ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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第四章 某国の姫君

第34話 マナ、覚醒!

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 宙に描かれた魔方陣を見て、安堵の表情を浮かべるレノ。

「馬鹿野郎が!! 生きてたんなら、さっさと起きて……!?」

 目に涙を浮かべながら、セラが倒れていた場所を見たレノだったが、そこには依然横たわったままのユーキとセラの姿があった。

「え!? ……セ、ラ!?」
「ブブー! 残念でしたぁ! 私はこっちですよ~だ!」

 おちゃらけた口調のする方を見ると、そこにはセラの姿を形作った、紫色の朦朧体が宙に浮かんでいた。

「セ、セラ、なのか?」
「えへへ~! 私、こんなんなっちゃいましたぁ!」

 その様子を、少し離れた場所の木にもたれながら、何故か何もせずにじっと見ているカオス。

(残留思念? いや、ゴーストか……チッ! ゴーストの言葉とあれば、俺が無下にする訳にもいかんな……)


 セラのその姿を見て、厳しい現実を実感するレノ。

「そうか……お前の事だ、少しは期待していたんだがな……やはり……」
「仕方ないですぅ……でもぉ、マナちゃんの傷はちゃんと治しましたから、ご心配なくぅ!」
「それは心配していない! お前が失敗などするはずがないからな! だが、それなら何故マナは目覚めない? もうとっくに起きてもいい筈なんだが……」

「それなんですぅ……マナちゃんの傷は確かに完治しているんですぅ、でも何故か目覚めないんですぅ」
「!? ま、まさか既にマナは!?」
「いいえ! ちゃんと生きてますぅ! だって私はずっとマナちゃんの胸の鼓動と温かさと柔らかさを感じていましたからぁ」
「オイ! 柔らかさって何だ!?」

「私、ちょっと行って寝坊助の妹を起こして来ますからぁ、それまでレノ! あと少しだけ頑張っててくださいねぇ」
「ああ、任せろ! マナが目覚めて無事に逃げ切れれば、俺達の勝ちだ!」


 ユーキの元へ飛んで行こうとしたセラが、ふと寂しげな表情で振り返る。


「……本音を言うとね! もっとマナちゃんやレノやみんなと色んな事したかった……でも……えへっ! みんなには宜しく言っといて! あと、マナちゃんに絶対気にしないようにって……言っても気にしちゃうんだろうなぁ……」
「そうだな……」

「だからレノ……マナちゃんの事、お願いね……色々と、助けてあげて……」
「ああ!」

「あと、ね……先に行くけど、ゴメンね! お兄ちゃん! それじゃあね!!」
「セラ!!」

 そう言い残して、すうっと消えるセラ。
 うつむいて、悲しみをこらえているレノ。

「お兄ちゃんか……そんな風に言われたのはいつ以来だ? フッ! 最後の最後にらしくねぇ事言いやがって……さあ! それじゃあ、もうひと頑張りするとしようか!!」

 立ち上がるレノ。
 それに呼応するかのように起き上がって来るカオス。

「最後の別れは済んだかよ!?」
「待っていてくれた、のか!? 憎っくき仇とはいえ、今は感謝する!」
「職業柄だ! 気にすんな!」

 再び対峙するレノとカオス。



 その頃、ユーキの深層意識の中で、ユーキを呼ぶ声が聞こえる。

「ちゃん……ウちゃん……起きてください! ユウちゃん!」
「ん!? 誰? また猫師匠?」
「私だワン!」
「犬かよっ!」

 ユーキの前に、先程と同じく紫色の朦朧体が現れ、セラの姿を形作っていく。

「セラ!?」
「そうだワン! みんなのアイドル、セラだワン!」
「いや、キャラ変わってるし!?」

「へえ……ここがユウちゃんの心の中なんですねぇ……サイン書いときましょうかぁ」
「やめいっ!!」

 グルっと周りを見渡すセラが、何かに気付く。

「!? そう……そういう事だったんですねぇ……これで色んな謎が解けました……」
「え!? 何? 何の話?」
「う~ん、ものすごぉく教えてあげたいんですけどぉ、猫さんに悪いからやめときますねぇ」
「猫さんって、猫師匠の事? 何なの!? 凄く気になるんだけど?」

「ンフフ~、やっぱりマナちゃんはぁ、只者では無かったという事ですぅ……あ! マナちゃんじゃなくて、アイリス様って言わないといけませんねぇ」
「え!? アイリスってさっき会った人が言って……。!? ねえ!! あれから僕達どうなったの!? あの人って一体何者だったの!?」

「あの男はパラスの国王、カオスだったんですよぉ」
「カオス!? あいつが!? え、じゃあパティ達は? 僕達はどうなったのさ!?」
「パティちゃん達は魔力を感じるから、おそらく無事ですぅ。レノは今、マナちゃんを守る為に必死にカオスと戦ってますぅ。マナちゃんはカオスの攻撃で怪我をしましたけどぉ、私が完全に治療しましたぁ。でもマナちゃんが中々起きて来ないからぁ、私が叩き起こしに来ましたぁ。今ここですぅ」

「レノが!? なら早く起きて加勢しないと!! ……!? セラは? ……無事、なんだよね……?」
「ふうっ……マナちゃんってどこかすっとぼけてるようで、時々妙に鋭い時があるんですよねぇ……」
「セラ!?」

「大丈夫ですよぉ! マナちゃんの中に入ってみて全てを理解しました! このまま猫さん達の思惑通りになるのはシャクだから、ちょおっと邪魔しちゃいますねぇ」

 そう言うと、四方に無数の羽を飛ばすセラ。

「これで、例え相手が誰だろうと負ける事はありませんよ! 早く起きて、レノを助けてあげてくださいねぇ!」

 徐々に空へ昇って行くセラ。

「え!? どういう事? 答えになってないよ!! ねえ、どこ行くのさ!? セラ!!」

 


「セラ!!」

 レノが戦っていると、いきなりユーキの声が響く。

「!? マナ!? 目覚めたのか!!」
「チッ! 起きて来やがったか……面倒くせぇ!」


「ん? 重い……何が……!!!?」

 体を起こそうとしたユーキが、自分の胸に覆いかぶさっているセラに気付く。

「セラ? もう! また? だから、そんな寝かたされたら重いって……あいや、重いなんて言ったらまた怒られちゃうけど……とにかく起きてよ! ねえ!」

 セラを起こそうと、セラの体に触れたユーキが、嫌な予感に襲われる。

「セラ……? ね、ねえ! 何ふざけてんのさ!? も、もう! だからその細い目だと起きてるのか寝てるのか分かんないからさぁ!」

 ユーキが、頭によぎる不安を必死で誤魔化そうとしていると、カオスが無情な真実を告げる。

「起きる訳ねぇだろ!! そいつはもう死んでんだからよぉ!!」
「貴様っ!!」

「死……セ、ラ……?」

 衝撃の言葉に呆然とするユーキ。

「マナ……」
 

「……セラ……セラ……お、姉ちゃん?」
「マナ?」

「う、うう……うわあああん!! お姉ちゃん!? セラお姉ちゃん!? 何で!? ヤダよぉ!! 死んじゃヤダよぉ、セラお姉ちゃん!! うわあああああん!!」

 激しく泣きじゃくるユーキ。

「何だぁ!? 泣き出しやがった!?」

 呆れるカオスとは裏腹に、ある事に気付くレノ。

(お姉ちゃん? 今、マナはセラの事をお姉ちゃんと呼んだのか!? 確かにマナは昔、セラの事をお姉ちゃんと呼んでいたが、2人と再会した時はずっと呼び捨てだったのに……マナ!? まさか記憶が!?)

「ギャアギャアうるせぇな、このガキ!! そうだよ! そのガキは俺が殺してやったんだよ!! 悔しかったらかかって来な! すぐに会わせてやるからよぉ!!」

 カオスの挑発を聞いて、すうっと泣き止むユーキ。

「お前が、殺したのか……?」
「だからそう言ってんじゃねぇか!! ほら、お前も殺してやるから早くかかって来いよ!!」
「やらせるかあっ!!」
「テメェはもう寝とけ!!」

 カオスを止めようとしたレノだったが、あっさり弾き飛ばされる。

「ぐわあっ!! マ、ナ……逃げ、ろ……」
「これで邪魔者は居なくなった……さあ、かかって……」
(ん!? 何だ!?)

 辺りの異様な空気に違和感を感じるカオス。
 うつむいたまま、すうっと立ち上がるユーキ。

「お前が……セラお姉ちゃんを……」

 ユーキの体から、徐々に白いオーラが溢れ出す。

「お前が……お前が……お前が殺したのかああああ!!!!」
 
 ユーキが叫んだ瞬間、ユーキの体から大気が震える程の、凄まじい魔力が溢れ出す。
 そのあまりの魔力量に驚愕するカオス。

(な、何だこの強大な魔力は!? アイリスが目覚めたのか? い、いや違う! それなら俺の事が分からない筈はない! なら何だこの魔力は!? あのマナってガキの物か? これ程の魔力、たかが人間に出せる魔力じゃない……)
「な、何なんだお前はあああ!!」

 

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