ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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第五章 五国統一

第14話 正確には腕挫十字固

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「両者ガッチリ組み合って力比べの体勢に入りましたが、明らかに体格差がある! これはユーキ選手、圧倒的に不利だー!!」
「でもユーキさんには肉体強化魔法がありますよね!?」
「その筈なんだけど……」
「パティさん?」

 エル・マーナが徐々に押し込んで行くが、それを何とかブリッジで耐えるユーキ。
 フッとブリッジを解き、両手を組んだまま両足でエル・マーナを蹴り上げ、その勢いを利用して起き上がるユーキ。

 ヘッドバットに来たエル・マーナの頭をスッとかわし、脇の下に頭を潜り込ませたユーキが、そのまま後方に投げ飛ばす。

 素早く起き上がりラリアットを放って来たエル・マーナの右腕を取り、脇固めを仕掛けるユーキ。
 しかし体を回転させて腕を外し、素早くユーキの背後に回り込みスリーパーホールドを掛けようとするが、スッと体を沈み込ませ、オーバーヘッドキックのようにエル・マーナの頭を蹴りつけるユーキ。
 そして、お互い距離を取って起き上がり、再び構える2人。
 
「こ、これは!? プロレスだー!! 完全にプロレスの試合だー!! 力で押すエル・マーナ選手に対し、巧みに技で応戦するユーキ選手! 体格差を全く感じさせない素晴らしい攻防だー!!」

「正に一進一退の攻防ですね……でも、ユーキさんだってストレングスを倍がけすれば、充分力でも対抗出来る筈なのに……」
「出来ますよ~、出来ますけどマナちゃんはやらないでしょうね~」
「どういうこと? レナさん」

「実戦ならともかく、こういう試合においてはマナちゃんは、相手と力量を合わせようとするんです~」
「え!? 何でわざわざそんな事を?」

「戦いというのは、互角の者同士が戦うのが1番面白いって言うのが、マナちゃんの持論ですから~」
「それはまあ、分かりますけども……」
「勿論、相手が余りに格下の場合は圧倒する事もありますが~、実力が近い相手の場合は、勝つ事よりも楽しむ事を優先するんです~」
「そうか……マナさんの記憶が戻った分、それがより顕著に表れてるんですね」

「やるな! 少女よ!」
「父様もね! 腕は鈍ってないみたいね!?」
「日々トレーニングを積んでいる、鈍るものか! だが私は君の父ではなく、愛のマスクマン! エル・マーナだがな!!」
「まだそんな事言ってんの!?」

 お互い走り出し接近した所で、エル・マーナがフライングニールキックを放つが、素早く側転でかわすユーキ。
 起き上がろうとするエル・マーナにミドルキックを放つユーキだったが、その足を掴まれてしまう。
 しかし、足を掴まれたまま体を回転させて、そのまま左足でエル・マーナの側頭部に蹴りを放つユーキ。

「ぐあっ!!」

 倒れ込んだエル・マーナに走り込んでシャイニングウィザードを放つユーキだったが、クロスアームブロックで防ぎ切るエル・マーナ。
 完全にブロックされた事により体勢を崩し倒れ込んだユーキに馬乗りになり、殴りつけようとするエル・マーナ。
 しかし素早くその腕を取り、エル・マーナの首に足をかけて、腕ひしぎ逆十字固めに極めるユーキ。

「し、失礼しました! 余りに素早い攻防だった為に、実況が追い付きませんでした! ええーっ、様々な攻防があった後、現在はユーキ選手がエル・マーナ選手に腕十字を決めている状態です! この技は完全に決まってしまえば、体格差は関係ありません! これはユーキ選手の勝利確定かー!?」

「完璧に決まってるよ! 早くギブアップしないと腕が折れちゃうわよ!? 父様!」
「フッフッフッ! 甘いな、少女よ! 私は今法悦の境地に居る」
「なあに? 余裕のつもり?」
「事実を述べているのだ! 何しろ今こうしてお前の胸の感触を、腕全体で味わっているのだからな!」
「んなっ!?」

 顔を真っ赤にして技を解き、素早く距離を取るユーキ。

「こ、このエロオヤジ!!」

「ああーっと!? どうしたユーキ選手? 勝利を目前にして、いきなり技を解いたぞー!? エル・マーナ選手、ギブアップをしたのかー?」

 実況者がレフェリーを見るが、首を横に降るレフェリー。

「いや、エル・マーナ選手はギブアップはしていないもようです! では何故技を解いたんだ? ユーキ選手ー!?」

「どうしたんでしょうか? ユーキさん……」
「あのオヤジ、ユーキに何か言ったわね? まあ、大体想像はつくけどね」

「フッ、この程度で技を解くとは……まだまだ甘いな、少女よ!」
「うう~っ」
「さあどうする!? この体格差では打撃技は私には殆ど効かない! かといって、投げ技や関節技を仕掛ける為には私に密着しなければならない! だがそうなれば、私はお前の体の感触を堪能させてもらうだけだがな!!」
「もうっ! 父様のバカ!! 痴漢!! 変態!!」

 イヤラシイ手つきをしながらユーキに迫るエル・マーナと、顔を赤くして胸を隠しながら後ずさりするユーキ。

「な、何だか様子が変ですよ?」
「マナちゃんの顔が前面に出てますねぇ」
 
「さあ少女よ! 私の胸に飛び込んでおいでー!!」
「いいっ!? や、やだー!!」

 エル・マーナの異様な雰囲気に身の危険を感じ、逃げ出すユーキ。

「ああっとお! 逃げるユーキ選手をイヤラシイ手つきで追いかけるエル・マーナ選手! これはさながら、少女を追い回す変態だー!!」
「これは後でお仕置きですね~」

(くっ、どうする? 打撃技以外で、体を密着させないで出せる技なんて……あっ!)

 何かを思い付いたユーキが逃げるのをやめて、エル・マーナに向かって走って行く。

「私の胸に抱かれる気になったか!? 少女よ!」
「お断りよ! フラッシュボム!!」
「ぐあっ! 目くらましか!?」

 一瞬怯んだエル・マーナの背後に回り込み、胴に腕を回しロックするユーキ。

「いいのか!? 少女よ! それではお前の胸の感触を堪能する事に……」
(ん!? 胸が、無い?)
「いいぜ! 好きなだけ堪能しな!」
「何いっ!? お、お前はあああっ! がはあっ!!」

 豪快な投げっぱなしジャーマンでエル・マーナを後方に投げ飛ばしたのは、ユーキが変身したヤマトだった。

「出たああああ!! ユーキ選手のもう一つの顔! 超絶イケメンのヤマトだあああ!!」

「キャー!! 待ってましたー!!
「ヤマト君カッコイイー!!」
「ユーキちゃんもかわいいけど、ヤマト君も好きー!!」

「そうか! ユーキさんにはこの能力もあったんですね!」
「そういえば、魔装しなくてもヤマト君に変身出来るようになってた事、すっかり忘れてたわ」
「これで力負けする事は無くなりましたね!? てか、もうさっきの投げ技で決まったかも?」

 しかし、フラつきながらも起き上がって来るエル・マーナ。

「くっ! かつてのマナには無かった能力なので油断した……」

 チャンスと見たヤマトがすかさずブレーンバスターの体勢を取り、エル・マーナの体を持ち上げる。

「さ、さすがに変身したらパワーも増すようだが、普通のブレーンバスターでは大したダメージにはならんぞ!!」
「普通の、だったらな! 死ぬんじゃねーぞ、オヤジ!」
「なんだと!?」

 持ち上げてお互いの体が一直線になった状態からジャンプして、そのまま真下に落下させてエル・マーナの頭を舞台に打ち付けるヤマト。

「がはああっ!!」

 大の字になって倒れ込む、エル・マーナ。

「強烈ー!! そしてエゲツないー!! ヤマト選手、垂直落下式ブレーンバスターでエル・マーナ選手の頭を固い舞台に打ち付けたあああ!! 今レフェリーがカウントを数えます!」

「ワーン! ツー! スリー!……」

 しかし、尚も立ち上がろうとするエル・マーナ。

「お、俺のオヤジは化け物か!?」
「わ、私だって……マナちゃんに勝って……マナちゃんと結婚、したかっ……た……ガクッ」

 エル・マーナが崩れ落ちると同時に、テンカウントが数えられる。

「エル・マーナ選手立てないー! ユーキ選手、いや、ヤマト選手の勝利でーす!!」


 ポンッとユーキの姿に戻るヤマト。

「親子で結婚出来る訳無いでしょ!? バカ……」



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