ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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第三章 愛と勇気の大冒険

第27話 着ぐるみかっ!

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「おいコラ!! 何とか言え!! 逃げんなー!!」

 もうすでに、猫の声は聞こえなかった。

「ごめんなさいユーキ……ウチの師匠は人を小馬鹿にする事に生きがいを感じてる人なの」
「いや、最悪じゃねーか!」

「みんなも、色々迷惑かけてごめんなさい!」

 立ち上がる力が無いので、座ったまま全員に深々と頭を下げていくパティ。

「パ、パティ君が我々に頭を下げるなど……」
「初めて見ましたね」
「カ、カメラは無いのか!?」
「後でぶっ飛ばされるから、やめときましょう」

 改めてユーキの方に向き直り、頭を下げるパティ。

「特にユーキ……あなたを助けに来た筈なのに、もう少しであなたを殺してしまう所だった……本当にごめんなさい!」

「いいっ!? いやいいって、謝らなくても! それにパティはあの時、狙いを外してくれたじゃない!」
「よ、よくは覚えてないけど、それだけはダメだって必死に抵抗してた気がする……」

「だからさ! みんなもそうだけど、今回の事はみんな僕のワガママから始まった事なんだから謝らないでよ! 逆に辛くなっちゃう……」

「ふむ……ではお互い様、という事にしておこうか」
「うん!!」


「む? ところで、最大の元凶であるリッチの姿が見えないようだが?」

「ああ、そういえば、すっかり忘れてた……」
(あれ? 他にも何か忘れてるような……まいっか)


 全員が辺りを見回す。

「本当ですね……いつの間にか逃げたんでしょうか?」

「あいつー!! あいつだけは一発ぶっ飛ばしてやらないと気が済まないわ!!」
「まあまあ、抑えてパティ……逃げたっていうなら別にいいよ! みんな無事だったんだからさ!」

「フウ……相変わらず甘いわねー、ユーキは」

「ハハ! あのー、甘いついでにパティがぶっ飛ばした三兄弟も治療してあげたいんだけど……死んではいないだろうから」

「やっぱりユーキはそうするのね? 分かったわ……治療しましょう」


 立ち上がろうとするパティだったが、思う様に力が入らずまた座り込んでしまう。

「あ、いいよ! パティは休んでて! 僕とセラでやるから……セラ! 頼める?」
「ハーイ! 頼めますよー! 報酬はデート一回で」

「や、やっぱりあたしがやるわ!!」
「いや、休んでいたまえ! パティ君」

 デート一回と聞いて、意地でも行こうとするパティを押さえつけて止めるアイバーン。

「は、離してアイ君! ユーキとデートおおお!!」
「ぐっ! パティ君のどこにこれ程の力が残っていたのだ!?」

「いや、デートなんか行かないから……」

 呆れ顔のユーキ。


 セラと手分けして三兄弟の治療を始めるユーキ。


「パティ君、ブロンズしか手持ちが無いが、これで少しは魔力を回復させたまえ」

 パティに魔力カートリッジを渡すアイバーン。

「ありがとう、アイ君」


「ところで君は? 味方……と思っていいのかね?」

 ロロに尋ねるアイバーン。

「はわっ! ロロはロロって言うのです! 我が主と共に、ユーキさんにお世話になる事になったのです」

「主? 主とは誰の事かね?」

「ハイなのです! みなさんも知っている方なのです……すでにこの屋敷に来ている筈なのですが、先程から見当たらないのです」

「すでにこの屋敷に来ていて、今見当たらないと言う事は……まさか!?」


 ユーキに治療されたエストが、意識を取り戻す。

「ユーキ、ちゃん?」

 辺りを見回し、状況を把握したエスト。

「そっか……僕達、負けちゃったんだね……でも何で僕達を治療するんだい?」

「君達だって、本気で殺すつもりなんて無かっただろ? それに……」
「それに?」

「同じアニメ好きとして、同志は失いたくない!!」

「プッ! アハハハハ!! 同志かー! いや、1番納得の答えだよ! あ、ならオーナーは? 殺しちゃったのかい?」

「いや……パティの事でバタバタしてたら、いつの間にか居なくなってた」
「居なくなった? 変だなー!? 一度欲しいと思ったら、どんな手を使ってでも手に入れようとする人なのに……ハッ! まさか!!」

「ん? どしたの?」

 何かを予感したエストの顔色が変わる。

「君達!! 早くここから逃げるんだ!!」
「え? どうしたのさ? いきなり!」

「君達と一緒に居たキスパーと同じで、あのオーナーも召喚士なんだ!!」
「え? 召喚士!?」

(そしてキスパーの事、すっかり忘れてたー!!)

「だけどタチが悪い事にあのオーナー、自分の魔力レベルが低いくせに、最高ランクの白魔石を使って強引に上位ランクの魔獣を召喚したもんだから制御しきれなくなって、僕達含め100人がかりで封印したんだ!!」
 
「100人……」

「もしかしたら、その魔獣の封印を解きに行ったのかもしれない! だからオーナーが帰って来る前に、早く逃げるんだ!!」

「う、うん……わかったよ」


 だが逃げる間も無く、奥の扉をぶち破って翼を持ったドラゴンタイプの魔獣が入って来る。


「しまった!! 遅かったか!!」
「ドラゴン!?」

「はわぁっ!! 魔獣なのです! ドラゴンタイプの魔獣なのです!!」
「ま、まさかあれって……リンドブルム!? Sランクの魔獣が、何でこんなとこに居るわけ!?」

「いかん!! ユーキ君! セラ君! 早く戻って来るんだ!!」


 だがまだ未治療の者が、リンドブルムの側で倒れて居る事に気付くユーキ。

「まだあと1人! 誰かは分かんないけど!」
「ビスト兄さんだ!! 兄さんは僕が助ける! 君達は早く逃げるんだ!!」

 そう言ってビストの元に走って行くエスト。
 ビストを連れて逃げようとするエストだったが、まだビストの意識が戻っていない為、思う様に移動出来ないでいた。

「エスト!!」

 そこへユーキが駆け寄って来て手を貸す。

「ユーキちゃん!? 何やってるんだ! 僕達の事はいいから、早く逃げるんだ!!」
「ヤダね! 僕が勝手にやってるんだから、ほっといて!」

「まったく君って奴は……甘々だよ! グラブジャムンぐらい甘々だよ!」
「何だよそれ!? 聞いた事無いよ」


「ユーキいいい!! 避けてえええ!!」

 突然パティの絶叫が響き渡り後ろを振り返ると、今にもリンドブルムがブレスを吹こうとしていた。


「ヤバっ!!」


 リンドブルムが灼熱のブレスを吹いた瞬間、壁になるようにあの男がユーキ達の前に立つ。

「ユーキたん!!」

「え? キスパー!?」

 ブレスはキスパーの体に遮られて、ユーキ達に当たる事は無かったが。

「はわあっ!! 主!!」

 ロロが声を上げる。

「ええ!! ロロの主って、キスパーなのー!?」
「やはりそうだったか……しかしあの男、生身でリンドブルムのブレスを受けて無事なのか?」


 当然無事な筈は無かった。
 肩口より上が明らかに消し飛んだ状態で、倒れ込むキスパー。

「キ、キスパー……」

 その凄惨な光景に言葉を失うユーキ。

「彼、本当に命がけでユーキちゃんを守ったんだね……」

「主!!」

 慌てて駆け寄るロロ。

「ロロ……ごめん……僕を守ろうとしたばっかりに」

 だがロロは、悲嘆に暮れる訳でもユーキを非難する訳でもなく何と、どう見ても生命活動を停止しているであろうキスパーに罵声を浴びせ始める。

「まったく……やっと合流出来たと思ったら、何をやっているのですか? ロロは情けないのです! あと10円が足りなくて、自販機のジュースが買えなかった時ぐらい情けないのです!」

「ロ、ロロ……悲しいのは分かるけど、もうそれぐらいにしといてあげなよ……」

「ダメなのです! このぐらい言わないと反省しないのです! せっかくユーキさんに連れて行ってもらえるように話をつけたのに、主がこんなザマでは困るのです! 早く起きるのです!」


 何と、そう言ってキスパーの遺体を踏みつけるロロ。

「ロロ!! いくら何でもそれはダメだってー!!」

 慌てて止めるユーキ。
 だが突然キスパーの遺体が煙状になって消滅して行く。

「あーあ……壊れちゃった……」

 煙が晴れたその後には何と!
 見た感じ小学生ぐらいの、長い銀髪の美少女が座って居た。


「え? え? え? き、君誰?」

 驚きながらその少女に尋ねるユーキ。

「ネムは、ネムだよ?」
「ええ!? え、えと……キスパーが居なくなって、その後に君が出て来たって事は……ま、まさか!?」

「そう……中に入ってたの……キスパーはネムが作った召喚獣だから……」


「ええええええ!!」
「ええええええ!!」
「ええええええ!!」
「ええええええ!!」
「ええええええ!!」


 驚くユーキ達。

「そ、それはつまり……ネム、ちゃんが召喚士でロロの主って事だよね?」
「そう……」
「あの……因みに、おいくつで?」
「んとね……10歳、かな!?」


「あの歳で召喚士……しかもワイバーンやレイスを召喚出来る程の才能と魔力……まさに天才、だわね」
「ふむ……しかもさっきからリンドブルムが襲って来る気配がまるで無い……もしや召喚獣としての本能が、あの少女を恐れているのか?」



「あ、そうだ……ロロ!」
「ハイです!!」

「ネムを踏んだ?」
「ドキッ!! なのです!」

「後でおしおき!」
「はわあっ!! またしても大ピンチなのです! 給料前のサラリーマンなのです! 社畜ロロなのです!!」


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