お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治

文字の大きさ
59 / 76

59

しおりを挟む
 時刻は陽が沈み一刻程、流石に領都というだけあって歓楽街や酒場といったところには明かりが溢れ賑わいを見せている。

 反対に人の住むところは明かりは疎らだ。既に寝静まっている家も多いのだろう。

 その明と暗を分けるのがこの川で20メートル程の川幅に石橋がかかっている。

 その石橋の手摺に寄りかかり川を見下ろす。

「妹としてじゃなく、一人の女として、お兄ちゃんじゃない、ロイドさんの隣にいさせて下さい、これから先ずっと、一緒にいてください」

 真剣な顔で言葉を紡ぐルイスの顔が浮かんでくる。

 今まで妹だと、子供扱いして、そんな対象として見てこなかった。

 無邪気に笑って、泣いて、怒って、遊んで、ずっと兄妹として仲良くしていくと思っていた。

 それは血が繋がっていようといまいと変らず、ルイスは大事な妹だと、そう思っていた。

 しかし実際は……

「おうロイド!湿気たツラしやがって、若えもんがそんなんでどうすんだ」

 不意にかけられた声に顔をあげる。

「アルフレッドさん……」

「おう、久しぶりだな、お前もルイスも偉くなって、アランとリリーの奴も胸張ってるだろうよ」

 そう言って隣で手摺に寄りかかるのはこの領の騎士を束ねる団長のアルフレッドさんである。

 仕事をする時は経験豊富で冷静沈着な団の要として腕を振るうのだが。

「ふう、ロイド、お前もつきあえ」

 プライベートでは酒好きなおやっさんという感じなのだ。

「いや、おれは……」

「若えもんが、そんな辛気くせえ顔してなんだ、酒でも飲んで発散しろ」

 こんな事を言う人であるが、団員達からは非常に信頼が厚く、それは領民達からも同様。

 要するにお節介やきのおっさんなのである。そして。

「あいつらに頼まれてんだ、それに久しぶりに返って来た弟子が妹と喧嘩してこんな辛気くせえ顔してんじゃ放っておけんわ、ほらいくぞ」

 両親の友人にして俺の師匠でもある。

 とはいえ彼は聖騎士なので戦い方は全く違うのだが、大本になる技術だとか訓練方針を考えてくれたのはこの人だ。

 ルイスに対しても目をかけてくれて才能が開花する手助けをしてくれていたと聞いている。

 そんな恩人にここまで言われては断れない。

 その結果、そのままひきづられるがままに酒場に連行された。

 そして酒場でエールを揚げ、根堀葉堀と聞かれること暫く。

 そこから導き出された言葉は。

「かぁー情けねえ、百戦錬磨の不倒と呼ばれた男がこんなヘタレた事するとは思ってもなかったぜ」

 赤ら顔を片手で覆い天を仰ぎながら嘆くアルフレッドさん、その言葉に俺は何も返せない。

「それで、お前はルイスをどうしたいんだ?袖にして他の男に渡してさよならか?」

 がツンと頭を殴られたような衝撃を受ける。

「そんなの……」

「だってそうだろう?お前と一緒になれなきゃいつまでも一人じゃいられねえさ、そしたら自然と離れる、そういうもんだろ?」

 ルイスが他の誰かのものに?ルイスの横に知らない誰かがいる、そんな光景が浮かぶ。

「嫌だな……」

 不意に言葉が口をついて出た。

「じゃあ何で悩んでんだ」

 その言葉に返す言葉が見つからない。

「心の整理とかなんとか、んなもんただの言い訳にしかならんだろ、お前はどうしたいんだ?」

 そういいきると一息つくかのようにジョッキを呷る。

「ふぅ、姫さんの方は言ってる通り心配しなくても大丈夫だ、皇族だからな、その系統の事は心配いらねえ」

 俺の気にしている事を心を読んだように言い当て、断言する。

「後はお前次第だ、ロイド、お前はどうしたい?」

 鋭い眼光に俺の目が射抜かれる。

「俺は……」

 言葉に詰まる。

 ルイスの笑顔が、怒った顔が、泣いた顔が、最後に見せた切なそうな笑顔が脳裏に浮かぶ。

 ハッキリと見えていない言葉をどうにかして口に出そうとした。

「あんた!またのんだくれて!」

 その声に目の前のおやじがビクっと跳ねる。

「げぇ!ハンナ!?」

 振り向いたと同時に叫ばれた名前。

「げぇ!じゃないよ!あら?そっちの子は」

 売り言葉に買い言葉というが、言い合いにはならずにその人は俺の事に気付く。

「ロイドです、ハンナさん、お久しぶりです」

 彼女の名前はハンナ、下町の肝っ玉母さんに見えるが、こう見えてアルフレッドさんとは幼い頃から続いている間柄で、彼との間に4人の子供がいるご婦人である。

「あら、ロイド君かい、立派になってぇ、ルイスちゃんとは仲良くやってるのかい?」

 彼女にも二人そろって世話になっている為こう聞かれるのは必然といえるだろう。

「ええっとそれは……」

 流石に今の状態を上手く言っているとは言えずに口篭ってしまう。

 それが分かってるアルフレッドさんから助け舟が出る。

「もうちょっとしたら面白いものがみれるからそれまでのお楽しみだ」

 しかし横槍を入れられたら女性の口は三倍速で動くもので。

「ちょっと私はロイド君と話をしているんだよ!」

 と納められた矛先が夫のアルフレッドさんに向かう。

「だぁかぁらぁ――」

 わいわいがやがやと、夫婦の言い合いを見ているうちにその場がお開きになる。

「ありがとうございました、おかげで決心がつきました、やるだけやってみます」

 酒場の前で頭を下げる、おかげで決心がついた、もう迷わない。

「おう、お前なら心配いらねえと思うが、きばっていけよ!」

「いい報告聞けるのを楽しみにしているよ、がんばってね!」

「はい!」

 二人の激励を背に走り出す。

 ルイス、待っててくれ。

 少しでも早く、気持ちを伝える為に走る。

 走って、走って、こうして息が切れたのはいつぶりだろうか。

 そうして俺は宿舎としている領主の館に辿り着く。

 さあ、一世一代の大仕事の始まりだ!

 そう意気込んで俺は歩を進めるのだった。



アイ「ようやくか」
リリ「長かったーーーー」
アラ「アルの奴……頭あがんねえじゃねえかよ」
リリ「本当に、アル君のおかげねぇ」
アイ「あの臆病だったアルフレッドが立派になって」
アラ「あいつも親になって変ったんだよ」
リリ「ハンナのおかげもあるわね」
アラ「うんうん、このまま上手くいってくれるといいんだが」
リリ「貴方それ……」
アイ「フラグが立ててしまったか……」
リリ「あぁ……」
アラ「しまった……」
アイ「これで一波乱は確定か……」
アラ「ロイド、すまん……」

 どんな波乱になるか、様子をみてみよう。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。 地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。 魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。 これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。 「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

処理中です...