お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治

文字の大きさ
60 / 76

60

しおりを挟む
「おかしい」

 領主館の門の前に辿り着いた所で異変に気がつく。

 いつもなら門の前には守衛が二人立ち、身分を照会してから入場するのだが現在は誰もいない。

 そして通常よりも人が多く、明かりの点いている領主館内なのだが。

「静か過ぎる」

 嫌な気配を感じて足をはやめる。

 何も無ければいいんだが……

 そう思いながらルイスの部屋を目指す。

 やっぱりおかしい、誰ともすれ違わずに誰かが動く気配も感じない。

 悪い予感に心臓が早鐘を打つ。

 いても立ってもいられずに早足で歩く事を忘れ駆け出していた。

 走って、走って、走って、ようやく見えて、扉のノブに手をかけて、そして

「ルイス!!!」

 扉を開けた俺の目に飛び込んできたものは。

「チッ」

 舌打ちと共に突き出される剣を体を回転させて辛うじて回避する。

 そして相手に向き直ると共に腰から盾を左手に持ち相手を見据える。

 その目には全身に切り傷をつけながらルイスを守る獣化したクウとその後ろで杖を構えるルイスの姿が見えた。

「貴様、何者だ!」

「チッ、クソが!」

 挟撃の形を取り誰何の声を上げたところで踵を返す賊に反応が遅れる。

 それをクウが迎え撃とうとするが賊は方向を変え窓を破り飛び降りる。

 窓に駆け寄るがその時には賊は既に姿を消していた。

「逃げたか……」

 そう呟くが追撃しようとは思わない。

 それよりもだ、賊と直接戦っていたクウはまだ気が立っているのか警戒を解いていないが、ルイスが治療を始める。

「ありがとう、助かったよ」

 クウに礼を言い頭を撫でるとようやく少し落ち着いてきたのか警戒を解いてその身を落ち着ける。

「お兄ちゃん……」

 クウに治癒魔法をかけ終わったところでルイスが口を開く。

 その瞳には不安の色が宿り、狙われた恐怖と突然の戦いの緊張からか身体が小さく震えている。

 気がついたら身体が動いていた。

 抱きしめてから気がついて口を開く。

「遅くなってすまなかった……」

 もう少しでルイスを失うところだった。

 その恐怖に心胆が寒くなる。

 胸の中で小さく嗚咽をあげるルイスを安心させる為に、いや、失いたくないからぎゅっと抱きしめ、頭を撫でる。

「ううん」

 そういいながら首を横に振る感触が伝わってくる。

「本当に、よかった……」

 そう口にしたところで轟音と共に廊下が崩れる。

 その音にビクっとするがすぐにルイスを背中に庇うように身構えるが。

「ルイス!無事ですか!!」

 登場した人物にそれは気鬱だったと知ることになったのだった。

 

 アンジェの登場を契機に屋敷内は混乱に包まれる。

 それはそうだろう、この館にいる一番のゲストの二人が襲撃を受けたのだから。

 ルイスの方と同時にアンジェの方にも刺客は行っていたらしい。

 しかしアンジェの元にはリンがいて、近衛隊の隊長も詰めていた。

 その為刺客は返り討ちに会い捕縛されたのだがその身体は溶けて死亡し、身元が分かるようなものはなかったらしい。

 恐らくは毒薬か何かの効果だろうということだ。

 そしてその賊を鎮圧した直後にリンが走り出した。

 クウが戦闘を行っている事に気がついたからだ。

 ここからアンジェの部屋へは少し離れ、階層も違う、その為部屋の上に来たリンはショートカットする為に床をぶち抜いて降りてきた。

 それがこのような登場に至った経緯である。

「ルイス、無事でよかった」

 そういいながらルイスを抱きしめるアンジェ。

 アンジェの登場に呆気にとられてしまったせいか、もうルイスも震えは止まっているので成すがままにされている。

 心配をかけてしまったとちょっとバツが悪そうな顔をして。

 同じようにリンもクウを抱きしめて撫でているのだけどこっちは両方とも笑顔を浮かべている。

 そしてルイスを撫で終わったアンジェが口を開く。

「そういえば、ロイド様、私よりも先にルイスの所にこられた理由をお聞かせ頂けますか?」

 そう見据えられて問いかけられて思わず言葉が出ない。

「結果的に正しかったですが、私のほうが敗北し、私の身に何かあればどうされたのですか?」

「そ、それは……」

 片や聖女、もう片方は皇女、場合によるが、今は皇女の方が立場としては重要なのでルイスの方に来たのは実は正しい行動ではない為反論のしようがない。

「説明してもらえますね?」

 真剣な顔で問いかけるアンジェに応えられず、かといって目も逸らす事が出来ずに睨めっこの状態になる。

 だがその均衡はすぐ崩されることになる。

「ふふ、冗談ですよ、ロイド様」

 真剣な空気を一瞬で取り払う微笑みを浮かべアンジェが口を開く。

「私の方は厳重な警備とリンちゃんがいたので心配される必要はありませんでしたが、ルイスの方はクウちゃんだけでしたからね、心配になるのはわかります」

 そう言って笑顔で紡がれる言葉にホッと息をはき、肩の力を抜く。

「でも、それだけじゃありませんよね?」

 そういって笑みの性質が変り、背筋に寒いものを感じる。

「ほら、ルイス、ちゃんと教えてもらいなさい」

「え?え?え???」

 そういって抱きしめていたルイスを俺の目の前に押し出しお見合い状態をつくられる。

「えっと、おにいちゃん」

「は、はい!」

「その、おしえてください」

「わ、わかった」

 いつもと違う、経験した事の無いルイスとの雰囲気の中、話をする事になる。

 それはこれからを決める上で大切な、人生を決める一時なのだけども……この時の俺はそれをやり切った後にどうなるかなんて気がついていなかった。

 既に罠に嵌って逃げる事は出来ない。

 でも、その罠は優しい罠で、誰も不幸にならなかったのだから、その罠を張ってくれた彼女には感謝すべきなのだろう。


アラ「いよいよか」
リリ「いよいよね」
アイ「ロイド、しっかりきめろよ!」
アラ「骨は拾ってやる」
リリ「どちらかというと拾われたのは私達だけどね」
アラ「ちげえねえ」
アイ「まぁその後もう一騒動ありそうだけど、そっちも楽しみだな」
リリ「そうね、まぁそれもルイスも幸せになるから私は歓迎よ」
アラ「そうだな、男として巻けた気分になるが、幸せになってくれればそれでいいな」
アイ「まぁそういうことだ、作者よ、あとがき書いてないで早く次をかけ」
アら&リリ「そうだそうだ!」

 次回、予想通りの展開が!
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

パーティーの役立たずとして追放された魔力タンク、世界でただ一人の自動人形『ドール』使いになる

日之影ソラ
ファンタジー
「ラスト、今日でお前はクビだ」 冒険者パーティで魔力タンク兼雑用係をしていたラストは、ある日突然リーダーから追放を宣告されてしまった。追放の理由は戦闘で役に立たないから。戦闘中に『コネクト』スキルで仲間と繋がり、仲間たちに自信の魔力を分け与えていたのだが……。それしかやっていないことを責められ、戦える人間のほうがマシだと仲間たちから言い放たれてしまう。 一人になり途方にくれるラストだったが、そこへ行方不明だった冒険者の祖父から送り物が届いた。贈り物と一緒に入れられた手紙には一言。 「ラストよ。彼女たちはお前の力になってくれる。ドール使いとなり、使い熟してみせよ」 そう記され、大きな木箱の中に入っていたのは綺麗な少女だった。 これは無能と言われた一人の冒険者が、自動人形(ドール)と共に成り上がる物語。 7/25男性向けHOTランキング1位

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

ユニークスキルの名前が禍々しいという理由で国外追放になった侯爵家の嫡男は世界を破壊して創り直します

かにくくり
ファンタジー
エバートン侯爵家の嫡男として生まれたルシフェルトは王国の守護神から【破壊の後の創造】という禍々しい名前のスキルを授かったという理由で王国から危険視され国外追放を言い渡されてしまう。 追放された先は王国と魔界との境にある魔獣の谷。 恐ろしい魔獣が闊歩するこの地に足を踏み入れて無事に帰った者はおらず、事実上の危険分子の排除であった。 それでもルシフェルトはスキル【破壊の後の創造】を駆使して生き延び、その過程で救った魔族の親子に誘われて小さな集落で暮らす事になる。 やがて彼の持つ力に気付いた魔王やエルフ、そして王国の思惑が複雑に絡み大戦乱へと発展していく。 鬱陶しいのでみんなぶっ壊して創り直してやります。 ※小説家になろうにも投稿しています。

復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜

サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」 孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。 淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。 だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。 1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。 スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。 それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。 それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。 増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。 一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。 冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。 これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

処理中です...