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叙爵 編

醜女の相棒

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 信じられないこの男。あんな構えでウッズさんに勝つなんて。名前はユタカ……変な名前ね。


「それにしても変った剣だな」
「俺の村に古くから伝わる物ですから」
「ふ~ん。まぁ、頑張ってくれ」
「はい」

「まさかウッズさんに勝つなんてね。はい、登録証。銀貨3枚よ」

「ウッズさんは本気じゃなかったですよ」

「そ、そう?そうよね。でも大したものよ頑張ってね」
「ありがとう」


そんなに悪い性格でもなさそう、思い込みは良くないな。気をつけよう。


ギルドで地図を手に入れて食料を買い込み、取り合えず西に在るブルーバ王国を目指す事にする。


「暫くはこの街道を真っ直ぐか。そうだ、このなまくらの鉄剣を精製して置かないと。そのうちに刀でも作ろう」


俺は魔力もスキルも無いわけではない。手の内を見せなかっただけだ。

クラスは30人で幸いな事に俺の順番は最後だったので、自分のスキルを調べる事が出来た。見た時は愕然として血の気が引いたが、無‘精’者と言っても、そのままの意味ではないのが判ってホッとした。

無の者、精の者、という事らしい。とはいえ全て解析出来たわけではないので色々と試してみないといけない。


無のスキルを使って俺のメインの能力を隠したというわけだ。


それにこの手の世界に有る鉱物、金属と言えば金銀銅にミスリル、アダマンタイトに緋色金が定番だが、この世界の土壌の中には色んな成分が含まれていた。

これを利用しない手はない。俺のスキルを使えば色んな金属が造れそうだ。

例を上げればアルミニウムなどが作れるだろう。

俺の鑑定能力は凄まじい。さすが勇者召喚といったところだ。


先ずは、このなまくら剣を鋼の剣に変えよう。人目の無い所で街道を外れ鉄剣を深く地に刺す。


俺は、無と精がつく言葉や熟語の意味のような事を、おそらく大抵の事が出来ると思う。

なまくら鉄剣の中の不純物、リンと硫黄をぬく。そして炭素を1%まで下げて土壌に有るチタンを加える、と念じた。


精製と製錬、精のスキル能力に加え錬金のスキルも作用しているのだろう、地から引き抜いたなまくらの鉄剣は、出来の良い刀に匹敵する素晴らしい物だった。

「これでよし」


馬車や馬を買いたかったが金が足りないもんな。仕方ないので、ひたすら歩いたら日が暮れて来た。何時だ?時計が欲しいところだ。今度、考えてみるか。


他の人達は街道をズレて、大きな樹が何本も立っている所で野営をするらしい。俺も真似をして少し離れた所に陣取る。

王都で買ったりんごの様な果物と串焼きを頬張る。何の肉か気になるが郷に入っては郷に従えなので気にしないで食べる。アイテムBOXは時間が止められるらしく肉は温かかった。

派手な魔法は使えないが、錬金術に関する物と定番の生活魔法は大丈夫なので、水を出し飲む事が出来た。歩き疲れたので風呂には入りたい欲求にかられるがここでは我慢だ。


寝ている時に魔物や盗賊に襲われては困るので、無のスキルによって完全に俺の存在を消す。




ガヤガヤするので目が覚めた。どうやら朝らしい、他の人達は出発の準備も終わり街道に戻って行った。

俺はさすがに疲れているらしく、頭がボ~っとしているのでもう少し休む事にして横になっていた。


どのくらい時間が経ったのか、2人組が俺のいる樹の所にやって来た。


「ここで休もう」
「はい」

「はぁ~、やっぱり売れ残ってしまったな」
「申しわけありません」

「いや、断りきれずお前を買った私が甘いのだ」


完全に無の状態になっている俺のことは判らないし、触れてる感覚もない様だ。俺自身も感じない。2人の話の内容からすると奴隷商と女の奴隷のようだ。

確かに女の奴隷を見ると、お世辞にも美人とは言えない……いやブス、醜女と言う表現以外は無理だろう。背は俺と同じくらいでちょっと小太りで肌はガサガサで鱗のようだし、買い手がいないのは当然なのかもしれない。


「いい加減に俺の足の上からどいてくれないかな?」
「うわぁ~」「きゃっ」

「酷いな俺を化け物みたいに」

「ひ、人が居たなんて。商人には珍しく私は気配感知のスキルが有るんですよ。その私が気づかないなんて」

「私もそうです。ありえません」


「悩み事があって鈍っていたんだろ、きっと」
「うぅ、そう言われると……そんな気が」

「なぁ、少し聞いていいか?」
「な、何でしょう?」

「魔王が5年後に復活するって本当か?」

「違いますよ巫女たちによって10年後と予測されています。なので各国が準備している所です。何処からの情報です?」


「ダイヴェル王国だが」

「……あそこはあまり良い噂を聞きませんからね。魔王復活は10年後に間違いないでしょう。600年前はバーソロン魔法国家が勇者召喚をして魔王を倒したんです」


5年のズレがある。やっぱりあの爺の言った事は嘘か。何を企んでる糞爺。


「それはそうと貴方は1人旅でしょ?どうです旅の相棒に、この娘は役にたつと思いますよ」

商魂たくましい人だな。鑑定をして女の娘を見てみる。


なるほど、良いかも。俺の持ってるお金で足りるとは思えないが。

「いくらなの?」
「銀貨10枚、いや5枚で」


えっ、銀貨5枚って5千円て事だよね。奴隷が5千円か……なんかこの娘が気の毒な……。


「分かった買うよ」

「本当で御座いますか?では早速、貴方の血を一滴頂戴致します」

俺が人指ゆびを出すと針で軽く刺す。赤い顔料が入った小皿に人指ゆびから落ちた血を受け止め、混ぜて女の娘の腕に奴隷紋を描いて、紋を刻むために呪文を唱え始めると左腕に描かれた奴隷紋は肌に染み込むように定着した。


「これで契約完了で御座います」

俺が銀貨5枚を払うと、気が変わらぬうちにとばかりに、そそくさと離れて行った。面倒見がよく悪い人ではないのだろうが……。

「サユリア達者でな」
「今までお世話になりました」


奴隷商の言った事が本当ならクラスメイトは騙されているわけだが……まあ、俺の知った事ではないのだが、風紀委員の天海は幼馴染だし、オタクの鈴木とは縁もあるし連中はこの世界を楽しみたいだろうから教えてやりたいが方法が無いよな……。

あっ、スマホがあったなダメもとだ。学生服をアイテムBOXから出してポケットをさぐり、スマホを出しスイッチを入れる。


おっと、5Gでアンテナが立ってる。凄い。え~と、あいつの電話番号は確か080の……。

思い出した番号を入力すると、数字が文字化けしたであろう物が表示された。


ダメか?一応電話マークを押してみる。呼び出している、繋がるのか?

『$#@!&』

ダメだ何を言っているのか解らない。諦めるか、いやいや待て待て。

俺はどの文字がどういう風に化けるのか、規則性を調べる為に適当に数字や文字を入力した。そしてついに見つけた。gの文字がーで5が・になる。

天海の奴はガールスカウトだった筈。ーと・の組み合わせがモールス信号だと解かるだろう。オタク連中も知ってる事を祈ろう。

電話番号が判っているのだSMSショートメッセージサービスで送れば良い。それでもちゃんと送れる保証など無いが。


SMSを送った後、顔を上げるとキョトンとして女の娘が俺を見ていた。いけね、すっかり忘れていた。


「ごめん、ごめん、放置プレイじゃないからね」
「放置プレイ?」
「あっ、いや、何でもないよ。君の名前は?」
「サユリアです。ご主人様」


「サユリアか、ご主人様は抵抗があるからユタカでいいよ」
「解りました、ユタカ様」

「じゃ行こうか」

「あのう、お聞きしてもよいですか?何処に行かれるのです」


「そう聞かれると特に決めてないんだ。そうだ、サユリアは行きたいところってない?」

「行きたいところですか?」

サユリアは一瞬とても悲しい顔をしたが直ぐに笑顔になって

「許されるのなら山岳の民グロリア族の聖地、シャレイド山の神殿に行ってみたいですね」


シャレイド山はディライト王国に在り、シャコー山脈の中で最も高い山だ。本当に魔王が復活するまで10年有るのだ余裕だろう。

「ここから西だね。よし行こう」
「えっ、よろしいのですか?」
「いいさ、時間はたっぷり有るんだ」


悲しい顔をした理由は気になるが、呆気にとられているサユリアを促して街道に戻る。俺がサユリアを買った理由の1つは土魔法が使えるからだ。俺は生活魔法は使えるが他は使えないからな。


日が暮れるまで歩いたが次の街まではまだ有るので、また野営をする事になった。


街道にから少し離れた林の中に入る。ここでやっとサユリアの土魔法の出番になる。

土魔法で造る寝床ともう1つ欲しかった物、風呂だ。風呂に入れる。

造った浴槽に水を張り枝を集めて湯を沸かす。五右衛門風呂だがかまわない。

風呂に入っている時に襲われるのは困るので、周りに円を書き中を無の状態にする。これで安心だ誰にも判らない。


「あ~、気持良い。やっぱ、風呂でしょ」


俺が入った後にサユリアが入る事になった。別に美人じゃないし、そそられはしないが何故か気になる。

チラッと湯船の方を見ると、月あかりに照らされて湯けむりにサユリアのシルエットが映っている。

えっ、なんで?それは横からみる身体の姿だった。モデルのように細く脚線が美しい、豊満な胸の乳首はツンと上を向いてお尻は綺麗な円を描いている。

シルエットなので、よけいに想像を掻き立てられ艶めかしい。一体どうなっている。俺の胸は高鳴った。

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