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第12話。
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ホームルームは、自己紹介と受講教科選択用紙、部活動の入部申請用紙の配布で終わった。
一時限目は、学園内の案内。
「ここは広いから、絶対に逸れるんじゃないぞ」
Sクラス担任教諭のヨザック=フォン=ヤンディキ名誉男爵が、注意喚起をすると、後ろの方から、
「たかが名誉男爵の分際で生意気な。僕を誰だと思ってるんだ? 無礼者め」
サンシャイン侯爵家の五男ロナルドが忌々しげに呟く声が聞こえてきた。
移動中の生徒達の間にピリッとした緊張感が走った。
さて、ヤンディキ先生は、どういう指導をするのかな?
密かに期待していたら、俺の想像の遥か斜め上を飛んだ指導に、俺は吹き出した。
だって、
「小僧。俺の指導に従えないのなら、今すぐに自主退学しろ。目障りだ」
っという指導だったからだ。
ロナルドは自分の実家の家名と爵位で我儘放題にして来たので、反抗されたのが初めてだったのか、
「き、貴様! 僕はサンシ、ッ!?」
その先は俺が言わせなかった。
ロナルドに魔力威圧を放つ。
「この学園では実家の爵位は一切通用しない。実力至上主義な学園に於いて、担任教諭に暴言を吐くとは以ての外…ですよね。ヤンディキ先生?」
ヤンディキ先生は、少し目を瞠るも、
「その通りだ。サンチェス。失礼ではあるが、第三王女殿下と言えども例外ではない。ご理解いただけますね?」
「勿論ですわ。ヤンディキ先生。ミューラーくんの言う通り、この学園は実力至上主義。私の父でさえも当時の担任教諭から「鼻垂れ小僧」と罵倒されても反抗出来なかったと聞いています。さて、ロナルドくん。国王たる父でさえも従ってきた校則に対して、侯爵家の五男でしかない貴方に覆せるのかしら? それに、この学園の校則は、正しくは国が決めた法律であった筈。それに不平不満があるとでも?」
ロナルドは、国王陛下や法律を言い出されても尚、反抗的な目でヤンディキ先生を、そして王女殿下をも睨んでいる。
俺は、圧力を強めて言った。
「ロナルド。お前の父親は侯爵かもしれないが、お前は何様だ?」
「何って…僕はサンシャイン侯爵家の五男で…」
「そうだ。お前はただの五男坊。家督も継げず、どこかの貴族家の養子にならなければ只の平民ロナルドだ。何の権力も財力もなく、国の法律に背いた国賊擬きだ。そんなお前を誰が助けると言うんだ?」
国賊擬き…。
この言葉に、かなりの衝撃を受けたのか、ロナルドの額に脂汗が浮かぶ。
「ち、父上が…」 「無い」
「友達が…」 「尚の事、無い」
「じゃあ、誰が助けてくれるんだよ!?」
ここまで追い詰められて、初めて恐怖を感じたのだろうが、もう遅い。
「誰も助けてはくれないさ。それこそ、他国に亡命するしかないだろうな。しかし、他国でも受け入れてくれるかどうか分からないぞ?」
「何でだよ!? 亡命者は例外なく受け入れるのが、大陸協定法で決まってるじゃないか!!」
「確かにそうだ。でもなぁ…他国の王家に叛意を向け、国賊と認定された奴は無理なんじゃないか? だって、その国賊を受け入れるって事は、「アンタの国と戦争しますよ」って言ってるようなもんだろう? 違うか?」
他国との戦争を誘発した者など、大陸のどこに隠れていても必ず探し出されて極刑に処される事を思い出したのか、自分の言動に問題があった事に気付いたようだ。
俺はヤンディキ先生とマリューの顔を見る。
二人とも苦笑いで頷く。
そこまでで良い(でしょう)だろう。
「なあ、ロナルド。今ならまだ間に合うかもしれないぞ? 先生と王女殿下に誠心誠意謝罪して、国の為になる、役に立つ者になりますと誓えば許して貰えるかもしれないぞ。どうする?」
「ゆ、ゆ、許して貰えるのか…? 本当に許して貰えるのか!?」
「ああ。但し、それはお前の気持ち次第だ。誠心誠意謝罪するんだ」
「わ、分かった…いや、分かったよ、サンチェスくん」
ロナルドは、その場で土下座した。
「先生、王女殿下。数々の失言をお許し下さい。これからは心を入れ替えて、国の盾となり剣となる事を誓約致します」
「二言は許しませんよ」
「我が一剣に誓って」
ロナルドは、腰の剣を叩いて、『騎士の誓い』を立てた。
さっきまでの太々しさは消え去り、今は騎士道精神逞しいに変わっている。
ヤンディキ先生と王女殿下は、俺と頷き合う。
「ロナルド。いつまで座ってる。校舎内案内は終わってないんだぞ。早く立て」
ロナルドがヤンディキ先生の指導に従うと、ロナルドと同じ考えを抱いていた何人かの生徒も認識を改めたようだ。
一時限目は、学園内の案内。
「ここは広いから、絶対に逸れるんじゃないぞ」
Sクラス担任教諭のヨザック=フォン=ヤンディキ名誉男爵が、注意喚起をすると、後ろの方から、
「たかが名誉男爵の分際で生意気な。僕を誰だと思ってるんだ? 無礼者め」
サンシャイン侯爵家の五男ロナルドが忌々しげに呟く声が聞こえてきた。
移動中の生徒達の間にピリッとした緊張感が走った。
さて、ヤンディキ先生は、どういう指導をするのかな?
密かに期待していたら、俺の想像の遥か斜め上を飛んだ指導に、俺は吹き出した。
だって、
「小僧。俺の指導に従えないのなら、今すぐに自主退学しろ。目障りだ」
っという指導だったからだ。
ロナルドは自分の実家の家名と爵位で我儘放題にして来たので、反抗されたのが初めてだったのか、
「き、貴様! 僕はサンシ、ッ!?」
その先は俺が言わせなかった。
ロナルドに魔力威圧を放つ。
「この学園では実家の爵位は一切通用しない。実力至上主義な学園に於いて、担任教諭に暴言を吐くとは以ての外…ですよね。ヤンディキ先生?」
ヤンディキ先生は、少し目を瞠るも、
「その通りだ。サンチェス。失礼ではあるが、第三王女殿下と言えども例外ではない。ご理解いただけますね?」
「勿論ですわ。ヤンディキ先生。ミューラーくんの言う通り、この学園は実力至上主義。私の父でさえも当時の担任教諭から「鼻垂れ小僧」と罵倒されても反抗出来なかったと聞いています。さて、ロナルドくん。国王たる父でさえも従ってきた校則に対して、侯爵家の五男でしかない貴方に覆せるのかしら? それに、この学園の校則は、正しくは国が決めた法律であった筈。それに不平不満があるとでも?」
ロナルドは、国王陛下や法律を言い出されても尚、反抗的な目でヤンディキ先生を、そして王女殿下をも睨んでいる。
俺は、圧力を強めて言った。
「ロナルド。お前の父親は侯爵かもしれないが、お前は何様だ?」
「何って…僕はサンシャイン侯爵家の五男で…」
「そうだ。お前はただの五男坊。家督も継げず、どこかの貴族家の養子にならなければ只の平民ロナルドだ。何の権力も財力もなく、国の法律に背いた国賊擬きだ。そんなお前を誰が助けると言うんだ?」
国賊擬き…。
この言葉に、かなりの衝撃を受けたのか、ロナルドの額に脂汗が浮かぶ。
「ち、父上が…」 「無い」
「友達が…」 「尚の事、無い」
「じゃあ、誰が助けてくれるんだよ!?」
ここまで追い詰められて、初めて恐怖を感じたのだろうが、もう遅い。
「誰も助けてはくれないさ。それこそ、他国に亡命するしかないだろうな。しかし、他国でも受け入れてくれるかどうか分からないぞ?」
「何でだよ!? 亡命者は例外なく受け入れるのが、大陸協定法で決まってるじゃないか!!」
「確かにそうだ。でもなぁ…他国の王家に叛意を向け、国賊と認定された奴は無理なんじゃないか? だって、その国賊を受け入れるって事は、「アンタの国と戦争しますよ」って言ってるようなもんだろう? 違うか?」
他国との戦争を誘発した者など、大陸のどこに隠れていても必ず探し出されて極刑に処される事を思い出したのか、自分の言動に問題があった事に気付いたようだ。
俺はヤンディキ先生とマリューの顔を見る。
二人とも苦笑いで頷く。
そこまでで良い(でしょう)だろう。
「なあ、ロナルド。今ならまだ間に合うかもしれないぞ? 先生と王女殿下に誠心誠意謝罪して、国の為になる、役に立つ者になりますと誓えば許して貰えるかもしれないぞ。どうする?」
「ゆ、ゆ、許して貰えるのか…? 本当に許して貰えるのか!?」
「ああ。但し、それはお前の気持ち次第だ。誠心誠意謝罪するんだ」
「わ、分かった…いや、分かったよ、サンチェスくん」
ロナルドは、その場で土下座した。
「先生、王女殿下。数々の失言をお許し下さい。これからは心を入れ替えて、国の盾となり剣となる事を誓約致します」
「二言は許しませんよ」
「我が一剣に誓って」
ロナルドは、腰の剣を叩いて、『騎士の誓い』を立てた。
さっきまでの太々しさは消え去り、今は騎士道精神逞しいに変わっている。
ヤンディキ先生と王女殿下は、俺と頷き合う。
「ロナルド。いつまで座ってる。校舎内案内は終わってないんだぞ。早く立て」
ロナルドがヤンディキ先生の指導に従うと、ロナルドと同じ考えを抱いていた何人かの生徒も認識を改めたようだ。
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