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第1章2節 学園生活/慣れてきた二学期
第91話 渦巻きポテト・その2
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それから一時間後――
「お待たせしました。ご注文の渦巻きポテトになります」
「わぁ……! くるくる回って、すごい!」
「うふふ、よかったわね。ありがとうございました」
「ありがとうございましたー」
謎の三人と一匹の襲来から特に目立った問題もなく、エリス達は着々と仕事をこなしていた。次第に仕事の効率も上がっていき、だんだんと楽しさを感じてくる頃合いである。
「これでひとまず流したね。お疲れ」
「お疲れ様~。エリスって接客上手だよね。笑顔も可愛いし、愛想もいいし!」
「え~そんなことないよう……」
「……」
アーサーも鍋から離れ、エリスとリーシャや先輩生徒を流し見していた。
「アーサーもすごいよね。ポテトを揚げる姿職人っぽかったもん」
「確かに。アーサー君、将来は料理人とか向いてるんじゃない!?」
「……オレは仕事をしているだけだ」
「またそんなお堅いこと言う~。あっ、お客さん来たみたいだよ」
「はーい。いらっしゃいませ。ご注文を……」
「……ご注文を……」
エリスは目の前にいる客を目にして、固まってしまう。
全身に包帯を巻き、黄色い虹彩だけが浮き出てぎょろぎょろ動く。
それはミイラと呼ばれるアンデッドの類であることを、エリスはうっすらと記憶していた。
「え……」
「どぅわああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あ、あの……」
「うぃーっひっひっひ!!!」
「静まりなさい。彼女が困惑してますよぉ」
「ギャーッ!!!」
入り口から入ってきた男性の声に応じて、ミイラは力が抜けたように地面にへたれ込む。
男性は顔を真っ白に塗り、怪しげな模様が描かれたローブを羽織っている。エリスはその顔を見て唖然とした。
「……あれ? ミーガン先生……ですよね?」
「どうも、ミイラを操るネクロマンサーミーガンです」
「そのミイラともネクロマンサーとも関係ないジャックオーランタンディレオです」
後ろから更に南瓜の被り物を被り、紫のローブを纏った男性が入ってくる。
それが視界に入ったのか、リーシャが笑いながら歩み寄ってきた。彼らの格好にはまるで動じていない。
「ちょっと~、ヘルマン先生にディレオ先生~。何でお化けのカッコのままで入ってくるんですか~。エリスめっちゃビビってますよ~」
「ヘルマン先生……ヘルマン先生!?」
思わずエリスは目の前のミイラを二度見した。ミイラの中身はいつも魔物学を教えてくれている教師だと言うのだ。
リーシャはエリスの表情を楽しみながら説明を行う。
「ヘルマン先生ってさ、化粧落とすと陰キャの極みみたいな見た目になるんだよね~。骨が突き出そうな程細くて、髪も長くてひょろひょろ」
「言い方がきついなリーシャ!!!」
「先生がこう説明してくれたんでしょーが。でも先生はこれを逆手に取って、お化けの仮装をするのが趣味なんだって~」
「今年は一年生担当教員でお化け屋敷をやることになったからテンション爆上げさぁ!!! うきゃーきゃきゃきゃ!!!」
「いちいち叫び方が怖いですよぉゾンビ君」
「ウップス!!!」
ミーガンは作り物の錫杖でヘルマンの頭を叩く。
「まあそういうわけで、僕達一年生担当チーム。今ホラーハウスが休憩中だから一年生の様子見に来たんだよねー。とはいえ、君は僕のこと知ってるかな」
「えっと、ディレオ先生ですよね。魔法学総論の担当で一年五組の」
「そうそう。でも担当しているの四組と五組だから、リーシャさんしかわからないっていう」
「一組から三組はケビン先生の担当だからね~」
「そうですね、廊下でちょっと見かける程度です。あ、もう一つ質問いいですか?」
「ん、何々?」
エリスはディレオの被り物をじっとりと見つめる。
「その南瓜の被り物……生徒会の人達と同じですよね。借りてきたんですか?」
「あー……そうか、一年生は知らないか。実は僕、去年までここの学生だったんだよね」
「……そうだったんですか!?」
「うん。しかも生徒会長もやってたんだよ。だから今の二年生以上とは顔馴染みなんだよね。その流れで借りることができたんだー」
ディレオはそう言いながら南瓜の被り物を取る。髪も顔にも汗が染み込んでだらだらと流れていた。
「ふぅー……暑さはともかく、装着に手間がかかるのどうにかしないとなあ……そうだ、長々とごめんね。肝心の注文をしないと。ポテト六本でいいですか?」
「構いませんよ」
「僕リーシャが揚げたポテトが食べたいなああああ!!! 自分のクラスの子だからなああああ!!!」
「それ場合によっては性的体罰に当たるのでやめてください」
「ウポス!!!」
「あはは、大丈夫ですよ。ヘルマン先生にはそんな気はありませんから。というわけで、アーサー交代!」
「ああ……」
リーシャはアーサーと入れ替わりで鍋の前に立つ。教師三人組は、既に席を取ってそこに座っていた。
「どうアーサー。学園祭、楽しいでしょ?」
「……そうだな」
会計口から教室内と廊下を見回してから。
「人が多くて――騒がしくて、落ち着かんな」
「……ふふっ」
気だるそうにしているアーサーと対照的に、口元に右手を当ててエリスは笑う。
「もう、そんなこと言って。笑っているの見えているんだからね」
「……ふん」
「お待たせしました。ご注文の渦巻きポテトになります」
「わぁ……! くるくる回って、すごい!」
「うふふ、よかったわね。ありがとうございました」
「ありがとうございましたー」
謎の三人と一匹の襲来から特に目立った問題もなく、エリス達は着々と仕事をこなしていた。次第に仕事の効率も上がっていき、だんだんと楽しさを感じてくる頃合いである。
「これでひとまず流したね。お疲れ」
「お疲れ様~。エリスって接客上手だよね。笑顔も可愛いし、愛想もいいし!」
「え~そんなことないよう……」
「……」
アーサーも鍋から離れ、エリスとリーシャや先輩生徒を流し見していた。
「アーサーもすごいよね。ポテトを揚げる姿職人っぽかったもん」
「確かに。アーサー君、将来は料理人とか向いてるんじゃない!?」
「……オレは仕事をしているだけだ」
「またそんなお堅いこと言う~。あっ、お客さん来たみたいだよ」
「はーい。いらっしゃいませ。ご注文を……」
「……ご注文を……」
エリスは目の前にいる客を目にして、固まってしまう。
全身に包帯を巻き、黄色い虹彩だけが浮き出てぎょろぎょろ動く。
それはミイラと呼ばれるアンデッドの類であることを、エリスはうっすらと記憶していた。
「え……」
「どぅわああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「あ、あの……」
「うぃーっひっひっひ!!!」
「静まりなさい。彼女が困惑してますよぉ」
「ギャーッ!!!」
入り口から入ってきた男性の声に応じて、ミイラは力が抜けたように地面にへたれ込む。
男性は顔を真っ白に塗り、怪しげな模様が描かれたローブを羽織っている。エリスはその顔を見て唖然とした。
「……あれ? ミーガン先生……ですよね?」
「どうも、ミイラを操るネクロマンサーミーガンです」
「そのミイラともネクロマンサーとも関係ないジャックオーランタンディレオです」
後ろから更に南瓜の被り物を被り、紫のローブを纏った男性が入ってくる。
それが視界に入ったのか、リーシャが笑いながら歩み寄ってきた。彼らの格好にはまるで動じていない。
「ちょっと~、ヘルマン先生にディレオ先生~。何でお化けのカッコのままで入ってくるんですか~。エリスめっちゃビビってますよ~」
「ヘルマン先生……ヘルマン先生!?」
思わずエリスは目の前のミイラを二度見した。ミイラの中身はいつも魔物学を教えてくれている教師だと言うのだ。
リーシャはエリスの表情を楽しみながら説明を行う。
「ヘルマン先生ってさ、化粧落とすと陰キャの極みみたいな見た目になるんだよね~。骨が突き出そうな程細くて、髪も長くてひょろひょろ」
「言い方がきついなリーシャ!!!」
「先生がこう説明してくれたんでしょーが。でも先生はこれを逆手に取って、お化けの仮装をするのが趣味なんだって~」
「今年は一年生担当教員でお化け屋敷をやることになったからテンション爆上げさぁ!!! うきゃーきゃきゃきゃ!!!」
「いちいち叫び方が怖いですよぉゾンビ君」
「ウップス!!!」
ミーガンは作り物の錫杖でヘルマンの頭を叩く。
「まあそういうわけで、僕達一年生担当チーム。今ホラーハウスが休憩中だから一年生の様子見に来たんだよねー。とはいえ、君は僕のこと知ってるかな」
「えっと、ディレオ先生ですよね。魔法学総論の担当で一年五組の」
「そうそう。でも担当しているの四組と五組だから、リーシャさんしかわからないっていう」
「一組から三組はケビン先生の担当だからね~」
「そうですね、廊下でちょっと見かける程度です。あ、もう一つ質問いいですか?」
「ん、何々?」
エリスはディレオの被り物をじっとりと見つめる。
「その南瓜の被り物……生徒会の人達と同じですよね。借りてきたんですか?」
「あー……そうか、一年生は知らないか。実は僕、去年までここの学生だったんだよね」
「……そうだったんですか!?」
「うん。しかも生徒会長もやってたんだよ。だから今の二年生以上とは顔馴染みなんだよね。その流れで借りることができたんだー」
ディレオはそう言いながら南瓜の被り物を取る。髪も顔にも汗が染み込んでだらだらと流れていた。
「ふぅー……暑さはともかく、装着に手間がかかるのどうにかしないとなあ……そうだ、長々とごめんね。肝心の注文をしないと。ポテト六本でいいですか?」
「構いませんよ」
「僕リーシャが揚げたポテトが食べたいなああああ!!! 自分のクラスの子だからなああああ!!!」
「それ場合によっては性的体罰に当たるのでやめてください」
「ウポス!!!」
「あはは、大丈夫ですよ。ヘルマン先生にはそんな気はありませんから。というわけで、アーサー交代!」
「ああ……」
リーシャはアーサーと入れ替わりで鍋の前に立つ。教師三人組は、既に席を取ってそこに座っていた。
「どうアーサー。学園祭、楽しいでしょ?」
「……そうだな」
会計口から教室内と廊下を見回してから。
「人が多くて――騒がしくて、落ち着かんな」
「……ふふっ」
気だるそうにしているアーサーと対照的に、口元に右手を当ててエリスは笑う。
「もう、そんなこと言って。笑っているの見えているんだからね」
「……ふん」
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