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21蠍姫の媚薬

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「ほほほほほっ、飲み干したな!これはザッハール王家秘伝の最も強力な媚薬じゃ!」

ファティマ皇女がまたもや勝ち誇ったように、高らかに笑う。

「また媚薬か。芸がないな」
リチャード様がつぶやいた。
また?またってどういうこと?

「気づいておったか。じゃが、あの夜のものとは比べ物にならぬぞ。ものの数分で、居ても立ってもおられなくなるであろう」

くっくっく、と笑うと、ファティマ皇女は件の解毒薬をテーブルに置いて、私のほうを振り返った。

「聞いたであろう、小娘?お前があの夜、王のお情けにあずかれたのは、わたくしの媚薬のおかげじゃ。思い上がるでないわ!」

あの夜・・・て、あの夜?まさか、王宮でリチャード様にキスしたとき、媚薬を仕込んでいたの?!?!

「あ、あなた、なんてこと・・・」

「ふん。欲しいものを手に入れるには、手段など選ばぬわ。見ているがよい。今度はわたくしが寝取ってやろう。お前の目の前でな」

なっ、なんですって?!?!

「この媚薬は強力じゃ。欲望が満たされ尽くすまで、狂うぞ。のう、リチャード王よ。もう、たまらぬであろう?」

そんな、まさか・・・。
驚いてリチャード様を見ると、少し汗ばんで目を閉じ、微かに震えている。

嘘、うそよね?!そんな女に狂わされたりしないわよね?!


「ほっほっほ。効いてきたようじゃな。
よいぞ。もっと悶えるがよい」
ファティマ皇女はそう言うと、指先でリチャード様の顔に触れる。リチャード様は一瞬ビクっとして、苦しそうに顔をしかめると、皇女から逃れるように顔を背けた。

「逃げてもムダじゃ」

皇女はそのまま指先を首筋に這わせる。
するとリチャード様の口から、うっ、と声が漏れた。

いや、やめて・・・!


「もう感じておるのか」
煽るようにファティマ皇女が問いかける。
「誰が感じてなど・・・」
「強がるのもよいがな。息が上がっておるぞ?」

確かにリチャード様は、さっきより苦しそうだった。微かに開いた唇から、吐息が漏れている。

「ふ、よいの・・・美しい男が悶えるさまは」
ファティマ皇女は、リチャード様の顎から耳の後ろ、首筋を指先でくすぐるようになぞりながら、片手でリチャード様のシャツのボタンを外し始めた。

いや、やめて、そんなことしないで・・・!

私の声にならない叫びは無視され、やがて全てのボタンが外された。

「ほう、素晴らしいのぅ・・・」
鍛え上げられた上半身が露わになり、皇女も思わず感嘆のため息を漏らした。肌の手触りを確かめるように、何度も首筋や鎖骨、胸を指先でなぶる。

皇女の指が触れるたび、リチャード様の唇からうめき声にも似た吐息が漏れる。それは回を追うごとに熱く、甘くなって行った。

いや、いや・・・!やめて・・・!

皇女は、ふいに唇をリチャード様の首筋に近づけると、耳を甘噛みした。リチャード様が短い吐息を漏らすと、皇女の責めは一段と激しさを増す。緩く時に激しく、舌を耳下に這わせ・・・噛み付くように首筋に吸い付いた。

「うあぁっ!」
ついにリチャード様が大きな声を上げて、のけ反った。

「ふふふ。息も絶え絶えではないか」
耳元で囁く皇女。息がかかるたび、リチャード様はうめき声を漏らし、身体はビクっと動く。
 
「もう、欲しくてたまらないであろう?」
「うっ・・・」
「素直になれ。されば堪能させてやるぞよ」
「ふっ、ううっ・・・もう、」
「なんじゃ?はっきり言わねばわからぬぞ」

リチャード様の表情が変わった。もはや目は潤み、開きかけた唇から荒い吐息が漏れている。さっきまでの執拗な責めに耐えていた顔から、哀願するような表情に変わった。

嘘・・・うそでしょう?!いやっ、やめて・・・聞きたくない・・・!

「もう、我慢できない・・・たのむ・・・」
「ほほほほっ!ようやく素直になったな!よかろう、たっぷり与えてやるぞ」

そんな・・・!こんな、こんな卑劣な女に屈するだなんて。
リチャード様のせいじゃないのはわかってる、リチャード様は私を護ろうとしてくださったんだもの。
でも、でも・・・!

私は絶望の底に叩き落とされていた。
そんな私には目もくれず、ファティマ皇女は嬉々としてスカートを捲し上げ、リチャード様の上に跨ろうとする。

?!?!?!

その時だった。リチャード様が急に身体を起こすと、縛られていたはずの手で思い切りファティマ皇女を突き飛ばした。

「なっ?!」

勢い余って、皇女は床に転げ落ちた。リチャード様はすばやくマントを拾い上げると、皇女を簀巻きにし、脱ぎ捨てたシャツで縛り上げる。

「今度は油断しないよ。もう逃げられない」 




~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
読んでくださってありがとうございます!
外出先で公開設定したら、まさかの二話同時投稿、しかも21話はタイトルなしで公開してしまっていました。
違和感?感じられた方、申し訳ありません。タイトルは設定し直しました

次話は明日4/25朝公開予定です。続きは頑張って制作中!
温かい目で応援よろしくお願いします
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