十の加護を持つ元王妃は製菓に勤しむ

水瀬 立乃

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出会い①(ルフナ視点)

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店番をマロア母さんと代わって一時間も経った頃だろうか。
豊穣祭のメイン会場の方が何やら騒がしくなってきた。
祭りの賑わいとは違う、不穏な雰囲気が漂っている。
女性の甲高い悲鳴やどよめきの声が聞こえたと思ったら、人混みの間をかき分ける人の姿が見えた。
商人のような格好をした女性が、何かから逃れるように村の入り口の方に向かっている。
彼女が何度も振り返った先には、王都の騎士達が制止の声を上げながら追いかけてきていた。
俺は並んでいるお客さんにちょっと待って欲しいと声をかけてから、騎士達に加勢した。
これでも村の警備隊の一員で、脚力と腕っぷしには多少自信がある。
すぐに女性に追いつくと、護身用のナイフを握っている手首を掴んだ。
だけど意外にも力が強くて、呆気なく振り解かれてしまう。
一瞬驚いてしまったものの、振り回してくるナイフを避けながら屈み込む。
下半身が無防備になった隙に、腹に頭突きをするようにして地面に押し倒す。
起き上がる前に持っていたナイフを奪い、刃先を頸動脈に突き付けた時、その理由がわかった。
離せともがく声も、ローブの下のワンピースから伸びる手足も首も、完全に男のものだった。

「そのまま離すな!」
「捕縛しろ!!」

俺が胸板に膝を乗せて動けなくしているところに、騎士達が追いつく。
あっという間に女装男は捕えられ、抵抗も空しく連行されていった。

「協力に感謝する。君の動きは見事だった。武術を習ったことがあるのか?」
「ええ、警備隊の訓練で少し。お力になれてよかったです」

協力とはいっても、運よく犯人を取り押さえられたくらいで大したことはしていない。
声をかけてくれた騎士は俺が村の警備隊員だと知って驚いたようだった。

「では、私はこれで…」

お客さんを待たせたままなので、早く店に戻りたくて会釈をする。
でも騎士にとってはそういうわけにもいかないようで、事情聴取をさせて欲しいと引き留められてしまった。
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