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今日の夜会メシは私
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健康共和国の社交界は王政の時よりも盛り上がっている。ロビー活動が実を結ぶようになったことに気がついた貴族たちが集団を作って政治に勤しんでいるらしい。
私はそこに父様とともに乗り込んだ。メシ目当てだ。挨拶もそこそこに給仕係に頼んで夜会メシを食べることにした。
夜会メシは小さな肉の欠片みたいなものがほとんどだ。鶏のレバパテにフルーツソースとナッツか。なかなかやるな、なんて考えながら、うやうやしく小さな皿に載せられたそれらを全種類食して二週目に入ろうか、デザートに移ろうか考えていた時に貴族のように着飾った父様に引っ張られた。派手なのは王政じゃないからやめたらしい。
「何をするのですか?」
「食べてばかりいるんじゃない。挨拶したそうに男達が鈴なりになっているのだからとりあえず捌きなさい」
ふと見ると貴族の同じ年頃だろう子息達がモジモジしながら群れになっていた。
「なぜ捌かねばならないのです?」
「お前の次の嫁ぎ先になるかもしれないだろう」
「いや、ですから私はまだ離縁されていない」
「現実を見なさい。ほら、立って」
渋々私は美しく着飾った子息達の前に立った。ワラワラと列をなして我先にと名前を名乗ってくる。
「この度は残念なことでありましたが、私達にとっては王女様とお会いできる機会がありまして、思わぬ僥倖でございます」
チヤホヤしてくれるらしいが、夜会メシの方に興味がある。チラッとテーブルに視線を投げるとハッと何かに気がついた子息達が私をソファーに座らせて各々皿を持ってやってきた。
「お召し上がりになりますか?」
「……ありがとう」
ホストか? ある者は跪いてある者は立ったまま皿を捧げ私は夜会の一角に変な空間を作ってしまった。仕方がないので談笑しながら夜会メシをつまむ。
「お美しいですね」
「王政時代は終わりましたが、王家は維持したいと考えております。できれば我々の誰かと結婚していただければ……」
「離縁してないので無理よ」
「え、なぜ戻ってらっしゃったのですか?」
「まぁ、たまには里帰りしようかと思って」
お前の国を滅ぼしに来ました、とは言いづらくて私は言葉を濁した。そこに何かに含意を感じてしまった若者は悲しそうにしている。おい。なにか違うこと考えてるだろ。
「おいたわしいことでございます……。姫様のお心を癒やすことができれば……」
勘違いした青年たちが我も我もと皿を捧げてくるのはいいけれど、何かが間違っている。案の定、遠くで令嬢たちやその父母達が集団になって嫌な感じの視線を投げてくる。
「離縁された癖に偉そうに」
「王女とはいえ王政ではないのだから……」
扇に隠されている口元からはそれなりに明瞭な悪口が聞こえてくる。なぜなら私の耳は健康だから。
気まずい空間をどうにかしようと楽隊の指揮者が音量をあげるも、必死の抵抗虚しく場は盛り上がっていく。
王女だからと偉そうにしていたから追い出されたまでが悪口のハイライト。健康共和国も滅ぼしてやろうか考え始めたその時に、伝令が青くなって紙を握りしめながら俺が今夜の主役だとばかりに中央に踊りでてきた。
「帝国が攻めてきました」
私はそこに父様とともに乗り込んだ。メシ目当てだ。挨拶もそこそこに給仕係に頼んで夜会メシを食べることにした。
夜会メシは小さな肉の欠片みたいなものがほとんどだ。鶏のレバパテにフルーツソースとナッツか。なかなかやるな、なんて考えながら、うやうやしく小さな皿に載せられたそれらを全種類食して二週目に入ろうか、デザートに移ろうか考えていた時に貴族のように着飾った父様に引っ張られた。派手なのは王政じゃないからやめたらしい。
「何をするのですか?」
「食べてばかりいるんじゃない。挨拶したそうに男達が鈴なりになっているのだからとりあえず捌きなさい」
ふと見ると貴族の同じ年頃だろう子息達がモジモジしながら群れになっていた。
「なぜ捌かねばならないのです?」
「お前の次の嫁ぎ先になるかもしれないだろう」
「いや、ですから私はまだ離縁されていない」
「現実を見なさい。ほら、立って」
渋々私は美しく着飾った子息達の前に立った。ワラワラと列をなして我先にと名前を名乗ってくる。
「この度は残念なことでありましたが、私達にとっては王女様とお会いできる機会がありまして、思わぬ僥倖でございます」
チヤホヤしてくれるらしいが、夜会メシの方に興味がある。チラッとテーブルに視線を投げるとハッと何かに気がついた子息達が私をソファーに座らせて各々皿を持ってやってきた。
「お召し上がりになりますか?」
「……ありがとう」
ホストか? ある者は跪いてある者は立ったまま皿を捧げ私は夜会の一角に変な空間を作ってしまった。仕方がないので談笑しながら夜会メシをつまむ。
「お美しいですね」
「王政時代は終わりましたが、王家は維持したいと考えております。できれば我々の誰かと結婚していただければ……」
「離縁してないので無理よ」
「え、なぜ戻ってらっしゃったのですか?」
「まぁ、たまには里帰りしようかと思って」
お前の国を滅ぼしに来ました、とは言いづらくて私は言葉を濁した。そこに何かに含意を感じてしまった若者は悲しそうにしている。おい。なにか違うこと考えてるだろ。
「おいたわしいことでございます……。姫様のお心を癒やすことができれば……」
勘違いした青年たちが我も我もと皿を捧げてくるのはいいけれど、何かが間違っている。案の定、遠くで令嬢たちやその父母達が集団になって嫌な感じの視線を投げてくる。
「離縁された癖に偉そうに」
「王女とはいえ王政ではないのだから……」
扇に隠されている口元からはそれなりに明瞭な悪口が聞こえてくる。なぜなら私の耳は健康だから。
気まずい空間をどうにかしようと楽隊の指揮者が音量をあげるも、必死の抵抗虚しく場は盛り上がっていく。
王女だからと偉そうにしていたから追い出されたまでが悪口のハイライト。健康共和国も滅ぼしてやろうか考え始めたその時に、伝令が青くなって紙を握りしめながら俺が今夜の主役だとばかりに中央に踊りでてきた。
「帝国が攻めてきました」
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