錆びた指先。~大人なあんたとガキの俺の二重奏~

かたらぎヨシノリ

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四枚目、これが大人とガキに与えられたラストチャンス。

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4 四枚目、これが大人とガキに与えられたラストチャンス。
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 起きたら、リビングに奈義の姿はなかった。
 奈義なんて存在そのものが幻だったような気さえして、そんなバカなことばかり考える自分がおかしくて力なく笑う。

「……ん?」

 テーブルの上に投げていたスマホの画面が光っている。誰だろ奈義かな、なんて甘い期待はすぐに敗れた。

 「………しつけーよ」

 履歴いっぱいに事務所から電話があった。伝言メモも容量いっぱいに入っているらしく、逆に聞くのも面倒に思えた。この調子だとグループラインにもメッセージ飛んでるだろうな。
 今日は別に予定もなかったはずだ。呼び出しされるようなことは……一つしか思い当たらない。

(とうとう、最終通告か、な)

 ため息ついて、重い足取りで俺は出掛ける準備に取りかかった。
 もとから事務所は奈義と所属してるボーカルを一緒に組ませるつもりだったらしい。はなから俺は邪魔な存在で、申し訳ないと思う。だって、みんなプロだし。そんななかで俺だけ素人で、無理矢理奈義に引っ付いて『一緒に組みます』なんて言って。図々しいにも程がある。
 俺が社長だったら問答無用で追い返してる。
 なのに、ぱっとしない俺を使ってくれて、あまつさえCDも三枚出してくれるなんて本当に俺は事務所の社長に頭が上がらない。
 だから、だから、これから最終通告を受けたとしても俺は二つ返事で身を引こう。
 これ以上のわがままは、許されないっていくら馬鹿な俺でも理解してた。
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