ナイトメア・アーサー ~伝説たる使い魔の王と、ごく普通の女の子の、青春を謳歌し世界を知り運命に抗う学園生活七年間~

ウェルザンディー

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第1章2節 学園生活/慣れてきた二学期

第123話 仮面の剣士

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「……え……」
「何……あれ?」
「剣士……さま?」


 カタリナ、リーシャ、ダニエルは驚嘆の声を上げ、先程まで奈落の者が立ち塞がっていた所を見つめる。


「奈落を数体一気に両断だと……?」
「ってことはあいつナイトメアか? はぐれにしてもどうしてこんな所に……」


 流石のマットとイーサンも動揺した様子を見せるが、散々聞いてきた怒号がすぐに正気に戻してきた。




「――おーいそこのお前ー!!!」


 エマの呼びかけに対して、仮面の剣士はすぐさま反応する。


「お前、この状況を打破するの手伝ってくれるか!? つーか手伝え!!! 強制だ!!!」



 剣士はそれに頷きだけを返すと、

 エリスに向き直って、そして抱えようとするが――



「……大丈夫。わたし、立てるよ」

「だって……あなたが来てくれた。それだけでわたし、元気が出たもん」



「……」


 剣士はエリスが立ち上がるのを見届け、そして二人で歩き出す。





「げひゃひゃひゃひゃ! いやあ、近くで見ると如何にもって感じですなあ! ご主人程ではありませんが!」
「おうおうわかってんじゃねえかセオドアぁ!」



 元の場所まで戻ってきたエマとセオドアは、先程駆け抜ける際に切らした魔力を魔法球に注いでいる。奈落の姿も見えず、全員揃って一旦足を休めている状況だ。



「ふふ……この戦いが終わったら一戦交えたいものです」
「……」
「おや、首を横に振られた。余程事情がおありの様で」


 その間もエリス以外の子供は呆気に取られっ放しである。


「私と……同じぐらい? 身長……」
「……他人な気がしないね。こう、何というか、自分達のクラスの片隅にいるような……」
「……」


 向けられた言葉全てに剣士は返答をしない。ただじっとダニエルの側にいるだけであった。


「剣士さま……」
「……」
「……ううん。何でもないや」
「……」



「……」
「ちょっとエリス。さっきからどうしたの?」
「何かこう……笑ってるというか、そんな感じ」
「……だって。奈落の者を一振りだよ? あんな強さ見せられたら、希望も持てるって」
「そっか……そうだね!」


 その瞬間、魔法球が再び灯り、周囲が青い光で満たされる。


「よっしゃ! んじゃあ行軍再開じゃー!!!」
「剣士殿、貴殿には私と一緒に先行して頂きたい。後列が安全に進める道を確保してほしいのです」
「……」
「決まりだな! よし、行きますよ姐者ぁーっ!!!」







「はぁ……はぁー……」
「イリーナ様、いくら貴女様でもあんなに力を解放したら……」
「はは……頭がぼーっとするよ。帰ったら私もプルーンヨーグルトだな……」
「おっ、冗談が言えるならまだまだ大丈夫っすね」


 奈落の者との戦いを終えたアルシェスとイリーナが後ろを振り向くと、完全に馬車が復旧して出発の用意をしていた。


「よし、捜索再開――」
「アルシェス様!! 生体反応です!!」
「何ぃ!? どの方向だ!?」



 急ぎ馬車に乗り込み、生体反応を感知する魔法具に食らい付く。



「ここより南西付近、人間七名ナイトメア六名!! 人間のうち、三名が大人で四名が子供の反応です!!」
「――!! よし、そちらに急行するぞ!!」
「はっ!」






「――」


 圧倒的で、そして幻想的。氷霧を裂いて希望を咲かせる神光の剣。


「……」


 敵を切り伏せ、薙ぎ倒し、剣戟踊って態度の悪い観客を粛清する。




「結構なお点前で。ですが私も――」


 洗練されて、そして流麗で。常闇突いて膝をつかせる瞬刹の剣。


「――消えなさい」


 敵を貫き、破裂させ、行く道阻む刺客に力の差を思い知らせる。




「……」
「どうです私の剣技。中々のものでしょう? 独学で頑張ったんですよ」

「……」
「そんな、微妙に首を傾げないで。反応に困ります」


「……気になったのですが、貴方の剣はどこで学ばれた物でしょう? 独学の様にも見えますが、それにしても……流れがよく出来ているもので」
「……」

「またしても、答えるつもりはありませんか。それは残念です」
「……」



 会話が成立しなくても呼吸は一致。


 背中合わせから同時に駆け出す。



 襲い掛かる奈落の者に剣が触れれば、


 それは一瞬にして白雪に還る。



「後列が気になるのですか? 大丈夫、姐上と弟は気丈な戦士です。あの二人にかかれば敵わぬ敵はありませんよ」
「……」


「我々は集中して道を切り開くのが使命。さて、休憩は終わりにしましょうか」
「……!」


 再び走り出し、白黒渦巻く世界に光を駆けさせていく。







「ぐぅ……風がまた強くなってきたな……」
「ガキ共! 吹き飛ばされたりしてねえよな!!!」
「大丈夫……です!!」



 仮面の剣士とマットを追いかけて、進む先は向かい風。腕で視界を確保しながら先へと進む。

 エマとイーサンが両脇から飛んできた奈落を撃滅し、エリス達は確実に歩を進めていく。



「チッ! 何でこっちにも奈落が来てるんだろうなぁ!?」
「恐らく強風で飛ばされてきたんじゃないですかねぇ!?」
「んな落ち葉じゃないんだぞ……っ!!」


 エマはモーニングスターを振り回すのを止め、目を細めて一点を見つめる。


「どうしました姐者!?」
「……来る! この気配、レインディアだ!」




 エマが見つめる先には、微かに雪埃が立っていた。


 その中に浮かぶ、レインディアと馬車の影。




「レインディアが馬車を引っ張っているんだ……勝った!!! 賭けに勝ったぞおおおおおおお!!!」
「てめえら、身体の力を抜きな!!」
「えっ!?」


 エリス達が準備をする間もなく、イーサンの背中から緑色の光が放たれる。


祝歌を共に、クェンダム・奔放たる風の神よエルフォード! 行ってこおおおおおおおおい!!!」」



「きゃぁっ!?」
「わーっ!?」
「あっ……あああああ……!」
「おわーっ!?」





「反応の位置はどうだ!?」
「現在移動中です!! ここから真っ直ぐ東、アルーインの領地に進んでいます!!」


 レインディア達も調子を取り戻し、馬車は速度を取り戻して疾走している。雪が飛び散り車輪の跡だけが残っていく。


「よし……!! このペースなら合流できる!!」
「……っ!? 待ってください、アルシェス様……!!」
「どうした!?」
「生体反応が四つ、尋常ではない早さでこちらに向かってきてます……!!」
「……はぁ!?」



 アルシェスは窓から身体の半分を乗り出す。



「……! あっち……!」
「……どういうこった!?」



 腕から飛び出したユフィが指差した方向から、四人の人影がやってきて――飛ばされてきたのが目に入った。



「……っ!!!」





「ああっ!」
「がっ……」
「ごほおっ!?」
「ぐっ……」



 瞬時にユフィが馬車の上に向かい、四肢を伸ばして、人影をがっしり掴み取る。

 そしてそのまま馬車の中に戻っていく。



「……ユフィ! ユフィちゃあああああああああん!!! よくやったよユフィちゃああああああああん!!! やっぱり俺のナイトメア最高ベイビー!!!!!」
「……あ……えっと……今は、この子達……」
「あ、うんそうだな!!! お前ら大丈夫か!?」
「いたたぁ……な、何とか!」


 エリス達は続々と起き上がり、馬車の中を見回す。


「イリーナさん……」
「ああ、君達……! よくぞ、よくぞ無事で……!」
「感動している所悪いね王女サマ!」



 依然として速度を保っている馬車の隣に、傭兵三人がやってくる。


 エマは生成した氷の板、イーサンは肥大化したエルマーに乗り、マットは四肢を毛深く変貌させて追い付いてきていた。



「俺達は魔物退治を受け持っていた傭兵だ!! 乗せてくれる必要はない、先導してくれればそれについていくぜ!!」
「あ、ああ……! 済まないがそうしてくれると助かる!!」
「よっしゃあ!! 久々のスキーと洒落込もうじゃねーかあああああ!!」
「リズ、これが最後です。もう一働きお願いしますよ!!」







「……時間は午後四時。日も傾いてきたな……」
「間に合うのかよ姉ちゃん!?」
「わかんねえよんなもん!! そう信じていなきゃ……!!」
「……クソッ!! こんな時にアーサーの奴はどこ行きやがった!?」



 物見台から目を皿にして雪原を見つめる、ローザ、イザーク、ルシュドの三人。その顔には焦りの色が浮かびつつあった。



「……!」
「どうしたルシュド!?」
「あっち! 来る!」



 ルシュドが指差した方向には、人間三人と一緒にやってくる馬車の姿が。


 その背後から迫ってくる、黒く鳴動する奈落の者の大群も。



「畜生!!! こういう予想に限って当たるんだよクソが!!!」
「ここでさっきの魔法陣の出番だな!?」
「そうだ! てめえらにほんの少し血を分けてもらったあの魔法陣だ!!!」


 ローザは魔法を使って飛び降り、門の真上に着地する。丁度丸くなっているスペースには魔法陣が敷かれ、そして発動するのを待ちかねているように魔力を噴き出していた。


「あいつらが門に入ったら直ぐに耳を塞げ!! さっきと違って今回は広範囲殲滅用だ、レベルが違うぞ!!」
「了解!!」
「――来る!!」







          「・・。・。・。・、」



 よし! 関所が見えて来た!

     あそこに突っ込めばいいんだな!?



         「(%&&#&$&(%’#”%$”%%」



 ああそうだ!
 ある程度は壊れてしまったから、
 今更突撃しても大したことはない!!

     修理代の請求はないってことだな!
     よし言質取ったぞ!

      ははは! 
      姐者調子が戻ってきましたな!



   「%($&()&”(?><>$&(”&$)&”’)$?>$?<<$」



 でも、後ろからいっぱい来ていますよ……!?

   その辺はアイツがどうにかしてくれる! 
   お前らと一緒に来たあの女魔術師がな!



 ローザさん……ですか!?

     見てろ、ここでアイツの本領発揮だ!
     突入したら耳を塞いでおけ!!!



「――&’&$)’&”)’$%’)$”?!<$?>$?<><”${‘”*$})$”’)!$*!”${‘{”*$}!!!!!!!!!!」




 カウントダウン、三……




「!!!!?*>?!>+L+#!+#!+#!#!#$!$"")$'(&$!!!!!!!!」



 二……



「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


 一……!




 ――ゼロォォォ!!!




「――ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛――!!!!!!」
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