61 / 89
王妃の義従弟②
しおりを挟む
私の顔を覚えていてくれたグレイルが泣いて喜んでくれたことで、部屋の空気が変わった。
コストル様は私の主張が真実だったとわかって可哀想なほどに青褪めている。
グレイルは動揺している部下を更に脅しつけるようにして鍵を奪い、手を震わせながら手錠を外してくれた。
「誤解とはいえ、あなたに手錠を嵌めるなんて……!」
「気になさらないでください。今の私は平民ですし、彼らの年齢なら私の顔を知らなくて当然ですもの」
にっこり微笑むと、彼は複雑そうな表情を浮かべた。
「どうして……。今までどこに……」
「そんなことより、窃盗容疑で捕えた息子も解放していただけますか?彼が盗んだという指輪は私がお守りとして譲り渡したのです。私のものを誰に与えようと私の勝手ですから、罪にはなりませんよね?」
「あっ…ええ、今すぐに解放します。縄を解け!」
やっと拘束が解かれたルフナをぎゅうと抱きしめる。
母親にずっと秘密にされ続けてきたことをこんな形で知ることになって、きっと彼は今とても混乱しているだろう。
その証拠に、私を呼ぶ声が戸惑いがちに震えている。
「母様……」
「黙っていてごめんなさい、ルフナ…。家に帰ったらきちんと説明しますから…」
「……わかりました。俺は母様を信じていますから」
「ありがとう…」
私に騙されたと怒りを抱いても可笑しくはないのに、許して受け入れようとしてくれることが嬉しい。
抵抗されないことをいいことに、私はもう一度いつの間にか身も心も逞しく育った息子を抱きしめた。
「姉上、もしかして彼は……」
「息子に説明した後で必ずお話します。それまで待っていただけますか?」
グレイルの質問を遮って、これ以上は聞いてくれるなと遠回しに牽制する。
察しの良い彼は私の気持ちを汲んで引き下がってくれた。
その後私達は夜も遅いからと騎士団長専用の当直室に案内され、基地の中で朝を迎えることになった。
コストル様は私の主張が真実だったとわかって可哀想なほどに青褪めている。
グレイルは動揺している部下を更に脅しつけるようにして鍵を奪い、手を震わせながら手錠を外してくれた。
「誤解とはいえ、あなたに手錠を嵌めるなんて……!」
「気になさらないでください。今の私は平民ですし、彼らの年齢なら私の顔を知らなくて当然ですもの」
にっこり微笑むと、彼は複雑そうな表情を浮かべた。
「どうして……。今までどこに……」
「そんなことより、窃盗容疑で捕えた息子も解放していただけますか?彼が盗んだという指輪は私がお守りとして譲り渡したのです。私のものを誰に与えようと私の勝手ですから、罪にはなりませんよね?」
「あっ…ええ、今すぐに解放します。縄を解け!」
やっと拘束が解かれたルフナをぎゅうと抱きしめる。
母親にずっと秘密にされ続けてきたことをこんな形で知ることになって、きっと彼は今とても混乱しているだろう。
その証拠に、私を呼ぶ声が戸惑いがちに震えている。
「母様……」
「黙っていてごめんなさい、ルフナ…。家に帰ったらきちんと説明しますから…」
「……わかりました。俺は母様を信じていますから」
「ありがとう…」
私に騙されたと怒りを抱いても可笑しくはないのに、許して受け入れようとしてくれることが嬉しい。
抵抗されないことをいいことに、私はもう一度いつの間にか身も心も逞しく育った息子を抱きしめた。
「姉上、もしかして彼は……」
「息子に説明した後で必ずお話します。それまで待っていただけますか?」
グレイルの質問を遮って、これ以上は聞いてくれるなと遠回しに牽制する。
察しの良い彼は私の気持ちを汲んで引き下がってくれた。
その後私達は夜も遅いからと騎士団長専用の当直室に案内され、基地の中で朝を迎えることになった。
103
あなたにおすすめの小説
生まれ変わり令嬢は、初恋相手への心残りを晴らします(と意気込んだのはいいものの、何やら先行き不穏です!?)
夕香里
恋愛
無実の罪をあえて被り、処刑されたイザベル。目を開けると産まれたての赤子になっていた。
どうやら処刑された後、同じ国の伯爵家にテレーゼと名付けられて生まれたらしい。
(よく分からないけれど、こうなったら前世の心残りを解消しましょう!)
そう思い、想い人──ユリウスの情報を集め始めると、何やら耳を疑うような噂ばかり入ってくる。
(冷酷無慈悲、血に飢えた皇帝、皇位簒だ──父帝殺害!? えっ、あの優しかったユースが……?)
記憶と真反対の噂に戸惑いながら、17歳になったテレーゼは彼に会うため皇宮の侍女に志願した。
だが、そこにいた彼は17年前と変わらない美貌を除いて過去の面影が一切無くなっていて──?
「はっ戯言を述べるのはいい加減にしろ。……臣下は狂帝だと噂するのに」
「そんなことありません。誰が何を言おうと、わたしはユリウス陛下がお優しい方だと知っています」
徐々に何者なのか疑われているのを知らぬまま、テレーゼとなったイザベルは、過去に囚われ続け、止まってしまった針を動かしていく。
これは悲恋に終わったはずの恋がもう一度、結ばれるまでの話。
【本編完結・番外編追記】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。
As-me.com
恋愛
ある日、偶然に「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言する婚約者を見つけてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃりますが……そんな婚約者様はとんでもない問題児でした。
愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私は他の女性を愛するあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄します!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
番外編追記しました。
スピンオフ作品「幼なじみの年下王太子は取り扱い注意!」は、番外編のその後の話です。大人になったルゥナの話です。こちらもよろしくお願いします!
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』のリメイク版です。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定などを書き直してあります。
*元作品は都合により削除致しました。
そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。
悪役令嬢は番様?
水江 蓮
恋愛
ある日ぼんやり鏡を見ていたら、前世の記憶を思い出したツェツリア8歳。
この世界は人気乙女ゲームの世界であり自分の役どころは悪役令嬢だと…。
まだ悪役令嬢として活動していないから、まだ挽回できるはず!
え?
誰が誰の番?
まず番って何?
誰か何がどうなっているのか教えて!!
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
笑い方を忘れた令嬢
Blue
恋愛
お母様が天国へと旅立ってから10年の月日が流れた。大好きなお父様と二人で過ごす日々に突然終止符が打たれる。突然やって来た新しい家族。病で倒れてしまったお父様。私を嫌な目つきで見てくる伯父様。どうしたらいいの?誰か、助けて。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる