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胎動
不敵な挑戦
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寮生活2日目の夜に事件は起こった。風呂あがりに飲もうと、アイススピアのかけらを入れたグラスに魔王スペシャルを注いだ時だった。
研究室棟の方から爆発音が聞こえて来た。教授達が実験を失敗したのかと思ったが、そうではないらしい。
ソナーストラクチャーには2つのグループが争っているような動きが見て取れる。
「襲撃か?魔法の達人や武術の達人がいる魔法学院に押し込むとは大したものだな」
「にゃ」「ニャ」
余裕をかましていたが、そうもいかなくなった。多分、襲撃した連中だと思うが寮の方に向かってくるからだ。
にわかに外が騒がしくなる。部屋の外に出ると寮長のアスカさんが2回生を制止している所だった。
「現状が把握出来ていないので動かないように」
「しかし何者かが寮に向って来ます」
反論をしたのは2回生の生徒会長で1回生の時に模擬トーナメント戦優勝、課題試験5失点の学院1位のパーティのリーダーであるケインさんだ。
ちなみに副会長はパメラ様で1回生の風紀はルナ様、書紀はエリカ様がなっている。俺も風紀委員になりそうになったが、レイモンド教授に手を回してもらって免れる事が出来た。
「確かにそのようね。分かったわ、教授達が追撃している筈、2回生は足止めする事を意識して、決して自ら戦いに加わらないように。1回生は2回生の後で補助に徹しなさい」
「「「「「「はい」」」」」」
寮長を先頭に寮の前に2回生は指示される事なく鶴翼の陣みたいな隊列になった。
良く訓練されている。
寮長が言ったように追われるように襲撃した集団がやって来る。
「来たわよ」
立ちはだかる2回生を見つけた襲撃者達はファイアーボールを連発する。
「マジックシールド」
寮長の魔法に弾かれたファイアーボールを見て2回生が一斉にアースウォールを唱えた。
1m間隔で現れた壁に一瞬怯んだ襲撃者達だったが、ダークバレットで次々と粉砕し、すり抜け剣を抜いて向って来る。
敵もなかなかやるようだ。
「くっ、かなりの手練れらしい。このままでは接触は免れない」
生徒達には荷が重い。あと少しで教授達が追いつくが……仕方ない。
「全員退避!左右に分かれなさい」
「でも、このままでは逃げられます」
「構わない、これは命令よ」
「くそっ!」
先輩達が地団駄を踏む。だけど寮長の判断は間違っていない。
奴らの狙いはあの円盤だったのだろう、結構なスキルを持った集団だ。人数が倍だったら成功したかもしれないぐらいの強者達だ。
「でもそうは行かせない。『マジックハンマー』」
マジックハンマーによって次々と後ろに吹っ飛んで行く襲撃者達。
すかさず霊体系で目玉の魔物ヴェイグアイズのスキル"バインド"で身動き出来なくする。
マジックハンマーの衝撃はかなりなもので、結構な痛さなはず。七転八倒といかないまでも悶えたい所をバインドで身動きが取れないので、連中の顔から脂汗がでている。
「なんだ、何が起こった?」
「寮長、きっと教授達の魔法ですよ。早く気絶させて捕縛しましょう」
「そ、そうだな。皆んな注意しつつ意識を奪うように」
「「「はい」」」
どうするのかな?スリープの魔法かな、と思って見ていたら皆んなで殴り始めた。
えっ、意外と原始的。3分も経たずに全員の顔がボコられて腫れ上がり気絶した。
「おおっ!アスカ寮長、良くやった」
追撃してきた教官や教授達が来たようだ。
「レイモンド教授、教授達の魔法のお陰です」
「ん?」
眉をひそめ首を傾げたレイモンド教授と目が合った。彼は一回瞬きをすると左側の唇の端が上がり微かに微笑んだ。
「この者達を全員第3演習場へ連れて行け。意識が戻り次第、尋問を始める」
「かしこまりました」
教授達が去ったあとも学生達の興奮は収まらないらしく、それぞれの食堂で話がはずんでいる。
もちろん俺達もだ。
「奴ら何者かしら?」
「例の魔道具が狙いだろう」
「例の魔道具って何なのです?」
「ガルドマズルの遺跡で、この国が発見したやつです」
「ああ、あれか」
「シンはその魔道具を運ぶ為の護衛をしてたのよ」
「凄いのです」
「正確には護衛の人達の賄いとして、付いて行っただけだけどね」
「またまた、謙遜して。傭兵団のお頭ゴメスと渡り合ったって、もっぱらの評判よ」
「だいぶ尾ひれが付いて話が大きくなっているな」
「それで活躍が認められ、祝福の儀でパメラ様を熱い眼差しで見た、という事ですかな?」
あいたっ、その話がこんな所で出るとは。
「思い出した。シン、どういう事なのよ?」
リサとネネさんに絡まれる俺を見て笑っているランドさんを睨みつつ、俺は男子寮に逃げ帰った。
翌日、大講堂で昨日の件の説明があった。やはり襲撃された場所の近くが円盤の保管場所だったらしい。
捕まえた15人は死んだそうだ。自決に等しい感じで、何らかの魔法、或いは呪いがかけられていたと見ているそうだ。
事態を重く見た教授会は早急に円盤の解析をし、しかるべき安全な場所に移すべく教授達以外に有識者を集め検討する事を決めた。
そして俺も参加する事になった。…………困ったな。
研究室棟の方から爆発音が聞こえて来た。教授達が実験を失敗したのかと思ったが、そうではないらしい。
ソナーストラクチャーには2つのグループが争っているような動きが見て取れる。
「襲撃か?魔法の達人や武術の達人がいる魔法学院に押し込むとは大したものだな」
「にゃ」「ニャ」
余裕をかましていたが、そうもいかなくなった。多分、襲撃した連中だと思うが寮の方に向かってくるからだ。
にわかに外が騒がしくなる。部屋の外に出ると寮長のアスカさんが2回生を制止している所だった。
「現状が把握出来ていないので動かないように」
「しかし何者かが寮に向って来ます」
反論をしたのは2回生の生徒会長で1回生の時に模擬トーナメント戦優勝、課題試験5失点の学院1位のパーティのリーダーであるケインさんだ。
ちなみに副会長はパメラ様で1回生の風紀はルナ様、書紀はエリカ様がなっている。俺も風紀委員になりそうになったが、レイモンド教授に手を回してもらって免れる事が出来た。
「確かにそのようね。分かったわ、教授達が追撃している筈、2回生は足止めする事を意識して、決して自ら戦いに加わらないように。1回生は2回生の後で補助に徹しなさい」
「「「「「「はい」」」」」」
寮長を先頭に寮の前に2回生は指示される事なく鶴翼の陣みたいな隊列になった。
良く訓練されている。
寮長が言ったように追われるように襲撃した集団がやって来る。
「来たわよ」
立ちはだかる2回生を見つけた襲撃者達はファイアーボールを連発する。
「マジックシールド」
寮長の魔法に弾かれたファイアーボールを見て2回生が一斉にアースウォールを唱えた。
1m間隔で現れた壁に一瞬怯んだ襲撃者達だったが、ダークバレットで次々と粉砕し、すり抜け剣を抜いて向って来る。
敵もなかなかやるようだ。
「くっ、かなりの手練れらしい。このままでは接触は免れない」
生徒達には荷が重い。あと少しで教授達が追いつくが……仕方ない。
「全員退避!左右に分かれなさい」
「でも、このままでは逃げられます」
「構わない、これは命令よ」
「くそっ!」
先輩達が地団駄を踏む。だけど寮長の判断は間違っていない。
奴らの狙いはあの円盤だったのだろう、結構なスキルを持った集団だ。人数が倍だったら成功したかもしれないぐらいの強者達だ。
「でもそうは行かせない。『マジックハンマー』」
マジックハンマーによって次々と後ろに吹っ飛んで行く襲撃者達。
すかさず霊体系で目玉の魔物ヴェイグアイズのスキル"バインド"で身動き出来なくする。
マジックハンマーの衝撃はかなりなもので、結構な痛さなはず。七転八倒といかないまでも悶えたい所をバインドで身動きが取れないので、連中の顔から脂汗がでている。
「なんだ、何が起こった?」
「寮長、きっと教授達の魔法ですよ。早く気絶させて捕縛しましょう」
「そ、そうだな。皆んな注意しつつ意識を奪うように」
「「「はい」」」
どうするのかな?スリープの魔法かな、と思って見ていたら皆んなで殴り始めた。
えっ、意外と原始的。3分も経たずに全員の顔がボコられて腫れ上がり気絶した。
「おおっ!アスカ寮長、良くやった」
追撃してきた教官や教授達が来たようだ。
「レイモンド教授、教授達の魔法のお陰です」
「ん?」
眉をひそめ首を傾げたレイモンド教授と目が合った。彼は一回瞬きをすると左側の唇の端が上がり微かに微笑んだ。
「この者達を全員第3演習場へ連れて行け。意識が戻り次第、尋問を始める」
「かしこまりました」
教授達が去ったあとも学生達の興奮は収まらないらしく、それぞれの食堂で話がはずんでいる。
もちろん俺達もだ。
「奴ら何者かしら?」
「例の魔道具が狙いだろう」
「例の魔道具って何なのです?」
「ガルドマズルの遺跡で、この国が発見したやつです」
「ああ、あれか」
「シンはその魔道具を運ぶ為の護衛をしてたのよ」
「凄いのです」
「正確には護衛の人達の賄いとして、付いて行っただけだけどね」
「またまた、謙遜して。傭兵団のお頭ゴメスと渡り合ったって、もっぱらの評判よ」
「だいぶ尾ひれが付いて話が大きくなっているな」
「それで活躍が認められ、祝福の儀でパメラ様を熱い眼差しで見た、という事ですかな?」
あいたっ、その話がこんな所で出るとは。
「思い出した。シン、どういう事なのよ?」
リサとネネさんに絡まれる俺を見て笑っているランドさんを睨みつつ、俺は男子寮に逃げ帰った。
翌日、大講堂で昨日の件の説明があった。やはり襲撃された場所の近くが円盤の保管場所だったらしい。
捕まえた15人は死んだそうだ。自決に等しい感じで、何らかの魔法、或いは呪いがかけられていたと見ているそうだ。
事態を重く見た教授会は早急に円盤の解析をし、しかるべき安全な場所に移すべく教授達以外に有識者を集め検討する事を決めた。
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