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古代遺跡 (改訂)
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机の上に置いた、小さい革に書かれた地図を見ようと皆が集まる。
「エルフの古代文字ではないか」
「はい、そうです」
「……よかろう、古代文字の専門家を呼んでやろう。リヨン、スコラスを呼んで参れ」
「はい、お父様」
「ではクロス殿、スコラスが来るまで吸血鬼の事を話して頂こう」
「はい、解りました。まず王女様が襲われた理由ですが、それは首飾りのせいです」
「首飾り?確かにあれは先祖代々王家に伝わる物で不思議な鉱石ゆえ貴重な物とされているが、今になって吸血鬼になんの関係が有るというのだ」
「この地に昔、大きな火の玉が空から落ちて来たという言い伝えが有りませんか?」
「クロス殿、何でそんな事を知っている。エルフしか知らない事だぞ」
「他の国でも同じように昔、火の玉が落ちているのは判っているんだ。そして今、火の玉が落ちた国々で吸血鬼が暗躍しているから、想像したまでだよ」
「しかし、どうしてそこで吸血鬼が出てくる」
「地に落ちた火の玉の元を吸血鬼が狙っているからだ」
「だとして……それでは何で王女様が狙われる?」
「首飾りの石は火の玉の元で出来ているからだよ」
「なんじゃと」「まあ」
「……なるほど、王女様の首飾りを狙ったのか。あの時、他国との交易交渉用の表の国で公務が終わり、城からこちらに来る転移魔法陣を出てここに来る途中、妙な奴らがついて来るので撒こうと森を回っていたのだが、追いつかれてしまったのだ」
「なぜ吸血鬼はこの地に火の玉が落ちたのが判ったのじゃ?」
「それは解りません。おそらく吸血鬼の親玉、お館様という奴の能力なのでしょう」
「クロス殿は吸血鬼と以前から戦っているという事か?」
「はい、或る御方と縁があって」
「なるほど。では、これからも王女様が……この国が狙われるという事だね?」
「そうですね。奴らは火の玉の元を集めて何かを企んでいる。特にザラステン王国には気をつけた方がいい」
「ザラステン王国?どういう事だ」
「奴らは変身能力を使って、国の重要人物とすり替わっている可能性がある」
「なんと」「恐ろしい事」
「陛下、対策を練らねばなりません」
「うむ」
「お父様、ただいま戻りました」
「失礼致します。陛下、お呼びでしょうか?」
「おう。スコラス、来たか。わざわざすまぬな、これを見て欲しい」
「これは……とうとう手がかりを手に入れたのですね」
「解るか?」
「勿論で御座います」
「クロス様」
「ああ、良かったな」
「これは探し求めていた、エルフの古代遺跡の在る場所を示す地図で御座います」
「おお、そうであったか。エルフの古代遺跡か……クロス殿はどこでこれを手に入れたのですかな?」
「それはこの短剣の中に入っていた物です……」
俺はこの短剣を手に入れてからの経緯を話した。
ーー
「そうですか、エルフの冒険者ですか」
「陛下、セレクタリアではありませんか?」
「おそらくそうであろうな」
「あの一行が盗賊に殺られてしまうとは……」
「お知り合いですか?」
「7年前に或る調査の為に調査団を結成した。その責任者がセレクタリアという男だ。腕は立つ男だったのだがな」
「グリフォンの爪というのは世界を股にかけた盗賊団で、抜け目なく実力もあります。きっと卑怯な手を使ったのでしょう」
「そうですか、……これが有るという事は目的を果たしたという事。無念だったろうな」
「そういう事であれば、これはお返し致しましょう」
「クロス殿、それは有り難いが宜しいのですかな?」
「かまいません。これは地図と一緒に入っていた鍵です」
「なんと……かたじけない。この恩にどう報いればよいのか」
ーーーー
「エルフの古代遺跡ですか、行ってみたかったわね」
「私も」
「そうだな、もったいない気はするが色々と便宜をはかって貰ったし、国宝級の魔道具も手に入った。言うこと無しだ」
「エルフの王家と繋がりが出来たのは大きいです」
「まさにその通り」
「転んでも、ただでは起きぬ。という事ですなクロス殿」
「いやらしい言い方ね、ハウバ」
「むっ、そんな事はないぞ」
「こらこら、喧嘩しない」
マリやハウバの言う通り、今回の旅は収穫が大きかった。オルロイまでの帰りは、対外的な見せかけだけのエルフの国を通ったので早く戻る事が出来そうだ。
「それにしてもこの王都もただの施設にすぎないとは恐れ入ったわね」
「ホント、ここで行き交うエルフ達も店の人達も大した役者よね」
「ああ、アカデミー賞ものだな」
「なんですそれ?」
「あっ、……と、何でもないぞ」
「変なの」
「そんな事よりだ、吸血鬼がいないかよく見張ってろ」
「は~い」
王都を含め街中には吸血鬼の気配は無かった。お館様の直属の吸血鬼が来たのは、リヨン王女がつけていた隕石の首飾りが特別な物の可能性がある。
見た限りでは、そこまでは判らなかったが。
ネバーウッドの王都から戻る事が出来たので、2週間弱でオルロイに帰って来れた。
「何だか懐かしわ」
「ホント」
「クロス様、これからどうしますか?」
「街の様子が少しおかしい。俺は伯爵の所へ行って来る」
「確かに少し慌ただしい様な」
「吸血鬼は見当たらないけどね」
「店の方を頼む」
「解りました」
「仕事が溜まってそう」
「そうね、仕方ないやるか」
街の人に俺達が留守中に頼み事を書いて入れてもらう事にした依頼箱を、気合いを入れて開けたミラ達に店を任せて伯爵の屋敷に向かう。
今やツーツーの仲になった門番が直ぐに取り次いでくれた。
「クロス君、戻って来たか」
「伯爵、何かありましたか?」
「街の様子がおかしいのに気づいたか?さすがだな。なに、今すぐという事ではないのだが頭の痛い事になるかもしれん。パラストラ王国のロックゴウ港の船乗りが南西の遠海でラゴナイラを見たと言うのだ。グリーンベルトの前兆だと噂されている」
「ラゴナイラですか」
グリーンベルトとはこの世界の大災害の1つなのだ。
「エルフの古代文字ではないか」
「はい、そうです」
「……よかろう、古代文字の専門家を呼んでやろう。リヨン、スコラスを呼んで参れ」
「はい、お父様」
「ではクロス殿、スコラスが来るまで吸血鬼の事を話して頂こう」
「はい、解りました。まず王女様が襲われた理由ですが、それは首飾りのせいです」
「首飾り?確かにあれは先祖代々王家に伝わる物で不思議な鉱石ゆえ貴重な物とされているが、今になって吸血鬼になんの関係が有るというのだ」
「この地に昔、大きな火の玉が空から落ちて来たという言い伝えが有りませんか?」
「クロス殿、何でそんな事を知っている。エルフしか知らない事だぞ」
「他の国でも同じように昔、火の玉が落ちているのは判っているんだ。そして今、火の玉が落ちた国々で吸血鬼が暗躍しているから、想像したまでだよ」
「しかし、どうしてそこで吸血鬼が出てくる」
「地に落ちた火の玉の元を吸血鬼が狙っているからだ」
「だとして……それでは何で王女様が狙われる?」
「首飾りの石は火の玉の元で出来ているからだよ」
「なんじゃと」「まあ」
「……なるほど、王女様の首飾りを狙ったのか。あの時、他国との交易交渉用の表の国で公務が終わり、城からこちらに来る転移魔法陣を出てここに来る途中、妙な奴らがついて来るので撒こうと森を回っていたのだが、追いつかれてしまったのだ」
「なぜ吸血鬼はこの地に火の玉が落ちたのが判ったのじゃ?」
「それは解りません。おそらく吸血鬼の親玉、お館様という奴の能力なのでしょう」
「クロス殿は吸血鬼と以前から戦っているという事か?」
「はい、或る御方と縁があって」
「なるほど。では、これからも王女様が……この国が狙われるという事だね?」
「そうですね。奴らは火の玉の元を集めて何かを企んでいる。特にザラステン王国には気をつけた方がいい」
「ザラステン王国?どういう事だ」
「奴らは変身能力を使って、国の重要人物とすり替わっている可能性がある」
「なんと」「恐ろしい事」
「陛下、対策を練らねばなりません」
「うむ」
「お父様、ただいま戻りました」
「失礼致します。陛下、お呼びでしょうか?」
「おう。スコラス、来たか。わざわざすまぬな、これを見て欲しい」
「これは……とうとう手がかりを手に入れたのですね」
「解るか?」
「勿論で御座います」
「クロス様」
「ああ、良かったな」
「これは探し求めていた、エルフの古代遺跡の在る場所を示す地図で御座います」
「おお、そうであったか。エルフの古代遺跡か……クロス殿はどこでこれを手に入れたのですかな?」
「それはこの短剣の中に入っていた物です……」
俺はこの短剣を手に入れてからの経緯を話した。
ーー
「そうですか、エルフの冒険者ですか」
「陛下、セレクタリアではありませんか?」
「おそらくそうであろうな」
「あの一行が盗賊に殺られてしまうとは……」
「お知り合いですか?」
「7年前に或る調査の為に調査団を結成した。その責任者がセレクタリアという男だ。腕は立つ男だったのだがな」
「グリフォンの爪というのは世界を股にかけた盗賊団で、抜け目なく実力もあります。きっと卑怯な手を使ったのでしょう」
「そうですか、……これが有るという事は目的を果たしたという事。無念だったろうな」
「そういう事であれば、これはお返し致しましょう」
「クロス殿、それは有り難いが宜しいのですかな?」
「かまいません。これは地図と一緒に入っていた鍵です」
「なんと……かたじけない。この恩にどう報いればよいのか」
ーーーー
「エルフの古代遺跡ですか、行ってみたかったわね」
「私も」
「そうだな、もったいない気はするが色々と便宜をはかって貰ったし、国宝級の魔道具も手に入った。言うこと無しだ」
「エルフの王家と繋がりが出来たのは大きいです」
「まさにその通り」
「転んでも、ただでは起きぬ。という事ですなクロス殿」
「いやらしい言い方ね、ハウバ」
「むっ、そんな事はないぞ」
「こらこら、喧嘩しない」
マリやハウバの言う通り、今回の旅は収穫が大きかった。オルロイまでの帰りは、対外的な見せかけだけのエルフの国を通ったので早く戻る事が出来そうだ。
「それにしてもこの王都もただの施設にすぎないとは恐れ入ったわね」
「ホント、ここで行き交うエルフ達も店の人達も大した役者よね」
「ああ、アカデミー賞ものだな」
「なんですそれ?」
「あっ、……と、何でもないぞ」
「変なの」
「そんな事よりだ、吸血鬼がいないかよく見張ってろ」
「は~い」
王都を含め街中には吸血鬼の気配は無かった。お館様の直属の吸血鬼が来たのは、リヨン王女がつけていた隕石の首飾りが特別な物の可能性がある。
見た限りでは、そこまでは判らなかったが。
ネバーウッドの王都から戻る事が出来たので、2週間弱でオルロイに帰って来れた。
「何だか懐かしわ」
「ホント」
「クロス様、これからどうしますか?」
「街の様子が少しおかしい。俺は伯爵の所へ行って来る」
「確かに少し慌ただしい様な」
「吸血鬼は見当たらないけどね」
「店の方を頼む」
「解りました」
「仕事が溜まってそう」
「そうね、仕方ないやるか」
街の人に俺達が留守中に頼み事を書いて入れてもらう事にした依頼箱を、気合いを入れて開けたミラ達に店を任せて伯爵の屋敷に向かう。
今やツーツーの仲になった門番が直ぐに取り次いでくれた。
「クロス君、戻って来たか」
「伯爵、何かありましたか?」
「街の様子がおかしいのに気づいたか?さすがだな。なに、今すぐという事ではないのだが頭の痛い事になるかもしれん。パラストラ王国のロックゴウ港の船乗りが南西の遠海でラゴナイラを見たと言うのだ。グリーンベルトの前兆だと噂されている」
「ラゴナイラですか」
グリーンベルトとはこの世界の大災害の1つなのだ。
応援ありがとうございます!
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