201 / 247
第2章1節 魔法学園対抗戦/武術戦
第194話 兄と妹と傍観者
しおりを挟む
「サラせんぱぁ~い! またしてもクラリア先輩と合い挽き肉デートですかぁ~!?」
突拍子もないサネットの言葉に、サラは風の刃を飛ばす。
「うぼあ!!!! いだい!!!」
「……誰が言ってんのよそんなこと」
「私が言って私の中で話題にしてます!!」
「そう。ならその言葉は丁重に否定させてもらうわ」
サラは作業服から学生服に着替え終え、鞄を担いだ所だった。
「でも今から武術部に向かうのは事実でしょう!?」
「その口どうやって黙らせようかしら……」
彼女の方に振り返った瞬間、鞄の中身が見えてしまう。本の表紙を見て眉間に皺が寄る。
「『騎士王総受け円卓カプ大全第五版』」
「ぎゃアーッ!!!!! 何で読み上げるんですカアーッ!!!!!」
絶叫したサネット、残像をも残す速度で鞄のチャックを閉める。
「見るつもりはなかったのよ?」
「見るつもりでしたよねえ今の目は!!!」
「何でそんなの学園に持ってきたんだが……」
「昨日買って鞄に入れっ放しだったの忘れてたんです!!!」
焦るサネットとは対照的に、サラは考え込む。
「……こういうのは半分ネタにしてる感あるけど。でも本当にそういう性癖だったら、面白いわよね」
「実際に会えたら死ぬ程訊いてみたいわ。騎士王という人物の本性……」
「……サラせんぱーい?」
「失礼。じゃあ、ワタシもう行くわね」
「アッハイ息災で!!!」
片手を挙げるのを挨拶代わりに、サラは温室を出て行く。
午後四時台、まだまだ日の明るい道を、サラはのんびりと歩いていった。
「全く、あのサネットとかいう一年生……真面目な時はいいんだけど、不真面目な時はとことん扱いにくいわね」
「……でもいいわ。刺激を与えた時の反応は、強い方がいいから」
「――」
「そうそう。クラリアもワタシの魔法に合わせて、どんどん適応していって――ってサリア、何様なのアナタ」
こっそりサラから出ていたサリアは、くるくると手に持っている花を回し、嬉しそうにその花弁を散らす。
「――」
「は? 最近ワタシが楽しそうですって?」
「――」
「……フン。確かに……否定、できないわね」
「――!」
「え、今度は何……」
サリアが見つめている方向に、すっと振り向くサラ。
そこにいたのは――
「……アーサー。ここ最近の演習場は、いつもこのような状態なのか?」
「……ああ。武術部でない生徒も沢山集まっている」
「そうか、そうか……」
腕を組んで舐めるように演習場を眺めるのは、最近めっきり姿を見せなくなっていたヴィクトール。
その隣にいたのはアーサーだった。
「……最近はどうしていたんだ?」
「他の生徒会連中が五月蠅くてな……やれここがわからないだの、ここはどうだの。俺に任せると言った割には余計な口を挟んできて、煩わしいことこの上なかったよ」
「……」
「安心しろ、連中には貴様のことは伝えていない。最初の取引通りな」
「……」
間に入ろうとするサリアを抑えつつ、サラは目を見開いて聞き耳を立てる。
「……『騎士王』アーサーよ。俺は貴様に訊いてみたいことが山程ある」
「……例えば?」
「古い、古い、昔の話だ。貴様に眠る戦の記憶……そうだな、カムランの戦いとかはどうだ?」
「……覚えていない」
「ほう?」
「本当に記憶がないんだ。今のオレの中で一番古い記憶は……エリスの元に現れた時だ。歴史書に描かれているオレの姿を見ても、実感が沸かない」
「……」
沈黙がしばしの間訪れた後、アーサーはその場を立ち去ろうとする。
「……予定が入っていたのを思い出した。ハインリヒ先生に会いに行く」
ヴィクトールは顔を顰め、影に潜むシャドウに合図を送った。
「……イザークがさ。あいつナイトメアとの戦い方を学ぶんだって言ってさ。ナイトメアのことならハインリヒ先生に訊けばいいだろって……それで」
それを受けてにんまりと微笑む。まるで安堵するように。
「……じゃあな。お前も元気でいろよ」
そうしてアーサーはそそくさと去っていく。
ヴィクトールも後にしようとした所に――
「……へえ。興味深い話をしてたじゃない」
入れ替わる形で、サラが話しかけてくる。
「……貴様」
「いつからと訊かれたら、最近の様子を話してた辺りから」
「……そうか」
「……」
「ねえ、今話してたこと――」
「全部訊こうとするなら殺す」
「……は?」
「夜想曲の幕を上げよ、混沌たる闇の神よ――確か貴様は光属性だったよな?」
ヴィクトールは淡々と闇の球体を生成し、隣ではシャドウが槍を持った兵士の姿で発現している。
「……じゃあ一つだけなら教えなさいよ。全部と言った手前、それならいいでしょ?」
「そうだな……貴様と俺の関係に免じてな。いいだろう、何が知りたい?」
「そうねえ……」
ヴィクトールが言っていた計画の詳細、アーサーの正体。
今この状況で訊くことは――
「……んでさ! アタシが斧をバーッてやったらそこにいなかったんだよ! 確かにそこにいたのにさ!」
「成程、幻惑系の魔法か」
「そうそうそれだよ! いやーアタシびっくりしちまった! あんな戦い方できるなんて!」
「お前も一応妨害系の魔法に適性はあるんだぞ? やろうと思えばできるはずだ」
「そうかぁ? そんなもんかぁ?」
「何なら実際にやってみるかい?」
「やってみたいぜー!」
日曜日に騎士達と訓練した興奮が、未だに冷めていない様子のクラリア。兄のクラヴィルは頷きながら話を聞いている。
そこに涼しげな顔をして、サラがやってきた。
「おっす!! サラ!! 元気か!!」
「元気よ。アナタも元気そうでよかったわ」
「アタシはバリバリ元気だぜー! なんてったって今日は、ヴィル兄が稽古つけてくれるからな!」
「そうなの? じゃあワタシは余計だったかしら」
「だったらアタシの稽古見ていてくれ! アタシ頑張るからな!」
「……はぁ」
「ではそろそろ準備に入ろうか」
クラリスとアネッサが出現し、倉庫に武器を取りに向かう。クラヴィルも立ち上がりそれに続く。
サラはあくまでも涼しげな顔で、その流れを見守る。
「……ねえ」
「何だ?」
「……その、ねえ。もしもの話として聞いてほしいのだけど」
「もしもってどういうことだー?」
「仮にその状況になったらってことよ」
「じゃあ起こるかもしれないし、起こらないかもしれないってことだな! それで何だ!?」
「……はぁ」
話しやすいんだがしにくいんだが。サラは両手を組んで上に伸ばす。
「アナタ、今していることが全て無駄になったらどう思う?」
「無駄?」
「例えばそうね……アナタよりももっと強いヤツが現れて、アナタの出る幕がなく戦いが終わったら、どう思う?」
「……んんー? それって次の対抗戦の話かー?」
「そう思ってくれて構わないわ」
「おいおい、対抗戦でそんな奴出るわけねえだろー!」
「だからもしもの話だって言ってるじゃない」
「そうだったぜ! うーん……」
頭を唸り、首を回し、尻尾をばたばたさせて考える。奇妙な仮定だと自分でも思うが、それでも否定することなく真摯に向き合ってくれていた。
「……あ、一つ追加。その強いヤツについてよ」
「何だ?」
「強いと言っても、単に技法が上手ってことではないわ。どうしようもない差を持つ強者……学生の試合に、王国の騎士が混ざるようなものだと思って」
「アタシ達の試合に……ダグラスさんやカイルさんが……」
「ついでにもう一つ。その騎士はアナタ達が率いる指揮官が、必勝法として呼び寄せた者よ」
「……戦略ってことか?」
「そういうこと」
ヴィクトールから聞き出した計画の内容。アーサーの力を用いて一瞬で試合を終わらせるという内容を、わかりやすいように噛み砕きながら。
「……」
頭も尻尾も動かさない。腕を組んで、目を閉じて真剣に考える。
「……なあサラ。その指揮官は、どうして勝ちたいと思ったんだろうな?」
ぽつりと言うクラリア。普段の彼女が出さないような、落ち着いて真面目なトーンだ。
「……どうして、ですって?」
「ああ。勝つという結果を残すだけなら簡単なんだ。魔物を投入したり奇襲をかけたりとかな。だからこそどうやって勝ったかが重要なんだ。ほら、卑怯者とかってよく言うだろ?」
「……」
「アタシはやれることを頑張って、本番でも死力を尽くして勝ちたい。でもその指揮官は……勝つという結果だけ求めているように感じる。それってそれなりの理由があるってことだろ?」
「……じゃあ、それを訊けたらどうするつもり?」
「……どうする。どうする? うーん……」
また尻尾がばたばたと動く。
「悪い理由だったら……ぶん殴る! 良い理由だったら……うん、ぶん殴る! とにかくアタシはそう思わないことを伝えてやるぜ!」
「……そう。アナタらしいわね」
「まあな!」
そこに武器を取ってきた二人と一匹が戻ってくる。
「お待たせクラリア。それじゃ稽古を始めようか」
「よろしくだぜヴィル兄ー!」
「やる気満々だねえ。これも騎士と一戦交えたおかげってもんかね!」
「今の彼女は気合に満ち溢れているぞ。まあいつものことだが」
「よっしゃー行くぞークラリスー!!」
クラヴィルとクラリアの兄妹は、それぞれ剣と斧を手に取る。
横にアネッサとクラリスが控えた所で、木と木がかち合う音が響く。
「くっ……クラリア、力が強くなったな!?」
「当然だ! 毎日腕立ては三百回してるからな!」
「ふふっ……こっちも負けていられないな! アネッサ、行くぞ!」
「了解っ!」
「クラリスー!! アタシ達もぶっ飛ばしていくぜー!!」
「任せておけ!」
徐々に日が沈む空を後ろに、狼の兄妹は武器を交わせる。
サラはそれを見ながら、一つ欠伸をした。何だか今日はよく出てくる。
(ぶん殴る、ねえ)
(……どのみちアイツ、対抗戦が終わったらタダでは済まないでしょうね)
突拍子もないサネットの言葉に、サラは風の刃を飛ばす。
「うぼあ!!!! いだい!!!」
「……誰が言ってんのよそんなこと」
「私が言って私の中で話題にしてます!!」
「そう。ならその言葉は丁重に否定させてもらうわ」
サラは作業服から学生服に着替え終え、鞄を担いだ所だった。
「でも今から武術部に向かうのは事実でしょう!?」
「その口どうやって黙らせようかしら……」
彼女の方に振り返った瞬間、鞄の中身が見えてしまう。本の表紙を見て眉間に皺が寄る。
「『騎士王総受け円卓カプ大全第五版』」
「ぎゃアーッ!!!!! 何で読み上げるんですカアーッ!!!!!」
絶叫したサネット、残像をも残す速度で鞄のチャックを閉める。
「見るつもりはなかったのよ?」
「見るつもりでしたよねえ今の目は!!!」
「何でそんなの学園に持ってきたんだが……」
「昨日買って鞄に入れっ放しだったの忘れてたんです!!!」
焦るサネットとは対照的に、サラは考え込む。
「……こういうのは半分ネタにしてる感あるけど。でも本当にそういう性癖だったら、面白いわよね」
「実際に会えたら死ぬ程訊いてみたいわ。騎士王という人物の本性……」
「……サラせんぱーい?」
「失礼。じゃあ、ワタシもう行くわね」
「アッハイ息災で!!!」
片手を挙げるのを挨拶代わりに、サラは温室を出て行く。
午後四時台、まだまだ日の明るい道を、サラはのんびりと歩いていった。
「全く、あのサネットとかいう一年生……真面目な時はいいんだけど、不真面目な時はとことん扱いにくいわね」
「……でもいいわ。刺激を与えた時の反応は、強い方がいいから」
「――」
「そうそう。クラリアもワタシの魔法に合わせて、どんどん適応していって――ってサリア、何様なのアナタ」
こっそりサラから出ていたサリアは、くるくると手に持っている花を回し、嬉しそうにその花弁を散らす。
「――」
「は? 最近ワタシが楽しそうですって?」
「――」
「……フン。確かに……否定、できないわね」
「――!」
「え、今度は何……」
サリアが見つめている方向に、すっと振り向くサラ。
そこにいたのは――
「……アーサー。ここ最近の演習場は、いつもこのような状態なのか?」
「……ああ。武術部でない生徒も沢山集まっている」
「そうか、そうか……」
腕を組んで舐めるように演習場を眺めるのは、最近めっきり姿を見せなくなっていたヴィクトール。
その隣にいたのはアーサーだった。
「……最近はどうしていたんだ?」
「他の生徒会連中が五月蠅くてな……やれここがわからないだの、ここはどうだの。俺に任せると言った割には余計な口を挟んできて、煩わしいことこの上なかったよ」
「……」
「安心しろ、連中には貴様のことは伝えていない。最初の取引通りな」
「……」
間に入ろうとするサリアを抑えつつ、サラは目を見開いて聞き耳を立てる。
「……『騎士王』アーサーよ。俺は貴様に訊いてみたいことが山程ある」
「……例えば?」
「古い、古い、昔の話だ。貴様に眠る戦の記憶……そうだな、カムランの戦いとかはどうだ?」
「……覚えていない」
「ほう?」
「本当に記憶がないんだ。今のオレの中で一番古い記憶は……エリスの元に現れた時だ。歴史書に描かれているオレの姿を見ても、実感が沸かない」
「……」
沈黙がしばしの間訪れた後、アーサーはその場を立ち去ろうとする。
「……予定が入っていたのを思い出した。ハインリヒ先生に会いに行く」
ヴィクトールは顔を顰め、影に潜むシャドウに合図を送った。
「……イザークがさ。あいつナイトメアとの戦い方を学ぶんだって言ってさ。ナイトメアのことならハインリヒ先生に訊けばいいだろって……それで」
それを受けてにんまりと微笑む。まるで安堵するように。
「……じゃあな。お前も元気でいろよ」
そうしてアーサーはそそくさと去っていく。
ヴィクトールも後にしようとした所に――
「……へえ。興味深い話をしてたじゃない」
入れ替わる形で、サラが話しかけてくる。
「……貴様」
「いつからと訊かれたら、最近の様子を話してた辺りから」
「……そうか」
「……」
「ねえ、今話してたこと――」
「全部訊こうとするなら殺す」
「……は?」
「夜想曲の幕を上げよ、混沌たる闇の神よ――確か貴様は光属性だったよな?」
ヴィクトールは淡々と闇の球体を生成し、隣ではシャドウが槍を持った兵士の姿で発現している。
「……じゃあ一つだけなら教えなさいよ。全部と言った手前、それならいいでしょ?」
「そうだな……貴様と俺の関係に免じてな。いいだろう、何が知りたい?」
「そうねえ……」
ヴィクトールが言っていた計画の詳細、アーサーの正体。
今この状況で訊くことは――
「……んでさ! アタシが斧をバーッてやったらそこにいなかったんだよ! 確かにそこにいたのにさ!」
「成程、幻惑系の魔法か」
「そうそうそれだよ! いやーアタシびっくりしちまった! あんな戦い方できるなんて!」
「お前も一応妨害系の魔法に適性はあるんだぞ? やろうと思えばできるはずだ」
「そうかぁ? そんなもんかぁ?」
「何なら実際にやってみるかい?」
「やってみたいぜー!」
日曜日に騎士達と訓練した興奮が、未だに冷めていない様子のクラリア。兄のクラヴィルは頷きながら話を聞いている。
そこに涼しげな顔をして、サラがやってきた。
「おっす!! サラ!! 元気か!!」
「元気よ。アナタも元気そうでよかったわ」
「アタシはバリバリ元気だぜー! なんてったって今日は、ヴィル兄が稽古つけてくれるからな!」
「そうなの? じゃあワタシは余計だったかしら」
「だったらアタシの稽古見ていてくれ! アタシ頑張るからな!」
「……はぁ」
「ではそろそろ準備に入ろうか」
クラリスとアネッサが出現し、倉庫に武器を取りに向かう。クラヴィルも立ち上がりそれに続く。
サラはあくまでも涼しげな顔で、その流れを見守る。
「……ねえ」
「何だ?」
「……その、ねえ。もしもの話として聞いてほしいのだけど」
「もしもってどういうことだー?」
「仮にその状況になったらってことよ」
「じゃあ起こるかもしれないし、起こらないかもしれないってことだな! それで何だ!?」
「……はぁ」
話しやすいんだがしにくいんだが。サラは両手を組んで上に伸ばす。
「アナタ、今していることが全て無駄になったらどう思う?」
「無駄?」
「例えばそうね……アナタよりももっと強いヤツが現れて、アナタの出る幕がなく戦いが終わったら、どう思う?」
「……んんー? それって次の対抗戦の話かー?」
「そう思ってくれて構わないわ」
「おいおい、対抗戦でそんな奴出るわけねえだろー!」
「だからもしもの話だって言ってるじゃない」
「そうだったぜ! うーん……」
頭を唸り、首を回し、尻尾をばたばたさせて考える。奇妙な仮定だと自分でも思うが、それでも否定することなく真摯に向き合ってくれていた。
「……あ、一つ追加。その強いヤツについてよ」
「何だ?」
「強いと言っても、単に技法が上手ってことではないわ。どうしようもない差を持つ強者……学生の試合に、王国の騎士が混ざるようなものだと思って」
「アタシ達の試合に……ダグラスさんやカイルさんが……」
「ついでにもう一つ。その騎士はアナタ達が率いる指揮官が、必勝法として呼び寄せた者よ」
「……戦略ってことか?」
「そういうこと」
ヴィクトールから聞き出した計画の内容。アーサーの力を用いて一瞬で試合を終わらせるという内容を、わかりやすいように噛み砕きながら。
「……」
頭も尻尾も動かさない。腕を組んで、目を閉じて真剣に考える。
「……なあサラ。その指揮官は、どうして勝ちたいと思ったんだろうな?」
ぽつりと言うクラリア。普段の彼女が出さないような、落ち着いて真面目なトーンだ。
「……どうして、ですって?」
「ああ。勝つという結果を残すだけなら簡単なんだ。魔物を投入したり奇襲をかけたりとかな。だからこそどうやって勝ったかが重要なんだ。ほら、卑怯者とかってよく言うだろ?」
「……」
「アタシはやれることを頑張って、本番でも死力を尽くして勝ちたい。でもその指揮官は……勝つという結果だけ求めているように感じる。それってそれなりの理由があるってことだろ?」
「……じゃあ、それを訊けたらどうするつもり?」
「……どうする。どうする? うーん……」
また尻尾がばたばたと動く。
「悪い理由だったら……ぶん殴る! 良い理由だったら……うん、ぶん殴る! とにかくアタシはそう思わないことを伝えてやるぜ!」
「……そう。アナタらしいわね」
「まあな!」
そこに武器を取ってきた二人と一匹が戻ってくる。
「お待たせクラリア。それじゃ稽古を始めようか」
「よろしくだぜヴィル兄ー!」
「やる気満々だねえ。これも騎士と一戦交えたおかげってもんかね!」
「今の彼女は気合に満ち溢れているぞ。まあいつものことだが」
「よっしゃー行くぞークラリスー!!」
クラヴィルとクラリアの兄妹は、それぞれ剣と斧を手に取る。
横にアネッサとクラリスが控えた所で、木と木がかち合う音が響く。
「くっ……クラリア、力が強くなったな!?」
「当然だ! 毎日腕立ては三百回してるからな!」
「ふふっ……こっちも負けていられないな! アネッサ、行くぞ!」
「了解っ!」
「クラリスー!! アタシ達もぶっ飛ばしていくぜー!!」
「任せておけ!」
徐々に日が沈む空を後ろに、狼の兄妹は武器を交わせる。
サラはそれを見ながら、一つ欠伸をした。何だか今日はよく出てくる。
(ぶん殴る、ねえ)
(……どのみちアイツ、対抗戦が終わったらタダでは済まないでしょうね)
0
あなたにおすすめの小説
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
手折れ花
アヒル
恋愛
王族から見捨てられ、とある村で暮らしていた第四王女だったが……。
侵略した王子×亡国の平凡王女のお話。
※注意※
自サイトでボーイズラブとして書いたお話を主人公を女の子にして加筆したものです。
(2020.12.31)
閲覧、お気に入りなど、ありがとうございます。完結していますが、続きを書こうか迷っています。
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました
東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!!
スティールスキル。
皆さん、どんなイメージを持ってますか?
使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。
でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。
スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。
楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。
それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。
2025/12/7
一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
追放された宮廷魔術師は辺境で最強の魔法都市を築く ~「お前の魔法は役立たず」と言われたので、誰も見向きしない土地で好き勝手やらせてもらいます
ポポリーナ
ファンタジー
宮廷魔術師として十年尽くしたレイドは、新任の宰相に「実戦で使えない研究馬鹿」と追放される。だが彼の真価は、誰も理解できなかった【万象構築魔術】——あらゆる現象を魔法で再現し、インフラから兵器まで創造する規格外の能力だった。辺境の荒野を与えられたレイドは、獣人や亜人の難民を受け入れながら、上下水道・魔導通信・自動防衛結界を次々と実装。気づけば列強諸国が注目する魔法先進都市が誕生していた。王都が焦り始めた頃にはもう遅い——辺境は、もう誰にも止められない。
俺、何しに異世界に来たんだっけ?
右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」
主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。
気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。
「あなたに、お願いがあります。どうか…」
そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。
「やべ…失敗した。」
女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる