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20逆転また反転
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リチャード様・・・リチャード様!
フードの下から現れたのは、紛れもなくリチャード様の顔だった。
声を聞いたとき、まさかと思った。
だって信じられなかった。遠く離れた戦場で、王としての責務を果たされているとばかり思っていたから。
「くっ、なぜリチャード王がここにっ?!」
上半身を縛られ、うつ伏せに床に転がされたファティマ皇女がうめく。
奴隷商人は意識を失っているらしく、突っ伏したまま動かない。
「それは僕が聞きたいね。奴隷の売買が行われると聞いて来てみれば、なぜあなたがいるのか」
「ぐっ・・・」
ローザン王国では、奴隷制度が廃止になって久しい。ローザンの国民を奴隷として売り飛ばそうとしたなど、未遂でも重罪は免れない。ましてや、その場を国王陛下本人に見られたとあっては・・・。
ファティマ皇女は、一言も発せずに黙り込んでしまった。
そんな皇女にはもはや構わず、リチャード様は私に駆け寄る。
「すまない。怖い思いをさせたね」
優しい瞳で私を見つめ、安心させるように微笑んでくれる。
「いいえ、いいえ!
良いのです、そのようなこと」
痛みも恐怖も、リチャード様に会えたことで全て流れ去った。鞭を振り上げられ、もう無事な姿では会えないと覚悟を決めたのは、つい数分前のことなのに・・・。
私の足の縄を解こうと、リチャード様が腰をかがめた時だった。
突然、ファティマ皇女の身体が微かに動き、顔が私の方を向いた、次の瞬間。
皇女は口から針を吹き出し、私の首筋にチクッ、と痛みが走った。
「・・・痛っ?!」
「グレイス?」
私の声に驚いて、顔を上げたリチャード様が、
首筋の一点を凝視する。
「針・・・?!」
「ほほほほほっ!うまくいったぞ。其はカンタージの毒よ!」
「カンタージだと?!」
カンタージ!砂漠に生息するカンタージ虫から抽出される猛毒。打たれた者は数時間で悶え苦しみ始め、一日のうちに死に至る。無味無臭だけれど、人肌に触れると微かに、花にも似た芳香を放つという。
リチャード様が慌てて針を引き抜き、匂いを嗅ぐ。
「くっ、これは確かに・・・」
「ほっほっほ!こんなこともあろうかと、襟元に仕込んでおったのじゃ。油断したな、リチャード王よ」
ファティマ皇女が勝ち誇ったように言った。
なんて女・・・!
「解毒薬はどこだ?!」
リチャード様が叫ぶ。
「狡猾なあなたのことだ。ただグレイスを死に至らしめるのが目的ではあるまい。取引に使うつもりだろう?解毒薬を持っているはずだ!」
「ほほほほほ、そのとおりじゃ!確かに持っておるぞ。言うことを聞けば与えてやろう。わたくしの縄を解くが良い」
やっと、やっと帰れると思ったのに・・・!
こんなことでリチャード様の足を引っ張ってしまうなんて。悔しい、悔しいわ!
「リチャード様、いけません!解放などしては何をされるか」
「大丈夫。君は心配しないで待っておいで。きっと助けてあげるから」
リチャード様は宥めるように優しく言うと、ファティマ皇女に近寄り、縄を解いた。
「さあ、解いたぞ。解毒薬を渡すんだ」
皇女は嬉々とした表情を浮かべながら立ち上がる。リチャード様からの攻撃を警戒してか、すこし距離を取った。
「そう焦ることもあるまい。ただ解毒薬とわたくしの安全を引き換えるだけでは、つまらんではないか。渡した途端に組み伏せられるかもしれんしな・・・」
そう言いながら、胸元から一本の小瓶を取り出した。紫色の液体が入っている。
あの独特の色はまさしく、バラン草の花から抽出した解毒薬だ。化学の実験で見たことがあるから間違いない。
「奪い取ろうなどとは思わぬことじゃ。おかしなことをすれば、この瓶を叩き割るぞ。
そうじゃ、良いことを思いついたぞ。リチャード王よ。そこの長椅子に座るのじゃ」
ファティマ皇女に促され、リチャード様は無言で従った。
皇女は床に落ちていた縄を拾い上げ、リチャード様を後ろ手に縛る。そしてもう1本小瓶を取り出すと、蓋を開けてリチャード様の口に流し込んだ。
ま、まさかまた毒?一体何本、仕込んでるのかしら?!
この毒女!猛獣だと思ってたけど、猛毒女、いえ、サソリ女よ!
フードの下から現れたのは、紛れもなくリチャード様の顔だった。
声を聞いたとき、まさかと思った。
だって信じられなかった。遠く離れた戦場で、王としての責務を果たされているとばかり思っていたから。
「くっ、なぜリチャード王がここにっ?!」
上半身を縛られ、うつ伏せに床に転がされたファティマ皇女がうめく。
奴隷商人は意識を失っているらしく、突っ伏したまま動かない。
「それは僕が聞きたいね。奴隷の売買が行われると聞いて来てみれば、なぜあなたがいるのか」
「ぐっ・・・」
ローザン王国では、奴隷制度が廃止になって久しい。ローザンの国民を奴隷として売り飛ばそうとしたなど、未遂でも重罪は免れない。ましてや、その場を国王陛下本人に見られたとあっては・・・。
ファティマ皇女は、一言も発せずに黙り込んでしまった。
そんな皇女にはもはや構わず、リチャード様は私に駆け寄る。
「すまない。怖い思いをさせたね」
優しい瞳で私を見つめ、安心させるように微笑んでくれる。
「いいえ、いいえ!
良いのです、そのようなこと」
痛みも恐怖も、リチャード様に会えたことで全て流れ去った。鞭を振り上げられ、もう無事な姿では会えないと覚悟を決めたのは、つい数分前のことなのに・・・。
私の足の縄を解こうと、リチャード様が腰をかがめた時だった。
突然、ファティマ皇女の身体が微かに動き、顔が私の方を向いた、次の瞬間。
皇女は口から針を吹き出し、私の首筋にチクッ、と痛みが走った。
「・・・痛っ?!」
「グレイス?」
私の声に驚いて、顔を上げたリチャード様が、
首筋の一点を凝視する。
「針・・・?!」
「ほほほほほっ!うまくいったぞ。其はカンタージの毒よ!」
「カンタージだと?!」
カンタージ!砂漠に生息するカンタージ虫から抽出される猛毒。打たれた者は数時間で悶え苦しみ始め、一日のうちに死に至る。無味無臭だけれど、人肌に触れると微かに、花にも似た芳香を放つという。
リチャード様が慌てて針を引き抜き、匂いを嗅ぐ。
「くっ、これは確かに・・・」
「ほっほっほ!こんなこともあろうかと、襟元に仕込んでおったのじゃ。油断したな、リチャード王よ」
ファティマ皇女が勝ち誇ったように言った。
なんて女・・・!
「解毒薬はどこだ?!」
リチャード様が叫ぶ。
「狡猾なあなたのことだ。ただグレイスを死に至らしめるのが目的ではあるまい。取引に使うつもりだろう?解毒薬を持っているはずだ!」
「ほほほほほ、そのとおりじゃ!確かに持っておるぞ。言うことを聞けば与えてやろう。わたくしの縄を解くが良い」
やっと、やっと帰れると思ったのに・・・!
こんなことでリチャード様の足を引っ張ってしまうなんて。悔しい、悔しいわ!
「リチャード様、いけません!解放などしては何をされるか」
「大丈夫。君は心配しないで待っておいで。きっと助けてあげるから」
リチャード様は宥めるように優しく言うと、ファティマ皇女に近寄り、縄を解いた。
「さあ、解いたぞ。解毒薬を渡すんだ」
皇女は嬉々とした表情を浮かべながら立ち上がる。リチャード様からの攻撃を警戒してか、すこし距離を取った。
「そう焦ることもあるまい。ただ解毒薬とわたくしの安全を引き換えるだけでは、つまらんではないか。渡した途端に組み伏せられるかもしれんしな・・・」
そう言いながら、胸元から一本の小瓶を取り出した。紫色の液体が入っている。
あの独特の色はまさしく、バラン草の花から抽出した解毒薬だ。化学の実験で見たことがあるから間違いない。
「奪い取ろうなどとは思わぬことじゃ。おかしなことをすれば、この瓶を叩き割るぞ。
そうじゃ、良いことを思いついたぞ。リチャード王よ。そこの長椅子に座るのじゃ」
ファティマ皇女に促され、リチャード様は無言で従った。
皇女は床に落ちていた縄を拾い上げ、リチャード様を後ろ手に縛る。そしてもう1本小瓶を取り出すと、蓋を開けてリチャード様の口に流し込んだ。
ま、まさかまた毒?一体何本、仕込んでるのかしら?!
この毒女!猛獣だと思ってたけど、猛毒女、いえ、サソリ女よ!
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