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やってみるか

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 サラスティのダンジョンに入って2日目だが今、地下20階にいる。

このダンジョンに出る魔物は、レッドキャップ、ブラッグ、サキュバスなど悪いイメージの妖精や妖魔だ。

この階までに精霊石は赤・青・黄・緑など色の付いた物を手に入れてはいるが、セシルはピンと来ないらしい。

そう、俺達の予想が当たっていれば、ここからが本番なのだ。

この階にある、ただ1つの部屋の位置はハッカーのお陰で判っているので、遺跡と同じレンガで出来た通路を進む。

最初の通路が交差する所に着いた。

『部屋に行くには真っ直ぐだ』

一歩も前に出る。

「どう?」
『思った通りだ、後ろになった』

俺は後ろに向き直り前に進む、次の交差点に入る。

『左』……『そのまま前に』…………

結局、合計で10ヶ所の交差点をクリアして部屋に着いた。

部屋の中に魔方陣が有ったので直ぐに乗る、転移した所は森だった。

「今までとは違うね」

『エルフの森だ』
『迷いそうね』


「なんかあそこにいるな」
「キノコですね。美味しそうです」
「セシル、食べちゃダメだよ」

見るからに毒キノコだ。4体いる、胞子を吐いて来た。

燃やすに限るな。【ダークヘルファイアー】で一気に燃やす。

凄くいい匂いがするが、直ぐに宝箱になった。

中はどぎつい紫色の精霊石だ。

「これは?」「う~ん」    だよね。

休憩をはさみながら先に進んで行きウェアウルフ、アラクネ、トレント、キマイラと倒して行った。

『湖があるぞ』

遠くに水面がキラキラ光っているのが見える。

とても綺麗な湖だ。別荘が欲しい位だ、魔物がいなければの話しだが。

『来るわよ』

まあ、そうだよね。

出てきたのはとても美しい女性だった。

「えっ?」

「人族がここに来るのは久し振り、なんのご用かしら?」

「いや、精霊石を探しに来ただけですけど」

「なんの為に?」
「この娘の為にエメリューズ様に言われて」

「はぁ、何を言ってるの?私をバカにしてる」
「だから、この娘の為に、……」

『この人、何者?』
『水竜の化身だ』

「貴女にこの娘の加護が見えます?」

「見れるわよ。うっ」
「解って頂けましたか?」

「私を殺しに来たの?」
「だから違いますって」

「私の持ってる精霊石をあげるから許して」

「ほんと、人の話しを聞かない人だな」
『くれると言うなら、もらっておけば?』
『そうだね』

「じゃあ、どんな物があるか見せて」
「今、持って来るわ」

湖に潜って行った。あっ、戻って来た。

「これよ」

たくさん持ってきた。今までのよりも大きい、形も色々あるし色も分かれて1つの精霊石の中に2色から7色まである。

セシルが熱心に見てる。

「ご主人様、これがいいです」

気にいった精霊石が有ったようだ。

「水竜さん、この精霊石がいいそうです」

「やっぱり、恐ろしい人ね。私の正体もお見通しなのね」

「もうどうでもいいですから、その精霊石を頂けますか?」


「どうぞ持って帰って下さい」
「ありがとう御座います。じゃ、さようなら」


「いいのが手に入って良かったね」
「はい、最高です」

『ダンジョンの攻略はいいの?』
「攻略が目的では無いからな」

『そうだな、ではとっとと帰るか』

帰りは魔法陣で転移すると地下20階の階段の所に出た。

ダンジョンの外に出ると夜になっていたので食事は宿でする事にした。

セシルの選んだ精霊石は、4種類の色がついている。

青、白、赤、黒の四色だ、卑弥呼さんはこれを見て直ぐにピンと来たみたいだ。

『どうなるか楽しみね』


「もう帰るかにゃ。それじゃ残りは返すにゃ」
「いいですよ、とっておいて下さい」

「ありがとうにゃ、また来るにゃ」

翌日の朝、直ぐに宿を出てサザンビ行きの馬車に乗った、今回は馬車が予約で埋まっていて貸し切りに出来なかった。

商人2人と一匹狼風の冒険者が乗っている。

『かなりの腕だな』
『殺し屋?』

『違うわね、ダネン王国の王都グドラに行く見たいね』

商人達はパミールの街で降りたのでニヒルな男と2人になった、意外な事に向こうから話しかけてきた。

「どちらまで行かれるのです?」
「サザンビまで、貴方は」

「グドラまで行きます。いい指輪をしていますね」

「判りますか?」

「ええ、私の伯父が魔道具の店をやってまして、よく教えてもらいました」

それから錬金術について、色々面白い話しをしてくれた、見かけとは違って人懐っこい人だった。

出発してから10日後にサザンビに着く事が出来た。

「楽しかったです、いい勉強になりました」

「しばらくグドラの伯父の所にいるつもりです[サテライト]と言う店なので王都に来ることがあったら寄って下さい」

「分かりました」

『いい人だったわね』
『そうだな……』

「どうした?」
『いや、考え過ぎだな、気にするな』

「そうか、なあ、ミストガに寄った方が良かったかな?」

『帰りの方がゆっくり出来るだろう』
「そうだな」

「ご主人様、もうすぐリンツさんのお店ですよ」

久しぶりだな、魔道具のお土産もたくさんあるし、喜んでくれるかな。

『アキ、大変よ』
「えっ、どうなっている?」

店の出入口が板を打ち付けられて塞がれている。王都の叔父さんの時と同じだ。

何が有った?

「ご主人様、あの人に聞いてみてはどうです?」

そうしよう。

「すいません。この店どうなったんです?」

「ああ、その店かい。かわいそうに、兵士が何か探していてね、見つから無かったんで、必ず吐かせてやると言って2人とも王都に連れて行かれたよ」

「いつですか?」
「一月くらい経つかね」

ぐっ、くそが。


「ご主人様……」

『アキ、冷静に』
『クールに、だぜ』

俺は凄い顔をしていたらしい。セシルは黙ってしまった。


「セシルごめん。みんな、有り難う、もう大丈夫だ」

『で、どうするの?』
「王都まで一月はかかる」

『あれをやるしか無いだろう』
「ぶっつけ本番でか?」

『アキは大体、ギャンブラーじゃない』

「ああ、高校の時に博打は全てやったからな」

やってみるか、ひと勝負だ!

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