婚約破棄したら、憧れのイケメン国王陛下と相思相愛、熱烈年の差婚?!

Narian

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リチャード様・・・リチャード様!

フードの下から現れたのは、紛れもなくリチャード様の顔だった。

声を聞いたとき、まさかと思った。
だって信じられなかった。遠く離れた戦場で、王としての責務を果たされているとばかり思っていたから。


「くっ、なぜリチャード王がここにっ?!」

上半身を縛られ、うつ伏せに床に転がされたファティマ皇女がうめく。
奴隷商人は意識を失っているらしく、突っ伏したまま動かない。

「それは僕が聞きたいね。奴隷の売買が行われると聞いて来てみれば、なぜあなたがいるのか」

「ぐっ・・・」

ローザン王国では、奴隷制度が廃止になって久しい。ローザンの国民を奴隷として売り飛ばそうとしたなど、未遂でも重罪は免れない。ましてや、その場を国王陛下本人に見られたとあっては・・・。
ファティマ皇女は、一言も発せずに黙り込んでしまった。


そんな皇女にはもはや構わず、リチャード様は私に駆け寄る。

「すまない。怖い思いをさせたね」

優しい瞳で私を見つめ、安心させるように微笑んでくれる。

「いいえ、いいえ!
良いのです、そのようなこと」

痛みも恐怖も、リチャード様に会えたことで全て流れ去った。鞭を振り上げられ、もう無事な姿では会えないと覚悟を決めたのは、つい数分前のことなのに・・・。

私の足の縄を解こうと、リチャード様が腰をかがめた時だった。
突然、ファティマ皇女の身体が微かに動き、顔が私の方を向いた、次の瞬間。
皇女は口から針を吹き出し、私の首筋にチクッ、と痛みが走った。

「・・・痛っ?!」

「グレイス?」

私の声に驚いて、顔を上げたリチャード様が、
首筋の一点を凝視する。

「針・・・?!」

「ほほほほほっ!うまくいったぞ。其はカンタージの毒よ!」

「カンタージだと?!」

カンタージ!砂漠に生息するカンタージ虫から抽出される猛毒。打たれた者は数時間で悶え苦しみ始め、一日のうちに死に至る。無味無臭だけれど、人肌に触れると微かに、花にも似た芳香を放つという。

リチャード様が慌てて針を引き抜き、匂いを嗅ぐ。

「くっ、これは確かに・・・」

「ほっほっほ!こんなこともあろうかと、襟元に仕込んでおったのじゃ。油断したな、リチャード王よ」

ファティマ皇女が勝ち誇ったように言った。
なんて女・・・!

「解毒薬はどこだ?!」

リチャード様が叫ぶ。

「狡猾なあなたのことだ。ただグレイスを死に至らしめるのが目的ではあるまい。取引に使うつもりだろう?解毒薬を持っているはずだ!」

「ほほほほほ、そのとおりじゃ!確かに持っておるぞ。言うことを聞けば与えてやろう。わたくしの縄を解くが良い」

やっと、やっと帰れると思ったのに・・・!
こんなことでリチャード様の足を引っ張ってしまうなんて。悔しい、悔しいわ!

「リチャード様、いけません!解放などしては何をされるか」

「大丈夫。君は心配しないで待っておいで。きっと助けてあげるから」

リチャード様は宥めるように優しく言うと、ファティマ皇女に近寄り、縄を解いた。

「さあ、解いたぞ。解毒薬を渡すんだ」

皇女は嬉々とした表情を浮かべながら立ち上がる。リチャード様からの攻撃を警戒してか、すこし距離を取った。

「そう焦ることもあるまい。ただ解毒薬とわたくしの安全を引き換えるだけでは、つまらんではないか。渡した途端に組み伏せられるかもしれんしな・・・」

そう言いながら、胸元から一本の小瓶を取り出した。紫色の液体が入っている。
あの独特の色はまさしく、バラン草の花から抽出した解毒薬だ。化学の実験で見たことがあるから間違いない。

「奪い取ろうなどとは思わぬことじゃ。おかしなことをすれば、この瓶を叩き割るぞ。
そうじゃ、良いことを思いついたぞ。リチャード王よ。そこの長椅子に座るのじゃ」

ファティマ皇女に促され、リチャード様は無言で従った。
皇女は床に落ちていた縄を拾い上げ、リチャード様を後ろ手に縛る。そしてもう1本小瓶を取り出すと、蓋を開けてリチャード様の口に流し込んだ。

ま、まさかまた毒?一体何本、仕込んでるのかしら?!
この毒女!猛獣だと思ってたけど、猛毒女、いえ、サソリ女よ!


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