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第14話 めくるめくポプリの世界・後編
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「んでだ……小僧。そもそもポプリとは何なのか、まさか知らないなんて言わないだろうな?」
「ええ……いや、流石に何かぐらいは……」
「ポプリとは蓋付きの瓶に、乾燥させた花や時折塩その他小物をぶち込み、アロマオイル等で香り付けをした香のことだーッ!!!」
「知ってても説明する気だったんじゃねーかっ!!」
相手が同性ということもあり、容赦なく殴りかかるジャッカル。クレインは存分に振り回されながら、店の奥へとやってきた。
「お疲れ様です~。まあ支部長、お客様ですか?」
「今宵、また一人ポプリの素晴らしさを知ることになるッ!!」
「今真っ昼間ですけどね。ようこそ、セイズ協会の研究所へ」
椅子に座って植物と睨み合いを続けていた女性が、クレインに挨拶をする。このジャッカルの部下だとは思えなかったので、最初クレインは身構えた。
「ここでは普通の植物もそうだけど、主に『ルーンハーブ』の研究が基本かな。プランターにあるのはそのサンプルね」
「ルーンハーブ……マジかよ」
「ふん、ポプリに興味なくともルーンハーブには興味がある。よくある男の典型だな」
「あんたも男だろうがよ……」
ハーブと呼ばれる植物は世界に数多くあるが、ルーンハーブはその中でも、ルーンに強い影響を及ぼすハーブ群だ。防腐剤にすると食材の持つルーンが増強されたり、薬にすると人体のルーンにも作用して高い効能を魅せる。
中には筋力や俊敏性、魔法の威力や防御力に影響を及ぼすものもあるので、前線に立つ戦士はこの話題になると目を光らせる。
クレインはこの間20人あまりの山賊を倒していたが、ルーンハーブがあれば40以上倒せていたかもしれない。それほどまでに戦闘における強化の利点は大きいのだ。
「一昔前は、その辺の草むらからルーンハーブを採取し、直に嗅ぐというどん臭い工程を経ていた。だが、ポプリがあればそのような手間ともおさらばだ!!」
「香りを凝縮しているので、そのまま嗅ぐより効能は高い!! 加えて蓋が付いている為、好きな時に嗅いで能力にブーストをかけることができる!! 多数のルーンハーブを組み合わせれば、自分の好きなように強化することも可能なのだーッ!!」
「……でもルーンハーブって、下手に葉っぱとか茎とかむしると、ルーン配列が変わって効果が下がることがほとんどなの。だから人工栽培、安定した供給もまだまだこれからって感じ」
「さいですか……」
と言っても夢のある話だとクレインは思う。採取だってとんでもない手間がかかることを知っているからだ。
「まあでも、人工栽培って時点で、とってもわくわくするなあ。このサンプルって『マッシブハーブ』ですよね?」
「そうそう! わかっていると思うけど、それは特にお触り禁止よ?」
「わかってますよ。でも……持って帰りてえ~っ」
基本的にルーンハーブの持つ効能は、特定の1つだけを強化するものとされている。だがたまに2種類以上を強化する希少種が存在するのだ。
『マッシブハーブ』は特に有名なもので、香りを嗅ぐと筋力と俊敏性が同時に上昇する。クレインを始めとする前衛の戦士達が、普段以上の実力を発揮できる。彼らが喉から手が出るほど求めているのは言うまでもない。
「『マッシブハーブ』は譲れんが、『アタックハーブ』と『スピードハーブ』なら売り出せるほどに在庫がある。好きに買ってっていいぞ」
「えっ! じゃあ……」
「だがそのまま持って帰るなよ!! ポプリにしておけ!! というのも利点があってだな――」
そう言うとジャッカルは、滑車の付いた黒板をずるずる引っ張ってくる。そこにはずばっと大きく、明快な表が書かれてあった。何度もこの表を見せて力説してきたのだろう。
「いいか小僧! 採取ですら慎重さを要する事実からもわかるように、ルーンハーブは周辺の環境に影響を受けやすい。一緒に入れた花や塩によって、効能が強まったり弱まったりするのだ!」
「特にここで売られているのは、影響をかなり受けるようにした特別仕様だ! でないとポプリの偉大さに気づかんからな!!!」
「さらに言うと、ドライかモイストかにもよって変わってくるぞ! 効果量を求めるならドライ、効果時間を求めるならモイストだ! モイストは雑な手入れでも効果量がほとんど変わらないので、個人的に好きだ!!!」
「だがドライで瞬間火力を狙いたい感情も理解できる……しかしこっちは手入れが面倒臭い! 絶対に手入れを欠かさないという自信があるならこっちだ! 俺は欠かす自信があるからモイストだがな!!!」
「す、すっげえモイストを推されている感じがするが……おれはどちらかというとドライで火力を狙いたいタイプだ……」
「だけどルチルがモイストで作るっぽいから、おれもモイストにするぜーっ!」
突然名前を呼ばれたので、ルチルは買い物を中断してクレインに合流する。
「え、なになに。ポプリ作るの?」
「ああ、ジャッカルさんにルーンハーブのことを教えてもらったからな!」
「ルーンハーブか……そうか、そういう路線があったか」
ルチルはふむふむと感心する。彼女は自分の趣味としてポプリを作るタイプなので、実用性という視点でポプリを考えたことがなかったのである。
「クックック……『本気勢』にして『保守派』のルチルが感心するとはな」
「ジャッカルさん、クレインにポプリのことを教えてくれて、ありがとうございます」
「ルーンハーブ系って正直どうなんだろうって思っていましたけど……今回でちょっと好きになってたかも。えへへ……」
ルチルはにこにこ笑顔になりながら、店の北側にあるスペースを指差す。
そこには既に何人か座っていて、ふたの開いた瓶を前に花や塩を入れ、オイルを注いで楽しんでいる最中だ。
「クレイン。買った材料を使って、あそこでポプリ作れるみたい。一緒に作ろ!」
「いいぜ! せっかくだからすげーの作って、土産にしてやるぜ!」
「……って待って! 肝心の材料がないじゃない! わたしと一緒に見て回る所からだな~」
「……あれ、それを買うのに必要な金って」
「わたしのぽけっとまねぃだね☆」
「後で返すからな、マジで……とほほ……」
(おい! 今のルチルの態度は……)
(はい……さっきは本人否定してましたけど、あれは……)
(『好きな男の子に自分の好きな物を知ってもらって嬉しい』って態度ですね!!!)
(やはりかぁ~~~!!! くぉ~ルチルにもそういう時期がぁ~~~!!!)
突然店員に近づき、ひそひそ話を始めたジャッカルを、ルチルが不穏がっていると――
「――おーい! さっきの君ー! 見てほしいものがあるんだー!」
研究スペースにいた女性が、大声で呼びかけながら接近してくる。
「ああ、先程はどうも。どうしたんですか?」
「ルーンハーブと言えば、一番おすすめの紹介忘れてたんだ! 南に行けばヤルンヴィドがあるんだし、持ってて損はないよ!」
「え、ヤルンヴィド?」
これからの旅路にも関わってくる町の名前が、突然出てきた。ルチルが戸惑っていると、ジャッカルがまたまた素早く移動してきて、会話に混ざってくる。
「ああ、『アリルハーブ』か。確かに俺も存在を忘れていた。ポプリを馬鹿にしていた此奴のせいだ」
「痛っ!? ……あんたおれを殴りたいだけじゃねえだろうな!?」
「本当に忘れていたんだぞ~ッ」
「ラメが塗られているみたいな、きれいな輝き……自然にあるとは思えないです」
「そりゃあ自然には存在しないからな! 腐乱地帯から採取した瘴気を元に、セイズ協会が一から造り上げた人工植物だ!」
「えっ、そうなんですか?」
女性が手に持ってきていた植物は、葉脈から茎の先に至るまで、不思議な輝きを帯びていた。見た目こそ普通の野草と変わりないが、神秘的で温かい光が溢れている。
「『大腐乱』が発生する理由はまだ研究中だが、発生した事柄に対して対策を練ることはできる。その趣旨の下に開発されたのだ」
「なんつーか……そういう所が魔術師って感じだな。絶望して何もしないんじゃなくって、前に進もうとするのが」
「ハッハッハッハァー!! もっと俺を褒め称えろ、小僧!!」
「お前だけを褒めてるんじゃねえよ!!」
「腐乱地帯って結構特殊で、臭いってのは共通しているんですけど、その構成要素が人によって異なるんです。発酵食品の酸っぱさから虫みたいな独特のものまで、本当に様々です」
「『個人が最も嫌悪する臭いを探り出し再現している』という説が、セイズ協会では有力だ。そこまで柔軟に対応できる臭いなぞ、もうルーンに関与しているとしか思えん」
「……」
ルチルは過去を思い出し暗い表情になりかけたが、顔を上げて話に集中する。
「で、この『アリルハーブ』。香りを嗅ぐと臭いに関与するルーンに作用して、腐乱地帯でも安心して移動できるようにします。そよ風の優しい香りが鼻を包み込んでくれますよ~」
「ま、貴様らがヤルンヴィドに行くかは正直知らんが……奮闘虚しく腐乱地帯は広がるばかりだ。そのうちローゼンにいても、これが必須になる時が来るだろうよ」
「……そうならないようにするのがセイズ協会の仕事じゃないんですか」
ルチルのむっとした反論に、ジャッカルは参ったとばかりに頭を掻く。
「わはは、その通りだな! とにかくこの『アリルハーブ』はくれてやる。セイズ協会の偉大さに慄くがいい!」
「そうですね、あるに越したことはないので貰っておきます。じゃあこれも入れてポプリにしようかな……」
「ドライでもモイストでも効果は変わらないように作られていますので、お好きな方でどうぞ。でも他のルーンハーブとは拮抗するかな」
「え~じゃあおれはポプリ2本構えか……初めてのポプリ作りで2本構えか……」
「2本作ろうとしているのがえらいっ。よーし改めて他の材料買うぞ~」
ルチルは貰った『アリルハーブ』を眺めながら、クレインを連れて店内を歩き回る。その際に一つだけジャッカルに話題を振った。
「にしてもアリル……妖精かあー」
「森と言えば彼奴らだ。森の加護を受けて対抗できればという願いを込めて、そういう名前だ。まあその森から腐れが発生しているのだがな……」
「うーん……本当に、どうして『大腐乱』は発生するんだろう……」
「ええ……いや、流石に何かぐらいは……」
「ポプリとは蓋付きの瓶に、乾燥させた花や時折塩その他小物をぶち込み、アロマオイル等で香り付けをした香のことだーッ!!!」
「知ってても説明する気だったんじゃねーかっ!!」
相手が同性ということもあり、容赦なく殴りかかるジャッカル。クレインは存分に振り回されながら、店の奥へとやってきた。
「お疲れ様です~。まあ支部長、お客様ですか?」
「今宵、また一人ポプリの素晴らしさを知ることになるッ!!」
「今真っ昼間ですけどね。ようこそ、セイズ協会の研究所へ」
椅子に座って植物と睨み合いを続けていた女性が、クレインに挨拶をする。このジャッカルの部下だとは思えなかったので、最初クレインは身構えた。
「ここでは普通の植物もそうだけど、主に『ルーンハーブ』の研究が基本かな。プランターにあるのはそのサンプルね」
「ルーンハーブ……マジかよ」
「ふん、ポプリに興味なくともルーンハーブには興味がある。よくある男の典型だな」
「あんたも男だろうがよ……」
ハーブと呼ばれる植物は世界に数多くあるが、ルーンハーブはその中でも、ルーンに強い影響を及ぼすハーブ群だ。防腐剤にすると食材の持つルーンが増強されたり、薬にすると人体のルーンにも作用して高い効能を魅せる。
中には筋力や俊敏性、魔法の威力や防御力に影響を及ぼすものもあるので、前線に立つ戦士はこの話題になると目を光らせる。
クレインはこの間20人あまりの山賊を倒していたが、ルーンハーブがあれば40以上倒せていたかもしれない。それほどまでに戦闘における強化の利点は大きいのだ。
「一昔前は、その辺の草むらからルーンハーブを採取し、直に嗅ぐというどん臭い工程を経ていた。だが、ポプリがあればそのような手間ともおさらばだ!!」
「香りを凝縮しているので、そのまま嗅ぐより効能は高い!! 加えて蓋が付いている為、好きな時に嗅いで能力にブーストをかけることができる!! 多数のルーンハーブを組み合わせれば、自分の好きなように強化することも可能なのだーッ!!」
「……でもルーンハーブって、下手に葉っぱとか茎とかむしると、ルーン配列が変わって効果が下がることがほとんどなの。だから人工栽培、安定した供給もまだまだこれからって感じ」
「さいですか……」
と言っても夢のある話だとクレインは思う。採取だってとんでもない手間がかかることを知っているからだ。
「まあでも、人工栽培って時点で、とってもわくわくするなあ。このサンプルって『マッシブハーブ』ですよね?」
「そうそう! わかっていると思うけど、それは特にお触り禁止よ?」
「わかってますよ。でも……持って帰りてえ~っ」
基本的にルーンハーブの持つ効能は、特定の1つだけを強化するものとされている。だがたまに2種類以上を強化する希少種が存在するのだ。
『マッシブハーブ』は特に有名なもので、香りを嗅ぐと筋力と俊敏性が同時に上昇する。クレインを始めとする前衛の戦士達が、普段以上の実力を発揮できる。彼らが喉から手が出るほど求めているのは言うまでもない。
「『マッシブハーブ』は譲れんが、『アタックハーブ』と『スピードハーブ』なら売り出せるほどに在庫がある。好きに買ってっていいぞ」
「えっ! じゃあ……」
「だがそのまま持って帰るなよ!! ポプリにしておけ!! というのも利点があってだな――」
そう言うとジャッカルは、滑車の付いた黒板をずるずる引っ張ってくる。そこにはずばっと大きく、明快な表が書かれてあった。何度もこの表を見せて力説してきたのだろう。
「いいか小僧! 採取ですら慎重さを要する事実からもわかるように、ルーンハーブは周辺の環境に影響を受けやすい。一緒に入れた花や塩によって、効能が強まったり弱まったりするのだ!」
「特にここで売られているのは、影響をかなり受けるようにした特別仕様だ! でないとポプリの偉大さに気づかんからな!!!」
「さらに言うと、ドライかモイストかにもよって変わってくるぞ! 効果量を求めるならドライ、効果時間を求めるならモイストだ! モイストは雑な手入れでも効果量がほとんど変わらないので、個人的に好きだ!!!」
「だがドライで瞬間火力を狙いたい感情も理解できる……しかしこっちは手入れが面倒臭い! 絶対に手入れを欠かさないという自信があるならこっちだ! 俺は欠かす自信があるからモイストだがな!!!」
「す、すっげえモイストを推されている感じがするが……おれはどちらかというとドライで火力を狙いたいタイプだ……」
「だけどルチルがモイストで作るっぽいから、おれもモイストにするぜーっ!」
突然名前を呼ばれたので、ルチルは買い物を中断してクレインに合流する。
「え、なになに。ポプリ作るの?」
「ああ、ジャッカルさんにルーンハーブのことを教えてもらったからな!」
「ルーンハーブか……そうか、そういう路線があったか」
ルチルはふむふむと感心する。彼女は自分の趣味としてポプリを作るタイプなので、実用性という視点でポプリを考えたことがなかったのである。
「クックック……『本気勢』にして『保守派』のルチルが感心するとはな」
「ジャッカルさん、クレインにポプリのことを教えてくれて、ありがとうございます」
「ルーンハーブ系って正直どうなんだろうって思っていましたけど……今回でちょっと好きになってたかも。えへへ……」
ルチルはにこにこ笑顔になりながら、店の北側にあるスペースを指差す。
そこには既に何人か座っていて、ふたの開いた瓶を前に花や塩を入れ、オイルを注いで楽しんでいる最中だ。
「クレイン。買った材料を使って、あそこでポプリ作れるみたい。一緒に作ろ!」
「いいぜ! せっかくだからすげーの作って、土産にしてやるぜ!」
「……って待って! 肝心の材料がないじゃない! わたしと一緒に見て回る所からだな~」
「……あれ、それを買うのに必要な金って」
「わたしのぽけっとまねぃだね☆」
「後で返すからな、マジで……とほほ……」
(おい! 今のルチルの態度は……)
(はい……さっきは本人否定してましたけど、あれは……)
(『好きな男の子に自分の好きな物を知ってもらって嬉しい』って態度ですね!!!)
(やはりかぁ~~~!!! くぉ~ルチルにもそういう時期がぁ~~~!!!)
突然店員に近づき、ひそひそ話を始めたジャッカルを、ルチルが不穏がっていると――
「――おーい! さっきの君ー! 見てほしいものがあるんだー!」
研究スペースにいた女性が、大声で呼びかけながら接近してくる。
「ああ、先程はどうも。どうしたんですか?」
「ルーンハーブと言えば、一番おすすめの紹介忘れてたんだ! 南に行けばヤルンヴィドがあるんだし、持ってて損はないよ!」
「え、ヤルンヴィド?」
これからの旅路にも関わってくる町の名前が、突然出てきた。ルチルが戸惑っていると、ジャッカルがまたまた素早く移動してきて、会話に混ざってくる。
「ああ、『アリルハーブ』か。確かに俺も存在を忘れていた。ポプリを馬鹿にしていた此奴のせいだ」
「痛っ!? ……あんたおれを殴りたいだけじゃねえだろうな!?」
「本当に忘れていたんだぞ~ッ」
「ラメが塗られているみたいな、きれいな輝き……自然にあるとは思えないです」
「そりゃあ自然には存在しないからな! 腐乱地帯から採取した瘴気を元に、セイズ協会が一から造り上げた人工植物だ!」
「えっ、そうなんですか?」
女性が手に持ってきていた植物は、葉脈から茎の先に至るまで、不思議な輝きを帯びていた。見た目こそ普通の野草と変わりないが、神秘的で温かい光が溢れている。
「『大腐乱』が発生する理由はまだ研究中だが、発生した事柄に対して対策を練ることはできる。その趣旨の下に開発されたのだ」
「なんつーか……そういう所が魔術師って感じだな。絶望して何もしないんじゃなくって、前に進もうとするのが」
「ハッハッハッハァー!! もっと俺を褒め称えろ、小僧!!」
「お前だけを褒めてるんじゃねえよ!!」
「腐乱地帯って結構特殊で、臭いってのは共通しているんですけど、その構成要素が人によって異なるんです。発酵食品の酸っぱさから虫みたいな独特のものまで、本当に様々です」
「『個人が最も嫌悪する臭いを探り出し再現している』という説が、セイズ協会では有力だ。そこまで柔軟に対応できる臭いなぞ、もうルーンに関与しているとしか思えん」
「……」
ルチルは過去を思い出し暗い表情になりかけたが、顔を上げて話に集中する。
「で、この『アリルハーブ』。香りを嗅ぐと臭いに関与するルーンに作用して、腐乱地帯でも安心して移動できるようにします。そよ風の優しい香りが鼻を包み込んでくれますよ~」
「ま、貴様らがヤルンヴィドに行くかは正直知らんが……奮闘虚しく腐乱地帯は広がるばかりだ。そのうちローゼンにいても、これが必須になる時が来るだろうよ」
「……そうならないようにするのがセイズ協会の仕事じゃないんですか」
ルチルのむっとした反論に、ジャッカルは参ったとばかりに頭を掻く。
「わはは、その通りだな! とにかくこの『アリルハーブ』はくれてやる。セイズ協会の偉大さに慄くがいい!」
「そうですね、あるに越したことはないので貰っておきます。じゃあこれも入れてポプリにしようかな……」
「ドライでもモイストでも効果は変わらないように作られていますので、お好きな方でどうぞ。でも他のルーンハーブとは拮抗するかな」
「え~じゃあおれはポプリ2本構えか……初めてのポプリ作りで2本構えか……」
「2本作ろうとしているのがえらいっ。よーし改めて他の材料買うぞ~」
ルチルは貰った『アリルハーブ』を眺めながら、クレインを連れて店内を歩き回る。その際に一つだけジャッカルに話題を振った。
「にしてもアリル……妖精かあー」
「森と言えば彼奴らだ。森の加護を受けて対抗できればという願いを込めて、そういう名前だ。まあその森から腐れが発生しているのだがな……」
「うーん……本当に、どうして『大腐乱』は発生するんだろう……」
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