は好意的だった。

 そのお陰で気まぐれに治療されて大分楽になったらしいんだけど、気まぐれでこの大人数を治療するってわかっちゃいたけどやっぱり化け物だな。

 それを見たリンがちょっと悔しそうに拗ねてキックしていたけど涼しい顔で受けて頭を撫でるとか、まぁ彼らしいといえば彼らしい。

 そんな事があったので少し遅れたが俺達は領都を目指す。

 そしてそこで起こる出来事には大いに悩まされることになった。

 それは今までの行動の結果仕方ないのだけれども、これには俺も参った。

 とはいえ放置しておけることでもなかったので出来る限りの事はした。

 したんだけどあんな事になるとは、本当に怖いのはモンスターではなく人だってことを初めて実感したよ。



 予定より1時間遅れて領都に到着する。

 本来ならパレードの様に派手にするのだが、ライム村での一件で状態が完璧でない上に人員も減っている、その為に領主率いる領軍の警護の元皇族が到着したという事を示すのみにとどまっている。

 そして領主館に差し掛かる時に妙な視線を感じる。

 そっちに目をやるとゲラートと目が合う。

 忌々しげに一睨みした後に踵を返す奴を見て溜息をつく。

「ロイド様、溜息なんてつかれてどうされました?」

「いや、なんでもないよ」

「それならいいのですが、無理だけはしないでくださいね」

 そう言ってアンジェに心配されるとむげにもできない。

「わかった、後で話すよ」

「はい!」

 満面の笑顔で返事されると照れるな。

 そう思っていると別の視線を感じる。

「ん?ルイス、どうかしたのか?」

「!?なんでもない!」

 そう言ってプイっとそっぽを向いてしまうルイス。

 どうしたのか分からないけど、少ししたら大丈夫だろう。

 そういう風に思っていた。

 それが間違いで、後で大変な思いをするとはこの時の俺は夢にも思ってなかった。

 その結果どうなるかは後で分かる事なんだけど、それについてはこの時にそこまで考えが及んでいたのはアンジェだけだったと思う。

「ん?アンジェ、頭抑えて、大丈夫か?」

 頭痛を感じたかのようなアンジェに声をかけたが返って来た言葉に何とも言えなくなってしまう。

「ええーーっと、とりあえず大丈夫です、大丈夫ですけど……」

 そう言って苦虫を噛み潰すような表情に返せる言葉なんてそう多くは無い。

「それならいいが、無理はするなよ、辛くなったら速めにいってくれ」

 そう言葉をかけるしかなかった。

「はい、わかりました」

 その言葉にそれ以上かける言葉をみつけられなかったので微妙になってしまった空気の中を進む。

「はぁ、全く、ルイスも世話がやけるわね、ロイド様も鈍感すぎてわかってないし、けど、どうにかしなくちゃいけないわね、はぁ、先が思いやられます……」

 頭痛を感じるように呟く言葉。

「アンジェ、えっと。ごめん」

 そう言うルイスを責める事もできない。

「はぁ、もう、いいわよルイス、これから時間を作ったらみっちりお話しましょうね?」

 笑顔でそういうアンジェにルイスは怯むが。

「そうそう、貴方に拒否権はありませんからね?」

「はい……」

 般若を背負ったアンジェに対してルイスは何も言えずに白旗を揚げる。

 そんな事が起こっているとは知らずに暢気に先導されるがままに歩を進めていた俺を呪いたいね。

 とりあえずこの時はこの後に待ち受けている事なんて全くわからなくて、通常に予定されている事やその後に待ち構えている敵との戦いに関する事のみを考えていた。

 それが油断となってああなってしまうなんて、このときの俺は全く思ってもいなかった。 
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