ひめてん~姫と天使と悪魔と猫~

こーちゃ

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終章 いつも楽しく面白く

第13話 思い出とは美化されるもの

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 トレスの魔装具の正体を考察するメルク。

(白衣型の魔装衣。白衣と聞いてまず初めに思い付くのはお医者さん。医者が使う物で武器になりそうな物と言ったらメスや注射器あたりでしょうか? 傷口を見る限り、刃物で切られた感じじゃない。何か物凄く細い物で貫かれたような。となると、やはり注射器のような物を投げてるんでしょうか?)

 メルクが様々な可能性を考えていると、トレスがそれを察する。

「俺の魔装具が気になってるみたいだな!? まあ、知られたからと言って特に困る事もねぇからな。別に教えやってもいいぜ!?」
「どういうつもりです? それはつまり、僕をナメてるって事ですか?」
「ちげ~よ、バカ! 今言っただろ? 知られたからと言って、すぐにどうこう出来る代物じゃねぇんだよ! だから教えてやるっつってんだよ!」

 少々カチンと来たメルクだったが、勝つ為に怒りを無理矢理抑え込む。

「そ、そうですか。ではありがたく教えていただきましょうか?」
「いいぜ! よ~く見な!」

 そう言って、親指と人差し指で何かを摘んでいるような腕を前に差し出すトレス。

「見ろって言っても、そう簡単には見えねぇだろうがな」

 トレスの指先をじっと見ていると、かすかに何かが光った事に気付く。

「針!?」
「そう、針だ! お前、俺が白衣型の魔装衣を着てるからって、どうせ医者か何かだと思ってたんだろ!?」
「いいえ、化学の教師かと思ってました」
「いやよく着てるけどなっ!! 残念ながら、俺は医者でも教師でもねぇ」
「馬鹿そうですもんね?」
「失礼だぞテメェ!!」

 メルクのボケに、つい乗せられてしまうトレス。

「俺ははり師だ!」
「え!? はり師?」
「そうだ」
「はり師ってあの、ツボに針を指して治療するっていう?」
「そうだ」

「なんか……地味、ですね」
「全国のはり師に謝れ!」

「何故、そんなマニアックな魔装具なんですか?」
「マニアックゆ~な! 俺の本職がはり師だからだ!」

「え!? 本物のはり師って事ですか?」
「そうだ」

「そのはり師の方が何故、ナンバーズなんかを?」
「それがよ~、何か手に職を付けようと思ってはり師の資格を取ったものの、みんな治癒魔法の方にばかり行きやがってよ~」
「そりゃあまあ、そうでしょうね」

「んで滅多に客が来なくて生活が苦しくなったもんだから、このはり師の技術を戦闘術に活かして暴れ回ってた所を、カオスのダンナにスカウトされたって訳さ」
「そうだったんですか~、あなたも苦労して来たんですね~」

 すっかり落ち着いて身の上話をしていた2人が、ハッと我に帰る。

「ていうかあなた、やはり僕をナメてますね!?」
「だからナメてねぇって言ってるだろ~!?」
「じゃあ敵である僕に、何で魔装具の正体を教えるんですか!?」

「お前は確か、レベル5だったよな?」
「そうですが、何か?」
「そのレベル5の奴がレベル7の、しかもパラス軍最強のサーティーンナンバーズの1人を追い詰めた。いや、あれはもうお前の勝ちと言ってもいい。そのお前が俺の魔装具をどう攻略するのか、ちょっと興味が湧いて来たんだよ!」
「そういうのを、ナメてるって言うんですよ!! ウォータードラゴン!!」

 メルクの側の海から、龍の形をした水の塊が飛び上がりトレスに向かって行く。

「見た目が迫力あっても意味ね~よ!」

 トレスの投げた針がドラゴンを消滅させ、そのままメルクの体を貫く。

「うぐっ!! ウォーターバインド!!」

 痛みに耐えながら、今度は水をロープ状にしてトレスを捕まえようとする。

「今度はロープか!?」

 しかし、またしてもトレスの針により水のロープは消滅し、メルクは傷を増やす事になる。

(彼の魔装具は分かりました。しかし、何故僕の魔法が消滅してしまうのか? 単純にレベルの差だけという事でも無いようですが……)

「なら! ファントムミスト!!」

 空に向けて大きく引いた弓を放つメルク。

「ああ!? 今度は何やるつもりだ!?」

 トレスが目線を下に移すと辺り一面、1メートル先も見えない程の濃密な霧に包まれていた。

「目くらまし、か? 視界を遮って針で狙えないようにしたってか? だがいくら姿を隠しても魔力を探れば……!?」

(何だ? あいつの魔力を感じない? もしかしてこの霧、魔力を遮るのか? まあいいや! なら、当てずっぽうで行ってやるよ!)

 次から次へと霧の中へ針を投げるトレス。
 すると、霧が徐々に赤く染まって行く。

「何だ!? 霧が赤くなって……」

 霧の中で身を潜めているメルクの側を、無数の針が通過して行く。
 正確な位置が分からない為命中率はかなり落ちたが、それでもたまにメルクの体に命中する針。
 しかしメルクは体を貫く針を気にする事なく、側を通過して行く針をじっと見つめていた。
 本来は見えない筈の針が、メルクの体から流れ出る血によって作られた赤い霧の中を通過する事で色が付き、ハッキリと見えるからである。

(そういう事ですか。なるほど、要は僕のメールシュトロームの小型版みたいなものだったんですね。針の周りを極限まで圧縮させた水を螺旋状に高速回転させて、触れる物全てを貫いて行く。僕の魔法が消滅したのは、レベルの差もあるんでしょうが、同じ水魔法だったからメールシュトロームと同じ能力で瞬時に取り込まれてしまった。おそらくは、他の属性の人ならここまで苦戦しなかったんでしょうが……いや、僕が水属性と知ってる上で彼が来たんでしょうね)

 謎は判明したものの、多量の出血の為フラつくメルク。
 そして程なくして、ファントムミストが消滅する。

「観念して出て来たか? ハッ! ちょっと見ねぇ間にボロボロじゃねぇか。当てずっぽうで投げた針が結構当たってたみてぇだな!」

 立ってはいるものの、意識が朦朧としているメルク。

(彼の魔法の秘密は分かりました。でも、どうやって攻略したら? いくら同じ水属性とはいえ、僕にはあんな芸当は出来ないし……)

 そんな時メルクの頭の中に、別れ際のユーキの言葉が響く。

『メルく~ん!!』
(ユーキさん?)

『愛してるよ~!!』
(僕もです!! ユーキさん!!)

『コラアア!! 記憶を勝手に改ざんするんじゃなああい!!』
(あ! すみません、つい)





 
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