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海賊討伐 ①

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 街を歩いていても塩の香りがして、なんとなく懐かしい感じがする。

やっぱり、カニかエビがいいよな。

どの店に入ってもハズレは無さそうだが、しばらく歩くと入口に大きいエビらしい形の置物がドンとある店が有った。

「ここにするか?」
「はい、ご主人様」

さっきの置物は、ここの特産物でヴィラエビと言うそうで元の世界のロブスターって所だ。

お勧めのクリーム煮とパン、スープを注文する。

セシルは幸せそうだ。

「お待たせ致しました」

料理が運ばれて来た。味は最高だ、エビのみそが効いてスープがとても旨い。

「ご主人様、おかわりしたいです」
「好きなだけ、食べていいよ」

『やっぱりセシルは、まだ食い気ね』
『直ぐ大人になるさ』
『ふふ、そうかしら?』

店を出て、聞いておいた灯台へ行く事にした。

海を見渡す事が出来るらしい、最上階で外にでる、水平線が緩やかに曲っている。

この世界も丸いのかな。

「うわぁ、広くてきれいです」

水面に太陽の光がキラキラ反射しているのだ。

今は、4の月なので日本で言えば春、この世界でも泳ぐにはまだ早い様だ、残念だったね、セシル。


「ご主人様、この海をずっと行くと、どうなっているのです?」

「滝になっていて、落っこちてしまうかも」

『アキ、いい加減な事を言わないの』
『だけど、この世界は解らないからな』
『そうね』

「今度は、暑い時に来て海に入ろうな」
「はい、入ってみたいです」

『アキ、そろそろギルドに顔を出した方が良くないか?』

「まだ大丈夫だと思うが、行ってみるか」

貿易港でもあるモミザのギルドはかなり大きい。

中に入って掲示板をみる、(海賊討伐急募、30名以上、条件Cランク以上)

俺の今のランクはCだ。ダンジョン制覇したのでAクラスと言われたが、嫌なのでゴネてCにしてもらった。

ギルドに献上した、古代アスカ小金貨が効いている。


C以上30名とは、けっこう大がかりだね、ちょっと聞いてみるか。


「海賊討伐の依頼を受けたいのだが、募集人数が多い気がするが?」

「受けて下さるのですか?助かります。理由は2つ有ります。1つはアジトが問題なのです」

「と言うのは?」

「地上から海の下に向かって行く洞窟で、最近分かったのですがダンジョンの様になっていて、奴ら罠まで仕掛けているのです」

「なるほど」

「2つ目がこのギルドの主力冒険者が他の依頼やダンジョンに行っていて不在なんです」

「手薄って事か」

「受けて下さいますか?」
「受けますよ」

「では、冒険者カードを」
「はい」

受け取ったカードを魔道具に当てた受付嬢の手が、ピクッとして俺の顔をみる。

「申しわけございません。魔道具が故障した様なので、しばらくお待ち下さい」

と言って奥に行ってしまった。

『ハッカー、俺、なにかしたっけ?』
『何も無いと思うが』

受付嬢が戻って来た。

「お待たせしました、受け付け終了です。明日、参加者に集まってもらい、打ち合わせをして明後日に決行です」

「分かった、明日来るよ」

受け取った冒険者カードの下に手紙がある、デートのお誘いか?よっしゃ!巨乳ゲット。

手紙を読むと「ギルドの裏口に来てください」と書いてある。

ニコニコしながら裏口に行くと、さっきの受付嬢が待っていた。

「やあ、待たしてごめん」
「私について来て下さい」

ギルドの隣の建物に入っていく。
いきなりか?セシルも居るのに、積極的だな。

「どうぞ、中へ」

中に入ると、見るからに海の男っていう感じの牛族が座っていた。

『ぷっ!』
『ククッ!』

くそっ!

「やあ、すまないね、アキ君。事情があってね。私はここのギルドマスターのブルーガーだ」

「俺に何か?」

「そう怒らんでくれ、ギルド内に海賊どもの内通者がいる様なのでね」

「ずいぶん話が大きくなって来たな」

「実は、今回の討伐で3回目なのだ。前の2回は待ち伏せにあって全滅した」

「それは酷いな。でも、そんな事は言って無かったよね」

「それにも理由がある」
「どんな?」

「ここの領主、カール侯爵のお嬢様が、ボルチスカ王国から船で帰る途中、海賊どもに拐われてたのだ」

「なるほど」

「さっき、シェリー君からアキ君の事を聞いて、お願いするしか無いと思ったのだ」

「そう言う事でしたか」

「アキ君には別動隊として動いて欲しいのだ、頼めるかな?」

「やりましょう」

「ありがとう、助かるよ。人手が必要なら手配するが?」

「いや、俺達だけの方がやり易い、明日の夜、奴らが寝た頃に行ってみる」

「分かった。よろしく頼む」




宿に戻ってから俺は、明日の事をどうするか考える。

『アキ、セシルの様子が変だぞ』

そう言えば何時もなら、お風呂入って寝ましょうって、言うよな。

「セシル、具合いが悪いのか?」

うつ向いて黙ったままだ。

「お腹空いたの?」

「ご主人様、私、死んじゃうかも……」

「えっ、何があったの」


『アキ、これはあれよ』
「あれ?」
『女の子でしょ、あれよ』
「あれよ?」

『女の子の日よ』
「女の子の日?………………」


えっ、それって俺じゃ無理でしょ、ええーえっ!
ムリムリ。

『卑弥呼さん、何とかセシルとお話し出来ませんか?』

『やってみるわ』

『セシル……セシル……聞こえる?』

『私を呼んでるのは、誰……?』

『セシル、私は…………卑弥呼よ』

『ご主人様の精霊さん?』
『そうよ』


それから、卑弥呼さんがセシルに説明してくれたので、セシルも理由が解って落ち着いた様だ。

卑弥呼さんがいて良かった。


「ご主人様、私はご主人様の精霊さんとお話しする事が出来ました」

「そうか、良かったね」

「私は大人の女性になったそうです」
「そうか、おめでとう」

「私は子供を産む事が出来る様になりました」

「ま、まあそうだね。良かったね」

「これから、ご主人様の子供をたくさん産む様に頑張ります」

「ぶっ!」

「卑弥呼さん!」
『卑弥呼はあっちに行っちゃったぜ』

あっちって、どこだよ!もう。


でも、セシルが元気になって良かった。


 翌日、やや寝不足気味でギルドに行くと既に、討伐に行くパーティーは集まっていた。


4人組の5パーティーと6人組2パーティー、俺達2人で総勢34人だ。


海賊達の人数は、25人程度と言う事だ。

罠の解除が得意な、猫族のパーティー[銀色の尻尾]が先頭で進む事に決まり、後は洞窟の中の様子がわからないので確認後、隊列を決める事になった。


俺達は宿で昼食を食べて、夜までゆっくり過ごす事にした。

「セシル、身体は大丈夫?」

「精霊さんに、[おまじない]をかけてもらったから大丈夫です」

「そうか、ありがとう卑弥呼さん」

『どういたしまして』

「ハッカー、いい機会だ、セシルのステータスってどんな感じなの?」


『こんな感じだ』

名称   セシル
職業   アキの奴隷
Lv   18
体力   155  +100
魔力   1750 +250
素早さ  140  +150
知力   158
生命力  97
幸運   77%
属性   水
魔法Lv (1/10)熟練度(1/10)
スキル  気配遮断(3/10)剣技(7/10)
     身体強化(5/10)+2
     昇速(6/10)

ユニーク リリース・ストック(1/10)
称号
加護   シェレーニアの加護 



「魔法とユニークが伸びて無いね。使い方を知らないのかな?」

『そうかもな』

「ハッカーは、ユニークスキルがどういう物か解るのだっけ?」

『解析が出来無い物もある、セシルのは無理だ』

「そうか、セシルは自分のステータス見た事あるの?」

「何ですか、ステータスって?」

「えっ、知らないのか。ハッカーどう思う?」

『オレの推測では、ステータスオープンは召喚者だけが唱えられる』

「そうかもな」

『後は、セシルはステータスの見かたを、教わっていない』

「なるほど。今更だが、今度ここの人達はどうやってステータスを見るのか聞いて見よう」

『それが良いだろうね』

「良し。では、後は夜までゆっくりしよう」


俺達は夜までまだ時間があるので、少しの間仮眠を取る事にした。

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