十の加護を持つ元王妃は製菓に勤しむ

水瀬 立乃

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王妃の義従弟②

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私の顔を覚えていてくれたグレイルが泣いて喜んでくれたことで、部屋の空気が変わった。
コストル様は私の主張が真実だったとわかって可哀想なほどに青褪めている。
グレイルは動揺している部下を更に脅しつけるようにして鍵を奪い、手を震わせながら手錠を外してくれた。

「誤解とはいえ、あなたに手錠を嵌めるなんて……!」
「気になさらないでください。今の私は平民ですし、彼らの年齢なら私の顔を知らなくて当然ですもの」

にっこり微笑むと、彼は複雑そうな表情を浮かべた。

「どうして……。今までどこに……」
「そんなことより、窃盗容疑で捕えた息子も解放していただけますか?彼が盗んだという指輪は私がお守りとして譲り渡したのです。私のものを誰に与えようと私の勝手ですから、罪にはなりませんよね?」
「あっ…ええ、今すぐに解放します。縄を解け!」

やっと拘束が解かれたルフナをぎゅうと抱きしめる。
母親にずっと秘密にされ続けてきたことをこんな形で知ることになって、きっと彼は今とても混乱しているだろう。
その証拠に、私を呼ぶ声が戸惑いがちに震えている。

「母様……」
「黙っていてごめんなさい、ルフナ…。家に帰ったらきちんと説明しますから…」
「……わかりました。俺は母様を信じていますから」
「ありがとう…」

私に騙されたと怒りを抱いても可笑しくはないのに、許して受け入れようとしてくれることが嬉しい。
抵抗されないことをいいことに、私はもう一度いつの間にか身も心も逞しく育った息子を抱きしめた。

「姉上、もしかして彼は……」
「息子に説明した後で必ずお話します。それまで待っていただけますか?」

グレイルの質問を遮って、これ以上は聞いてくれるなと遠回しに牽制する。
察しの良い彼は私の気持ちを汲んで引き下がってくれた。
その後私達は夜も遅いからと騎士団長専用の当直室に案内され、基地の中で朝を迎えることになった。
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