12 / 24
12.崩壊の序曲 ※フローラ視点
しおりを挟む
「ねぇロイー、いつになったらあたしを奥様にしてくれるのぉ?」
「ん……もうちょっと待てよ、フローラ」
アイリスが出て行ってからというもの、毎日これだ。フローラのことは愛しているが、いいかげんロイはうんざりしている。
「もうちょっと、もうちょっと、ってそればっかりぃ」
(フローラはかわいいけど、商会長夫人は務まらないよな。ま、今までみたいに適当にあしらってりゃいいだろ)
「そんなに急かすなよ…。ほら、結婚のお披露目、盛大にしたいだろ?それなりの客も呼びたいし」
「やぁん、ロイったらぁ、そんなにあたしのこと考えてくれてるの。だぁい好き」
「俺も大好きだよ、かわいいフローラ」
そう言いながら、フローラの好きそうなドレスやバックをプレゼントして機嫌をとるロイだった。
それでもしばらくすると、フローラの我慢も限界に近づいていた。君と結婚する、と言いながら、なぜか一向に行動しようとしないロイに、不満が積もり始めている。
「ちょっとあんた!あたし今、甘い紅茶が飲みたいのぉ。何なのよ、このしっぶいお茶は!」
「も、申し訳ございません、フローラ様。昨日は、食後に甘い紅茶など飲みたくないと仰せでしたので…」
「はあ?言い訳すんの?食事のメニュー見たらわかるでしょ?ったく、使えないメイドばっかりなんだから!!」
文句を言いながら、メイドに向かって紅茶をぶちまける。
「あんたなんか、ロイに言ってクビにしてもらうんだから!さっさと片付けなさいっ」
「ううっ、フローラ様……」
「メイド長、もう私たちやっていけません!」
「私は紅茶、この子はケーキをぶちまけられたんですよ?!食べたいというから持って行ったのに、遅いってキレられて」
控え室では、使用人たちの不満が爆発していた。皆、フローラの横暴に泣かされた者たちだ。
「まあまあ、みんな落ち着いて。奥様がお帰りになれば、よく取り計らってくださるはずだから」
メイド長はそう言って宥めるしかなかった。この屋敷で話ができるのはアイリスだけだったのに…とため息をつく。
「メイド長、奥様は本当にお戻りになるんですか?」
「なぜ?ご実家で療養されている、と旦那様がおっしゃっていたでしょう?」
「でも、奥様が裏門から出て行かれる姿を見た子がいるんですよ?それもボロボロの姿で。もう戻ってこられないのじゃ……」
「なんてことを言うの!」
慌てて口止めしたが、メイド長も本当はわかっている。アイリスはもう戻って来ないのだ。出奔の噂も知っていたし、どうやら離婚届を出したらしい、という話も漏れ聞いていたから。
(この先このお屋敷はどうなるのやら。身の振り方を考えないといけないわ)
その場にいる誰もが、似たり寄ったりのことを考えたのだった。
「んもう、ロイったらつまんない。このごろあんまりプレゼントもくれないし!」
メイドに紅茶をぶちまけたくらいでは気がおさまらず、フローラはひとり部屋で苛立ちを抑えきれずにいた。
いったいいつになったら、アバンドール商会長夫人として表舞台に立てるのだろう。パーティにも、お腹の子に悪いと一向に連れて行ってくれないし。
「そうだわぁ♡」
フローラは思いついた。ロイが連れて行ってくれないなら、自分から行けばいいのだ。明日もどこかのお屋敷でパーティがあるはず。
(そうと決まったら用意しましょ。うんと綺麗になって、ロイもお客さんたちも虜にしちゃうんだからぁ)
フローラは横柄にメイドを呼びつけると、上機嫌で準備をし始めたのだった。
「ん……もうちょっと待てよ、フローラ」
アイリスが出て行ってからというもの、毎日これだ。フローラのことは愛しているが、いいかげんロイはうんざりしている。
「もうちょっと、もうちょっと、ってそればっかりぃ」
(フローラはかわいいけど、商会長夫人は務まらないよな。ま、今までみたいに適当にあしらってりゃいいだろ)
「そんなに急かすなよ…。ほら、結婚のお披露目、盛大にしたいだろ?それなりの客も呼びたいし」
「やぁん、ロイったらぁ、そんなにあたしのこと考えてくれてるの。だぁい好き」
「俺も大好きだよ、かわいいフローラ」
そう言いながら、フローラの好きそうなドレスやバックをプレゼントして機嫌をとるロイだった。
それでもしばらくすると、フローラの我慢も限界に近づいていた。君と結婚する、と言いながら、なぜか一向に行動しようとしないロイに、不満が積もり始めている。
「ちょっとあんた!あたし今、甘い紅茶が飲みたいのぉ。何なのよ、このしっぶいお茶は!」
「も、申し訳ございません、フローラ様。昨日は、食後に甘い紅茶など飲みたくないと仰せでしたので…」
「はあ?言い訳すんの?食事のメニュー見たらわかるでしょ?ったく、使えないメイドばっかりなんだから!!」
文句を言いながら、メイドに向かって紅茶をぶちまける。
「あんたなんか、ロイに言ってクビにしてもらうんだから!さっさと片付けなさいっ」
「ううっ、フローラ様……」
「メイド長、もう私たちやっていけません!」
「私は紅茶、この子はケーキをぶちまけられたんですよ?!食べたいというから持って行ったのに、遅いってキレられて」
控え室では、使用人たちの不満が爆発していた。皆、フローラの横暴に泣かされた者たちだ。
「まあまあ、みんな落ち着いて。奥様がお帰りになれば、よく取り計らってくださるはずだから」
メイド長はそう言って宥めるしかなかった。この屋敷で話ができるのはアイリスだけだったのに…とため息をつく。
「メイド長、奥様は本当にお戻りになるんですか?」
「なぜ?ご実家で療養されている、と旦那様がおっしゃっていたでしょう?」
「でも、奥様が裏門から出て行かれる姿を見た子がいるんですよ?それもボロボロの姿で。もう戻ってこられないのじゃ……」
「なんてことを言うの!」
慌てて口止めしたが、メイド長も本当はわかっている。アイリスはもう戻って来ないのだ。出奔の噂も知っていたし、どうやら離婚届を出したらしい、という話も漏れ聞いていたから。
(この先このお屋敷はどうなるのやら。身の振り方を考えないといけないわ)
その場にいる誰もが、似たり寄ったりのことを考えたのだった。
「んもう、ロイったらつまんない。このごろあんまりプレゼントもくれないし!」
メイドに紅茶をぶちまけたくらいでは気がおさまらず、フローラはひとり部屋で苛立ちを抑えきれずにいた。
いったいいつになったら、アバンドール商会長夫人として表舞台に立てるのだろう。パーティにも、お腹の子に悪いと一向に連れて行ってくれないし。
「そうだわぁ♡」
フローラは思いついた。ロイが連れて行ってくれないなら、自分から行けばいいのだ。明日もどこかのお屋敷でパーティがあるはず。
(そうと決まったら用意しましょ。うんと綺麗になって、ロイもお客さんたちも虜にしちゃうんだからぁ)
フローラは横柄にメイドを呼びつけると、上機嫌で準備をし始めたのだった。
1,144
あなたにおすすめの小説
彼女よりも幼馴染を溺愛して優先の彼と結婚するか悩む
佐藤 美奈
恋愛
公爵家の広大な庭園。その奥まった一角に佇む白いガゼボで、私はひとり思い悩んでいた。
私の名はニーナ・フォン・ローゼンベルク。名門ローゼンベルク家の令嬢として、若き騎士アンドレ・フォン・ヴァルシュタインとの婚約がすでに決まっている。けれど、その婚約に心からの喜びを感じることができずにいた。
理由はただ一つ。彼の幼馴染であるキャンディ・フォン・リエーヌ子爵令嬢の存在。
アンドレは、彼女がすべてであるかのように振る舞い、いついかなる時も彼女の望みを最優先にする。婚約者である私の気持ちなど、まるで見えていないかのように。
そして、アンドレはようやく自分の至らなさに気づくこととなった。
失われたニーナの心を取り戻すため、彼は様々なイベントであらゆる方法を試みることを決意する。その思いは、ただ一つ、彼女の笑顔を再び見ることに他ならなかった。
壊れていく音を聞きながら
夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。
妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪
何気ない日常のひと幕が、
思いもよらない“ひび”を生んでいく。
母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。
誰も気づきがないまま、
家族のかたちが静かに崩れていく――。
壊れていく音を聞きながら、
それでも誰かを思うことはできるのか。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
幼馴染と夫の衝撃告白に号泣「僕たちは愛し合っている」王子兄弟の関係に私の入る隙間がない!
佐藤 美奈
恋愛
「僕たちは愛し合っているんだ!」
突然、夫に言われた。アメリアは第一子を出産したばかりなのに……。
アメリア公爵令嬢はレオナルド王太子と結婚して、アメリアは王太子妃になった。
アメリアの幼馴染のウィリアム。アメリアの夫はレオナルド。二人は兄弟王子。
二人は、仲が良い兄弟だと思っていたけど予想以上だった。二人の親密さに、私は入る隙間がなさそうだと思っていたら本当になかったなんて……。
「無理をするな」と言うだけで何もしなかったあなたへ。今の私は、大公家の公子に大切にされています
葵 すみれ
恋愛
「無理をするな」と言いながら、仕事も責任も全部私に押しつけてきた婚約者。
倒れた私にかけたのは、労りではなく「失望した」の一言でした。
実家からも見限られ、すべてを失った私を拾い上げてくれたのは、黙って手を差し伸べてくれた、黒髪の騎士──
実は、大公家の第三公子でした。
もう言葉だけの優しさはいりません。
私は今、本当に無理をしなくていい場所で、大切にされています。
※他サイトにも掲載しています
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
幼馴染を溺愛する婚約者を懇切丁寧に説得してみた。
ましろ
恋愛
この度、婚約が決まりました。
100%政略。一度もお会いしたことはございませんが、社交界ではチラホラと噂有りの難物でございます。
曰く、幼馴染を溺愛しているとか。
それならばそのお二人で結婚したらいいのに、とは思いますが、決まったものは仕方がありません。
さて、どうしましょうか?
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
【完結】記念日当日、婚約者に可愛くて病弱な義妹の方が大切だと告げられましたので
Rohdea
恋愛
昔から目つきが悪いことをコンプレックスにしている
伯爵令嬢のレティーシャ。
十回目のお見合いの失敗後、
ついに自分を受け入れてくれる相手、侯爵令息のジェロームと出逢って婚約。
これで幸せになれる───
……はずだった。
ジェロームとの出逢って三回目の記念日となる目前、“義妹”のステイシーが現れるまでは。
義妹が現れてからの彼の変貌振りにショックを受けて耐えられなくなったレティーシャは、
周囲の反対を押し切って婚約の解消を申し出るが、
ジェロームには拒否され挙句の果てにはバカにされてしまう。
周囲とジェロームを納得させるには、彼より上の男性を捕まえるしかない!
そう結論づけたレティーシャは、
公爵家の令息、エドゥアルトに目をつける。
……が、彼はなかなかの曲者で────……
※『結婚式当日、婚約者と姉に裏切られて惨めに捨てられた花嫁ですが』
こちらの話に出て来るヒーローの友人? 親友? エドゥアルトにも春を……
というお声を受けて彼の恋物語(?)となります。
★関連作品★
『誕生日当日、親友に裏切られて婚約破棄された勢いでヤケ酒をしましたら』
エドゥアルトはこちらの話にも登場してます!
逃走スマイルベビー・ジョシュアくんの登場もこっちです!(※4/5追記)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる