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海賊討伐 ②

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 夜になって、海賊のアジトへ向かう、洞窟の手前の岩陰で様子を見る。

『見張りはいないが、侵入感知の魔道具があるな』

「ずいぶん近代的だな」 

『優秀な錬金スキルを持っている奴がいるぜ』

「夜が明けたら、討伐隊が来るから罠の類いは全て、作動しない様にしていこう」

『OK!』

「セシル、ゆっくり進むぞ」
「了解です。ご主人様」

『人の気配は、今の所は無いわね』

洞窟に入ってしばらくは広かったが、進むにつれて道幅が狭くなって行く、そして広く狭くの繰り返しだ。

「なるほど、待ち伏せされたら、一発だな」

『地形も造り変えてあるし、感知魔道具もたくさん有る』

「これで魔物が出れば完璧だな」

『それ、フラグじゃないの?』
「まさか」

『その通りだぜ。捕まえた魔物を眠らせて、部屋に閉じ込めてある。罠を踏むと、部屋が開いて魔物が目を醒ます仕掛けが有る』


「何が出て来る?」

『ケイブスパイダーLv25とかグロウワームLv30だな』

「けっこう強そうだな」

『いきなり出て来たら困るかもね』

『この先は道が3本に分かれているぜ』

「罠の匂いがプンプンするね」

『真ん中はファイアーボムの部屋で大爆発、右はウィンドアローで串刺しだ』

「それじゃ、左に」

進んで行くと行き止まりだった。

『左に隠し扉がある』

『人の気配がある、けっこうな人数よ』

「ここだね」

『開けるぞ』

スキルで気配を消してセシルと中に入る。

扉がたくさん有る、奥まで進み左に曲がると、話し声が聞こえて来た。


「おめえの獣人好きには呆れるぜ」
「そう言うなよ、見張りの時の楽しみなんだ」

「何をするのです、や、止めて下さい」

「特に、猫族のモコモコの尻尾がいい。この尻尾を根本からこうして手で握って、先まですぅっとしごくと、もうたまらん」

「あ、ぅ~んあん、やめ・・て、お願い」

「聞いてると、こっちまで変な気になって来る。その辺にしとけ、ガルバさんに怒られるぞ」

「分かったよ、あと一握りだけ。むぎゅっと」

「ああ~ん」

「へへ、良かったぜ」



『変態ね』
『う~ん、彼女がお嬢様だよね』

『たぶんな』

「そう言えばビスの奴が、明け方にまた冒険者達が来るって言ってたな」

「バカな連中だ、情報が筒抜けだぜ」


「1部屋づつ片付けていくぞ」
「はい、ご主人様」



「誰だ!貴様、どこ……ぐっ」
「ザグどうし……がはっ」


「あ、貴方達はどなたですか?」

「ギルドに頼まれた冒険者です。貴女はカール侯爵のお嬢様ですね?」

「はい、そうです。私は助かったのですね、良かった」

『卑弥呼さん、この部屋をカモフラージュして下さい』

『分かったわ』

「お嬢様、ここを動かないで下さい。声も出さない様に」

「はい」

「よし次に行こう」
「了解です、ご主人様」


ーーーーーーーー


「ここが最後の部屋ですね、ご主人様」
「ああ、他より大きいから頭の部屋だろう」



『アキ、危ない!』
「ご主人様!」

[キン!]
[ガギィーン!]


「ふ~ん、私の剣を避けますか。そこの娘さんもやりますね、私の剣の軌道をズラしました」

シルクハットの様な帽子にマジシャンの様な手袋をした男。


「誰だ、お前」

「たくさんのお客様が来たようです。計画も失敗の様ですし、私は失礼致します」

男の姿は……! 消えて行った。

『ガルバって奴だ、隠遁と認識阻害の複合スキルだな』

『ごめんね、アキ』
「ご主人様を危険な目に……」

「何を言っているのさ。2人が声をかけてくれたから、避けれたんだよ」

『ありがとう、この感じ覚えたから2度とやらせ無いわ』

「頼りにしてるよ。セシルもよく分かったね」
「変な感じがしたのです」

『認識阻害は、スキルに余裕があったから入れといたぜ』

「気が利くね」
『面白く無いわねハッカーだけ』

「ぷっ」
「ご主人様、精霊さんですか?」

「そうだよ」
「私もお話し聞きたいです」

「少し前に、卑弥呼さんと話しが出来たでしょ。その内に、いつも出来る様になるさ」

「はい、頑張ります」


ーー

「うるせえぞ!寝れんだろうが。ん、誰だお前ら」

『こいつが頭みたいね、セシル、捕まえなさい』

「セシル、聞こえたか?」

「はい、名前を呼ばれたみたいです」
「あいつの事を、捕まえろってさ」

「了解です」


海賊の頭の意識はセシルにサクッと刈られた。

「忘れてた、お嬢様、もう出て来ても良いですよ」

「どうなったのですか?」


「全て倒しましたよ。もうすぐ応援の人達も来ます。」

海賊討伐の冒険者達が、続々と入ってきた。

「おい、どうなってる?」

「こいつが海賊の頭だ。で、こちらがお嬢様です」

「君はどうして先に来たのかね?」

「ギルドマスターのブルーガーさんの指示です」

「俺達はそんな事は聞いて無いぞ」

「ギルドの中に内通者がいるからですよ。分かりましたけどね」

「なんだって!」

「分かった、詳しい話しは後だ、こいつら縛ってギルドに戻ろう」

「さあ、お嬢様もどうぞこちらに」
「ありがとう御座います」


ーーーー

「俺達も帰って美味いもんでも食べに行こう」
「ヴィラエビがいいです」

「よし行こう」


〈大人になっても食い気は変わらないのね〉
〈そんなもんさ〉



宿に戻ってベットでくつろぎ、買って来たボアロゼスを飲みながら考える、アイツ何者だ。

狙いは何だった?

「なあ、ハッカー、アイツどう思う」
『情報不足だな』

「そうだよな、考えても仕方ないか」

「ご主人様、寝ますよ」
「はい、寝ましょうね」

明日、ギルドに行ってマスターに説明だな。


ーーーーーーーー

「なる程な、そんな男がいたのか」

「そいつが今回の誘拐を仕組んだみたいだね。心あたりは?」

「残念ながら、無いな」

「う~ん」

「侯爵様が、『今回は世話になった、ありがとう』と言っていたよ」


「そうですか。あ、そうそう内通者はビスと言う奴ですよ」

「なにっ!ビスだったのか……分かった、助かったよ」

「じゃ、これで」

「下で依頼料を、受け取ていってくれ」
「分かりました」


この世界も色々あるみたいだが、今、俺がやる事は、ボルチスカ王国のダンジョン攻略だ。
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